再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
ぼざろ5巻を無事買えて読んでた。
相変わらず面白すぎんだろ……。次巻が既に待ち遠しい。
そして今日のアニメ8話は神回確定+虹夏EDかもしれないからもう楽しみでドキドキしてる。
絶対リアタイすっぞ。
梅雨も明けたとある休日。
既に夏の兆しを感じさせる暑さが外を焼く中、いつものようにスターリーに集まっていた結束バンド+俺。
四人はテーブルを囲んで雑談に花を咲かしているのに対し、俺はドリンクの補充や掃除を行っていた。
花の女子高生達(一人は例外)の会話に入るほど野暮ではない。単に話に着いていけないだけだ。じゃないと今日バイトじゃないのにドリンク補充なんてしない。
やれタピオカがどうだのパフェが何だのと言われても俺からすればそうなんだ凄いねくらいしか言えない。
いまだにタピオカがカエルの卵にしか見えないのは自分だけだろうか、と思っている時点で俺はきっと流行からの脱落者だ。
「えー諸君、お待ちかねの給料だぞ」
床掃除をしていたら店長が茶封筒を片手に店に入ってきた。
五つの茶封筒をまるで扇子のように扇いでいる。それが店長のする事か。
スターリーでは口座振込じゃなく現金で手渡される。
個人的にも直接手渡しで貰えるというのはありがたい。紙幣だから重くないはずなのに、自分の血と涙と汗の結晶がお金になってるんだと思うと重く感じるものである。血と涙は出してないけど。
虹夏さんを初め次々と給料が手渡され、最後に床掃除を終わらせた俺が受け取りに行く。
「ほい、清水の分。お前はあいつらより長い時間働いてるからちょっと多めだぞ」
「ありがとうございます」
そりゃそうだ。結束バンドがスタジオで練習してる間も俺はせっせとバイトに勤しんでたからな。
おかげで大体の業務は余裕でできるようになった。これが現金の重み。大切に使わせてもらうとしよう。
元々今日はバイトじゃないので軽い手伝いが終わると本格的にやる事がなくなる。
ちらりと後藤さんの方を見たら一万円を掲げて目をキラキラさせていた。まさかバイトの目的忘れてないよな。いやあの表情は忘れてる。目が$になってるもの。私用で使う気満々だあの子。
「はーい、じゃあせっかくの所で悪いんだけど、ライブ代徴収するねー!」
後藤さんの背後で何か小さな爆発音がした。まさかまじもんのスタンド持ってるのか……?
「聞いてください。新曲『さよなら諭吉』」
「ごめんね! 私だって心苦しいんだよ~!」
まあ、せっかく働いて得たお金がすぐに全部消えてしまうのも少し気の毒だ。
ましてや後藤さんからすれば文字通り汗と涙の結晶。慣れない事をしたのに自分のために使えないのは同情する。
気付いたら後藤さんは可燃ごみ箱の中に入っていた。恐ろしく早い移動。俺ですら見逃しちゃうね……。
リョウさんはリョウさんでドラムスティックで後藤さんの頬を突いていた。面白そうだなあれ。
「え~! アルバム作るのってそんなにお金かかるんですか!?」
「うぅん、せっかくならライブの物販で置いてみたいし、それにMVの撮影とかするのも結構お金かかるんだよ~」
「じゃあ夏休みは別のバイトも増やさないとですねっ」
「だね~。みんなで海の家とかでバイトしちゃう?」
「良いですねー!」
虹夏さんと喜多さんの会話を聞いて後藤さんがまた瞳から生気を失っている。
海の家とか後藤さん無縁だもんな。まず海行く前に太陽の光と陽キャの光で砂になってしまうのがオチだ。しかもそこでバイトなんてした日にはもう復活とかできないかもしれない。そもそも生き返れるのがおかしいんだけど。
貴重なリードギターに死なれては虹夏さん達も困るもんな。
「虹夏さん」
「ん? 優人くんどうしたの?」
「これ、俺の給料分なんで全部ノルマ代に使ってやってください。一応少し多めに入ってるはずなんで」
俺は茶封筒をそのまま虹夏さんに差し出す。
しかし、虹夏さんも素直に受け取ってはくれない。
「い、いやいやいやっ、さすがに受け取れないって! この前もカメラ買ってたでしょ! 悪いよそんなのっ」
「大丈夫ですよこのくらい。それに俺の出した給料分で余ったノルマ代の差額は皆さんそれぞれ手元に給料残るでしょ? それで新しい機材のために貯金とか楽器のメンテナンスに使えばもっと有意義にバンド活動できるだろうし、その方が良いと思いませんか?」
「いやぁ……まあ、それは~そうなんだけど……優人くんに甘えすぎるのも、良くないような……」
虹夏さんほどの人ならそう言ってくると思ってた。
実際の所、俺の言ってる事は7割事実で3割が別に思惑がある。思惑と言ってもただの懸念だが。
俺が少しでも負担する事でバイトの回数を減らす。そして夏休みに別のバイトをしなくていいようにさせる。これが俺の作戦だ。
