再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
アニメ2期制作おめでたい!
おめでたいのじゃ!!
「いよいよスタジオでのレコーディングです」
数日後、事務所にやってきた結束バンド代表の虹夏さんと付き添いサポートの俺は司馬さんと新曲の打ち合わせをしていた。
ミニアルバムとして作成予定だった5曲も全て完成し、次にする事はいつものようにスターリーのスタジオで一発録り……ではないらしい。
「来週と再来週の土日四日間で5曲全部録り終えてください」
「今までやってた形式でのレコーディングではないんですよね?」
「はい。スタジオも私が手配してあります。プロのエンジニアの方もいるのでクオリティーもこれまでとは比べ物にならないでしょう」
「プロのエンジニアだってさ優人くん! 結束バンドも来るとこまで来ちゃったね!」
「落ち着いてください。来るとこまで来たとか言ってますけどメジャーデビューのスタート地点にすらまだ立ってませんからね」
けど本格的なレコーディングができるとうきうきしてる虹夏さんは眼福です。
「ちなみにレコーディング代は四日間で20万円です。分かっていると思いますが当日までに万全の準備をお願いしますよ」
「優人くん、あたし達がしっかりみんなを先導して真剣にレコーディングさせよう。お金は大事だからね」
「ええ、もしもの時は俺が何をしてでもちゃんとやらせますよ。お金は大事ですので」
司馬さんの目が猶予はないから絶対に四日間で完成させろと訴えてきてる。
ストレイビートも割とカツカツで経営してるっぽいから予算には厳しいものね。後藤さんとリョウさんにはふざけさせないようにしないと。……後藤さんはふざけないか、緊張で変なことしちゃうだけで。どっちにしろダメだな。
「大まかな説明はこんなところです。詳しい話はまたレコーディング日にでもしましょう。ところで話は皆さん学生生活の方はどうです? 伊地知さんは受験勉強捗っていますか?」
打ち合わせもひと通り終えたところで司馬さんが緊張感を解そうとしてくれたのか、話を変えてきた。
「え? はい、あたしはA判定なんで問題ないんですけど……」
「けど、とは?」
虹夏さんがこちらを見て目で言ってくる。お前が代わりに言えと。
そして虹夏さんの視線が俺に向いてる事に司馬さんも気付いて、二人の視線に襲われる羽目となる。……まあ、言うしかないでしょうよ。
「その他のメンバーがアルバム制作のせいにして全然勉強してないので絶賛成績ダウン中です」
「ここぞとばかりに責任転嫁してますね……」
いやほんとによ。みんなそれぞれ頑張ってるのは見てきてるから気持ちは分からないでもないが、そんなことを言ったら同じように頑張ってる虹夏さんだって条件は一緒なのに成績は落としていない。
そこから鑑みるにリョウさんの場合は一番負担のかかる作曲だという事を加味しても、そもそもあの人勉強する気一切ないので諦めている。卒業できるかどうかは知らん。
後藤さんに至っては時間を見つけては俺が教えてるのにこの前のテストは全て綺麗に10点を叩き出し、むしろもう俺が悪いんじゃないかとさえ思ってしまうほどだ。
真面目に頑張ってアレならもう進級できるかさえ微妙です。マジで在学中に売れて退学視野に入れてんじゃないだろうな。
そんで一番謎なのが喜多さんである。一年の時は成績良かったのに、最近はテストの点数も落ちてきている模様。
この前は赤点ギリギリだったり赤点だったりと全体的に危なくなってきてる。バンドしながら陽キャ友達と遊んだりするくらいにはバランスを取れているのに、勉強とは両立できていないのなぁぜなぁぜ?
「清水さんは大丈夫なんですか?」
「大体上の中くらいをキープしてるんで問題はないです」
「そうなんですか。清水さんは頭も良いんですね」
「一応将来的に養わなきゃいけなそうな子がいるもんで……選択肢は増やしておくに越したことはありませんから……」
「養う……?」
司馬さんがハテナを浮かべておられる。
どうやらそこで人物特定されないほどにはまだ後藤さんの尊厳は保たれているらしい。ほんとか?
「早くあたし達が売れて優人くんを養えるようにならないとね」
「あれ、その話冗談で言ってたんじゃないですっけ? いつになく真剣な目で何言ってんですか虹夏さん? そこはなんちゃって〜とか言っててへぺろってするとこですよ。ほら、早くするんですよ可愛く舌をペロッと出して天使スマイルを見せるんだよぉッ!」
「清水さん、複数の女子に対してヒモになるのは少し考えものかと思われますが」
「そこも真面目に受け取ったらダメでしょうがっ! あなたの場合マジでそう捉えてそうで怖いんだって!」
「では今日の打ち合わせはこれで終了です。他のメンバーの方にもレコーディングの事を伝えて準備を整えておいてくださいね」
「そしてまさかの全スルー、だと……!?」
基本的に真顔の人だから何をどう思ってんのかも分かりづらいのにスルーは怖すぎるって。
やみさん辺りに言いふらさないだろうな!?
