再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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気付いたらもう一月終わってた。



137.友達の家に泊まりに行くとどういう訳か必ず徹夜で遊ぶ流れになるも最終的に全員寝落ちする

 

 

「あ、そんな事よりせっかくだからジャケット考えるの手伝ってくれない?」

 

「これまたいきなりハードル高そうなサポート依頼ですね」

 

 まさか前回の流れぶった斬ってくるとは思わなかった。

 いや別に引っ張るような内容でも全然なかったけども。

 

 

「ウッ……わ、私にそんなプレッシャーの高いお手伝いはできないぃ……」

 

「普通作詞の方がもっとプレッシャー高いと思うのは気のせいか?」

 

「優人くん、それ言っちゃうと今後の活動に支障きたすからストップね」

 

 おっと、何だかんだ今でも作詞を続けられているという地味に凄い事をやってのけてる後藤さんが一瞬で使い物にならなくなるとこだった。

 三人でテーブルを囲みつつ、虹夏さんはスケッチブックとノートパソコンを取り出して、

 

 

「いくつか案は考えたんだけどさぁ」

 

「うわうまっ」

 

「こ、これじゃダメなんですか……?」

 

 そこに描かれているのは雨の日に空を見上げながら開いた傘を持つ女子高生の後ろ姿。

 ほんのりと暗いイメージが印象深いと思うのは後藤さんの書く歌詞が大体暗めのやつだからジャケットにも影響されているのだろうか。だとしたら下手するとこの先一生曲が出るたびにジャケット暗いのしか出せなさそうだけど大丈夫かな。大丈夫じゃないね。

 

 

「うーん、なんかピンと来なくてね〜。結束バンドの初めてのジャケットだし、やっぱり満足のいくもの作りたいじゃん? だから二人の力も参考程度に貸してほしいんだよね」

 

「なるほど、そういう事であれば微力ながら助力させてもらいます」

 

「あ、はい……」

 

 イエスマン後藤も勇気振り絞って頑張るそうだ。振り絞りすぎてカラッカラにならない事を祈ろう。

 ジャケットねぇ……。

 

 

「一般的なのはやっぱりアーティストのメンバーが写ってたりする写真とかですよね。インディーズの場合だと誰かが描いた絵とか風景写真を加工したやつとか」

 

「そうそう、一番多いのはメンバーの顔アップとかねー」

 

「あとはそのバンドやアーティスト特有のマスコットキャラクターも多いですよね。結束バンドでいえば……ああ、そういやけつばんちゃんがいたか」

 

「あんな結束バンドに首吊られて死にかけてるキャラクターを最初のジャケットに採用できる訳ないでしょ」

 

「ですねぇ」

 

 ごもっともすぎる言い分であった。

 ……あれ? でもライブ審査の時にけつばんちゃんのステッカー作ってきてませんでしたっけ? あの時俺のスマホにけつばんステッカー貼った張本人ですよね? 若干気に入ってる節ありますよね? 

 

 

「うーん、やっぱ王道の写真……でもいいのはいいんだけど……けどなぁ……」

 

「ど、どうかしたんですか?」

 

「写真だとさ、ほら……喜多ちゃんがうるさそうじゃん?」

 

「……」

 

 後藤さん、沈黙は肯定だぞ。

 俺も容易に想像できるけども。一人だけ気合い入れすぎて多分メンバーの中で一番時間かかりそうな感じしてそうだけども。

 

 

「かといって他に良い案ある訳でもないもんね〜」

 

「最初のイラストのやつ、俺は結構好きなんですけどねぇ」

 

「……ほんと?」

 

「え? いや、まあ、はい……ただここにもう少し何か欲しいなとは思いますけど……」

 

「そこなんだよね〜〜〜」

 

 いまいちピンと来ていないのはまさにそういう事なんだろう。

 実際俺もこのイラストは良いと思うのだが……そこ止まりなのだ。良いは良いけど最初の作品として出すほどの物かと言われればすぐに首を縦に振ることができない。

 

