再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
もう20時周辺とか関係なく更新できそうになったら時間バラバラでも投稿してやろうかなって。
アニメ最新話の虹夏ちゃんがCM跨ぐとかメタ発言してたの笑っちゃった。
「まだ働き始めて短いのにすいません。けど、後藤さんにはもう俺じゃなくて結束バンドのみんながいるから安心できるんです。俺がいなくても大丈夫だって思えたんですよ」
店長は買い出しに行っていて今はいない。今日はバイトもないので妹の虹夏さんから伝えておいてほしいと思った訳である。もちろん後日自分から直接話しにも行くが。
最初に言うならこの人達にと決めていた。それが礼儀であり後藤さんを任せる身としての義務だ。
頭を下げる。深々と。
「だから、後藤さんをこれからもよろしくお願いします」
数秒間の沈黙があった。
何とも重苦しい空気がフロア内を支配する。無理もない。楽しい話題の途中にこんな事を話しだされたら誰だってこうなる。今日だけは何を言われても受け入れよう。
そう思っていると、虹夏さんからの返事がきた。
「顔上げてよ、優人くん」
言われるがまま顔を上げる。
その顔は優しく微笑んでいた。ああ、やはりこの人はこんな時でも許してくれるんだ。少し罪悪感はあるけれど、今だけはその優しさに甘えよう。
「虹夏さん……ありがとうござ」
「そんなのダメに決まってんじゃん」
「えぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……」
めちゃくちゃきっぱり言いますやん。すげえ即答じゃん。超食い気味ですやん。
あまりの展開に情緒がおかしくなりそうだった。いや展開的には今十分おかしいんですけど。
「え……? あの、俺バイト辞めるって言いましたよね? 何でダメな」
「ダメなものはダメだからだよ! 優人くんが辞めるのは絶対ダメ! はいっ、これ決定ー! 拍手ー!」
リョウさんと喜多さんが拍手しだした。いや違う違う違う。
「いやおかしいでしょ! 虹夏さんが決める権限とかってないですよね!? てかこんなあっさり簡単に断られたら前回のオチに使った意味ないじゃん! 無駄に引っ張っといてその程度かよってなるの確定じゃん!」
「無駄に引っ張るオチなんていらない! 人生そんな都合良くはいかないよ優人くん!」
何でアンタまでメタってきてんだよ。ここは俺の専門分野でしょうがっ!
やばい、完全に空気の流れが変わってきた。空気が重いって言ったの誰だよ俺だよ。まさか勝手にそう感じてたのも俺だけだったりする?
「そもそもっ! ぼっちちゃんをあたし達に押し付けて辞めようだなんて考えがもう間違ってるよ!」
「いや別に押し付けては」
「そーれーにぃ! あたし達としては優人くんがいてくれた方が助かるんだよねっ。いざという時の荷物持ちとかもあるにはあるけど、さっき言った通り優人くんがいると客観的な意見も聞けるし落ち着くの。何よりもう君がぼっちちゃんとセットでいるのが当たり前すぎて、一緒にいないとむしろこっちが違和感感じちゃうくらいだよー?」
それ俺を後藤さんの付属物として見てないですかね。もしくはハッピーセットのおまけ的な存在として。
おかしい、この流れは普通後藤さんの事は自分達に任せといてってなるとこじゃないの。リョウさんも喜多さんも何かジト目で見てくるし、俺そんな悪い事言ったっけ?
