再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
ぼざろ一番くじは天使のフィギュアと運良くラストワン賞のフィギュアをゲットできたからアドでした。
父さん、母さん、今日はどんな夜をお過ごしでしょうか。
わたくしは今一つ年上の先輩の家にいます。これだけ聞くと高校生だから男同士でバカみたいなそんな青春もあるのだろうと思われるかもしれませんが、驚かないで聞いてください。
女子です。一つ年上の先輩の女の子です。しかも性格良し家事炊事良し面倒見良し容姿良し天使。欠点なんて見当たらず、もしあったとしてもそれさえ魅力になるような人です。
こんな素晴らしい方の家に清水優人はいるのです。気分的には平民風情が王城で王族に謁見しているようなものです。
そしてまた驚かないでください。なんと平民平凡どこにでもいる普通の高校生清水優人はその先輩の家に一泊する事になりました。
帰ろうと思ったら止められて半ば強制的に連れ込まれたのです。もうドキがムネムネです。じゃない胸がドキドキです。
父さん、母さん、どうか安心してください。あなた達の息子は至って健全な男子高校生。素敵な先輩と一夜を共にするからといって何かがある訳でもありません。そんな度胸もありません。
だから通報だけはしないでください。息子は無罪を主張します。
それに何より、その家には先輩の姉がいるのです。ツンデレシスコン金髪ヤンキーです。もうこれ以上ないくらいのストッパー適任者なので大丈夫でしょう。
あとはついでに後藤さんもいます。それだけです。では、明日には帰ります。
「めちゃくちゃスマホぽちぽちしてたけど何してんの優人くん?」
「一応親に今日は泊まって帰るってロインしてました」
「凄い長文になってそう……」
ざっと600字程度長文でもありませんて。
多分後藤さんの生態レポートの方がもっと文字数ある。比べるとこがまずおかしいか。
「まあいいや。さ、入って入って!」
「お、お邪魔します……」
「後藤さん、ここはあの虹夏さんの家なんだぞ。まずは礼拝してからにしよう。賛歌とか歌った方がいいかも」
「うちを教会扱いすな! いいから入りなって、急だから手厚いおもてなしはできないけど」
「手持ちが5万しかないですがそれで足りますかね」
「何払おうとしてんの!?」
「え、宿泊料ですけど……」
「それならもっと良いホテル泊まれるでしょ! もうっそういうのいいから! さっきから玄関にいたまま一歩も動けてないじゃん!」
優しい優しい虹夏さんのお言葉に甘えてとうとうお邪魔させていただく事になった俺達。
ここからは試練の始まりだぞ清水優人。失礼だけは絶対にしちゃダメだからなよ〜〜く後藤さんを監視しておけよ。
「ここがトイレで〜、こっちがお風呂ね。んでここがねー」
何だろう、女子の家で先輩から事細かに家の説明をされてるこの状況。非常にむず痒く感じてしまう俺は女の子慣れしてないという事なのかな。
いや、きっと虹夏さん家だからだな、うん。後藤さん家だと何とも思わないもん。ほぼ自宅だもん。
「うるせえぞ虹夏。夜中に何一人で騒いでんだ」
っと、さっそくもう一人の家主とエンカウントしました。
いつもの見慣れた服装とは違って猫のイラストがプリントされているパジャマシャツを着て、可愛らしいうさぎのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめながらポテチを食べつつテレビを垂れ流していたツンデレシスコン金髪キュートヤンキー、虹夏さんの姉の店長がこちらに気付いて固まっている。
ふむふむ、やっぱ店長は可愛いもの好きと。これなら後藤さんを気に入っているのも道理という訳だ。
