再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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ぼざろアニメ最新話最高だったね……。
毎週神回しかできんのか!!

虹夏ED映像めちゃすこ。




24.男子は思春期ポイントを突かれると弱い

 

 

 猛暑の中ダイブして引っ付いてきた後藤さんを何とか引きはがし、再び玄関の中へ入る。

 

 

「後藤さん、これお土産。ご家族で召し上がってねっ」

 

「あっえっ、あ、ありがとうございます……わぁっ……!?」

 

「お、どんなのどんなの? 後藤さん俺も見せて。くぁっ!?」

 

 な、何だこの紙袋から物理的に発せられているオシャレの光は!? 眩しすぎて中身が見えん! 

 だんだん陽キャ耐性無くなってきてるのか俺。それとも単純に喜多さんの陽キャ力が強すぎるだけなのか。まさか陽キャ力53万ある? 

 

 

「もう、何で清水君がお土産覗くのよっ」

 

「や、だって俺週に三~四回はこの家来てるし晩ご飯とかも親子共々お世話になってるからな。もちろん食材食費は半分出してるし手伝ったりもしてる。そもそも親同士が仲良いんだよ。つまり、ほぼ第二の家族ポジションの俺にも喜多さんのお土産を召し上がる権利がある! はい証明完了QED!」

 

「ふ~ん? そうなのね。でもこれは後藤さんのご家族分しかないから清水君の分はないわよ?」

 

「なん……だと……!? おい後藤さん、眩しくて何入ってるか分からんけど半分こしよう。それが平和への打開策だ!」

 

「えっあっ」

 

 何でそこで即答しない。もしや自分一人で食べようとしているな? ずるいぞ、俺だって貴重な休暇を強制的に連れ出されたんだからちょっとくらいご褒美があったっていいじゃない! 

 オシャレなよく分からないものでも食べたい! だってオシャレなんだもの! 

 

 

「清水君の分はまた今度ね?」

 

「マジで? じゃああの光ってるやつがいい! 正体不明感が気になる!」

 

「光ってる……? うん、じゃあ同じの買ってくるから、今日のは食べちゃダメよ?」

 

「了解した。おい一日巡査部長、さっさと姫達を案内するんだ。上か? 上だな。上だろ」

 

「あっうん……」

 

 もたもたしてないで早くご案内するんだよぉ! その謎のタスキは飾りかぁ!? 

 何で一日巡査部長なんだよちょっと下の階級じゃねえか。そこでまで自己評価の低さ表さんでいいから。

 

 

「そうだ。私映画も持ってきたんです!」

 

「こらこら、ライブのTシャツデザイン考えるって言ったでしょ? みんなバラバラの服よりお揃いの方が一体感というかバンド感出るしね」

 

 ちなみに映画のジャンルによっては巡査部長死にますけど大丈夫ですかね。割とすぐ殉職しますよその人。

 案内されたのは俺にとってはもはや行き慣れた後藤さんの部屋。さっき靴を見たけどやっぱ美智代さん達は出掛けてるようだ。可愛い妖精ちゃんはどっかにいるっぽいけど。

 

 

「今日あたし達は遊びに来たんじゃないんだから。いいね?」

 

「こ、こっちです……」

 

「ん?」

 

 後藤さん? 何かただでさえない声の覇気が余計無くなってる気がするんだが、どうしたんだ。

 ……あ、そういや部屋中に貼り散らかしてたアー写はどこかに仕舞ったのか? 一回アレを見た時はいよいよ精神病院行かせるか迷ったけど、全部剥がさせたし大丈夫のはず。

 

 その前に、だった。

 襖の隙間からカラフルな光が漏れているのが見えた。もう嫌な予感というより確信しかねえ。こいつ何かやってるわ。

 

 いっその事襖を勢いよく開けて中を確認する。部屋の主の趣味とは真逆の光景が広がっていた。

 暗がりの部屋を照らすミラーボール、カラフルな風船達、壁に貼られたPARTY PEOPLE YEAHのシール、誰だこいつらと言いたくなるナイトプールのポスター、『ようこそ! 後藤家へ』と書かれたミニ横断幕。

 

 なんかもう、なんかもう可哀想に思えてしょうがなかった。なになんなのこの子もう。

 幼馴染の俺以外で初めて友達が来たから盛大に出迎えたかったんだろうけどさ。ただ、玄関でも思ったが方向性がぶっ飛んでる。普通の迎え方が分からなくてただ豪華にすればいいと思ってるとこがやばい。