ダメだ。ここは虹夏さん以外に助けを求めないと。
ジト目ではあるが多分物分かりの良いリョウさんなら俺の気持ちも分かってくれるはず。
「りょ、リョウさんなら俺の気持ち汲んでくれますよね?」
「マブなら辞めるべきじゃない」
どんだけマブ引きずってんだよ。バイト辞めるだけだろ別に。
仕方ない、リョウさんがダメなら喜多さんに……。
「喜多さんは」
「元々帰ろうとした私を後藤さんに呼び止めさせたのは清水君なのに自分は有無を言わせず辞めるなんて言い出すのは身勝手じゃない?」
あ、にこにこ笑ってる。むしろ笑顔でそう言ってくるのがめちゃくちゃ怖い。
笑うという行為は本来攻撃的な意味を含むってどこかで聞いた事があるけど本当かもしれない。普段なら明るい喜多さんの笑顔の裏におぞましい闇を感じる。
いつからここは殺伐空間と化したんだろう。
くそ、こうなったら最終手段だ。今までちょっと怖くて見れなかったけど、隣の後藤さんを見る。いつもより俯いていて表情は窺えないが、できるだけ優しい声色で問いかける。
「なあ、後藤さん。結束バンドに入ってからの後藤さんを俺は見てきた。だからこそもう大丈夫だって思って決めたんだ。俺がいなくても君はもうやっていける。これからはここのみんなと絆を深めていくんだ。……できるよな? 後藤さ」
「むっ、むむむ無理です絶対っ!!」
まさかの全力拒否反応だった。絶対とか言い出した。
え、噓やん。
「いや、けど」
「むむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむっ!」
何度も首を横に振りながら俺のお腹に頭をぐりぐりと押し付けてきた。まるでドリルだ。
精一杯の主張なのかは分からないが地味にダメージ溜まってくるからやめて後藤ドリルさん。俺の見立てではちゃんと成長してるし大丈夫だと思ったのに、何でなんだ。
どうしたものかと思っていると、虹夏さんがこちらに指差しながら、
「優人くん以外全員反対だけどどうする!? ふふんっ、それでも辞めるって言うならお姉ちゃんにみんな優人くんに泣かされたーって言いふらしちゃうよ!」
「いやそれはおかしいだろ!?」
「むむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむっ!」
な、何て横暴なんだこの金髪サイドテール……。切り札出してくるなんて卑怯だぞ。
短期間しか働いてないけど何となく分かる。店長意外とツンデレで結束バンドの事可愛がってるって。そんなみんなを泣かしただなんて嘘であっても吹きこまれたら何をされるか分かったものではない。
俺の決意がこうも簡単に否定されるとは思ってなかった。ガラスのハートだったか……。
しかしこうもみんなから止められてしまうと突っ切る事も難しそうだ。自分の意志を曲げる事になってしまうけれど、人生諦めが肝心だとも言う。
「これ以上ごねても無駄になりそうだな……」
「最初から辞めさせない事は決定してるけどね」
「だぁーもうっ、分かりましたよ! バイト続けさせてもらいます! だから店長に噓吹きこむのだけは勘弁してください」
「よぉく言ったー! これからは二度とそんな事言わないようにねー!」
「むむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむっ!」
二度とはさすがに言い過ぎじゃないですかね。多分いつかは辞めるでしょうよ。
あと後藤さんいつまで頭ぐりぐりしてんだ。そろそろ止めなさい。昼飯リバースしちゃうよ俺。だんだん込み上げてきてるよ。摩擦で火とか点いたらどうしよう。
何か思い描いていた結果と180度違うが、結局はこれまでとそんなに変わらないのだと思う。
結束バンドの活動をバイトしながら眺め、登下校を後藤さんとする。彼女の変化を見守りながら過ごしていくだけの何気ない日々。
そんな事を思っていると、
「それとさ、優人くんは部外者なんかじゃないよ」
「え?」
「確かにバンドメンバーじゃないけど、ぼっちちゃんを結束バンドにいさせようとしてくれたり、一緒にバイトやってくれたり、喜多ちゃんのために色々相談乗ってくれてた事も聞いたんだよね」
喜多さんを見たらまだにこにこ笑っていた。
しかしそこには先ほどのようなおぞましい闇はなく、普通に微笑んでるように見えた。
「ということでっ! 優人くんを逃がさ……協力してもらうためにこれから結束バンドにたくさん関わってもらいまーす!!」
ねえ、今逃がさないって言おうとした???
