再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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We willのライブめっっっちゃよかった。




131.自分達のためにパーティーを開いてくれる友人がいるのは普通に凄い事だと思う

 

 隣がうるさいからこちらの音量を上げてついでにテンションもアガってきた頃。

 

 

「シデロスの曲はあるけど結束バンドの曲入ってないならもう直接後藤が弾きゃいいんじゃん」

 

「えっ」

 

 さっさんがとんでもない事を言い出した。

 

 

「バッカさっさん、略してバッさん」

 

「もはやうちの原型ないじゃん」

 

「後藤さんがそんな無茶振りされて堂々とできる訳ないだろ。あの子みたいなタイプは振られた事で空回りしながら応えようとした矢先にやらかすんだから!」

 

「え〜でも間近で結束バンドの演奏聴きたいじゃん」

 

「私も後藤さんの演奏聴きた〜い!」

 

 そういやこの人達喜多さんの友達だから基本的に陽キャの集まりなんだった……! 

 このノリがどれだけ陰キャを追い詰めるかまだこやつらは知らないんだ。喜多さんはもう知ってるからみんなのノリに合わせるか後藤さんを気遣うかであわあわしている。

 

 だが悲しきかな。俺達の気遣いなんていざ知らず。承認欲求モンスターはリクエストをされるとつい張り切っちゃうんだ(ドナ◯ドボイス)。

 

 

「あっうっ……へへ……」

 

「もう弾き始めている……だと……!?」

 

「あれ、でもなんか下手じゃね? てかそもそもあんま聞こえん」

 

 このピンク、緊張でいつも以上にまともに弾けてねえじゃねえか。

 だからやらかすって言ったのに。

 

 

「ほ、ほら、それはあれよっ。ア、アンプがないから!」

 

「そうそう、アンプがあって緊張さえしなけりゃうちの子はもっと上手なんだからね!」

 

「保護者かアンタら」

 

「あら、さっつーには私達が夫婦に見えてるみたいよ優人君」

 

「はっはっは、そういった事を冗談でも言っちゃあいけねえぜ喜多さん。何故ならこの陽キャ達は面白いと思ったネタは嘘でもすぐ拡散するからな。そして最終的に追いかけ回されるのは俺だけなんだ」

 

「清水はうちらの事週刊誌か何かだと思ってんの」

 

 どうせ拡散するならみんながハッピーになるような事でお願いしますとは思ってるよ。

 今のとこ大体喜多さんのせいでクラスの男子に追われる事多いからね俺。おかげで多対一のケンカの仕方覚えちまったくらいだわ。何も嬉しくねえ。

 

 

「じゃあ後藤の緊張が緩和するように清水も一緒にギター弾いたらいいじゃん」

 

「え」

 

「それいいわね! ひとりちゃんと優人君のセッション!」

 

「え」

 

 やべえ、陽キャが結託し始めた。

 

 

「優人君結束バンドの曲弾けない?」

 

「いや、まあ、一応後藤さんと家で練習する時に弾いてたしある程度できない事はないけど……」

 

「じゃあしましょ! 私は歌うからまだ簡単な私のパートの方ならいいでしょ!」

 

「え、いやでも……」

 

 チラリと後藤さんの方を見てみる。個人的には練習で弾く分にはまだいいけど、こういう他の誰かがいる場所で俺が結束バンドの曲を弾くのは何だか解釈違いな気がしてならない。

 ので後藤さんがいつものように首を横に振りながらむむむむむしてくれたらありがたいのだが、

 

 

「わ、私とゆうくんは毎日一緒に弾いてるので、せ、セッションするくらいなんてちょちょいのちょいですよぉ〜……!」

 

 ちくしょう今日は調子乗ってる方の後藤さんか……。

 

 

「清水のギターは初めて聴くね」

 

「予防線張るようで悪いけど俺は喜多さんよりも初心者だからな。過度な期待はしないでください」

 

「マジの予防線じゃん。どうせ慰労会のちょっとした余興みたいなもんだし気楽にやればいいじゃん」

 

 見る側だからそんなこと言える立場なんだぞこのやろう。

 ……あれ? そういやそもそも練習以外で誰かの前でギター披露するのってこれが初なんじゃ……? マジかよ、よりによってこんな余興で俺のギターの腕が試される……ってコト!? 

