再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
一ヵ月後辺りにはもうアニメ終わってると考えたら既にロスになってしまうので気を付けてほしい。
自分は今日までで4回ほど疑似ロスしてる。
「あんまり使いたくはなかったんですが、本当に最後の手段を使うしかないようですね」
「そんなのあるの?」
「ちょっと体張らなきゃなので嫌なんですけどこの際仕方ないです。ちょっと誰でもいいので俺の体支える準備だけしといてください」
俺は後藤さんの側に寄って軽く深呼吸をした。
そして。
「後藤さん、俺先に帰るばぎゃんっ!?」
「優人くぅぅぅううううん!?」
今の一連を説明するとこうである。
俺が後藤さんの側でさっきの言葉を言う→本当に帰る気で走り出そうとする→それを本能的に察知した後藤さんが我に返りほぼ無意識で俺の足を掴む→俺が盛大に顔面からこける→顔面強打。イマココ。
「あっ戻りました……」
「う、うぶふぅ……な、何で誰も、支えてくれねえんだよ……」
「あまりにも急すぎてね。ごめんなさい……」
「行動に移すのが早すぎだよ優人くん。もっとちゃんと説明してくれないと」
何で俺が怒られてんの? 確かに詳しく説明しなかった俺にも非はあるけどさ、ご近所さんに奇声で迷惑かけてしまうから早く元に戻そうとしただけなのに……。
ちなみにこれ、全力疾走するつもりでやるから自分の両手で支えようとするけど普通に間に合わないのである。間に合ったとしても手首壊れると思う。
まあでも俺の鼻が犠牲になって後藤さんが復活したのなら結果オーライだ。
父さん、母さん、俺を頑丈な子に産んでくれてありがとう。主に意味ない方向で役に立ってます。
「けどおかげでぼっちちゃんも元に戻ったし、そろそろアー写撮影再開しよー!」
「それは良いですけど、ポージングとかどういう感じで撮るかの方向性は先に決めておいた方がいいんじゃないですかね?」
「復活はやっ! うーん、確かにそうだね~……」
「あ! ジャンプとかどうですか!? 絵になるしみんなの素の感じとか出そうですけど!」
ジャンプか。言われてみれば一理あるかもしれない。普通にジャンプ力然り、各々の跳び方までその人の個性が出たりするものだ。
バンドのアー写にもたまにジャンプしたりしてる物もあるが、個々によってその人らしさが出ていて俺は結構好きだったりする。
「それ良い! 喜多ちゃん天才!」
「有識者が言ってた……。OPでジャンプするアニメは神アニメと……!」
それなんてきらら? ウッ、頭が……。
「つまりアー写でジャンプすれば神バンドになれるのでは……!?」
「日常系アニメ、俺もよく見るんで大好きです」
「何がつまり? そして優人くんはいきなりアニメの話してどうしたの!?」
これが普段アニメ見るタイプと見ないタイプの溝か。
近々布教してやろうかな。けいおんとかやってるジャンル似てるしちょうど良さそう。あの作品ほとんどティータイムしてるけど。唯ちゃん可愛いよね。
「全然意味分かんないけど……とりあえずやってみよー! はい優人くん撮影!」
「ほいほい、いきますよー。みんな良いタイミングでジャンプしてくださいね。ハイ、ヒール……つって」
「……何ですぐボケにいくの!? というか写真どう!?」
やっぱ撮り終わるまでツッコミ待ってくれるんだ虹夏さん。生粋だな。
言われたままスマホの写真を確認してみる。
「……おっと」
「どしたの? いきなりスマホから顔背けたりして」
「いえ、ちょっと」
俺の態度に疑問を感じたのか、虹夏さんは俺のとこへ駆け寄ってきてスマホの画面を見た。
すると何やらにまにました顔でこちらに振り向いてきた。絶対何か企んでる時の顔だこれ。
「あ~~~~ぼっちちゃんパンツ見えてるぞ~~~~? これはとんでもない写真撮れちゃったな~? 優人くんもそれ見て照れちゃったか~!」
「照れてるんじゃなくて配慮して見ないようにしたんですよ。むしろ褒められるべきでしょ」
「えぇ~? ほんとに~?」
うわめんどくせえこの人っ。こういう時だけちょっと強気に来るタイプの人じゃん。
女子からなら少しセクハラ紛いな事言っても許されると思ったら大間違いである。そして結局男の方が悪く言われるから余計タチ悪いのだ。
「それに後藤さんの下着姿はバイト始める前に一度見た事ありますしね」
「突然のカミングアウト!? えっ、本当なのぼっちちゃん!?」
「あっはい……もの凄く怒られました……。無価値なものを映してすみません、消してください……」
