再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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何気にこの幼メンを書き始めてから既に2年経ってるらしい。
時の流れって早いね。



132.旅は道連れ世は情け

 

 

「どうだった? 新曲のデモ」

 

「今回の曲も凄く良かったです! さすがリョウ先輩!」

 

 スターリーでテーブルを囲みながら話しているのはいつもの結束バンドメンバーと俺である。

 今日はリョウさんが新曲のデモを作ってきたからみんなでそれを聴いていたのだ。

 

 

「いやしかしあれですね。ほんとリョウさん音楽に関してだけは頼りになりますね。俺もこの新曲好きですわ」

 

「間の感想はいらないぞ優人よ」

 

 おっと失敬。

 

 

「ポップで明るいのに時々物悲しい感じがして、今までの中でもトップクラスに好きかも! 歌詞が楽しみだわ〜!」

 

「あっへへっ……」

 

 あのへへっは期待されてる嬉しさと後でプレッシャーにやられてもがき苦しむまでがセットのやつだ。俺には分かる。

 だって何回か監視してって泣きつかれた事あるもの。じゃないとこの前みたいに引きこもって骸骨化するから危険って訳。骸骨化って何。まあ今回は作曲じゃなくて作詞だし大丈夫だとは思うけど。

 

 

「ねえねえ」

 

 そんな時、ふと可愛らしい声を出したのは我らがマイラブリーエンジェル虹夏さんだった。

 

 

「そんなに気に入ったんならさ、喜多ちゃんが作詞してみれば? ほら、前やってみたいって言ってたじゃん」

 

「え、いいんですか?」

 

「!?」

 

 一人役割奪われた表情になってますけど大丈夫ですかね。ひとりだけに。

 

 

「優人今寒いこと考えた?」

 

「失敬な。心はいつもホットですよ俺ぁ」

 

 急に読心能力(サイコメトリー)使ってくるのやめて。普通に怖いから。

 俺とリョウさんが心理戦を繰り広げている中、話を持ち掛けられた喜多さんはここぞとばかりに目を輝かせていた。今度は心理掌握(メンタルアウト)かな。

 

 

「やる! やります! ぜひやらせてください!」

 

 普段作詞してるのが後藤さんだから多分真逆も真逆な方向性の歌詞ができそうだな。

 下手したら歌詞が書かれた紙からもうキラキラしてそう。大丈夫かな、いきなり真夏のジャンボリーとか言い出さないかな。喜多さんの事だから突然夏が始まった合図がしたとか言い出しかねないぞ。一応夏休みは終了したから夏はもう終わってんだけどね。

 

 そして案の定陰キャ代表後藤ひとり選手は俺に救いを求めてきた。

 

 

「ゆ、ゆうくん……わ、私の青春コンプレックスセンサーが異常なくらい警戒信号出してるよぉ……」

 

「……骨は拾ってやるからな」

 

「えっ……!?」

 

 だってキラキラ陽キャの書く作詞に後藤さんが耐えられるとは思えないもん。

 歌詞見た瞬間爆発するよきっと。普通に想像できちゃう。何ならそんな青春イベントこなしてこなかった俺も一緒に爆発する。死ぬなら一緒に死のうな。

 

 しかし、爆死の危険性と同時に一つの懸念点も浮かび上がってくる。

 

 

「ただ、ちゃんと歌詞が出来上がってくるならの話だけどな」

 

「……?」

 

「私、やってみせるわひとりちゃん!」

 

「えっ!? あっはい!」

 

 意気揚々と気合いを見せる喜多さんと何が何だかよく分からず返事をする後藤さん。何も噛み合ってねえなこの子ら。

 まあ、とりあえずは静観といこう。もちろんちゃんと書き上げてくる可能性だって全然あるんだ。だからまずはどういうテーマで来るのかも含めて見ものだな。

 

 

 ──

 

 

 一週間後。

 

 

「で、一週間考えたけど特に書くことなかったと」

 

「はい……」

 

 無駄に返事いいな。

 

 早いもので既に一週間が経過した。にも関わらず、喜多さんは歌詞を書き上げてくる事はなかった。

 個人的にこの結果はある意味想定内、あるいは少し想定外である。

 