 

 後藤さんは無駄にやる気出してるしまたさっきみたいに空回りしてやらかさないかだけが心配だけど、陽キャ女子達からの期待の眼差しがエグいので俺の逃げ場もどうやらなくなってるらしい。

 ……しょうがない、腹を括りますか。

 

 

「後藤さん、あんま自信ないから悪いけど俺に合わせてくれるか」

 

「あ、うん、任せて」

 

 ちょっとやだ、数秒前まで空回りしてたのにいきなり頼り甲斐のある声出すじゃん。やめて、不覚にもキュンとしちゃうから。

 ギターを抱えてピックを持つ。

 

 

「曲は?」

 

「ひとりちゃんのギターソロもあるから『星座になれたら』はどう? 弾けそう?」

 

「あー、多分」

 

 個人的に結束バンドの中でも特に好きな曲だから一番練習してたし好都合。

 喜多さんほどの自信はないけど、まあ及第点までは多分おそらくきっとメイビーできたらいいな。

 

 

「じゃあいくわよ〜! せーのっ!」

 

 

 ──

 

 

 時間は進み慰労会も終盤に差し掛かってきた。

 俺の初のギターお披露目はさっさんからの「よう分からんけど普通じゃね」というどう受け取ればいいか分からないような評価で終わった。まあアンプにも繋いでないし聴こえ方も変わるから仕方ないという事にしておこう。それが俺への精神ダメージを軽減する暗示になるからね。

 

 ちなみに後藤さんは無駄にやり切った感を出しながらチラチラとみんなの反応を窺っていたが、悲しい事にこれといった反応もなくむしろ珍しいキャラとして違う意味でちやほやされていた。

 どうやら彼女的にはちやほやされるなら何でもいいらしい。普通にニヤけていたのがもろバレだったもの。

 

 

「さて、そろそろ時間だしお開きにするかー」

 

「そうだね〜、テーブル片しとこっか」

 

 よし、何とか男一人だけでこの時間を持ち堪えた俺偉い。癖強な人達と一緒にいる時間が無駄にならなかった貴重な瞬間だぞこれは。

 

 

「あー帰りたくな〜」

 

「もっと遊んでたいね〜」

 

「あっわ、私は365日慰労会でも大丈夫ですよ……?」

 

「めちゃくちゃうちら頑張らせるじゃん。後藤って結構図々しいな……」

 

「ごめんうちの子甘やかされたらすぐ調子乗っちゃうタイプなんで。甘やかすのは家でやっとくんでこの子がこういう発言した時は基本スルーしてやってくだせえ」

 

「家で甘やかすんかい」

 

 そうしないとすぐ落ち込んで学校休もうとするんすよ。何ならとにかく理由を適当に考えてバイトも休もうとしてる時がある。

 

 

「まあいいや。んじゃ最後にトロフィー授与といきますか」

 

「トロフィー?」

 

 そう言うとさっさんは鞄の中からなんとトロフィーを取り出したのだ。……いかにもお手製お手軽工作なトロフィーを。

 紙コップに折り紙を貼り付け下から割り箸を刺し折り紙で作った土台の箱に繋げた代物。小学生とか幼稚園で作りそうなやつだねアレ。まさか高校生になって見るとは思ってなかった。

 

 

「ほい、結束バンドがんばったで賞記念トロフィーでーす。ど、うちの手作りだよ」

 

「さっつー……私……いいえ私達は必ずこのトロフィーをロッキンのステージで掲げるわ〜!!」

 

「それはちょっとやめて」

 

 もしロッキンに立ててもリョウさん辺りが全力で阻止しそう。

 

 

「え〜じゃあ校長室に飾ってもらおうかしら〜! これを卒業後にみんなで見に来たらきっとエモエモになるはずよ!」

 

「場違いすぎて新入生みんな困惑だろうよ」

 

「やっぱ返してもらっていい?」

 

「ダメよ! これはもう飾るって決めたんだから!」

 

 どこにとは言わない辺り俺とさっさんの嫌な予感は消えない事が決まりました。

 そして後藤さんはまだ終わりたくないのかずっともじもじしている。マジで365日慰労会をご所望するつもりだろうか。だとしたらさすがに勘弁してあげてほしい。ウチで小さなから揚げパーティーくらいなら頻繁にやったげるから。週二くらいで。

 

 カラオケ終了10分前の連絡が来たので各々帰る準備だけを済ませ、最後の挨拶となった。

 

 

「ではでは喜多ちゃん後藤さん、これからの活動も期待してるからよ〜!」

 

