再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
ひっさしぶりに活動報告更新しました。
軽く覗いてやってくだしゃい。
ライブTシャツのデザインを決めるという本来の目的に取り掛かっていた俺達の元に虹夏さんのタブレットから通知音が鳴った。
「お、リョウからもたくさんデザイン案が届いたよ!」
「見たいです! 見せてください!」
「意外とちゃんと考えてたんだなあの人」
絶対街ブラしてるかと思ってたわ。
さすがにリョウさんも結束バンドの事を思ってくれてたんだね。心の中で謝っておこう。
「ん? な、何これ?」
「カレー?」
「どういう意味があるんだ……?」
リョウさんから送られてきた画像を見ると、Tシャツの真ん中に美味しそうなカレーの写真が貼られていた。
やけにリアルな画像だな。リョウさんの事だ、きっと何か深い意味があるかもしれない。えっと……そう、結束バンドのメンバーはみんなカレーのルーとライスのように相性が良いとか。
いや、それでも割とダサいか。
虹夏さんが次の画像を出す。
「んん?」
「今度はお寿司ですね」
「寿司……寿司……」
何だ、酢飯とネタの相性の良さがまるでメンバーを表しているとかか? いやこれじゃカレーと一緒だな。
俺には分からない深い意味をリョウさんはカレーと寿司に見出している……?
虹夏さんは頭上に? マークをポンポン出しながら画面をスライドした。
何故かデザインTの画像ではなく風に揺られて干されているTシャツと共に、こう書かれている。
『晩飯、どっちがいいかな?』
「自分で考え……優人くんが般若じゃなくて不動明王みたいな顔してる!?」
「怒りのレベルで顔が変化するんだわ!」
あんのベーシスト……こっちがどんな意味か探ってたってのにただ晩飯悩んでただけだと……?
虹夏さんの手を煩わせやがって……次会ったら小一時間ほど問い詰めてやる。やっぱり街ブラしてたんじゃねえか。
「あっあの……!」
体ごと体型変化してやろうかと思ってたらいつの間にか後藤さんが復活していた。
しかもお絵かき帳を手に持っているという事はデザインを終えたのだろう。確か遊ぶ前も真剣に描いてたし完成間近だったのかね。
「わ、私のデザインも見てくだされば、と……」
自分の家だからかいつもより積極的だな。
星型サングラスに付け髭を再び装着し、後藤さんは立ち上がって閉じていたお絵かき帳を開く。
それは赤いTシャツに多数のファスナーがあり、中学生男子が好んで着そうな謎の英語フォント、裾の辺りは破かれ、あとはなんか鎖があった。
豪華に2ページ分使って描かれた後藤さん作のデザインを見て、咄嗟に口から出たのは素直な言葉だった。
「ど、どうでしょう? おしゃれすぎますかね……?」
「ダっっっっっっっっっっっっっっっっっむがっ!?」
思わず大声で言いかけていた所を慌てた虹夏さんに口を手で閉ざされる。
サンキュー虹夏さん、もう少しで本音が出て後藤さんに止めを刺すとこだった。にしても、にしてもだ。何で女子高生が中学生男子の好みそうな服を的確に選出してるんだ。
右腕まで変形してた俺の腕もあまりのダサさに元の形に戻っている。
しかもアレを本気でかっこいいとかおしゃれと思ってるのがもうヤバい。思考回路男子中学生じゃん。
「これだとライブ中、服の方に目が行っちゃいますよね……」
「うん、色んな意味で」
それが目的か。おしゃれな服にみんな視線を奪われて自分を見ていなければまだ楽に弾けると思ってるんだろうな。
逆だぞ。むしろ奇異な目で見られると思うよ。今時アレ着る子がいるのとかなっちゃうからね。
ちなみに俺は中学生の時にあんな派手な服は着た事ない。家事と夕飯などの買い物ばかりで服を買いに行く事なんてほぼなかったからだ。
いつも父さんがたまに買ってくるような無地のシンプルな服ばかりだった。今となってそれが当たり前だと思えてた事に感謝である。女子目線では普通にナシっぽく思われてそうだし。
「その大量のファスナーと鎖は何に使うの?」
「あっファスナーはピック入れで、鎖はギターストラップにもなります」
「意外と実用的!」
「ピック入れそんないらんだろ」
ファスナーありすぎたら洗いにくいので却下。俺じゃなくて美智代さんに迷惑かかるだろそれ。
そんな事は許しません。せめてもっと少なくしなさい。あと謎フォントもやめなさい。やめて。