「女子としての自信がなくなってる! 何で下着姿見られた方が怒られてんの!? 普通逆じゃない!?」
「バイトが嫌で風邪ひくために下着姿のまま全身に冷えピタ、扇風機の前でギター掻き鳴らしてたんですよ。そっからキレてそのまま一時間くらい説教してました」
「後藤さんそんな事してたのね」
「これが幼馴染の関係性……」
いや、普通の幼馴染ならもっと青春ラブコメっぽくなってるでしょ。それかお互いマジで何とも思ってない現実思考パターン。
俺と後藤さんの場合はほぼ介護だ。子供の世話だ。何で俺が世話する役割なんだ。普通こういうのって逆だろ。朝全然起きてこない男子を隣の家に住んでる幼馴染の女の子が起こしにくる王道パターンのやつでしょ。やっぱああいうのはマンガだけか。
「まあけど、後藤さんも一応女の子なんだから少しくらいは恥じらいを持とうな。あの時は俺も頭に血が上ってたからあれだけど、今みたいなのは普通に反応に困るし」
「の割には落ち着いてたね」
「変に取り乱す方がおかしいでしょ。いついかなる時も冷静に対処できればその場を収められるんで」
「高校一年生の考えには思えないほど大人だ!」
「さあ、気を取り直してもう一度写真撮りましょう。後藤さんも次は気を付けてな」
「あっはい……」
男子一人女子四人で下着トークとかこっちの身が持たない。いやリョウさんはずっと空眺めてただけだけど。
全員元の位置に戻り、タイミングを合わせてシャッターボタンを押す。
「……後藤さん以外は良い顔してるな。よし、これでいきましょう」
「お、いいねえ。バンド感に青春っぽさがプラスされてる!」
「写真のデータ貰っていいですか!」
「あっ私も……」
今時スマホでアー写撮影するのも時代を感じる。金欠バンドマンならではと言えばそれまでだが。
俺も結束バンドを支える身としてもっと何か役に立つ事をしないとだ。スマホなら機種によって画質や機能も充実しているからアー写撮影にも困る事は少ない。
しかし追々結束バンドを大きくしていくなら曲以外の事にも力を入れていく必要があるだろう。
アマチュアだとしても、その中でひと際目立つ本格的なものほど人の目に付きやすい。ならば形から入る事だっておかしい話じゃない。
「せっかくだし一眼レフでも買うかなあ」
「いきなりどした!?」
「ああいえ、この先もアー写撮影する事があるならカメラ買っとくのも良いかと思いまして」
「にしても急すぎない……? 何でまた?」
「結束バンドに協力するならこのくらいはしないとなって。みんなライブのためにお金貯めないとだし、なら一人自由にお金使える俺がそういうとこ補っていこうかなって思った次第です」
「ええっ、そんな悪いよぉ! あたし達別にそんな事してほしくて頼んだんじゃないのにぃ! カメラだって高いんだよ!?」
あたふたしながら遠慮している虹夏さんだが、生憎俺も下がる気などなかった。
「俺が好きで勝手にやろうとしてるだけなので気にしないでください。それに父と二人で暮らしてた時は家事ばかりで友達と遊ぶ時間のない俺に、父から小遣いとか結構貰ってて割と貯金してるから余裕もあるんです。カメラくらいなら普通に買えますよ」
マンガかゲームくらいにしか使わなかったし、親戚からのお年玉も代わりに母が貰って貯めててくれてマジで貯金は全然ある。
七万~十万程度なら余裕で買えるだろう。結束バンドのためなら貯金を崩す事も容易い事だ。
と、こんなお金の話をしているのに喰い付いてこない輩がいる事を思い出した。
常に金欠で最近は草を食べてると喜多さんや虹夏さんからも聞いていたのだが、あの人どこ行った?
「それよりリョウさんいなくないですか?」
「あれ? まーた勝手にどっか行ったな……。いつも自由なんだから」
自由すぎんだろ。放浪者か?
「じゃあ今日はもう終わりにしようか。優人くんもあんまり無理はしなくていいからね。それじゃみんなかいさーん!」
「お疲れ様です」
それぞれが帰路についていく。とりあえず俺と後藤さんは近くの公園のベンチに座った。
さて、空はまだ明るい。このまま帰るのも悪くないが、せっかく下北にいるならどこかにカメラ売ってる店ないか探すのもありだな。
問題は後藤さんをどうするかだけど……二人とはいえこの子をカメラ販売店に連れて行くのは少し気が引ける。
いや本音を言うと何やらかすか分からないから連れて行きたくはないというのが本心だ。後藤さんレベルだと大量に置かれてるカメラを見ただけで自分が撮られてると錯覚し溶ける。それはもう物理的に。
最悪先に後藤さんを家に送り届けてから近場の店にでも行くか?
