再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
はまじ神先生のYouTube生配信はぼざろ好きとして見る価値しかないからみんなアーカイブでも見ような。
アニメ同時視聴で作者の口からここはこういった感じで~みたいなの聞いてると普通に勉強になる。
そもそも俺の役割は何なのだろう。
簡潔に言ってしまえば後藤さんがやりたい事ができて、人と話せるようなまともな人間になるようサポートする、がそうだったはずだ。
難易度は苛烈を極め、下手すると一生このまま彼女の面倒を見なければならない。そう思っていた時も確かにあった。
しかし今の現状を見つめ直してみる。
まだまだ正常とは言えないまでも後藤ひとりはバンドを組み、バイトを始め、仲間もできて、放課後はほぼ毎日ライブハウスで誰かしらと関わっている。以前までなら考えられなかった事だ。だが、現実としてこうなっている事実は変わらない。
最近は昼休みやバイトのない放課後も、後藤さんは喜多さんのギター練習に付き合っている。さすがに邪魔できないので俺は遠慮しているが。
そう、後藤さんの学校生活や性格は多少なりとも変わりつつある。ゆっくりでも確実に成長し、前に進めているのだ。
だが、その途中で俺が関わってしまうと停滞してしまう可能性も大きくなってきた。
彼女は良くも悪くも俺の後ろを着いてくる。いや大体悪いが、それが一種の停滞になると危惧しているのだ。
俺がいなくても大丈夫なようになってほしい。こんな事を思っているのに俺がいつも近くにいたら意味ないのではないか。そういう疑問が出てくるようになった。
だから、結束バンドのみんながいる今なら、もう大丈夫なんじゃないかとも思う。俺がいなくても喜多さんをバンドに誘おうとし、自分の言葉で喜多さんに思いをぶつけた姿を見た。
あの日以来、こんな気持ちがずっと渦巻いている。
彼女のためならと様々な行動をしてきた。やる必要のないバイトを一緒にやり、いちいち後藤さんを観察しに教室へ赴いたり、一緒に作戦会議などもした。
だけどもうその必要もないのではないか?
バンドを組んだ以上、彼女はメンバーと交流する事が増える。そこから信頼関係も築き、親交ももっと深めていくだろう。彼女の欲しかったものはもうほとんど結束バンドにある。何よりみんなとても良い人達だ。
だから、任せても良いんじゃないかと思うようになった。俺の代わりがいなかったから一緒にいたけれど、もう彼女を支えてくれる存在は三人もいる。
であれば、もう自分は必要ないんじゃないか。メンバーでもない自分がいつまでもスターリーでバイトする事もない。彼女の事は結束バンドのみんなに任せればいい。
自分は自分のやりたい事を見付けて、そのために時間を費やすのが彼女にとっても自分にとっても良い事ではないのかと。
そう思えるくらいには、後藤さんは前を行っている。
ふと、自分の頭によぎった。
部外者の俺はもう、潮時なんじゃないか?
────
スターリー。
フロア内にて。
「今日バイトないのに何で俺まで呼び出されたんですか?」
「結束バンドでミーティングしようと思ってね!」
「いや俺関係なくないです? メンバーじゃありませんし、部外者ですよ? こんな感じの会話この前後藤さんともしたような……」
「そりゃもちろんぼっちちゃんの保護者枠……監視役? 通訳? まあ何でもいいじゃん!」
最後でほっぽり出したなこの人。しかしこの人に呼ばれるとあまり逆らえないのである。
後藤さんをバンドに入れてくれた恩人だし、何より天使だし。
「てか虹夏さん達だって最近は後藤さんの事結構理解できてきたでしょう。何言いたいかくらいは大体分かってきたはずじゃあ」
「まあねー。けどそれはそれ。これはこれっ、みたいな? 優人くんいた方が客観的な意見も聞けるし何か落ち着くし面白そうだからさ! ねっ?」
俺はアロマでも芸人でもないんですが。何を言っても無駄なようだ。虹夏さんはにこにこ笑ってこちらを見ている。
ここで折れないとずっと付き纏ってきそうな雰囲気あるし、仕方ない。
両手を上げて降参のポーズをとる。
「ほとんど見とくだけですよ……」
「よしきた!」
「苦労するね、優人」
いやいつも虹夏さんを苦労させてるのはリョウさんですけどね。そんな肩ポンされても惑わされないからな。
「おーい、二人共ー!」
虹夏さんがスタジオでギターの練習をしている後藤さんと喜多さんを呼びに行った。
二人だけで練習して喋る事もできてるんだよな、今の後藤さんは。
「……」
「どうかしたの」
スタジオの方を見ているとリョウさんが俺の前に出てきた。
変な顔でもしていたのだろうか。
「……いえ、何でも」
「……そう」
相変わらず何を考えてるか分かりづらいなリョウさんは。
こちらの心を見透かしてるようでいて、ただ何も考えていない時もあるから侮れない。ちなみに後者が八割。やっぱ大丈夫そうか?