「へへへっへへっへへっ、じゃあこれが採用という事でよろしいでしょうかっ? ふへっ、へひっ……」
「それは……どうかしら……」
なんつー気持ちの悪い動きをしてるんだこのピンク。人間のできるウネウネの動きを超えてるぞ。
めちゃくちゃ自信作だからって採用される前提で進めるの最高に調子乗ってるな。悪いけど100パーないよ。
すると後藤さんのセンスに疑問を持ち始めた虹夏さんがおずおずと口を開いた。
「も、もしかして私服もこんな感じなの?」
「あっ、服はお母さんが買ってきてくれるから違います……」
「そうなの?」
「いっ一度しか、着た事ないですけど……好みじゃない、から……」
途端に座り込んで俯く後藤さん。長い前髪の隙間からたまにチラチラとこちらを見てくるが、すぐ目を逸らす。俺に何を求めてるんだろう。微かに顔も赤いような気もする。
助けを求める目線とは、違う? 何だ、後藤さんとのアイコンタクトは割と自信あるけどこれに関しては分からない。というかサングラスが邪魔すぎる。外せ、それじゃできるフォローもできないでしょうが。
と、必死に何を訴えているか考えている俺の隣で虹夏さんのアホ毛がピンと跳ねた。
「え~! 見てみたい!」
「私もジャージ以外の後藤さん見た事ないです!」
「ね~、お願い! ちょっと着てみて~!」
虹夏さん何か猫耳生えてません? 獲物見つけた猫みたいになってるけど。
喜多さんもノリノリになってるし。なるほど、後藤さんはこれを予期して俺に助けを求めようとしてたのか。サングラスのせいで上手くは分からなかったが多分そう。いや分かんない。
「えっ……」
「「お願いおねが~い!」」
「あっうっ……ゆ、ゆうくん……た、助け」
「「お願いお願いお願いお願いお願いおねが~い!」」
「……わ、分かりました……」
【悲報】後藤ひとり、押しに押されて折れる。
「よぉ~し! じゃああたし達外で待ってるから着替えてね! 終わったら襖をノックして! さあ行くよ、喜多ちゃん優人くん!」
「はい!」
「後藤さん、まあ……どんまい」
襖を閉める瞬間、部屋の中にはこちらに手を伸ばそうとしていた彼女の最期の姿が映った。
今度は霧散しない事を祈っておこう。
壁があると言ってもたったの襖一枚だ。防音もくそもないので着替える音が中から普通に聞こえてくるのを避けるため、俺は階段の方へ移動していた。もちろん虹夏さんと喜多さんも。
てかちゃんと私服を着れるのかあの子。さすがに途中で着方分からなくなるとかないよな。
「そういやさ、ぼっちちゃん一回だけ私服着たって言ってたけど、優人くんはそれ見た事あるの?」
階段で座っている虹夏さんからの質問だった。
別に隠す必要もないしいいか。
「ありますよ。中三の時、たった一回の私服をいきなり俺に見せてきたのが最初で最後です」
「へーそうなんだ! 何で急に見せたのかな?」
「さあ? 突然部屋に呼ばれて行ったら中に私服着てる後藤さんがいたんですよ。いつもジャージだから驚いて俺も十秒くらい呆然としてましたね」
いつも通りギターでも弾いてくれるんだと思ってたらあれだもんな。さすがの俺もリアクションするのに時間掛かってしまったのを覚えている。
「清水君に見てほしかったとか?」
「どうだかねえ。確か階段上る前に美智代さんと会って、そん時に感想言ってあげてねって言われたの覚えてるから……多分美智代さんが買った服の意見が欲しかったとかそんなんだったんじゃねえかな」
「で、実際ぼっちちゃんの服装はどうだったの!?」
目をキラキラさせて聞いてくる虹夏さん。そんなに気になんの。いや、まあ普段からずっとジャージだし気にもなるか。
ただ、百聞は一見に如かずだ。俺の言葉よりも本物を見てもらった方が手っ取り早い。
「……ま、見りゃ分かりますよ」
しかし、美智代さんの趣味がまだ以前と同じなら、きっと甘い系の服なんだろうなあ。
ふーちゃんの私服とか見てもそんな変わってるようには見えないし、後藤さんの好みからは程遠いだろう。何せ彼女の好みが男子中学生のようなアレならば真逆にも程がある。
「え~ちょっとくらい教えてくれたっていいのに~」
「そうですよね~」
「じゃあ仕方なく少しだけヒントでも」
タイミング良く襖からトントン、とノックの音がした。
合図が来たから俺達は部屋の方に歩き出す。たった数歩分、この襖の向こうに久しくジャージ姿ではない彼女がいる。
俺は襖を開けるタイミングで、こう言った。