 

 これじゃ誰かの誕生会みたいになってるじゃん。同性の友達が来て完全に浮かれてますやん。

 余程嬉しかったんだろうけど……悲しいなあ。今日は遊ぶんじゃなくてTシャツデザインするだけだもんなあ。そりゃ声にも覇気なくなるわ。

 

 

「あっえっ、全部片づけますね……」

 

 おもむろに針を取り出して風船を次々と割っていく一日巡査部長。

 ねえちょっと見てらんないよ! あまりにも背中が悲しすぎるもの! 自分だけ浮かれて私ってバカみたいとか思ってそうなオーラ漂わせてるもの! 

 

 

「(虹夏さん喜多さんフォロー! フォロー早く!!)」

 

「え!? あぁえっと、やっぱちょっとは遊ぼうかなあ!?」

 

「そ、そうですね! 賛成です!」

 

 よしナイスだ二人共。これで少しは後藤さんの心も軽くなるはず。

 と思ったけど背中は黒いままだった。あれ、ピンクジャージなかったっけ。何で部屋も暗いのにあの背中はもっと闇のように黒いの。

 

 

「よ~しよしよし、友達のために飾り付けよく頑張ったなぁ。初めての友達だもんな、偉いぞ~。後藤さんは偉い。そう、生きてて偉い! いいですか虹夏さんッ! 後藤さんは生きてるだけで偉いんですよッッッ!!」

 

「何急にどうしたの!? 優人くんもたまによく分からなくなる時あるんだけど!」

 

 ちくしょう俺だって何言ってるかよく分かんねえよ! ただこの子のメンタルケアするこっちの身にもなってほしい。

 繊細なんて言葉すら足らないほど豆腐メンタルなんだから。いいや息吹きかけるだけで消え去る灯火みたいなものなんだよ。ヒトカゲの尻尾の火みたいに消えたら死んじゃう訳。分かる? 

 

 小さな子供をあやすように頭を撫でると多少は背中の闇が晴れたのか、後藤さんもようやく顔を上げた。

 ははっ、部屋暗いしサングラスに付け髭してるからどんな表情してるか一切分かんねえや! 

 

 

「じゃ、じゃあ飲み物取ってくるね……。あっ楽にしててください……」

 

 後藤さんはスライドしたまま部屋を出ていった。ん? スライドしたまま……? 何を言ってるんだ俺は? 

 

 

「それにしても凄い飾り付けだね~。優人くん知ってた?」

 

「元々オフだったんだから知る訳ないでしょ。後藤さんがこんなパリピグッズ買ってた事がまず驚きです。いったい何回死んでは生き返るのを繰り返した事やら」

 

 多分置き配だとは思うけど、こんなミラーボールとか検索するだけで消滅しかねないぞあの子。

 

 

「でもギターとかエフェクター何もありませんねぇ」

 

「だねぇ」

 

 言われてみれば確かに。いやおそらく押入れの中に入れてあるんだろうけど。

 

 

「私、もう少しロックな感じの部屋してると思って──」

 

「喜多さん? どうし……ああ、これか」

 

 急に黙るから何かと思ったら盛り塩とお札を見ていた。

 普段明るい部屋で見てるから何も思わんけど、暗いとこで見たらやっぱり雰囲気あるな。和室だしまるでお化け屋敷だ。

 

 

「これは……ロック?」

 

「うっ……め、めちゃくちゃロックしてるね~……」

 

 ええ、これはロック(封印)してますねえ。何かを封じ込めてるか絶対に見るなという暗示か。

 俺は理由知ってるけどお二人には想像力でも膨らませておいてもらおう。ホラーなのも夏の風物詩である。

 

 

「ほ、他にはロックなとこあるかな~……? ぁいったぁ!?」

 

 暗いせいで虹夏さんが何かにぶつかった音がした。

 そこからバサリッと大量に紙のような物が落ちる。あ、それってもしかして。

 

 

「うぇっ!?」

 

「何でアー写がこんなにたくさん……?」

 

 呪いのアー写およそ百枚以上のご降臨である。

 虹夏さんが驚く理由も喜多さんが疑問に思う理由も非常に理解できる。何せ俺も初めて見た時はさすがにドン引きした。だって部屋中くまなくアー写しかないんだよ? 異様な光景で異世界転生したかと思った。

 