家だと大人っぽさ皆無である。まあこれが仕事終わりの社会人にとっては普通なんだろう。家の中でくらいスイッチは完全にオフにしたいのかもしれない。
「ぼっ!?」
「ひっ!?」
「なっ何の真似だ!?」
硬化が解けた店長はあからさまに後藤さんを見て驚き、それを見た後藤さんはそういや家には当然店長もいるんだったという驚きを見せた上で顔をジャージで即座に隠し出した。
何してんだろうこの二人。エンカウントした途端こんな面白空間出来上がるとか才能だよ。二人で海外のオーディション番組出な。
「優人くん、ぼっちちゃんは何してんの」
「これは確か隠キャ流隠れ身の術ですね。チャックがある上着なら大体の物で代用できます。チャクラを練らずに使用できるのが強みですね」
「顔しか隠れてないし頭普通に出てるけど」
「そこが弱みですかね」
「弱みが致命的すぎるでしょ」
虹夏さんのツッコミは今日も絶好調だな。
「な、何でぼっちちゃんがこの家にいるんだよ?」
「店長、一応俺もいますよ。お邪魔します」
「ああ、いたのかお前」
あらやだ、店長ったら後藤さんにばかり目がいってて俺の事は眼中になかったらしいわ。ガラスのハートにヒビ入っちゃった。
もうこの際その辺の壁と同化しとこうかな。みんなの生活を見守るだけの壁になりたい。
「実はかくかくしかじかなんだよ。それでどっかのホテルとかネカフェ行くよりもうちに泊めた方がいいかなって二人を連れてきた訳」
「なるほどな、つまり虹夏がとうとう男連れ込んできた訳か。よし、ぼっちちゃんは私に任せとけ」
「………………お・ね・え・ちゃ・ん?」
「オーケー、私が何か適当に飯作るから待ってろ。あと頼むからさっきの言葉は忘れるんだ」
俺の気のせいじゃなかったらあの店長があんなにも顔青ざめてるとこ見たのは初めてかもしれない。
何なら俺も今ちょっと怖くて虹夏さんの顔見れないもん。ぶち殺し確定みたいな言い方だったし。後藤さんだけが隠れ身の術で何も見えてないから右往左往してるだけなの何。地味にちょっと役に立ってんじゃねえかよそれ。
「まったくもう……普段料理しないくせにこういう時だけ調子いいんだから……。じゃあ作るの待ってる間あっちで待っとっか」
「あっちとは?」
「あたしの部屋」
「……俺店長の料理心配なんで作るの手伝っ」
「いいから来なさい」
「ウィッス」
どうやら今の虹夏さんには逆らわない方がよさそうだ。
後藤さんいるのがまだ唯一の救いかな。だって虹夏さんの部屋とか聖域みたいなもんというか聖域だろ。平凡男子が入っていい領域じゃないもの絶対。中級程度の悪霊なら一瞬で除霊できるよ絶対。
当然そんな事は口に出す勇気がない俺+後藤さんは言いなりのまま着いて行った。
そして。
「じゃーん、ここがあたしの部屋でーす!」
「うおっまぶしっ」
「そんな部屋明るくしてないけど!?」
虹夏さんにとってはこれが普通の明るさなのか……俺にはもう黄金に輝いてるようにしか見えないのに。
という冗談はもう置いとこう。しつこいノリは飽きられてしまうのでね。
「何ていうか……思ったより虹夏さんっぽくない部屋ですね」
「あ、分かる?」
「あっえっそうなんですか……?」
想像ではもっと虹夏さんカラーの黄色いグッズがあったり電子ドラムとかあると思ってた。いやまあドラムはすぐ下行けば本物あるし自分カラーの物とかあるのは小学生くらいまでか。
というより一番は虹夏さんが買わなそうな物が結構あったりするのが気になる。
「ちなみに男子を部屋に入れたのは初めてだったりぃ〜」
「……何故それを俺に言うんです?」
「なんでだろうねっ?」
質問を質問で返すんじゃない。
けどいたずらっぽい微笑みがひっじょーに可愛いのでぼくは許します!!