「絶対人気バンドになってねー!」

 

「清水はしっかり結束バンドをサポートするんだぞ〜」

 

「へいへい」

 

 言われんでも分かってますよ。粉骨砕身粉砕玉砕大喝采の全速前進DAの勢いくらいで頑張るつもりです。

 

 

「任せて〜! ひとりちゃん、みんなの期待に応えるわよ! まずはアルバム発売できるように頑張りましょ! いずれは目指せロッキンよ!」

 

「あっはい!」

 

 なんか最後一気に目標飛躍してなかった? いや高いとこ目指すのは良い事だけど。何ならそこ行けるまで俺も一生着いて行きますけど。

 

 

「あっ、それで近くに巨大スクリーンのあるカラオケ見つけたんですけど……次はそこで慰労会を……」

 

「あれ本気だったの!?」

 

「喜多さん、後藤さんが自分がちやほやされる機会をそう簡単に手放すと思ったら大間違いだぜ」

 

「優人君は誰目線なの」

 

 そりゃ決まってるだろ。あれだよあれ。あのぉ〜……あれだよ。その、えっとー…………あー、うん。あれ。

 

 

「しゃーない、後藤のために二次会でもやったるかー」

 

「いいね〜さんせ〜!」

 

「えっ!? ほ、ほんとに365日慰労会を……!?」

 

「そこまではせんて」

 

 さすが後藤さんの図々しさは世界一ィィィ!! 

 さっさんもだいぶ後藤さんの扱いになれてきたな。後藤検定6級くらいまでならあげてもいいか。

 

 

「さっさん、俺は後藤博士号で待ってるぜ」

 

「いきなり何言ってんの?」

 

 どうやら俺にさっつー検定は取れないらしい。普通にドライな目で見られた。

 

 

「なあ喜多、清水って時々アホなん?」

 

「そうよ」

 

 喜多さん??? 

 陽キャに冷たくされると陽キャでも陰キャでもないどっちつかずの俺は普通に傷付くんですが。普段騒がしい陽キャが自分を見てスンッてなった時の怖さは異常。やるじゃねえかさっさん、恐怖で俺を凍らせたのは時々謎の怒りを見せてくる結束バンドメンバー以来だ。中々にブルっと来たぜ。

 

 

「……出る前に花摘みに行ってくるわ」

 

「普通にトイレって言えばいいじゃん」

 

「自分の他に女子しかいないから一応気を遣ってみた俺の配慮返してくんない?」

 

 他の女子も全然気にしてないっぽい。今も平然と後藤さんに次行きたいとこある〜? とか聞いてるし後藤さんは固まってる。おい聞いてくれてんだから答えてさしあげろよ。

 何気に巨大スクリーンのあるカラオケがなかった事にされて微妙にショックでも受けてるんだろうか。軽い二次会程度なら適当にファミレスでいいと思うけど。

 

 とまあ、そういう事は女子に任せておいてトイレに行くために部屋を出る。

 一分程度で用を足し部屋に戻ろうとしたところで、ぱったりと目が合った。もちろん俺の正面にいる人とだ。

 

 

「あ」

 

「っ……!?」

 

 そう、我らのツンデレツインテール娘、通称ツツコさんである。じゃない大槻ヨヨコさんである。

 何でこんなとこにいるんだろ。というかヨヨさんが立ってる部屋って俺達がいた部屋じゃね。……え、まさか……。

 

 

「ヨヨさん……さすがに他の部屋を覗くのはロックで片付けられないんじゃ……」

 

「誰が変態覗き魔よ!」

 

 そこまでは言ってない。

 

 

「でもどうしてここに? もしかしてまたヒトカラで」

 

「あとでみんな来る予定だから!!!!」

 

 ヒトカラなんだね……。

 

 

「そうっすか。偶然ですけど会えて光栄でした。では俺は部屋に戻りますのでそこどいてもらっていいですか」

 

「なんで面倒な事起きそうだからってさっさと部屋に戻ろうとしてるのよ」

 

「いや俺達今プライベート満喫中なんで。これから二次会行くとこなんで。可愛がるのはまた今度してあげますから、ね?」

 

「私を邪魔虫扱いしないでくれる!? あと可愛がってもらった事なんて一度もないわよ!」

 

「そんな大きい声出すと後藤さん達にバレますよ」

 

「ぐっ……!」

 

 あー長時間陽キャ女子達に囲まれてたからかこの感じ落ち着く〜。

 多分俺は陰キャ系女子が一緒にいるとホッとするのかもしれない。絶対後藤さんのせいだな。

 

 

「まあそういう事なんで。ヨヨさんもほら、後でハッセ達も来るなら部屋で待ってた方がいいんじゃないですか?」

 

「(……隣よ……)」

 

「はい?」

 

 あまりにもボソッと言うもんだから店内BGMも相まってちゃんと聞こえなかった。

 ボーカルなのに声小さいよ。もっと張り上げてほら! 