 アー写が落ちたのに連鎖して他の物も床に落ち、その振動で押入れの中にある物までドガガンッと落下し激しく振動した。

 貼ってあったナイトプールのポスターは貼り方が甘かったのか振動で剥がれ落ちる。その壁には大量のお札が何重にも貼られていた。

 

 

「「ひぃぃぅぅっ!?」」

 

「え、ちょ、どうしたんすかいきなり」

 

 虹夏さんと喜多さんが俺の両腕にしがみついてきた。

 

 

「あ、あたし怖いの無理なんだってー!?」

 

「清水君この部屋何回も来るんでしょ! どうにかしてよぉ!」

 

 ちょっと涙目になってる虹夏さん。マジで無理なのか。

 あと喜多さん、どうにかできるならそうしてます。できないからお札とか貼ってあるまんまなんです。あと多分機能してない。

 

 

「でっかいのもあるよ」

 

 突然背後から可愛らしい声が聞こえた。

 

 

「「ひぁぁあああああっ!?」」

 

「いだだだだだだだっ!? ちょ……う、うでっ、腕が、俺の腕があッ!?」

 

 ガチビビりしてる人の力強すぎない!? 普通に二の腕がもがれるぅぅぅううううううううっ!? 

 やっぱお化け屋敷とかでいきなりしがみ付いてくる女子とかいるけどあれ絶対怖がってないよ。俺には分かる。だってガチじゃないもの。本気なら筋肉潰されるかと思うくらい痛い!! 

 

 

「ふたっ、二人共、あれ見て! 幽霊とかじゃないからっ! よく見てそして俺の腕を離してぇ!?」

 

「「……え?」」

 

「あのね、この写真部屋にいっぱい貼ってたんだよ! すっごく気に入った写真なんだって! でもお母さんに目がチカチカするから剥がしなさいって言われてね、ゆーくんにも怒られたんだよ! あとそっちのお札はお姉ちゃんがお化けに憑りつかれたから貼ってあるんだー! 以上、説明おーしまい!」

 

 暗い部屋の中、ミラーボールに照らされた妖精とオトモがいた。

 

 

「もしかして……後藤さんの妹?」

 

「はいっ、初めまして! 後藤ふたりです! 犬はジミヘン」

 

 ようやく虹夏さん達から解放される。大丈夫? 俺の腕残ってる? 

 

 

「ゆーくーんターックル!」

 

「おっと、今日も元気だなふーちゃんは」

 

「あれ? ゆーくんいつもの高い高いは?」

 

「ごめんな、今お兄ちゃん腕の感覚ないんだ。もうちょっと後でならできると思うよー」

 

「え、優人くん腕大丈夫? ほんとにお化けとかじゃないんだよね?」

 

「怖いわ……」

 

 おいもしかして無自覚だったのか貴様ら。人の腕をこんなにしておいて! 

 という冗談はここまでにしておいて、まず部屋の電気を点けないと。ミラーボールいい加減鬱陶しいわ。パリピはこんなので楽しい気分になれるのか。頭ハッピーセットなのかな。

 

 

「ふーちゃんはジミヘンと遊んでたのか?」

 

「うんっ、今日はお姉ちゃんがお友達連れてくるからお母さん達はお買い物行ったんだけどね。ふたりはどんな人が来るか気になったから隠れてたの! どう、ビックリした!?」

 

「うん、主にそこの黄色と赤のお姉さんがねあだっ」

 

「色で言うな」

 

 虹夏さん最近俺へのツッコミ強くなってない? いや、脳天チョップは店長譲りの可能性あるな。

 といっても事実を言ったまでだよ俺は、だって黄色と赤じゃん。パプリカじゃん。

 

 

「ふーちゃん、この黄色いお姉さんが伊地知虹夏さんって言うんだ。別名は天使だよ」

 

「天使って何!? ……まあいいや。虹夏って呼んでいいからね、ふたりちゃん!」

 

「うん、虹夏ちゃん!」

 

 良い返事だぞ小さな妖精さんや。

 待てよ、よく考えたら天使と妖精のコラボって普通に凄い事なんじゃ……? どうしよう、こっそり写真撮ったらダメかな!? ダメだ、手元にはスマホしかねえ。一眼レフ家に置いてきちまったちくしょう!! 

