再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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今年の終わりまでもう一ヶ月ないってマジ?
一年早すぎんだろ……。



133.やりたい事を始める際の一番のハードルは初期費用の多さ

 

 

『大丈夫だ、そこいらは先輩達がしっかり見繕ってくれるさ』

 

 出発する前に俺が後輩の猫々にそう言ったのは、楽器に詳しいリョウさんとギターに詳しい後藤さんがいるから故の確証だった。

 そう、“だった”。過去形である。

 

 スターリーを出て本来なら楽器店の多い御茶ノ水に行く予定だったのだが、一応渋谷にも楽器店があるらしい事を知った陽キャ日本代表の二人が渋谷に行きたいと騒ぎ、帰りには108に寄りたいなどと言ったせいでものの見事に陰キャ日本代表の二人は知らない間にいなくなっていたのだ。

 実際に気付いたのは渋谷に着いてからだから時すでに遅し。例え電車で一本だろうが休日の電車、特に渋谷とかは普通に混雑していてはぐれやすい。

 

 そういう心配も込みで連絡しようとしたら先に後藤さんから話を聞いていた喜多さんが一言。

 

 

「なんか道に迷ったから帰るって二人から連絡が……」

 

「絶対迷わないでしょ! というか普通にスマホで合流できるじゃん!」

 

「リョウさんが一緒ならまあそこまで心配する必要もないか」

 

「そっち!? こっちはリョウとつるむとぼっちちゃんも大胆な事するようになってきて悪影響がないか心配してるのに!」

 

「そこは大丈夫です。俺がきっちり教育してるんで」

 

「教育してる割には勝手に消えたけどね」

 

 確かに……。

 知らない人と怪しい人には絶対着いて行くなとは何度も言ってるけど(そもそもそんな度胸後藤さんにはないが)、自分の仲間が実はクズベーシストだった場合の注意はしてないな。俺の教育不足か……。

 

 とりあえずロインだけでも送っとこう。

 

 

「も〜あの二人あてにしてたのにどうします!? 予定が全部狂いましたよ!」

 

「ギターに関してはあたしも人に教えるほど詳しくないしね〜」

 

「優人君は!?」

 

「俺もリョウさんに教えてもらってギター買ったから種類とかあんま詳しくはないな」

 

「ん〜まだ喜多ちゃんのが詳しいんじゃない?」

 

「えええ……?」

 

 その人ギターと間違えて多弦ベース買ってた人ですけど大丈夫ですかね。

 ほら、もう俺にヘルプのアイコンタクト送ってきてるもん。仕方ない、助けてやるか。俺もあまり詳しくないにせよ今の時代はネットで情報を調べるのが主流。詳しい人がいなくてもギターの事をスマホで調べながら決めていけばいいだろう。

 

 

「喜多さ」

 

「映え先輩教えてください!!」

 

「〜〜〜っ、先輩に任せて!!」

 

 この陽キャ、せっかく人が助け舟出そうとしたのに後輩に頼られるのが嬉しくて見栄張りやがったな? 

 しかもご丁寧にアイコンタクトはこちらに送ったまんまである。これじゃもう映え先輩じゃなくて見栄先輩だよ。

 

 そんなこんなで後藤さんとリョウさん抜きで俺達の不安増し増しギター探しツアーは再開された。

 喜多さん達のすぐ後ろを着いていくように歩きながらスマホを操作していると、

 

 

「ところで優人くん、ぼっちちゃんいないけど大丈夫なの? リョウといたとはいえ心配じゃない?」

 

「大丈夫です。ちゃんと一人で家に帰れるかってロインしたらもう帰りの電車乗ってるって来たんで」

 

「親じゃん」

 

「保護者ですよ」

 

「ほぼ親じゃん」

 

 ほぼ親かぁ……。

 言われてみれば美智代さん達にも後藤さんの事よろしくってお願いされてるから実質親代わりではあると思う。違うかな、違うかもしれない。

 

 

「てかぼっちちゃん家に帰るための電車には迷わないんだね」

 

「帰巣本能……ですかね……」

 

「習性かぁ」

 

 そゆこと。

 こんな事を話してるうちに見覚えのある看板が見えてきた。

 

 