「普段の奇行を知ってて尚、めちゃくちゃ不覚だったんですが」
襖を開ける。
どうにか彼女には聞こえないボリュームに抑えて。
「衝撃すぎて数秒間目が離せなかった自分がいました」
部屋の中に入って俺達を待っていたのは、
「「こ、これは……!」」
奇しくも虹夏さんと喜多さんの表情は過去の俺に似ていた。
分かる。分かるよその気持ち。
着替えていた後藤さんの服装はセーラー風のリボンタイ付きのホワイトトップスに紺のロングスカートを履いており、まるでお嬢様学校に通う気品ある生徒のように思わせた。
見た目だけで言えば清楚なお嬢様だ。甘い雰囲気とか弱いオーラを漂わせて庇護欲を掻き立たせてくる完璧な容姿とスタイル。ただ顔がもうマジで嫌そうにしてるのが問題だけど。
「「か、かわいい~……!」」
そう、普通の私服になった後藤さんは虹夏さん達のリアクション通り、誰が見ても美少女の部類に入る。
いつもの奇行と猫背に俯きがちで二重顎になってしまうから忘れがちになるが、普通にしていればそこら辺にいるような女の子と変わらないのだ。
「後藤さん素敵~! こっち向いて! 一枚だけで良いから撮らせて~!」
「そうだよ、ぼっちちゃんは可愛いんだよ……!」
「あっうっ」
各々勝手にテンション上がってらっしゃる。一人だけ真逆に下がってる人いるけど。
なるほど、喜多さんは相手の見た目が良ければ大体誰でも良いんだな。リョウさんとか後藤さん性格や中身アレなのにこんな反応してるし。何だっけ、面食いって言うんだっけか。
虹夏さんは何か後方彼氏面みたいに腕組みして頷いてる。一応見た目は良いと元から思ってたんだ。
無理もない。普段が普段だからね。人として機能してない事の方が多いもんな。
「そうだっ。優人くん前も見た事あるって言ってたけど、その時もこんな感じだったの?」
「? ええ、まあ」
「なるほど……だからか」
「ですね」
何がだ。
「(多分ぼっちちゃんの可愛さと奇行のギャップを知ってるから優人くんって下心よりも理性が勝つようになっちゃったんだよ)」
「(教室で私と一緒に話してる時も、普通の友達としてだけの感情で喋ってる原因が分かりました。他の男子から感じる好奇な視線を一切感じないもの。私の相談に乗ってくれた時も純粋な善意しかないってすぐ分かったし)」
「(それにいきなりあんなぼっちちゃん見せられたら他の女子とか見ても何とも思わなそうじゃない? 何か慣れてる感というか、靡かなそうというかさ)」
「(私結構自分の容姿には自信あるんですけどね……)」
「(ん? 喜多ちゃん?)」
いきなり隅でコソコソ話しだしたんだけど、この状況どうすりゃいいんだ。
着替えさせられた後藤さん座り込んでじっとしたままなんだが。放置するのやめたげて。正直俺もどうしたらいいか分かんない。
いっそ俺も星型サングラス掛けようかと思ってたら、顔だけ青ざめたままの後藤さんがこちらに向いた。
「ゆ、ゆうくん……」
「ん? 何?」
「わっ私、の……服、ど、どう、かな……」
「え」
あの後藤さんが普通に服装の事について聞いてきただと……いや大分どもってたけど。
まずい、どうしよう。
以前は常にジャージ姿だったから衝撃受けてる間に咄嗟に聞かれて、内心慌てつつも平静保ちながら「何か見慣れねえな」って言ってしまった結果、彼女は霧散した。
その時は
どうする、今回は考える時間が少しだけある。曖昧だったり否定は確実に霧散エンドだ。
なら正直に褒めるべきか。これなら少なくともウイルス拡散は避けられるかもしれない。うん、ここは男として堂々と答えてやるべきだな、よし。
「あっ……や、やっぱりゆうくんからすれば似合ってない、かな……」
「いや、そんな事はないと思う」
「……え?」
そうだ、彼女に少しでも自信を持ってもらうために正直に言おう。
ネガティブに捉えないよう真っ直ぐにだ。
「普通に可愛いと思うぞ」
「……………………………………………………………………」
どうだ、言ってやったぞ。これで虹夏さん達もウイルスから守れる。
後藤さんも少しだけ自分に自信が持てるしWINWINのはずだ。そして虹夏さん達はいつまでコソコソ喋ってんだ。早く戻ってこい。
だが褒めたら褒めたで調子に乗るのが後藤ひとりだ。
変な笑い声でも出していつもの彼女に戻るんだろうと思いながら視線を後藤さんに戻すと。
「アッ……!」
後藤さんが徐々に霧散し始めた。
霧散し始めた……?