「それではバンドミーティングを始めます! 拍手!」
リョウさん以外のまばらな拍手が静かなフロアに響いた。
そのまま虹夏さんはスケブを捲ってテーブルへ叩くように置いた。
「さて、本日のお題はこちら! ずばりっ、より一層バンドらしくなるには!?」
本格的に俺の管轄外じゃねえか。俺何も言えないぞこれ。マジでただ座ってるだけのオブジェになっちゃうけどいいですか。
後藤さんと喜多さんが拍手をする中、ふとリョウさんが不自然に頬杖をついているのを見た。物憂げに目を細めている。このお題に何か思う所でもあるのか?
「せっかくメンバーも集まったんだし、まずは四人でより一層バンドらしくなっていきたいなと!」
「なっ、なるほど……」
「いや、練習あるのみなのは分かるよ? だけどそればっかりだとねえ。色々話したりするのも大事かなって」
虹夏さんの視線はこっそり喜多さんの方へ向いている。
なるほど、最近練習しかしてない喜多さんの息抜きにこのミーティングをセットしたのか。ほんと虹夏さんだけはまとも、さっきの強引なとこもまた良いという事にしときます。
「まずは形から入ってみるのもありだと思ってね!」
「ありですね! 流行ってるメイクとかも真似してる内に様になってくるというか!」
「そうそう!」
後藤さんが全然分からないというような表情をしている。大丈夫、俺も分からんから安心しろ。じゃない男の俺はまだしも何で女子の後藤さんが分かってねえんだよ。
むしろメイクなしでそれは顔面偏差値高いんだからな。猫背と俯いて二重顎っぽくなってるから自分で全部台無しにしてるだけだぞ。もっとそういうとこ自覚しろ。
「という訳で~とりあえずバンドグッズ作ってきた!!」
そう言って虹夏さんが手首に付けたのは赤色の結束バンドだった。
え、噓だよね? まさかそれグッズとして売ろうとしてるんじゃないよね? 虹夏さん?
「それただ結束バンド巻いてるだけじゃ……」
良いぞ喜多さん。ナイスツッコミだ。
結束バンドだけに結束バンド巻くってか。傑作だなそれ。それは傑作バンドか。やかましいわ。
「え? 可愛くない? 色んな色あるよ!」
虹夏さんがツッコミ役を放棄してしまったら誰が結束バンドを束ねるんだ。結束感ないけどな今のところ。
ちくしょうやっぱ俺か。俺がツッコミをしないといけないのか。ここにいる役割がツッコミだけて。
「物販で五百円で売ろう」
「ぼったくりか」
「サイン付きは六五十円で」
「安い買います!」
「それじゃバンド内でお金循環するだけだろうが」
喜多さん意外とボケに走ってるんだけど。リョウさんの事になると見境ねえな。
そして後藤さんは何か喋れ。今こそこの前みたいに自分の気持ちを主張する時でしょうが。
「他にバンドらしくなるアイデアある人ー」
「もしイソスタとかやるなら私やります!」
「いいねそれ! SNS大臣に任命します!」
「その時が来たら毎日更新しますね!」
喜多さんの陽キャ振りが凄い件について。イソスタとか入れてないから何も分からん。
俺とか基本トゥイッターでアニメとかゲームの情報仕入れるためだけに使ってるし……あれ、俺ってもしかして意外と陰キャ寄りだった?