 イラストだけを見てこれは結束バンドのジャケットだと直感的に思えないような感覚がある。虹夏さんも多分そう思っているから決定打にならないんだ。

 つまりは何かワンポイントというか、こう……結束バンド()()()と思うものが欲しい。ジャケットを見て結束バンドを連想できそうな何か。……いや難しいな。クリエイターって凄えや。

 

 俺と虹夏さんがうんうん唸っていると、おずおずと後藤さんが小さく手を上げた。

 

 

「あ、あの……私も考えてみたんですけど……」

 

「おっ、どんなのどんなのっ?」

 

「あっえっと……画像編集ソフト開いてもらってもいいですか……?」

 

「おっけー!」

 

 肝心な時しか役に立たないで有名な後藤さんが自ら動いたって事はもしかするともしかするかもしれない。

 元々の思考回路が常人じゃないのできっと俺と虹夏さんじゃ考えもしないような妙案を出してくる可能性もある……あるよね? 

 

 そのまま後藤さんは虹夏さんに指示を出しながらジャケットのイメージを完成させていく。

 

 

「ライブ中のみんなの写真を切り取って……あっ私はここに貼り付けてください……。あとは宇宙のフリー画像をバックに……」

 

「ふんふん」

 

「メンバーの切り抜き写真を他の背景に合成させるのも王道っちゃ王道か」

 

「そ、それともう一つの案は背景を稲妻にして……あっ私が保存してる写真を送るので、それを前面に出してもらえれば」

 

「うんうん」

 

「……」

 

 数分後、後藤さんの指示通りに虹夏さんがジャケットのイメージ図を二つ完成させた。

 のだが。

 

 

「さ、最初のはビッグバンによって宇宙ができたように、凄いバンドが爆誕するぞって邦ロック界に衝撃を与える意味を込めたもので」

 

「う、ん……?」

 

「二つ目が不老不死の意味を持つウロボロスに無限大マークの形をさせてバンドの永遠を願い、バックに稲妻を置くことで邦ロック界にこれから衝撃が走る事を示唆するみたいな……」

 

「後藤さんこれくっそダsむぐぅ」

 

「真実は時に人を傷付けるんだよ優人くんッ!」

 

 思わず脊髄反射で出そうになった言葉が虹夏さんの手によって塞がれた。

 いやでもこれは言ってあげないとむしろ可哀想じゃない? 将来子供ができる未来が来たとしても後藤さんだけには子供の服買わせちゃいけないレベルでしょアレ。

 

 ジャケットもそうだけど彼女の言葉からもうダサさの規模が違いすぎる。どんだけ邦ロック界に衝撃与えようとしてんだよ。こんなの世に出されたら耐えられないよ邦ロック界。むしろ一歩引いて道譲られるよこれ。

 俺が言いかけた言葉の意味が伝わらず後藤さんは小首を傾げている。マジで自分のセンスを分かってないのか……。

 

 

「え、えっとぉ……なんか小学生男子のエプロンみたいなデザインだねっ」

 

 虹夏さん、それお世辞にもなってないですよ。普通に遠回しでダサいって言っちゃってますよ。

 何ならストレートで言われるより気を遣われてる分ダメージでかいやつです。

 

 

「うへへ……ありがとうございます……」

 

「ほ、褒められてると思っている、だと……!?」

 

「ぼっちちゃん変なとこでプラスに捉えるからなぁ」

 

 修学旅行で金色の謎の剣を買っちゃうタイプの後藤さんに虹夏さんがフォローを入れつつ、しかしジャケットにするにはまだ及ばないと柔らかめの説得をして事なきを得た。

 肝心な時しか役に立たない彼女は肝心な時じゃなければむしろマイナス方面に働いてしまうのであった。後藤さんのセンスはこれから少しずつ矯正させていこう。

 

 

「でもあたしの案、ぼっちちゃんのに比べて結束バンド感足りないかもなぁ」

 

「それは俺もちょっと思ってました。やっぱり結束バンド要素はどこかに欲しいかもですね」

 

「せめてメンバーの色をもっと出したいんだけどなー」

 

「あえてメンバーの写真じゃなくて似顔絵のイラストを描いてみるとかどうですかね?」

 

「確かに似顔絵のジャケットもよく見るねぇ」

 

「あっだ、だったら私が描いてみますっ……」

 

 え? 後藤さんが? 