 

 仕方ないので気を取り直す。

 

 

「で、こっちの赤いお姉さんが俺と同じクラスの喜多いk」

 

 瞬間。

 バァンッ! といきなり壁ドンされた。相手はもちろん赤い彗星のキチャアだ。

 

 

「し・み・ず・く・ん?」

 

「な、何でございましょうか……?」

 

「下の名前はダメって言ったわよね?」

 

「え? いや、初耳なん」

 

「言ったわよね?」

 

「ひゃい……」

 

 この子最近笑顔で人を殺せるんじゃないかって思えてきたんだけど。壁ドンって普通男女逆じゃないの? 

 ドキドキ赤面するやつでしょ。今の俺ドキドキはしてるけど顔は青ざめてるよ。色々逆すぎん? 

 

 

「ふーちゃん、このお姉さんの事は喜多ちゃんって呼ぶようにね……」

 

「分かった! ゆーくん震えてる?」

 

「きっききききき気のせいだよ」

 

「あははっ、ゆーくんお姉ちゃんみたいになってるー!」

 

 それは面白がってるのかバカにしてるのかどっちかな? 後者の場合は後藤さんが消え去る事になるけど。

 

 

「ていうか優人くん、ふたりちゃんの事ふーちゃんって呼ぶんだね?」

 

 電気も点け後藤さん待ちの間に虹夏さんが聞いてきた。

 ふーちゃんは後ろから俺に抱き付いてぴょんぴょん跳ねている。あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~。

 

 

「前まではふたりちゃんって言ってたんですけどね。母さんが昔みたいにふたりちゃんの事もふーちゃんって呼ぶから、俺もそう呼べってふーちゃんに言われたんですよ」

 

 それ以降はずっとふーちゃん呼びである。

 確かにふーちゃんの方がこの子の可愛さがより一層輝くので俺もすぐ馴染んだ。ちなみにジミヘンはジミヘンのままだ。

 

 

「昔みたいって事は……ぼっちちゃんの事も昔は違う呼び方だったの?」

 

「……」

 

 少し痛い所を突いてきたな虹夏さん。勘の良い天使は嫌いじゃないよ。

 いや、まあ、別に隠す必要も何もないけどさ。こう、思春期特有のアレが発動してしまう訳でしてね。

 

 

「ほれほれ、虹夏お姉ちゃんに言ってみなさいなぁ。何て呼んでたのー?」

 

 ああん!? 虹夏お姉ちゃんって何だコルァ!? そう呼んでもいいですか!? 

 と揶揄う余裕もなくなるほど近づいてくるので俺は折れた。

 

 

「昔は、その……ひとりちゃん、とか……ひ、ひーちゃんって……呼んでました……」

 

「えー!? 何それ!? いいじゃんいいじゃんっ、何で今もそう呼んであげないのさー!」

 

「後藤さんもそっちの方で呼ばれたいと思ってるんじゃない?」

 

「いや、それはその……再会したのが中三だったし、その歳にもなって再会した途端名前とかひーちゃん呼びできる訳ないでしょ……。こっちだって恥ずかしいんですよ! 思春期男子の悩み舐めんな!」

 

 くそう、くそう、何だこの辱めは。何で女子に囲まれてこんな話しなきゃならんのだ俺は。

 早く戻ってこいよ後藤さん。飲み物持ってくるだけで何分かかってんだ。おそらくジュースがいいのかお茶がいいのかでずっと迷ってるんだろうけど、早く来てこの空気をお得意の奇行でぶち壊してくれ。

 

 

「へぇ、可愛いとこあるじゃん優人くん」

 

「清水君って意外と初心なのね!」

 

「言っとくけど男に可愛いは褒め言葉にならねえからな!? そこんとこ勘違いしないように!」

 

「ゆーくん声うるさーい!」

 

「あぁ~ごめんな~お兄ちゃんうるさかったな? もうちょっとボリューム抑えるからねぇ~」

 

「将来親バカ確定だねあの男」

 

「子供好きってポイント高くありません?」

 

 

 今誰かバカって言った? 

 

 

 

 





ギャグ回が面白すぎて全然進まん……。
勝手に喋る喋る。


では、今回高評価を入れてくださった

☆9:しかも味は牛丼wさん、Kurorinさん、黄ムの介さん、匿名希望の柄付きコンカッションさん、遊技林さん、ヨーゾン酸素さん、星野優季さん、煎茶555さん、指差し確認ヨシッ!さん

☆8: ラララコッペパンさん

本当にありがとうございます!
そろそろ伸びづらくなってきたのかなぁと思いつつも承認欲求モンスターは止まれないんだ。
みんな高評価、感想、お気に入り、ここすき、是非ともよろしくね!!



明日(日曜)は更新ないかもです。

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