別に下北付近の店に拘ってる訳でもないし。うーん、どうしたものか。
そんな事を考えながら後藤さんを見たらスマホを触っている。
文字を打ってるからロインか。
「ひぅっ!?」
なんか小さな悲鳴を上げていた。
「どうした?」
「あっ……あの、リョウさんに歌詞を見てもらおうと思って、メッセージ送ったらここに来てって……オシャレそうなカフェの地図が送られてきたんだけど……」
「どれどれ……あー、まあ、後藤さんには厳しいか。……あれ? けど集合した時歌詞できてないって言ってなかったっけ?」
「そっそれは……自信がなくて、その……」
平常運転ね。おけおけ。
つうかリョウさん金ないのに何でこんなカフェに行ってんだ? 小遣いとか臨時収入でもあったのかな。勝手にどっか行ったと思ったらこんな店行ってるって虹夏さんにバレたら怖いんじゃないか。
でも後藤さんリョウさんに呼ばれたのか。
ならタイミングは悪くないかもしれない。
「ゆ、ゆうくんっ……着いて来てくれる……?」
「ああ、その店までなら一緒に行ってもいいよ。けど俺はカメラ買いにその辺歩きまわるからリョウさんには一人で会うんだぞ」
「え、えぇ!? なっなんで」
「一眼レフ買うってさっき言ってたの聞いてなかったのか?」
「かっ歌詞の事で頭がいっぱいになってた……」
どうりでさっきずっと黙ってるなと思ってたらそういう事か。黙ってるのはいつもの事だけど。
「行き先が決まったんならさっさと行こう。リョウさんを待たせても悪い」
「うぅ……」
自分から歌詞見せたいってメッセージ送ったのに何故行くのを渋る。
いそいそと立ち上がりいつもの裾を掴んでぴったりとくっついてくる後藤さん。もはや何も思うまい。
────
約十分程歩くと。
目的の店に着いた。
「ここだな。じゃあ俺は行くわ。また後で迎えに行くぐぁらあッ!?」
「ままま待ってください……!」
いきなり襟首引っ張られたら意識飛びそうになるからやめろって言ったのにこいつ……。
「げほっごほっ……テメェ殺す気かゴルァッ!!」
「あぁうぅごめんなさいぃ……!」
「ったく……何だよ。リョウさん待たせてる場合じゃないだろ」
「あの、ゆうくんは歌詞、見ないのかなって……」
え、そのために俺一瞬意識飛ばされかけたの?
「俺が先に見てどうすんだよ。そういうのはまず実際に演奏して歌うメンバーに見せるのが筋だろ。俺は別にアドバイスできる程詳しくないし後でもいいよ」
「じゃ、じゃあせめて一緒にお店の入口まで来て……」
「そっちが本音かこの野郎」
こうなればいつまで経っても入らないだろう。
仕方なく後藤さんの手を引いて店のドアを開ける。店員さんのいらっしゃいませという声が店内に小さく響く。
「あっへっ、へい大将やって」
「うるせえいらん事言うな。すいません、友人と待ち合わせしてるんでこの子奥に案内してもらっていいですか? 自分はまた後で来るので」
「ぼっち、こっちこっち」
リョウさんが奥にいた。
というかあだ名とはいえ人がいる場所でぼっちって呼ばれるの中々にやばいな。本人は気に入ってるらしいからまだいいけど。
「じゃあまた後で迎えに行くから」
「あっはい。また、後で……ふへっ……」
店の外に出る。
俺は俺で用事を済ませますかね。ところで何で後藤さんは笑ってたんだろう。オシャレな店に入れたから調子にでも乗ったか?