 あれ、確か後藤さんの画力って人様に見せていい代物だったっけ? 

 

 

「ここに虹夏ちゃんで、これが喜多ちゃんです……」

 

「誰がどれ?」

 

「ものの一分で特級呪物できてんじゃん」

 

 いつかのノルマチケットを売りに行った時を思い出させる悍ましいイラストが目の前にあった。

 誰が誰だか判別もできない黒だけで描かれた似顔絵。これ多分見たら数日後に不幸になるタイプの呪いの絵だろ。ホラゲーで見たことあるぞこういうの。

 

 

「だ、ダメですかね……」

 

「ダメというか、ねえ……?」

 

「ジャケット見た人全員にSAN値チェックさせるのを義務化しないと厳しいかと思われます」

 

 ただしプレイヤーは全員強制的に発狂するものとする。ひと目見たら終わりだ。

 ちくしょう、なんでこの子は人間よりもクトゥルフ系統の神話生物達との方が相性良いんだ。異形の者と普通に仲良くできそう。

 

 そんな何の生産性もない事を思っていると部屋の扉が開かれた。

 入ってきたのは金髪ヤンキーこと店長だ。そういや晩ご飯作ってたんだっけ。

 

 

「飯できたぞーって、何してんだ?」

 

「ジャケットのことで相談中なんだけどまとまってないのが現状かなー。あたし達らしさが足りない〜って思ってるとこ」

 

「せっかく泊まりに来てんのに遊びもせず虹夏の役割に巻き込まれてんのか。ほら食え、まずは食べて栄養補給した方が頭も回るぞ」

 

「むぅーそんな言い方しなくてもいいじゃーん! けどいただきますっ」

 

 俺もうこの姉妹のやり取り一生見てたい。壁になって生活見守り隊に入隊したらダメですかね? ダメですか、そうですか。

 

 

「……ウッ、にがっ……どうやったらオムライスをまずくできるのさ……」

 

「いやほら……気付いたら鶏肉が勝手に黒くなってたんだよ……私は悪くねえ」

 

「なるほど、バリガリ食感でケチャップガン無視の苦味しかないのは無駄に大きく切られた鶏肉が焦げたって事か。まあ生焼きじゃないだけマシかな。マイナス100点」

 

「苦い……あっいや、お、おぉお美味しいです……」

 

「お前ら容赦ねえな……」

 

 まだ優しめに言った方だけどね。

 鶏肉食べてるのにコーン菓子食べてるのかと思ったもん。多分ろくにレシピも見ずに雰囲気だけで作ったなこの人。ただ指に絆創膏めっちゃ巻いてるから頑張りは見える。よってプラス100点で0点に昇格です。もっと頑張りましょう。

 

 

「……仕方ねえ、名誉挽回と言っちゃ何だがお前らの相談に乗ってやる。それで晩飯の事はチャラな」

 

「勝手に名誉捨てて勝手に挽回しようとしてる……」

 

 いやほら、一応こういうのにおいてはありがたい助っ人だから受け入れてあげましょうぜ。

 言うやいなや店長はスケッチブックに描かれてるイラストを捲りながら見始めた。

 

 

「なんだ、簡単じゃん」

 

「え?」

 

「ったく、難しく考えすぎなんだよお前らは。ましてや最初のジャケットなんて複雑にするだけ無駄。誰が見ても分かるくらいシンプルでいいんだよ。そっちの方が新規にも親しみやすいって訳。……んだこの呪いの絵は」

 

「三秒以上見たら呪われます」

 

 もの凄い勢いで店長がスケッチブックを閉じた。

 もしかしてこの姉妹揃いも揃ってホラー耐性ないのか。今度店長にホラー系のドッキリしてみるのもありだな。……いや絶対殺されるからやめとこう。

 

 こほんっと一つ咳払いをしてから店長は最初のページを開く。

 

 

「……とにかくお前らっぽさがあればいいんだろ? だったら最初の案のやつにこうしてやれば…………ほれ、どうよ。お前らのモチーフが降ってる感じ」

 