「じゃあまずは定番のこのお店に入りましょ! 楽器の数はもちろん種類などの品揃えも豊富よ!」

 

 そう、後藤さんも俺も御茶ノ水でお世話になったイシバシ楽器店渋谷verである。

 ここならもう間違いない。望むものは全てここにある。何ならワンピースさえここにあると言ってもいい。ちなみに断言はするけど絶対ない。

 

 店内に入ると店舗は違っても内装や商品の並べ方に何となく法則があるのか、イシバシ楽器ならではの見覚えを感じる。

 うーん、この楽器関連の商品達に囲まれてる感覚、嫌いじゃない。むしろ内心ちょっとテンション上がってくる。

 

 

「うお〜〜〜! 圧巻〜!!」

 

「ちょっと大山さん声大きいって! 他のお客さんの迷惑になっちゃうでしょ!」

 

「〜〜〜っ!!」

 

「声の代わりに体を大きく動かして感動を表現してる……!? いやこれはこれで動きがうるさいな!? 優人くん止めて!」

 

「はいはい」

 

「わっ」

 

 虹夏さんの命令通り手を大きくバタバタさせている猫々の両手を閉じさせ片方の手を繋ぐ。

 名付けて手を繋げば自然とうるさい動きはできない作戦である。たまに後藤さんの家でいつも走り回ってるふーちゃんにやるやつだ。これが意外と効果あるんだよな。

 

 

「優人先輩、何で手繋いできたんですか?」

 

「自分の行動思い返そうな」

 

「?」

 

 自覚なしかこやつ。いよいよ小動物めいてきたな。

 虹夏さんからナイス〜とアイコンタクトも送られてきたから良しとしよう。

 

 

「値段気にしないなら大山さんは本当はどんなギターが欲しいの?」

 

「ん〜、派手でとにかく目立てるギターがいいです!!」

 

「派手?」

 

「はい! 見せた瞬間に意表をつけるような攻撃力に特化したギター……それさえあれば負けません!」

 

「何と戦おうとしてんの?」

 

 自分の身長……とですかね……。

 

 

「あ! こういうのですこういうの! 攻撃力抜群ですよこれ!! 映え先輩これ何てギターですか!?」

 

「えっ!?」

 

 攻撃力抜群のギターって何だよとツッコもうとしたらあら不思議。本当にそれっぽいギターがあった。

 ネックが二本あり見た目もゴツく、いかにも猫々が求めていた物であろうギターだ。つかこんなのどうやって弾くんだよ。

 

 

「えっと……ね、ネックが二本あるツインギター、ツインネックギターとも呼ばれる……三本以上も含めネックが複数の物は……」

 

「おぉ〜、映え先輩ウィキペディオみたいで凄いです!!」

 

 猫々さんや、あの映え先輩君の死角からスマホ操作してウィキからそのまま引用してるだけだぞ。

 ウィキペディオみたいじゃなくてまんまウィキペディオだよ。一文字も喜多さんの口から自発的な説明は出てないからね。

 

 

「これだとみんなギターに目が行って大山さん目立たないと思うけど……あと誰もバンド組んでくれなさそう」

 

「えっ!? ウチが目立てないのは困ります! ……あっ、じゃあこれはどうですか!? 他のギターより一回り大きいですけど!」

 

 続いて猫々が見つけたのは大きめのギター……ではなく、

 

 

「あっ、これはね、多弦ベースっていって通常のベースよりも弦が多いの。それで音域を増やす事もできるのよ」

 

「そうなんですか!」

 

「ちなみに36弦ベースというのもあるわ!」

 

「さすが映え先輩、物知り〜!!」

 

「ふふんっ、お勉強が足りないわね〜」

 

 得意気に話してるのは以前自分が間違って多弦ベースを買った事があるからか。

 悲しい事件だったね。

 

 

「優人くん、喜多ちゃん自分も間違えて買ってたのになんであんな熱弁できてるの」

 

「自分の知ってる知識ってひけらかしたくなるもんなんですよ。ましてや過去のミスから学びを得た人はね」

 

「なるほど。で、いつまで大山さんと手を繋いでんの?」

 

「え? だって虹夏さんが動きうるさいから止めろって」

 

「もう動き自体は大人しくなったから離して大丈夫だと思うけどー」

 

「……まあそれもそうですね」

 

 普通にふーちゃん感覚で繋いでたわ。よく考えたら猫々も体育会系とはいえ年頃の女の子なのに俺と手を繋いでも平気だったんだな。

 もしかして懐かれてる? 