何故そんな事をしたかというと、このままでは本当に海の家やら別のバイトをする羽目になって後藤さんがやらかす未来しか見えないからだ。
スターリーはまだ虹夏さんの姉である店長がいるし、今さっきまでゴミ箱に入ってても何も言われてないから良いが、これが他のバイトだと話は別になってくる。
できる事よりできない事の方が多い彼女が、ここ以外のバイトで成功する可能性はゼロだ。ドン引きされるかクビになるに決まってる。つまり、これは後藤さんのカス程度しか残ってない尊厳と、一緒にバイトしたら苦労させてしまう結束バンドのみんなを守るための手段なのだ。
「こんな事くらいしか俺にはできないんでさせてくださいよ。それでもまだ渋るなら、そうですね~。お礼は結束バンドが成長していく様子をこれからもずっと近くで見させてください。これで十分です」
すらすらとそれっぽく言える俺は中々の才能があると思う。
結束バンドの成長が見たいのは事実だし、これを聞き入れてくれたら助かるけど果たしてどうなるか。
「ん~……分かった! じゃあ優人くんの言葉に甘えさせてもらうねっ。その代わり、ちゃーんとお礼してあげるから! 将来は結束バンドで優人くんを養えるぐらい大きくなるからね!」
「お金には困らせないわ!」
「そこまでは言ってねえよ」
ヒモになりたいと言った覚えはねえ。いやできるなら楽はしたいけど。
話が飛躍しすぎだ。堕落宣言に聞こえた? なら訂正させてほしい。
横を見たらなんか後藤さんがリョウさんにギターを渡そうとしていた。
マジでちょっと目を離した隙にどうやったらあんなおもしろ事案になるんだろう。
後藤さんの奇行にも動じないリョウさんが言う。
「曲作ってきたんだけど」
倒れたゴミ箱の側面に置かれたスマホから残響だけが残る。
曲の終わり。俺を含めた五人がゴミ箱を囲み微かな余韻に浸る。
これは……。
「え……かなり良くない?」
「はい、とっても……!」
「リョウさん、凄いですね……」
「ぼっちの書いた歌詞見てたら浮かんできた」
俺にはよく分からんけど歌詞見てたらメロディー浮かぶ事ってあんの。想像ができん。
やっぱ何だかんだ音楽の事に関しては多才なんだなこの人。
後藤さんの書いた歌詞はこの前見せてもらったが、お世辞にも明るい歌詞とは呼べずむしろ暗い雰囲気ばかりだった印象がある。
だけどそんな歌詞も刺さる人には刺さるとリョウさんは言っていたし、俺も後で見せてもらった時は結構好きなフレーズなどもあり全然悪くなかった。メンバーから好評だったのもあって歌詞作りで睡眠不足だった後藤さんは無事に報われた訳だ。
「あたしの夢、叶っちゃうかもな……」
小さな声で、虹夏さんが呟いた。
虹夏さんの夢? 確かこの前は売れて武道館だー的な事言ってたはずだけど、その事なのかな。後藤さんも聞こえてたらしく、二人で顔を合わせるも首を傾げるだけだった。
俺達の疑問をよそに虹夏さんは立ち上がって、
「うぅしっ! 来月ライブできるようお姉ちゃんに頼んでくるね!」
「え? まだ言ってなかったんですか?」
「あれ……虹夏さん、ライブって確か」
「だいじょーぶ! この前もすぐ出させてくれたもん!」
最近色んな業務を教えてもらってるからこそ虹夏さんの発言に違和感があった。
個人的にライブハウスの事についてやバンドの事について色々調べてた時にも見かけた事がある。
ライブってそんな簡単に出られるようなものだったかと。
それを聞こうとした時にもう遅く、虹夏さんは店長に聞きに行っていた。
「ねっ、お姉ちゃん!」
「……は? 出す気ないけど」
「「「「……え?」」」」
結束バンドの声が重なった。
「な、何で? オリジナル曲もできたのに」
「それはこっちに関係ない」
急に空気が代わり不安に思ったのか、後藤さんが裾を掴んでくる。
すまんな、今の俺にはどうにもできん。今は見に回ろう。
「あ、集客できなかった時のノルマなら払えるよ!」
「お金の問題じゃなくて、実力の問題」
「こ、この前は出してくれたじゃん」
「あれは思い出作りのために特別にな」
「思い出作りって……」
前回のあれってそういう経緯でライブさせてくれたのか。
一人完熟マンゴー段ボールでライブしてたんですけどあれも思い出作りに入ってるんですかね。工作作りになってませんかね。
「普段デモ音源審査とかしてんの、知ってんだろ」
「そう、だけど」
そうだ。ライブハウスでライブをするには本来審査が必要なはず。
バンドの実力と集客が見込めそうじゃないと弾かれる事があるのだ。そして店長の発言からするに、今の結束バンドの実力ではライブに出すまでには達してないという事。
「悪いけど、五月のライブみたいなクオリティーなら出せないから」
「出せないって……じゃあ、あたし達はっ」
「一生仲間内で仲良しクラブやっとけ」
「ッ」
おそらく、店長の言っている事は間違っていない。