「お〜! 凄い! かわいい!」

 

「……なるほど、確かにこれなら結束バンド感が一気に増すな」

 

 雨空を見上げる少女。

 そのイラストに店長が書き足したのは至って簡単なものだった。

 

 あるいはリボン、あるいはスマホ、あるいはハート、あるいは吹き出し、あるいは三角マーク、あるいはトゥイッターの拡散アイコン。

 どれも結束バンドのメンバーを連想できそうなシンプルだけど可愛くて分かりやすい記号ばかりだった。

 

 

「ある意味ジャケットってのは自由で何でもありなんだ。だから空から降ってくるのが雨や雪だけなんて固定観念はいらねえ。こういうアイコンを降らせる事で暗いイメージだけじゃないって印象も狙えるし、結束バンドを知ってるファンからしたら小ネタが理解できて楽しめるってのもある。柔軟に考えた上である種適当ってのもジャケットには許されるんだよ」

 

「凄い……ほんとに名誉挽回しちゃった……」

 

「さすが店長、俺が尊敬する大人なだけあるぜ」

 

「あっあの、私の要素ってどれなんでしょうか……?」

 

「あん? ぼっちちゃんはハートに決まってんだろ」

 

「あっはい。な、なるほど……」

 

 これ多分後藤さんは承認欲求モンスターだからSNSでのいいねくれって意味のハートだと思って納得してるんだろうけど、おそらく店長は普通に後藤さんのことお気に入りで可愛いと思ってるからハートにしてるのバレとるよ……。

 ちなみにリボンと三角のアイコンが虹夏さん、住居と拡散アイコンと吹き出しが喜多さんだと思われる。

 

 そして、

 

 

「じゃあやっぱりこの生々しい万札アイコンは……」

 

「それは山田」

 

 でぇすよね〜。

 

 

 とまあ、まさかの店長のおかげでジャケット問題はスピード解決。

 激苦オムライスも何とか完食したところで次の問題がやってきた。

 

 そう、つまりは時間ができたのだ。

 普通なら良い子は寝る時間帯なのだが、高校生のお泊まり会というのはアドレナリンでも出ているのか何故か相場では夜更かしが鉄則らしい。喜多さんが後藤さん家に泊まりに来た時参照。

 

 故に。

 

 

「よぉし、案も固まったことだし朝までゲームしようぜーい!」

 

「あっはい」

 

 提案者がまさかの虹夏さんだった件。

 いやまあ青春真っ盛りの元気あり余ってる現役高校生が日付変わった程度で寝るなんて事は普通ないんだろうけども。

 

 しかし待ってほしい。日付は変わったが元はといえば今日は平日で学校があった。

 そして俺と後藤さんは学校に行くために二時間かけて通学をする。そこから弁当を作る時間や登校準備を逆算すれば分かりやすいかもしれないが、平日の起きる時間は必然的に早朝の四時になる訳だ。

 

 こんな朝早くから起床して学校、バイトなど活動をしていればそりゃもう当然疲労感もある訳で。しかも一人じゃないとはいえ女の子の家に泊まるという少なからず緊張もする場面な訳で。

 簡単に言ってしまえば普通に眠気がやってきているのです。寝ようと思えばいつでも寝れる。マジで。

 

 ちなみに横では店長もゲームに混ざろうとしてるし虹夏さんは普通に出てってとか容赦ないこと言ってる。

 さて、俺はどうしたもんか。

 

 

「優人くんもゲームやるでしょ? ね?」

 

「え? いや、どうですかね。正直言うと眠いな〜ってのもあるんでこのまま寝ようかとも思ってるんですけど」

 

「え〜せっかくなんだからオールでゲームしようよ〜! 絶対楽しいって!」

 

「一応俺ってば平日はずっと朝の四時起きで活動しっぱなしなんですけど、そこんとこどう思います?」

 

「気合いでしょ!」

 

 この天使余裕で根性論ぶつけてきやがった……。

 

 

「そ、それに後藤さんも俺とほぼ同じ時間帯での活動だから眠いはず……だよな後藤さん?」

 

「あっ、私は今日授業中当てられたくなくて寝たフリしてたらほんとに寝ちゃってて、そのせいで今はそんなに眠くない、かも……」

 