「はーいお疲れ様でした〜。ほら優人くん行くよー」
「ちょ、待って、待って虹夏さんっ、あの人に冗談だって言わないと司馬さんああいう性格だから普通に勘違いしてそうなんだって! 次会う時将来ヒモになる男だとか内心思われるようになったら俺の尊厳ぶち壊れるんですがそこんとこどうしましょう!?」
「あたし達で養ってあげるよ」
「純粋な善意で尊厳を殺しにきてるぅー!!」
そのまま俺は虹夏さんに首根っこを掴まれたままストレイビートを強制的に後にした。
──
「というわけでミニアルバムのレコーディングが決まったよー!」
「伊地知先輩、優人君が帰ってきてからずっとボソボソ言ってるんですけど何かあったんですか?」
「な、何か尊厳破壊って聞こえるような……?」
「そうめん高いって言ってるんじゃない?」
「リョウ先輩お腹空いてるだけですよね!? また草食べてるじゃないですか!?」
尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊……。
「もぉ、しょうがないなー。優人くん専用復活の呪文でもやるしかないか」
「そんなのあるんですか?」
「まあね、多分一瞬でスイッチ入るよ。……みんな五秒間だけ目と耳塞いでて」
「「「?」」」
「(尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊尊厳破壊……)」
「(えっと、優人くん……さっきはごめんね? て、てへぺろっ)」
「よし、まずは司馬さんから聞いた事を共有するのでちゃんと覚えておくよーに! レコーディングに向けて気合い入れっぞオラァッ!!」
「ほんとに元に戻ったわ……」
「い、いったい何が……」
虹夏さんのてへぺろが聞けたなら俺の尊厳なんてどうなってもいいんだぜ。
何ならこのまま昇天してもヨシッ。
話は本題に戻る。
「とりあえず来週と再来週の土日、計四日間でレコーディングを行います。プロのエンジニアもいるので仕上がりも以前とは比にならないと言っていいでしょう。けどこの四日間という期限は絶対守らないといけません」
「もちろんそのつもりで頑張るけど、そんなに期限に厳守なの?」
「ストレイビートのボロ雑居ビルを見れば経営状況くらい大体想像つくだろ? プロのエンジニアとスタジオを四日間借りてレコーディング代20万。期日延長なんてもっての外、いわゆる最初からデッドラインが分かってる状態だ」
「そ、それを超えちゃったら……?」
「一応期日までに全ての曲録りはする。けど間に合わなかった場合は完璧なものじゃなくて下手なテイクの音源を使うから、まあ誰も納得しない不完全なアルバムが完成するだろうな」
「……な、なるほど」
「そのためにレコーディングの日まで各自練習なり体調を崩さないよう万全の準備が必要なんだよ」
結束バンドにとってプロがつくレコーディングなんてのはもちろん初めての出来事。
不測の事態はある程度考慮すべきではあるが、如何せん初めてなのでどこまで想定できるかも分からない未知の領域だ。ましてやプロの人がいるなら何かあってもその人に任せた方がいいってなる事も当然あるだろう。
なら俺達が一番気を付けるべきことは、まずレコーディングの日を無事に迎える事。
それでもって全員体調も万全で録音に取り組む事。その日まで新曲のアレンジを詰めたっていいし、より良くなるなら意見も出し合うべきだ。
簡単に言えばレコーディングの日をみんな元気に迎えようって事。
はい以上。
「最初に言っておいてやるけどレコーディングは大変だぞ〜」
そんな中、いきなりカウンター席に座っている店長がニヤニヤしながら声をかけてきた。
俺には分かる。変にニヤけてる時の店長は大抵からかう時か隠れて後藤さんの盗撮写真を見てる時だ。ちなみに後者の写真はたまに俺が提供して店長との交渉に使ったりするからグレー寄りのホワイト扱いにしている。
「閉鎖空間で時間制限がある中での録音、そこから沸々と沸き上がってくる焦りと緊張……。意見の出し合いが口論になりやがては殴り合いの喧嘩に発展とかなったりすっぞ〜」
「それ店長達が血気盛んだっただけでは?」
「バンドやる奴なんてのは多かれ少なかれ自己中で自分を出したい連中ばっかなんだよ。そうなるとあとはもう拳と拳のぶつけ合いは必至だからな」
うちの幼馴染も引っ込み思案のくせに変なとこで目立ちたがるからその素質ありってこと?