「は!? いや噓だろ!? 何で!?」
「え!? 何!? 電気消えたんだけど!? うわぁっ、ぼっちちゃんがどんどんしおれていく!?」
「後藤さんどうしたの!? 清水君何をしたの!?」
「いや何もしてないって! ただ服似合ってるかどうか聞かれたから正直に可愛いって言っただけで!」
「そんな事言ったらダメでしょ! 優人くんの言葉はぼっちちゃんの体には毒なんだから!」
「どゆこと!?」
褒め言葉が毒って何なんだよ。否定しても褒めても霧散されるなら何言えば正解だったんだ。
どうあがいてもバッドエンドとか無理ゲーすぎんだろ。
いや、その前に。
「窓開けて換気しねえと感染しちまう!」
「それこそどゆこと!? ウッ!?」
突然、虹夏さんが苦しみだした。
まさか……。
「Gウイルスの感染……!? くそっ、早すぎる!」
「Gウイルスって何なの清水君!? 伊地知先輩大丈夫ですか!?」
「ち、力が抜けていく……」
「伊地知先輩!? 清水君、これってどういう……ウッ!? ま、まさか私も……!?」
「ダニィッ!? 喜多さんもか! 換気してるはずなのに何で感染スピードが速いんだ!?」
何で俺だけ大丈夫なんだ……? まさか一度感染してるから耐性ができた……?
よく分からんけど今はこの状況をどうするかだ。
感染源である一人は死亡。
感染者二人もまもなく症状が出てくる。レベルによっては助からない危険性もあるが、解決策が思い当たらん。
どうしたものか……。
「いつも明るさだけで乗り越えようとしてすみません……」
Gウイルスの症状の一つ、自分も極度のネガティブになるのが出てきた。
「ギター上手くならなくてごめんなさい……」
陽キャの極みである喜多さんにも症状が表れてしまった。マジか、さすがの陽キャも体内からの侵食には勝てなかったっていうのかよ。
「可愛すぎてごめんなさい……」
あ、自覚あったのね。まあイソスタが趣味らしいし自分でそう思ってなきゃわざわざSNSで自分の顔晒さないか。
にしてもこの光景、誠に地獄である。
俺も過去に感染した時は大変だった。なんか産まれてきてごめんなさいとか言ってた記憶ある。
どうすればみんな元通りになるか考えないといけないけど、これって意図的に治せるもんなのか?
「うぅ、優人くん……無理矢理誘ってごめんなさい……バンドの事よく知らないのに巻き込んじゃってごめんね……」
だいぶ拗らせてきたのか、虹夏さんが俺の足元までずり寄ってきて足にしがみついてきた。
感染したら近くにいる人に対して潜在的に申し訳ないと思っている事まで吐き出させるのかこのウイルス。タチ悪いな。
というか虹夏さんもまだそんなこと思ってた事に驚きだ。
ほんとに明るさだけで頑張っていたのかもしれない。安心できるかは分からないけど、俺も座り込んでおそるおそる虹夏さんの頭を撫でる。
「だ、大丈夫ですよ虹夏さん! 俺だってもう好きでやってるんですから。それに今は色々勉強してるし、PAさんや照明さんにも機材の使い方とか少しずつ教えてもらってるんです。いつか結束バンドの役に立てる日がこれるよう、俺も頑張りますから、もうそんな事言わないでください」
「うぅ……」
どことなく、虹夏さんの表情が緩くなった気がした。治るかどうかは知らん。
しかし実際マシになってるかどうかは分からない。面倒すぎるだろこのGウイルス。どっかの研究機関に送った方がいいんじゃないのか。
「うぉっ……!? き、喜多さん!?」
今度は喜多さんが横から腰にしがみ付いてきた。
危うくバランスが崩れそうになるのを両手で支える。くそっ何だってんだ! 別に喜多さんは俺に申し訳ないと思ってる事とかないだろ!?