 

 

「私の部屋は貴方達の隣なの!」

 

「わお」

 

 なんてこった。まさか隣でやかましく歌ってたのはヨヨさんだったのか。

 確かに思い返してみれば喜多さんがシデロスの曲を歌ってた時に隣の部屋がうるさくなったような気がする。

 

 もしやこのチワワ、自分達の曲が歌われてたのが嬉しくて隣に本人いますけどドッキリしようとしてたな? 

 気付く訳ねえだろどんな確率だと思ってんだほぼ奇跡だよ。いや実際奇跡起きてんだけどさ。

 

 

「……あ、そっか。立ち位置的に俺がここにいたらヨヨさん部屋入れないですもんね。どうぞどうぞ」

 

「……フンッ」

 

 間を開けるとヨヨさんは覗きなんてまるでしてなかったかのように自然と自分の部屋の前まで戻ってくる。

 

 

「……未確認ライオットの慰労会?」

 

 やっぱり覗いてたんじゃねえか。

 

 

「……まあ、ですね。同じクラスの子達が開いてくれまして。俺は後藤さんのお守り役として連れて来られましたけど」

 

「(何で優勝した私がヒトカラしてるのに結束バンドは慰労会なんてされてるのよ……!? こっちはそんな事してくれる人誰もいないのに……!)」

 

「?」

 

「……コホンッ、ま、まあ? 貴方達がそんな事をしている間も私達は来年のツアーに向けての準備で忙しいからどうも思わないけどっ」

 

 じゃあ何でメンバー全員でスタ練じゃなくてヒトカラなのってツッコミは野暮ですか、野暮ですよね、きっと他のみんな予定があっただけだよね。

 どうも思わないならわざわざ隣の部屋覗きに来ないよね。なんかこのままだとヨヨさんの面倒見てあげたくなっちゃうから危険だ。一刻も早く戻らないと。

 

 

「はあ。じゃあ俺部屋に戻るんで、練習とかツアーの準備頑張ってください」

 

「えっあ、ちょっ」

 

 ドアノブに手を伸ばしたところで思い出した。

 最後にヨヨさんの方へ振り返る。

 

 

「そういや直接会って言うの忘れてましたね」

 

「な、何をよ……」

 

「遅れましたが未確認ライオット優勝、おめでとうございました。めちゃくちゃかっこよかったです」

 

「……」

 

「では」

 

 言いたい事は言えたのでドアを開けようとすると、

 

 

「結束バンドもレーベルから声が掛かったんでしょ。教習所で貴方達のメンバーから聞いたわ」

 

「え?」

 

「……新曲とかアルバム出す時はちゃんと教えなさいよねっ。き、聴いてあげなくもないから……」

 

 ……ほんとこの人ときたら、どこまで王道のツンデレを発揮すれば気が済むんだろう。

 思わず笑みがこぼれる。

 

 

「そん時はちゃんとロインしますよ」

 

「っ……ふ、フンッ」

 

 

 ──

 

 

「遅かったじゃん清水。獲物でも大きかった?」

 

「女子だからってデリカシーの配慮はちゃんとしてくんない?」

 

「もしかして部屋の外で誰かと話してた? なんか優人君の影と女子の大きい声がしたんだけど」

 

「見知らぬ女子高生が数人で固まって喋ってたから通路通りづらかったんだよ」

 

「……な、なんかゆうくんから同類の匂いがするような……?」

 

「その嗅覚の鋭さは何なん?」

 

 





さっつー、鹿の糞とか平気で言うからまあワンチャン言わせても大丈夫かなって。


では今回新たに高評価を入れてくださった

☆10. みどりびさん、あさふじさん、vongolaさん、Saーがさん

☆9. 高田211さん、名無しのNさん、コーンスープモンスターさん、龍玉さん、ザラメ雪さん、イキョウさん、完全無欠のボトル野郎さん

いつも感想高評価お気に入り登録ここすきthank you!
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