 

 

「何なら虹夏さんも手繋いどきますか? なーんて」

 

「はいはいそのうちね。おっ、ぼっちちゃんの初代ギターあるじゃん」

 

 虹夏さんのスルースキルも最近高くなってきたなぁ。

 

 

「ほんとですか!? じゃあそれにしま……って50万!? ヒッピー先輩何者なんですか!?」

 

「初代のは親のだから後藤さんが払った訳じゃないよ。確か……あった。これが今後藤さんが使ってるギターだな。俺はこれの色違い使ってんだ」

 

「おお、こっちは6万! 安いですね!」

 

 いや高校生の身からすれば安くはないと思うけど。

 

 

「ヒッピー先輩と優人先輩とおそろになるならこれにしよっかなー! 店員さーん!」

 

 はっはっは、愛い奴め。

 どれ、先輩が一万くらいまでなら出してやろうではないか! 

 

 

「6万円になります〜!」

 

「……いや安くない!! 1万円しか持ってないです!」

 

 うん、この話はなかったことにしよう。

 さすがに5万の出費は大きすぎる。最近アコギ買ったから貯金にまだ余裕があるとはいえ無駄遣いは控えたいところなのよね。すまん後輩。

 

 ……というかこの子、いくら何でも無計画すぎないか? 

 ちゃんと予算とか計算してんのかな。陽キャだから後先考えてない可能性もあるかもしれないし、一応聞いておくか。

 

 

「猫々、ギターを始める際の予算とかは調べてきたのか?」

 

「いえ全然!」

 

「うむ、良い返事だ。よし、虹夏さん俺達も帰りましょう!」

 

「ごめん待ってあげてあたしが見に行こうって言った手前すぐに帰るのはさすがに申し訳なくなっちゃうから……!!」

 

「優人しぇんぱい〜!!」

 

「だあああああ分かったから店内で騒ぐなくっついてくんな庇護欲を刺激してくるなああああ!!」

 

 幸い今日は俺達の他に客はいなかったから注意されるような事はなかった。

 とりあえず一旦再確認しよう。

 

 

「先に言っとくけどな、俺達が使ってるギターもこの中では安い方だぞ」

 

「え!? そうなんですか!? ウチのお小遣い何年分だと……」

 

 見事に衝撃を受けている。うん、なんか新鮮な反応だな。

 つうかマジで何も調べてなかったんかい。

 

 

「あと知ってると思うけど、ギター以外にも必要な物とか結構あるからね……」

 

「まだあるんですか!?」

 

「ちゃんと始めるつもりならアンプ、シールドにチューナー、いずれはエフェクターもだから……ギター以外で初期費用は2万くらい必要かも……」

 

「初心者なら替えの弦とかストラップ、ギタースタンドとかケースもいるかな。この辺はリョウさんの受け売りだけど」

 

「うぐぁっ!!」

 

 お金の重さに後輩が崩れ落ちた瞬間である。

 初期費用って何を始めるにしても割とかかるよね。最初さえクリアすればあとは何とかなるけども。

 

 

「……えっと、一旦近くのカフェで休憩する?」

 

 この場にいるみんなが賛成した。

 

 

 





ぼっちって何気に承認欲求のために大量のエフェクター買ってきたり今回みたいに勝手に離脱したり謎の行動力高い時あるよね。

では、今回新たに高評価を入れてくださった

☆10. Xevenさん、城山雄馬さん、このみさん、幕張魂さん、フェリアルさん、ごとらたんさん、TAWARAさん、サイカさん、カクリツさん

☆9. 蟹熊さん、ザラメ雪さん、イキョウさん、ルドルフ主任さん、遊技林さん、よこやたさん、名無しのNさん、春菌さん、完全無欠のボトル野郎さん

いつも感想高評価お気に入り登録ここすきthank you!
多分次の更新が今年最後の更新になるかも?
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