「清水君……私の相談に真剣に乗ってくれて親身に話も聞いてくれたのに……ずっとちゃんとしたお礼をできなくてごめんなさい……。誰にも言えなくて、どうすればいいのか分からなくて隠してた私に初めて気付いてくれたのが清水君だったのに……」
ええ……いつの話持ち出してんのこの子。とっくに終わった話されても何て言えばいいんだよこっちは。
と、とにかく何か言わないと離れそうにない。子供を諭す親か俺は……。
「あーえーと……あのーあれだ。喜多さん、別に俺は見返りが欲しくて相談に乗った訳じゃないから、お礼とかそんなのいらねえって。悩みも無事解決して喜多さんも結束バンドに入れた。それであの話はお終いなんだ。掘り返す必要なんかどこにもねえよ」
「あーうー……」
どういう感情なのかまったく分かんねえ……。
いきなり部屋の電気も消えてるし普通に怪奇現象だろこれ。まともに生存してるの俺だけじゃん。誰か助けてくれ~。
そんな俺の心の声が聞こえたのか、階段を上がってくる足音が複数聞こえた。
もしかして美智代さん達か!? ダメだ。今来たら美智代さん達まで感染してしまう!
かと言って今の俺は左足を虹夏さんに掴まれ、喜多さんには腰を掴まれて身動きができない状態。
襖を開けれないようにする事もできない。足音はもう襖の前まで来ている。今更声を出しても間に合わないだろう。
というかこんな光景見られて大丈夫なのか俺!? 後藤さん死んでるんだぞ!?
俺の悲鳴も出す間もなく、襖が開けられた。
「みんなーデザート食べない?」
「喜多ちゃんが持ってきたスイーツでも食べ……えええええええええ!?」
美智代さんと直樹さんがやってきて、この惨状を目の当たりにすると当然のように驚いていた。
感染しないのを見るに、血縁があるから大丈夫なのだろうか。
「ゆ、ゆう君……これはいったい……?」
美智代さんの問いに、俺は静かに手を合わせてこう言う。
弔いはしてやらないとな。
「俺以外の全員……ご臨終です」
そして、後藤家に両親の叫びとふーちゃんの笑い声だけが響いた。
リョウさんには本番は一人で頑張ってくださいとロインしたら何でだよと返ってきた。
ごもっともです。
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あの後、適当に南無阿弥陀仏とか言ってたら後藤さん以外元通りになり、直樹さんのご厚意により虹夏さん達を車で駅前まで見送った。
そして俺は自分の家、ではなく後藤さんの家へと戻る。
本当は次のバイトに行ってる最中とかに聞こうと思っていたけど、この際ちょうど良い。
部屋に行くと後藤さんは自然復活していた。
服装もいつもと同じジャージ姿に戻っている。
「あっゆ、ゆうくん。ま、まだ帰ってなかったんだね……」
「ああ、まあな」
部屋の飾りを片付けていた彼女は作業を一旦中止し、ギターを持つ。
「えっと……わ、私のギターでも聴く……?」
こちらに気を利かせてくれてるんだろうが、今は別にそういう気分でもない。
「それも良いけど、今は後藤さんに別件の用事があってさ」
「用事……?」
「ああ」
きょとんとした表情でこちらを見ている後藤さん。普通なら、想像できないよな。
さっきまでのふざけた空気感はどこにもない。俺と後藤さん、二人だけの空間だからこそ、腹を割って話したい事があったのだ。
俺は真っ直ぐ彼女を見据えて、言う。
ずっと気にはなっていたけど確信が持てず、だけどようやく確証を持った声音でだ。
「さあ、話をしようぜ。ギターヒーロー」
最後まで書いて俺はいったい何をしてるんだろうと思った回でした。
ほんと何書いてんだろうなこれ……。
では、今回高評価を入れてくださった
☆10:komatinohuさん、スコさん、リュティさん
☆9:Clear2世さん、シ工口さん、snowmans1さん、時識さん、こみるさん、Atorasuさん、鳥海有栖さん、煎茶555さん、ヨミタカさん
☆8:octさん
本当にありがとうございます!
もっと伸びろー!お気に入り伸びろー!高評価伸びろー!感想増えろー!ここすき増えろー!
何気にこの小説始めてちょうど一ヵ月だとか。
いつまで続くのかねえ。