あの時のライブは素人の俺ですらお世辞にも上手いとは思えなかった。後藤さんの走りすぎるギターや、それに無理に合わせようと虹夏さんのドラムがリズムを狂わせ、リョウさんのベースも引っ張られてしまっていた。
あのような実力のままなら本来デモ審査の時点で落とされるだろう。
店長の言い分は正しい。そんな事は分かりきっている。ライブハウスを経営するにあたって正論を言っているに過ぎない。
でも、だけど。
自分のスカートを掴んで悔しさを滲ませている虹夏さんを見て思ってしまった。
そんな言い方はないんじゃねえのかと。
姉妹の間柄だからこそああいう言い方をするのだろうが、それは何だか今頑張ってバンドをしている彼女達が認められていないような気がして。
結束バンドはあの時のままなんかじゃない。喜多さんも戻ってきてバンドとしての力も付けてきている。
ちゃんと成長しているんだ。
だから、
「っ、てんち」
「いまだにぬいぐるみ抱かないと寝れないくせに~!!」
虹夏さんの声に遮られて止まってしまう。そのまま彼女はスターリーから出ていってしまった。
……何て可愛らしい捨て台詞なんだ。おかげで冷静さを取り戻した。
「何だ今の捨て台詞は……」
そして店長の表情を見て気付いた。ああ、そうだった。この人は思っている事を素直に言葉にできない不器用な人だったと。
店長の言葉を思い返す。あの人は立場上からして当たり前の事しか言ってなかった。何も間違ってはいない。
言葉通りの意味を捉えるとするならば。
正しい手順を踏めと、そう言っている。
「はぁ……言葉と態度で誤解されやすいタイプだな店長って……」
リアルのツンデレなんて所詮は誤解しか生まないものなのだろうか。
「ぬいぐるみってこのウサギとパンダの事?」
「あら可愛い」
リョウさんが突然スマホを見せてきた。
おそらく家のソファで寝ている店長がよれよれのウサギとパンダのぬいぐるみを抱いていた。よれよれなところを見ると相当な年数使い倒してるなこれ。相当好きなんだろうか。
「だあああその画像消せ! 今すぐに!」
前言撤回。やっぱツンデレは可愛い。※ただし女性とベジータのみに限る。
「リョウ先輩何してるんですか! 追いかけますよ!」
「えー……」
「面倒そうにしないで! ほらっ、後藤さんも清水君も、行きましょ!」
喜多さんがめんどくさそうにしているリョウさんの背中を押しながら階段を上っていた。
隣の後藤さんは作画崩壊していた。その技術は何なの。
後藤さんに裾を掴まれたまま階段を上がっていると、
「待って、ぼっちちゃん。それと清水も」
「はっはい!?」
「何ですか?」
店長から呼び止められカウンターまで戻る。
PC作業を続けたまま店長が言う。
「虹夏に伝えて。ライブに出たいならまずオーディション。一週間後の土曜日に演奏見て決めるからって……何してんの?」
「格上の相手にはとことん下手に出てるだけです。気にしないであげてください」
全身ピンクは床に寝転がって犬がよくやるあのポーズをしていた。
「せ、精一杯服従心を表現しようと……!」
「早く追いかけないと見失うんじゃないの?」
「ワンッ!」
何してんだこの子。気分まで犬になってどうする。それとも首輪持ってこようか?
店長は店長で服従ピンクの写真撮ってるし。やっぱ後藤さんの事気に入ってるなこの人。後藤さんにだけ結構言葉遣いが優しいもの。
ぬいぐるみ好きらしいし、可愛いもの好きというか小動物系が好きなのか?
後藤さんが小動物……プランクトンは小動物に入るっけ? ミジンコとか?
「じゃあ俺達も虹夏さん探しに行ってきます。店長、妹だからってあまり虹夏さんにキツい言葉言っちゃダメですよ」
「お、お前が怖い顔して見てくるからこっちも強張ったんだよっ。傍目からでも黒いオーラ出てたぞ……」
「いやだって虹夏さんに酷い事言うから……勝手に自己完結したんで大丈夫ですけど。店長ってほんと素直じゃないですよね」
「あ?」
おっと、これ以上はいけない。下手に刺激してしまうと後藤さんまで怖がってしまう。
さっさと後藤さんを立ち上がらせる。
「では失礼しまーす。ほら、行くぞジミヘン二号」
「ワッ……あっ、はい」
犬が染み付いてない?
店長も可愛いなって。
明日はさすがに更新できないかもしれない。
では、今回高評価を入れてくださった
☆10:灰塵のヴァンさん、綿本流さん
☆9:よしよしjさん、KURO蓮夜さん、メヴィさん、ロメロケビンさん、師匠と弟子さん、まなつ5000さん、ユウ730さん、煎茶555さん、降雪さん、深淵魚さん
本当にありがとうございます!
投票数500、お気に入り3000目指してるからみんな高評価とか諸々くれー!感想とかもお願いだー!
何で感想グッドボタン一日5件しか押せないんだろう。
気分はみんなの感想全部にグッドしてるからね。