けど別にコミュ症って訳でもない。リア充って訳でもない。つまり狭間にいる普通の人間って事か。うん、普通が一番だもんな。
どっちに行ってもちょっと疲れそうだし。
「うーん、あとは……ファンクラブの設立?」
「だいぶ階段すっ飛ばしたな」
「年会費は一万円」
「誰が入んだよそんなの」
「ファンクラブ会員特典として握手会と年に一度のたこ焼きパーティー、材料はファン持ちで」
「ファンを何だと思ってんだ」
「安い入ります!」
「入るなァ!!」
虹夏さんこれで結束バンドまとめていけるのか? ボケ集団だぞこいつら。バンドというよりコントと変わらん。
「後藤さんは?」
「……え?」
喜多さん急に元に戻りますやん。リョウさん絡まなかったら割と普通なんだよなこの子。
んで突然振られた後藤さんはおどおどしている。すっごくおどおどしている。二人で練習していると言っても喜多さんはまだ後藤さん初心者だもんな。これから少しずつ慣れていってもらおう。
「あっ、えっと、その~……」
「ああ、ぼっちちゃんは大丈夫」
割って入ったのは虹夏さん。何で? どうせ後藤さんからは何も良い案出てこないからですか? 正解ですよそれ。花丸あげちゃいます。
虹夏さんの後藤さん理解度が20上がった。後藤さんの尊厳は50下がった。
そんなとこだろうと思っていたのだが、意外にも虹夏さんが放った言葉は違ったのだ。
「ぼっちちゃんには、オリジナルソングの作詞という重要な任務があるからね!」
「……え?」
「……あー」
「前に決めたじゃん! リョウが作曲、ぼっちちゃんが作詞って!」
そういや言ってたな、言ってたわ。
歌詞に禁句が多いなら後藤さんが書けばいいって虹夏さんが確かに言ってたのを思いだす。
あれ、本気だったんですね。てっきりその場のノリだと思ってました。
まあ、しかし、何だ。後藤さんが青春コンプレックス発動して発狂するのが悪いとこもあるから仕方ない。自分で書くならそれも回避できるし良いんじゃないかと個人的には思う。
「リョウ先輩の曲楽しみです! もう作ってたりするんですか!?」
「ううん、イメージ湧いたらその内」
「頼むよリョウ、それと作詞大臣っ」
「は、はい……」
やはり頼まれたら断れないイエスマン後藤。悲しい生き物である。
「後藤さん凄い仕事任されてかっこいいね!」
「か、かっこいい?」
「喜多さん、後藤さんにあんまそういう事言っちゃダメだぞ」
「え、どうして?」
「あっ、まあ作詞なんて朝飯前……ちょちょいのちょいですよ~……!」
「こうなるから」
「後藤さんってすぐ調子に乗っちゃうのね……」
柄にもなく腕をぶんぶん振り回してやる気を見せている。俺からすれば空回りする未来しか見えない。
後藤さんが調子に乗り始めたらそれはフラグの合図なのだ。ジェットコースターで言う落下待ち状態である。
おそらく数日後には一人でどっかで頭抱えているだろう。
「えへ、うへへ、大ヒット間違いなしのバンドらしい歌詞書いちゃいますから~……ふふ、ふふへっ、ふへ……!」
笑い方がマジで女子なんかって疑いたくなるほど気持ち悪いのどうにかならんのか己は。
何故良いとこじゃなくて醜いとこを曝け出すのが得意なんだこの子。最近は虹夏さんとかも慣れてきてるからマシになったけど。
けどまあ、何だか微笑ましい気分になってしまうのは、やっぱり今まで二人でしかいなかったからだろう。
俺以外の友人といるなら、それが結束バンドのみんななら、何も心配はいらない。
「そうだ、ちなみに優人くんは何か良い案ある?」
それを俺に聞くのはどうかと思うが、むしろ良い機会かもしれない。
「すいません。案っていう訳じゃなくて、話しておきたい事があるのでそっちでもいいですか?」
「え? うん、別にいいけど……どうしたの?」
席を立つ。ほんの少しの注目を浴びる。
バイトを始めた時は後藤さんのためと思ってできるだけ全部の業務を覚え、長くいようとも思った。
だけど、思ったよりも俺の心配は杞憂で、安心して任せても良いのだと感じた。
後藤さんはこれから結束バンドの仲間と高みに行く。努力して、研磨して、親交を深め、絆を育んでいくのだ。
そして。
その輪の中に自分はいらない。
必要以上の干渉は彼女に毒だと思ったから。
元々後藤さんに友人ができてちゃんと仲良くできそうならお役御免と決めていたのは自分だ。何も一切の交流を断つ訳ではない。これからも家には行くだろうし学校の登校も一緒だ。
ただ、結束バンドの成長を間近で見る事はせず、遠くから応援する事になるだけ。
そのための決意。部外者はここら辺りで潮時だ。
四人からの視線を浴びながら、俺はほんの少しの深呼吸をしてから。
言った。
「俺、今月いっぱいでバイト辞めようと思います」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?」
小さな声が、隣から聞こえた。
そんなシリアスになる予定はないです。
評価数が400超えた!みんな優しくて大好き!
では、今回高評価を入れてくださった
☆10:imaginhandさん、りとるさんさん、ずんださん、神代 結さん
☆9:ホワイトアウトさん、影政さん、もきゅさん、タスマニアさん、定休日さん、煎茶555さん、本坂さん、Sakuyaさんさん
本当にありがとうございます!!
当面は総合評価10000を目標に頑張ります!みんな高評価くださーい!感想もおおおお!!
更新ない日は忙しくて死んでるなって思ってて。