 このアホ普通に説教案件の事してやがった……。

 

 

「ねえいいでしょ〜ほんとに眠たくなったら寝ていいからさ、それまでは遊ぼうよ! こんな機会滅多にないんだからっ」

 

「観念して付き合ってやれ優人。家ん中での虹夏は普段と違ってわがままレベル高えからな。お前が折れるまでしつこくくるぞ」

 

「お姉ちゃん余計なこと言うなら今すぐ出てってもらうからね!」

 

 言われてみれば自宅でしかも寝巻きの状態だからか、いつもより虹夏さんが幼く見える。

 これがパジャマ効果か……夏のプチ旅行でも寝巻き姿は見てたのに何だか天使度上がってないですかね? 

 

 ……仕方ない。実際泊めてくれてるのは虹夏さんだし、ここはわがまま天使に付き合ってあげるのも俺の役目だろう。

 

 

「分かりました。じゃあ眠くなるまでは遊びましょうか」

 

「よしきた! あと今のうちに布団敷いとくから、寝たくなったら適当にその辺で寝てくれたらいいからね」

 

「後藤さんへの言葉として受け取っておきます。俺はリビングにソファがあったんでそこ借りますね」

 

「えっ、あそこいつもあたしやお姉ちゃんが寝転がったり座ったりしてるけど大丈夫?」

 

「ちくしょう地雷が多すぎるっ。もはや安全圏は廊下かキッチンの床しかねえのか!?」

 

「別に私の部屋の床でもいいぞ。お前くらいなら寝ぼけて踏んでも大丈夫そうだしな」

 

「まだそっちの方がマシかもと思っちゃう時点で俺の脳は相当毒されてるかもしれない」

 

 いやけど割とマジで店長の部屋で寝た方が安全な気がしてきた。

 この人は何というか親戚の従姉感あるからあんま遠慮しなくてもよさそうだし。何なら向こうの方が俺に容赦ないし。一周回って安心できるのでは? 

 

 

「どうせお前の事だから虹夏が寝たことある場所は神聖だから〜とか思って寝れないんだろ。相変わらず変なとこでキモいよな」

 

「勝手に決めつけられた挙句めっちゃ罵倒されたのに前半部分ものの見事に当たってるから何も言い返せねえ……」

 

「またそんなこと気にしてたの!? 別にいいって、あたしは全然気にしないから! というかぼっちちゃんの部屋では何回も二人で寝たことあるんでしょ? だったら大丈夫じゃん」

 

「いや、後藤さんはだって……今更そんなの気にするような関係でもないし……なあ?」

 

「え? あ、うん……」

 

「ぐぅっ……! 無自覚に絆強い系を地でいってるぅ!」

 

 珍しくあの虹夏さんが謎のダメージを喰らっていらっしゃる。

 それは大体俺と後藤さんの役割なのに。というか何事? 

 

 

「……気にしすぎなんだよ優人くんは」

 

「気遣いと言ってください。親しき仲にも礼儀あり、ましてや男女なら尚更です。例外は後藤さんくらいですよ」

 

「あっへへ……」

 

「……あたしの膝枕で寝たことあるのに?」

 

「えっ」

 

「ぶぼぅっ!? あ、あれは俺が謎気絶してる間に虹夏さんが勝手にやっただけで決してわたくしめの意思ではございませんことよ!?」

 

「なら嬉しくなかったの?」

 

「死んでもいいと思うくらいには最高でした」

 

「やっぱお前バカだわ。一回どっかで刺されなきゃいけねえんじゃねえの」

 

 何で誰かに殺される前提で話進めてんのこの人。いや自分で死んでもいいって言っちゃってるわ俺。どうしよう、言質取られた。

 

 

「……うーん、まあいっか。とりあえず今はゲームして遊ぼう! 色々考えるのは眠たくなったらって事で!」

 

「あっはい」

 

「なんか大事なこと流されたように思うんですけど……別にいいか」

 

「ここに喜多がいなくてよかったな」

 

「はい?」

 