 喜多さんほどの人ならいつもイソスタでやたらと無駄に文字数の多い投稿をしたりしてるし、色々遊びに行ったり友人と話したりでテーマや語彙力も豊富だと思ってたのだが案外そうでもなかったらしい。

 いや、それとこれとはまた話は別なのかもしれない。こと作詞するとなれば。

 

 作詞は一見簡単なように見えて思ったより難しかったりする。

 後藤さんが作詞をするから俺も色々調べた事があるが、王道でいくなら何を伝えたいのかはともかくテーマを大まかに決めてジャンルを絞るなどが一般的だという。

 

 例えばバラードのようなラブソング、夢を追いかけたり諦めないといった聴き手へのメッセージ性が強い応援ソング、ある一定層に刺さるような独自性のある歌詞、万人受けを狙った季節を象徴としたものなど、ざっと考えるだけでもこれだけ出てくる。

 だからこそ案外難しいのだ。世界観を広げやすいというのはそれだけでまとまりを悪くしてしまう。一曲の3分〜5分の中に自分が伝えたい思いをどれだけ分かりやすく凝縮して聴き手に伝えられるか、それに固執すると作詞は思い通りにいかなくなるのだ。

 

 そう考えると後藤さんって実は凄いのでは最近思い始めてきた。

 テーマはどうあれ刺さる人には刺さってるし喜多さんはイマイチ分かってないけど深いと思ってくれてるし、ある意味才能かもしれない。

 

 

「恋愛ソングが好きなので書こうとしたんですけど、誰かと付き合った経験もないから嘘っぽくなっちゃって……恋愛ドラマだけの情報だけじゃ厳しかったです……」

 

「へえ、意外だな。喜多さんなら付き合った経験普通にありそうだと思ってたわ」

 

「優人君私が軽い女だと思ってる?」

 

「いや思ってませんて……。ただ喜多さんくらい可愛かったら言い寄ってくる男子めっちゃ多そうだからってだけで……」

 

「……それなら今後もそんな男子から優人君が守ってくれないとね? 何せ結束バンドのボーカルとサポーターなんだし」

 

「えっ、あっ、うん……?」

 

 よく分からんけどこれ以上のお咎めはないっぽい。

 確かに女子に対して付き合った経験ありそうは聞き手によっちゃ失礼かもしれない。これは俺が軽率だった。反省だ。

 

 それに結束バンドが人気になれば恋愛沙汰のスキャンダルもあり得ない話ではないので、そこは俺がきちんとお守りせねば。

 虹夏さんに言い寄ろう男がいるなら即抹殺だ。人間如きが天使に言い寄るだなんて無礼も甚しい。後藤さんとリョウさんは……大丈夫かな。

 

 

「おーい、歌詞の話はどこ行ったのかなー」

 

「はっ、そうでした! それで私らしい歌詞をって思ったんですけどどれも歌にするまでじゃない気がして……ひとりちゃんに昔聞いたら世の中への不満とか書いてるって言ってたじゃない?」

 

「えっ、いや、はい!」

 

 そういや歌詞への理解を深めようと後藤さん家に泊まりに来た時聞いてたんだっけ。

 

 

「ね、年金制度や消滅可能性都市や少子高齢化の事とか……」

 

「深いわ〜」

 

「優人くん、あれ嘘だよね」

 

「さすが虹夏さん、よく分かりましたね」

 

 またしょーもない嘘ついてんなこのピンクちゃん。

 基本的に青春イベントや個人的に気に食わない学校での出来事を抽象的に書いてるだけでしょうが。変に規模を大きくして見栄を張るんじゃないよ。

 

 

「うぅ、創作って明確なテーマと考えがないと作れない気がして……私別に世の中に訴えたい事とか特にないんですよね……周りへの不満とか全然ないし……」

 

 後藤さんにクリティカルヒット!! 

 99999のダメージ!! 

 

 

「わっ私には書ききれないほどテーマがあるのに……不満の……」

 

 喜多さんにクリティカルヒット!! 

 99999のダメージ!! 