そしていつの間にか隠れ身の術を解いていた後藤さんは虹夏さんっぽい物を見つけようと部屋を見渡していた。
自分もメンバーだからそういうの分かってますアピールでもしたいのだろうか。
「にっ虹夏ちゃんこんな服も着るんですね……」
後藤さんがそう差したのは私服がずらりと並べられているハンガーラックだ。
まず俺が気になったのはそこである。似合わないなんて事は絶対ないだろうけど、外で虹夏さんが着ているとこを見たことないようなダウナー系や古着がたくさんあった。
むしろ虹夏さんのというより、
「それリョウの」
「えっ」
ですよねー。
見る限り虹夏さんの服よりリョウさんのっぽい服ばかりあるんだが。どういう事だよ。
「あっえと……虹夏ちゃんこんなマニアックなマンガも」
「それもリョウの」
「えっあぇっ……?」
後藤さんの脳内がクエスチョンマークでいっぱいになってきたようだ。
無理もない。俺もハテナが無限に出てくるからね。ということはもう他の物も大体見当がつく。
「じゃ、じゃあこれはさすがに」
「全部リョウの!」
「あぅ……ゆ、ゆうくん……私まだ虹夏ちゃんのこと分かってあげられてないのかも……」
「気にすんな。後藤さんにはまだ早かっただけだ」
「えっ……!?」
大丈夫、後藤さんは基本肝心な時にしか役に立たないって知ってるから。それ以外は大体ポンコツだって熟知してるから。
「というかリョウさんのばっかりですけど、虹夏さんのも当然あるんですよね?」
「一応ねー。あたしのスペースはここだけです」
「の、乗っ取られてる……!?」
そう言った虹夏さんはベッドに座った。
つまりベッドとその上に置いてあるぬいぐるみだけが虹夏さんの物で、それ以外はリョウさんが置いてったもしくは買った物でスペースを埋め尽くされているんだろう。
いや彼氏色に染められてる女子部屋かよ。
少しずつ自分の私物を増やしてって将来的に住もうとしてない? 占領されてんじゃん、リョウだけに。
「いっそリョウさんの捨てます?」
「うーん、捨てるくらいならエグカリで売った方が借金返ってくるしまだマシかなーって。まあさすがに可哀想だからやんないけどね」
そういう優しさに漬け込んで私物増やしてるんですよあの人。虹夏さん何だかんだリョウさんに甘いとこあるからね。チョコラテ並に。
「あっ写真……」
「そこは虹夏ヒストリーだよ〜」
「な、に……!?」
虹夏ヒストリーだと!? それはつまり小さい頃の虹夏さんが見れるって事ですかい!?
こんな貴重な機会は中々ないぞ清水優人。しかと目に焼き付けて一生もんの記憶のするんだあ!!
「こ、これ店長ですか……? 若い……」
「それは高校時代のお姉ちゃんだね。髪も短いでしょ〜?」
「……あれ、なんかどの写真の虹夏さんも顔ムスッとしてません? いや全部可愛いんですけど」
ついでに店長は常に不機嫌そうな顔してる。だいぶ反抗期って感じだ。
この時なら俺とそんなに年齢変わらないだろうに。いやむしろ反抗期的なものがまったくない俺が珍しいのか? 小さい頃から家事炊事とかして母さんの頑張りも理解できて、疲れながら仕事から帰ってくる父さんの苦労も見てきたから反発心は全然ないんだよなあ。……いや反抗期来てないのは後藤さんも同じか。よく分からん。
「あー、お姉ちゃんこの頃は今以上につんけんしててバンドばっかだったんだよ。それで全然あたしに構ってくれなくてさ、だから昔はあたしバンド大嫌いだったんだよね〜」
そういえば初ライブの打ち上げ時もそんなことを言ってたっけか。
「よくアンプの音量MAXにしてお姉ちゃんビビらせてたなー」
えげつねえ事してんな昔の虹夏さん。まあ推定年齢五歳くらいならそんなこともするか。
五歳ならふーちゃんとほぼ一緒か。そりゃわんぱくな訳だ。
そこでふと一枚の写真が目に入った。
他の写真と同様涙目で膨れっ面の虹夏さん、意地でもカメラ目線を寄越さない反抗期真っ最中の店長。おそらくケンカ中で仕方なく仲直りした時に撮った写真だろう。そして、その写真には二人の肩に手を置き困りながらもカメラに笑顔を向けている女性がいた。
一目で分かる。この人は虹夏さんと店長の母親だ。
「虹夏さん、この人って」
「うん、あたしのお母さんだよ。へへっ綺麗でしょー? 今でも自慢のお母さんなんだ〜」