 何でここで喜多さんの名前? 確かに喜多さんがここにいたらいよいよオール確定で俺の寝る場所余計なくなりそうでもあるのか。不幸中の幸いだな。

 

 

「じゃあこれやろーう! 陣地取りゲームの定番、イカ墨〜ン!」

 

「……え、これ完全にスプr」

 

「イカ墨〜ンだよ」

 

 なるほど、多分これ以上触れたらダメなタイプの話題ですね。

 新型スウィッチ2楽しみだなぁ〜。

 

 

 この後、俺達は睡魔の限界が来るまでイカゲーをプレイし、オンラインで突如煽り散らかしてきた山田を倒すために奮闘したりととにかく遊び尽くした。

 多分泊まりでこんな夜更けまで遊んだのは初めてかもしれない。そんなレベルで。

 

 ──

 

 そして朝、目が覚めると両隣には後藤さんと虹夏さんがすやすやと寝ていた。

 

 

「……なして?」

 

 よーく考えてみる。

 虹夏さんがベッドで寝ていないとなると、おそらくみんな限界まで来てそのまま布団の上で寝てしまったのだろう。少し離れたところには寝ている店長もいた。ちゃんとうさぎのぬいぐるみも抱いている。

 

 そうか、結局寝る場所をちゃんと決める前に俺は睡魔に襲われて気絶するように寝てしまったって訳だ。

 いや、ある意味そのおかげで余計な気を遣わずに寝れたというのもあるだろうが。

 

 ……何だろう、このシチュエーション。もし全員が成人してて記憶なくなるまで酒を飲みまくってたらと思うとゾッとする場面だ。

 自分がまだ未成年で心底良かったと安堵した。大丈夫、ちゃんと寝る前の記憶までは残ってる。むしろこれほどまでかと思うくらいにはド健全だった。

 

 三人を起こさないようゆっくり立ち上がる。

 何故かって? そんなの決まってるだろ。後藤さんはともかく伊地知姉妹が起きてしまったら気まずさで俺がやられるからだ。

 

 綺麗な花園に不純物はいらない。清水優人はクールに去るぜ……。

 足音を立てないようにほとんど引きずるようなすり足で部屋を後にする。まさかの全員寝落ちで同じ場所に寝るという一番誤解されかねない結末になるとは……やはり夜更かしはよくない。

 

 リビングに着いた。

 今日もバイトと練習の日だが時間はまだ余裕がある。しかも今日に限ってはこのマンションの下に行くだけでスターリーに着く。遅刻はほぼ確定でないだろう。

 

 という訳で、

 

 

「二度寝するかぁ……」

 

 もう一度夢の中へレッツゴーである。

 当然ソファで寝るのではなく、床に座ってソファにもたれ掛かるようにして目を閉じる。

 

 かくして俺の初の友人宅でのお泊まり会は虹夏さんの家であり、何事もなく無事に終了することができた。

 最初はどうなる事かと思ったが、終わってみれば案外平和だったなぁ。

 

 

 しかしこの後、スターリーに行くため四人でマンションを降りた時、ちょうどやってきた喜多さんに出くわして何故一緒に降りてきたのか、何故休日なのに俺は制服姿のままなのかめちゃくちゃ質問攻めされる事になるのはまた別のお話。

 

 





寝る場所でわいわいさせるの楽しくてつい書きすぎちゃった。
多分清水が二度寝した後に早起きの虹夏が起きてきて、座りながら寝てる清水にクスリと微笑みながら近くで寝顔を覗いてたら、寝相でバランスを崩し横に倒れかける清水を慌てて自分で支えた結果、肩と肩をくっつけ合いながら清水が体重掛けてくるもんだから離れる訳にもいかなくなって一人ドギマギしながらも満更じゃない伊地知妹は必ずどこかにいる。あとはみんなの想像力に任せた。


では、今回新たに高評価を入れてくださった

☆10. オルセインさん、川男さん、零弥…さん、vongolaさん

☆9. アンジュ先生さん、遊技林さん、ザラメ雪さん、イキョウさん、完全無欠のボトル野郎さん

いつも感想高評価お気に入り登録ここすきthank you!
そろそろ終わりが見えてきたかも?
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