 

 

「優人くん、何でこの二人攻撃しあってんの?」

 

「正確には口撃ですね。どちらも殺傷力が高かった。これは相打ちとみていいでしょう。双方引き分けです」

 

「何で君は審判してんの?」

 

 分かりません。ノリです。

 

 しかし喜多さんがここまで作詞に苦戦するとはな。100%は無理だとしても一番くらいまでなら何とか書き上げてくるものだと思っていた。

 恋愛ソングに固執しすぎたとかかねぇ。何もそこまで張り詰めなくてもいいような気がするけど。経験がなくたって書ける人は書けるから、おそらく喜多さんが大真面目に考えすぎなんだろう。こういう時はもう少し頭を柔らかくする必要があるな。

 

 

「あ、あの私」

 

「なあ、喜多さ」

 

「おはよーございます!!」

 

 声をかけようとしたところで俺よりも遥かに大きい声にかき消される。

 スターリー内で俺達よりも元気のいいヤツなんて一人しかいない。

 

 

「あれ大山さん!? 今日シフトに入ってないよね!? どうしたの!?」

 

 最近入ってきた新人バイトの体育会系後輩女子、大山猫々である。

 

 

「はい! 買いたいギター見つけたんで先輩達に意見貰おうと思って来ました!」

 

 確かバイト初日にバンド始めたいって言ってたもんな。

 ようやく良い感じのギターでも見つけたか。

 

 言いながら彼女は大袈裟な動きをしながらスマホを出し俺達に見せてきた。

 

 

「色々探しまくってやっと通販で見つけたんです! ウチでも買える激安ギターを!!」

 

「2980円!?」

 

 まさかのにっきゅっぱであった。

 これ絶対にアカンやつですやん。激安は激安でも音悪くて作りも悪いやつだよそれ。

 

 

「これでウチもバンドマンとしての第一歩を」

 

「とりあえず楽器店行こっか」

 

「へ? でも通販で見つけ」

 

「いいから行くよ! 優人くん大山さん連れてきて!」

 

 後輩の登場で完全に流れが変わってしまった。

 喜多さんに声をかけるのは帰りにしよう。今は虹夏さんの命令が最優先だ。

 

 

「へいへい、ほら行くぞ猫々。とりあえずそのスマホ画面を閉じる事から再スタートだ」

 

「え〜優人先輩まで!?」

 

「悪いがこの世で最も優先されるべきものは虹夏さんの命令だ。いいから行くぞ」

 

「うぅ〜はぁーい……」

 

 やはり体育会系女子、先輩の言葉はほぼ絶対らしい。これはこれで扱いやすくて助かる。

 

 

「喜多ちゃんもぼっちちゃんもリョウも行くよ! 今はとにかく後輩のギターデビューを成功させるのが先決!」

 

「は、はいっ」

 

「「……」」

 

 明らかに腰重そうにしてるのが二人ほどいるな。

 多分外に行くのが嫌というよりかは猫々を避けたがってるのが大きいだろう。確かにこの子は基本やかましいけど慣れると普通に良い子だから接してて悪い気はしないぞ。めっちゃやかましいけど。

 

 

「このギターじゃダメなんですかー?」

 

「安すぎると後々面倒な事がたくさんあるからな。買うならもうちょっとしっかりした物じゃねえと愛着も持てないぞ。大丈夫だ、そこいらは先輩達がしっかり見繕ってくれるさ」

 

「ん〜……優人先輩がそこまで言ってくれるなら行きましょう!!!!」

 

 うむ、やはり素直な子は嫌いじゃないぞ。けどちょっと声が大きいかな。もう少し抑えようか。店長が何故か俺の方を睨んでくるから。

 

 

「あとそこ二人ぃ!! なんで一歩一歩があたし達の三分の一なのさ! もっと早く来る!」

 

 後藤さんとリョウさんだけ時間の流れが遅れてるのかな? 

 

 

 こうしてひょんな事から後輩のギター探しの旅が始まった。

 

 





このペースだと最終回は来年で確定っすね。

一応幼メン2周年迎えたんで良かったら高評価してってください


では、今回新たに高評価を入れてくださった

☆9 RLNrlNさん、はま0821さん、イキョウさん、完全無欠のボトル野郎さん、名無しのNさん、ザラメ雪さん

いつも感想高評価お気に入り登録ここすきthank you!
最終回までにお気に入り登録8000行きたいけどどうなるかねえ〜。
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