「あっこの人が……」
見れば他の写真にもその人は写っていて、どの写真でも笑顔だった。
多分いつも笑っていて、優しくて、どれだけ反抗期の店長に邪険にされようとも笑顔で包み込んでくれるような、そんな器の大きい人だったんだろうと写真からでも見て取れた。
初ライブの打ち上げの時、虹夏さんから小さい頃に母親が亡くなったとだけ聞いていた。
それがきっかけで姉妹の関係は元に戻り、店長がライブハウスを始め虹夏さんがバンドを人気にしたい夢の始まりでもあると。
ある意味では、全ての原点なのかもしれない。
そうか、この人が……。
「どしたの優人くん?」
疑問符を浮かべながらもこちらに微笑みかけてくる虹夏さんの表情は、どこか写真の女性と似ている気がした。
寂しい顔もせず亡くなった母の事を自慢気に話す虹夏さんを見てれば分かる。彼女はもうとっくの昔に乗り越えて前に進んでいる。この家で、姉と共に支え合いながら。
正直、こんな小さい時に親を亡くしてしまったらと考えるだけでも怖い。俺の今の想像なんてきっと遥かに超えていて暗闇のどん底に落とされるような気分なのかもしれない。
立ち直れない可能性だって大いにある。家に閉じこもってしまっても無理はないとすら思う。そんな経験を彼女達は子供の頃にしていた。
それでも立ち直り乗り越えられたのは自分の力だけではなく姉妹がいたからなんだろう。今でも時にはぶつかる事だってあるけれど、最後には二人で一緒にいるという事はきっと二人の間にちゃんと確固たる家族の絆があるからだ。
二人の心は俺なんかよりもずっと強い。こんな強い人に僅かでも惻隠の情を抱くのはあまりにも失礼だろう。
「……いえ、とても優しそうな人だなと思っただけです」
「うんっ、すっごく優しいお母さんだよ。いっつも笑顔でね、昔は毎日リボンで髪結ってもらってたの」
なるほど、虹夏さんがいつもサイドテールなのはそれが理由でもあったのか。
「そういえば昔お姉ちゃんにも結んでもらった事があるんだけど、めちゃくちゃ不器用で髪ぐちゃぐちゃになったし、リボンもちゃんとしたやつじゃなくてお菓子の箱についてたリボンだったんだよー! ひどいよねー!」
「……まさかそのリボンっていつも付けてる赤い水玉模様だったりします?」
「お、ご明察〜ってえっ!? 急に何泣き出してんの優人くん!? 涙が滝みたいに噴き出してるけど!?」
「ぶぇあぁっ!! ぎ、ぎにじないでぐだじゃい! じまいのがんげいにがっでに涙があふれでぐるだでれすがらぁ〜!」
「なんて?」
おい何だよこの姉妹てぇてぇすぎやしませんこと?
姉の不器用な気遣いもそれを受け取って今でも大事にしてる妹の関係性に乾杯。CLANNADやヴァイオレット・エヴァーガーデン然りオタクは家族の絆に弱いのです。
ちくしょう、店長やっぱドが付くほどのツンデレシスコンじゃねえか。ちゃんと料理作れてんだろうな!? どんだけ不味くても絶対完食してやるんだからね!!
「は、ははっ、わ、私はふたりからカースト最下位扱いされてるのに……ゆうくんにもジミヘンにも負けてるし……」
そしてここに十歳差の妹から下に見られてる姉が悲しい笑顔を浮かべていた。
同じくらいの歳の差姉妹なのにどうしてこんなにも違うんだろう。おかしいね、ぼっちゃん。
「相変わらず二人は情緒がおかしいね〜」
「ちょっと待ってください後藤さんと一緒にされるのは勘弁です! この子は俺よりもう一段階上なんですから!」
「え!?」
「いや最近はもうほぼ一緒だよ」
「え!?」
え!?
ここで何とか伊地知母の事に少しでも触れておきたかったので入れました。
個人の解釈も多少入ってるからそこは許してヒヤシンス。まあ最終回も近くなってきてるからここいらで主人公の決意を再度確かめるための儀式と思ってくれればなと。
では、今回新たに高評価を入れてくださった
☆10. Rodríguezさん
☆9. Teru9さん、Winter0217さん、イキョウさん、ザラメ雪さん、夢見鳥さん、完全無欠のボトル野郎さん
いつも感想高評価お気に入り登録ここすきthank you!
ついでにハーメルンで小説書き始めてから今月で10年経ってたらしい。時の流れって怖い。