まあそんな事はどうでもいい。まずはスマホで店舗検索して、と。
────
そして無事一眼レフ(約八万円)を買い終えた俺は適当にぶらついていた。
何気に人生で一番高い買い物をしたかもしれん。それが一眼レフって、中々オサレなのでは? 高校一年の割に乙な買い物をしたのでは? ふへっ。
せっかくだしこの際アー写以外にも持ち歩いて色々撮るのもありかもしれない。使える物は使わないとな。
ある程度の使い方は店員さんに聞いていた。F値やらISO感度やらシャッタースピードの設定とか撮影モードがどうのこうの言っていたが、まあ後からどうとでもなるだろう。
基本設定はしたし、いつでも撮れる状態にしておく。少し青暗くなってきた空。こんな景色でさえも今はシャッターチャンスと思ってしまうほどカメラマン気分になっていた。
一眼レフ持ってるだけでカメラマンになったような錯覚に陥る。結束バンドのみんなの事もいつかアルバム作る時用に写真撮らせてもらうか。
カメラを首に提げ不思議と高揚していた気分に身を任せながら歩いていると、ロインの通知音が鳴った。
案の定後藤さんだった。終わったから迎えに来てとかかな。そんな風に思って画面を見たら少し違った。
『たすけて』
「……あん?」
────
「食い逃げする気だったのか貴様らは」
「あっうっ……」
「滅相もございません優人様」
「うるせえ山田一文無し」
「そんな芸名みたいに言われるとは思わなかった」
後藤さんからのロインを見て急いで店に向かった俺を待っていたのは、お金がないから救援依頼をしてきたリョウさんと後藤さんであった。
舐めとんのかこいつら。
「何でお金ないのにカレーなんか頼んだんですか」
「最近草しか食べてなくて常にお腹減ってたから我慢できなくてつい」
「それで、後藤さんからのロインがなかったらどうしてたんですか」
「虹夏に来てもらおうかと」
「ほんと良い度胸してるよアンタ」
図々しいの頂点極めてるヤツじゃん。
普通にやってる事クズだよこの人。後藤さん歌詞見る代わりにカモにされてるし。
「つうか後藤さんは何でお金持ってないの。財布持ってきてたよな?」
「あっその……た、多分ゆうくんのバッグに間違えて入れちゃったかもしれなくて……」
「え、いやいや何でだよ。そんなはず……うわっ、マジで入ってる! 何で!?」
黒のトートバッグの中を見てみたら本当に入ってた。怖い、何で。
「いつも隣に座ってるから自分の世界に入ってる間に無自覚に間違えて入れてしまったのかもって言ってた」
いや確かに白と黒の色違いなだけで同じトートバッグだけど、対極の色してんのに間違えて入れるなんてアホだろ。いや、後藤さんはアホだった……。
自分の世界に入ってる後藤さんはまともに周り見ないし、隣同士に置かれたトートバッグにミスって入れてしまう……可能性ならまあ、あるのか?
しかし事実として俺のトートバッグに入ってるからそうなんだろう。
後藤さんはまあ、まだ良い。
「はぁ……今日の所は俺の奢りでいいですよ。次回からは気を付けてくださいマジで。マジで」
「私の顔に免じて、ありがとう優人」
「うわっ、近寄ってくんな! 顔の良さだけ前面に出してごり押ししてくんじゃねえ!」
「来月には返すから」
「分かった。分かったから離れてくださいっ。ほんとに押してきてどうする!? 前回の伏線回収早すぎんだろ!」
くそう、こっちの分が悪すぎる。顔が良いってだけで武器にできるのズルいだろ。
何とかリョウさんを押し返す。心臓ばくばく言ってるけど多分ドキドキよりも恐怖の方だこれ。この人の目まじで感情籠ってない。
「じゃあ、私は帰る」
「もはや清々しいな」
「あっあの! 次は、頑張ります……!」
「うん、楽しみにしてる」
それだけ言って、リョウさんは帰って行った。
俺お金だけ払って終わったんだけど。なんて言い出せるはずもなく、何となく二人にとっては生産性のある話ができたんだと察した。
帰宅途中、俺は後藤さんからリョウさんの話を聞いた。
過去にバンドをやっていた事。青臭かったけど真っ直ぐな歌詞が好きだった事。だけど売れるために歌詞を売れ線に変え、それが嫌で揉めながらもそのバンドを辞めた事。バンドそのものが嫌になってた時に虹夏さんが誘ってくれて今がある事。
普段の行動はアレだけど、あの人にも色々あったんだな。
で、それを聞いた後藤さんは心の変化があったようだ。
「何か吹っ切れたって感じの顔してるな」
「……うん、私の好きなように書いていいって言ってくれたから……頑張る……!」
本当に、この時は良い顔をしている。
素直にそう思った。
「……そうか。じゃあ俺も期待しとくよ。最後に見せてくれよな」
「う、うんっ」
彼女は俺の一歩先を歩んだ。
今まで後ろか隣にしかいなかった姿が、眼前にある。
無意識だった。勝手に買ったばかりのカメラに手が伸びていた。
シャッターボタンを押す。
初めて買った一眼レフ。
その記念すべき一枚目は。
揺らぎつつも確実に一歩前へ進めたであろう少女。
後藤ひとりの後ろ姿だった。
アニメの予告映像見てもう震えてるよ俺ぁ。
目標のために高評価お気に入り感想ここすきお願いしまーす!!
では、今回高評価を入れてくださった
☆10:こっしあっんさん、ノリと勢いさん、フルーツポンチンチさん、s sさん
☆9:いっぱんじーにーさん、箱箱さん、ネコモチフンワリさん、ヴァイアさん、ハガネールさん、煎茶555さん
☆8:二代目:みたらし団子さん
本当にありがとうございます!
モチベ維持のために何卒!何卒~!!
明日明後日の更新はどうなるか分からんです。