多分口論になる前に溶けて終わりそう。
「あ、曲に関してはみんな私の言いなりだから無問題。私しか曲作れないし」
「チッ、つまんねー」
「血の気多すぎだろこの人」
「最近の若者バンドはみんな仲良しこよしで全然尖ってねえよなぁ。あ〜あ、昔は良かったよ。バンドの事を大事に思ってんのは一緒なのに
「しょうもない過去を輝かしく思え始めたら老いの始まりですよ」
「あ?」
若者ではなく大人の喧嘩が発生しそうになっているので俺はお若い結束バンドのみんなを店長達から少し遠ざけておくことにした。
てかPAさん時々店長にド直球にぶっ刺していくの何なんだろう。仕事のストレスでも溜まってんのかな。
「でもエンジニアさんっていったいどんな人なのかしら? 怖い人とかじゃなかったらいいんだけど……」
「うーん、レコーディングとはいえ四日間お世話になるんだし手土産でも持っていった方がいいかな?」
「なっ何か献上したら厳しい事言われないですかね……」
「持ってくなら少し良いやつにした方がいい。あと数多めのお菓子か大きな果物のどちらかに絞るのも大事」
「どうして?」
「数が多いお菓子なら私も食べられるし、果物ならみんなで分ける名目ができて私も食べられる」
「結局自分が食いたいだけじゃねえか」
というか何で手土産持ってく流れになってるんだろう。
いや、お世話になる手前良い心掛けとは思うけど、今後レコーディングの機会がある度に手土産用意するつもりなのかな。
「果物くらいならまあ、いけるかなぁ……」
「一応クライアント側ですしあんまり畏まらなくてもいい気はしますけどね。司馬さんが手配してくれた人だからあまり心配はしてませんけど、下手に出すぎて調子に乗ってくるような人だったら逆効果かもですし」
「い、厳つい人だったらどうしよぉ……」
「勝手に決めつけて後ろに隠れるんじゃありません。大丈夫だって、結束バンドの事を気遣ってくれてる司馬さんだぞ。それにギターヒーローファンのやみさんもいるし、そういうとこには気を回してくれる人達だから心配いらねえさ」
「そもそも知らないスタジオ自体が怖い……」
うん、そうだね。君はどこでもそういう子だったね。
「優人くん、ぼっちちゃん大丈夫そ?」
「大丈夫じゃなくても待ってくれないのがデッドラインなんで何とかしますよ」
「エンジニア……厳つい人……ミスしたらその場で怒鳴られ我終わるぅ……ぶばぁ!?」
「ちょっと韻踏んで破裂するくらいには大丈夫そうです。まあ許容範囲ですね」
「許容範囲広すぎでしょ」
そうかな? そうかも。
「と、とにかくっ、みんな家に帰ってからも各自みっちり練習しておくように! 曲のアレンジもギリギリまで詰めてこう!」
「は、はい!」
「……ん」
「優人くん当日はしっかりぼっちちゃん連れてきてね!」
「分かってます」
初のちゃんとしたレコーディングを控えているというのもあってか虹夏さんの声は少し上擦り、喜多さんやリョウさんの返事も何だかぎこちないように聞こえた。
緊張するなって方が無理か。今回に関しては俺にできそうな事はほとんどなさそうだが、一応レコーディングの事や気を付けておく事くらいは調べておこうかな。
……手土産はメロン辺りでいけば大体の人の機嫌は取れるはず。
っと、色々考える前に破裂した後藤さんの欠片を集めないと。
「後藤さん、今日の晩ご飯はタンドリー風から揚げだ。それとレコーディング日までは後藤さんの好きな料理作ってやるから頑張ろうぜ」
「が、頑張る……!」
「一瞬でひとりちゃんが元に戻ったわ!?」
ほんとちょろいよねこの子。
2期で個人的に気になるのは結束バンドに強く出ちゃいがちなヨヨさんや原作でヘイト集めがちだったやみさん辺り。
1期のアニメでは原作にあったトゲ強めのツッコミとかヘイトキャラは作らないようにしてたっぽいけど、果たして2期でどうなるやら。
ある意味マイルド路線のヨヨさんとぽいずんルートも見てみたい気もする。
では、今回新たに高評価を入れてくださった
☆10. カクリツさん、来田 喜貴さん、貫さん
☆9. ザラメ雪さん、イキョウさん、calnoさん、完全無欠のボトル野郎さん、宇地波一族さん
いつも感想高評価お気に入り登録ここすきthank you!
とあるシリーズの超電磁砲4期と少女共棲(アイテム)もアニメ化決定したの嬉しい。
好きな作品が連続でアニメ化発表されるの幸せなんじゃ〜。