「いや、関わるってどういう事ですか?」
「マネージャー的な感じ……と言いたい所だけど、メジャーデビューもしてないし売れてもないからね~。どうしよっか?」
「決めてねえのかよ」
「よーし、もう何でもいいから結束バンドの協力者として基本的に一緒にいてもらおーう!」
「むむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむぐぅっ!?」
俺の存在意義曖昧すぎやしませんかねそれ。本当にいいのかそれで。
とりあえずお腹から煙が出てきたので本格的にやばいと思い後藤さんの頭を両手で止める。もうすぐで人体発火されるとこだった。頭を止められた事で今度は両手をブンブンしている。飛びたいのだろうか。
「優人くん」
「はい?」
「難しく考えなくていいからさ。結束バンドを……私達を支えてくれたら嬉しいな!」
「っ」
言葉が詰まった。
結局その言葉の意味は曖昧のままで、将来性も具体性も感じられないポジション。いてもいなくても変わらないような存在。きっと、バンドメンバーとは違ってファンの人や関係者、その誰の記憶にも残らない。本質的な陰の位置となる。
だけど、不思議とそれでも良いと思えた。
バンドが売れたとして、何でもない自分には将来の確約なんて一切ない。
でも。
だけど。
この人達を支える事に、手伝う事に微塵の嫌悪感すら湧かなかった。
結束バンドには目標がある。対して自分にはまだやりたい事の一つもない。だから彼女達を支えていく上で何かしらを見付けていこうと思う。
「ははっ」
「?」
何だか笑えてきた。
「何ですかそれ。俺は雑用係か何かですか?」
「ん~、まあ一緒に何かできるなら何だっていいかなって」
「開き直ってません? 後藤さん、そろそろ離れないとヘッドロックするぞ」
「うっ……」
ようやく両手ブンブンも止めた後藤さんを大人しく座らせる。
代わりに両手で裾を掴んできた。ズボンだったら脱がされてるくらい強く握られててちょっと怖い。
虹夏さんに向き直る。
「分かりました。雑用でも何でもいいですよ。今更面倒見る人が一人から四人になったってそんな変わりませんし」
「私達ってそんな手間の掛かる子供に見られてるんでしょうか?」
「優人は虹夏と同じくらいまとも。たまにやたらおかしくなるけど、言ってる事は大体合ってる」
「自分で面倒な子供って自覚あるんですか!?」
赤と青が何か言ってるけど気にしない。
今言うべき事は一つだけだ。
「結束バンドは、俺が支えます」
────
帰り道。
今日はミーティングだけでバイトもなかったので明るい内に帰っている。
さて、後藤さんはと言えばだ。
「……」
「あの、後藤さん? めちゃくちゃ歩きにくいんですが……」
「ゆ、ゆうくんが逃げないように握ってるだけです……」
真後ろで裾をすっげえ力で掴まれてる。ダウジングを持ってる感じとイメージしてくれれば分かりやすいかもしれない。
「別に逃げたりはしないって」
「……」
どうしよう美智代さん、直樹さん。あなた達の娘はマシになるどころか余計悪化しちゃいました。
今まで後ろにいるといっても左右どちらかの斜め後ろにいたのにだ。今はもう真後ろにピッタリと引っ付いている。
やべえどうしよう。これ下手しなくても俺のせいじゃね? 更生させようとしたら退化したでござる。ニンニン。
高校入学当初より酷くなるなんて誰が想像しただろう。縦列の二人三脚レベルみたいになってるけど。
一歩進んだと思ったら百歩戻った。悲しいけどこれ、現実なのよね……。
真後ろにいられると顔も見えないからちょっと怖いんだよな。いつ暗殺されてもおかしくない。
周囲から少し変な目で見られながら歩いていると、俺にしか聞こえない声で背後の少女が口を開いた。
「……じゃあ、もう絶対あんな事言わないでください……」
いつものようにキョドった声の震え方ではなく、ほんの少しの怒りと哀傷が混ざった言い方だった。
「……悪い」
家まで後藤さんが後ろから離れる事はなかった。
後藤家。
彼女の部屋にて。
「さて、結束バンドを支えるって決めた事だし遠慮なく関わらせてもらうぞー。作詞なんてちょちょいのちょいって言ってたもんなあ?」
「ひっ、ヒィッ!?」
おかしい、本当なら今頃日にちも経過してアー写撮りに行ってるはずなのに気付いたらオリジナルばかりになってた。
ぼっちちゃんの「むむむ」だけはどうしても入れたかったので無理矢理入れた。後悔はしてない。
どうすればもっとお気に入りが増えるか考えたりもしたけど、とにかく減らさない事に努力しながら新規で気に入ってくれる人達が増えたら良いなと。
では、今回高評価を入れてくださった
☆10:タスマニアさん、チョコミントソーダさん、forestcatさん、佐山浩太さん
☆9:月の民さん、prinnyさん、煎茶555さん、ravellさん、レイ・ブラドル・ドラニスさん、ポコさん
☆8:ソメイヨシノさん、箱箱さん
本当にありがとうございます!!
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