再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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たくさんの方に読んで気に入っていただけて感無量です。
乗せるのが上手いなお主ら(歓喜)


3. HRの自己紹介タイムって普通に地獄だと思う

 

 

 入学式が終わって数日後。

 

 

 わいわいがやがや。

 そんな喧騒が耳に入る教室の中に俺はいた。

 

 周囲では近くに住んでるであろう同中の生徒同士が楽しそうに話している。

 まあ、まだ自己紹介タイムもなく他校の生徒を知らない状態の今じゃそれが普通だろう。

 

 同じクラスになれたねーとか、またお前と同じかよ~とか、何なら別クラスなのにわざわざ教室に来て別クラスだなんて嫌~とか言いに来ている生徒もちらほらだ。

 時折一人でスマホを見ている生徒やさっそく寝ている生徒もいるが、おそらくそういうのが苦手か合わない人なのかもしれない。

 

 そしてわたくし清水優人はと言えば、絶賛ぼっちなうである。

 うん、知ってた。通学に片道二時間かかる時点で知ってる生徒なんてゼロだし、そもそもそれが目的でここを選んだのだから別段嫌な気持ちとかはない。

 

 まあ先述の通り最初のHRで、実は片道二時間かかるんで放課後遊びづらいですけどよろしくるりんぱっ☆とか自己紹介すれば少しはウケるだろう。最悪スベっても印象に残ってしまえばこちらの勝ちなのだ。

 というか俺の事なんてどうだっていい。問題は他にある。

 

 俺が教室で一人という事はだ、必然的に金魚のフげふんげふん……カルガモの子どげふんげふん、後藤さんと別クラスになった事である。

 本来なら少しは性格も陰キャオーラもマシになってワンチャン高校デビューとかいけるんじゃね、とか思ってたのに、出来上がったのはマイナスにマイナスを重ねた超絶根暗コミュ症陰キャだった。

 

 見事に育成失敗。まさかのFランクで途中リタイアとなった。ステータスで言えば全部下がってるレベルだ。レアスキル『ネガティブ直行』とかデフォで取得してるまである。

 マイナスにマイナスを掛けたらプラスになるんじゃないのかよ噓吐いたな数学この野郎。超マイナスになってんじゃねえか。

 

 唯一変わったと言えば俺とはほんの少しだけ、いや、めちゃくちゃほんの少しだけ、多分、メイビー、ミジンコくらいの大きさ程でしかないけど変わってまともに話せるようになったはずだ。願望に近いけど。

 だから同じクラスになれば一緒に喋れると思っていただけに現実は厳しかった。

 

 神は後藤さんを見放した。彼女にどれだけの試練を与えれば気が済むのだろう。中学で俺が何とかサポートしようとしても黒歴史を生み続けてきた生粋の奇行種だぞ。

 うなじ剃らなくてもちょっと言葉キツめに言うだけで煙出して溶けていくんだからな。もっと優しくしてやれ。

 

 

「……ちょっと見てくるか」

 

 どうしても気になってしまい席を立つ。

 これは好奇心ではなくアレだ。保護者的な気持ちの方が強いやつだ。あの子上手くやってるのかしら。いややってる訳ないか。俺ですらまだ一人なのに。

 

 お互いのクラスは掲示板で確認していたのですぐ分かる。俺は五組で後藤さんは二組だ。クラスが違うと分かった瞬間後藤さんが「ぅ……や、ぁ……ゆ、ぁぁぁ……」とゾンビみたいな声を上げながらずっと俺から離れようとしなくて引っぺがすのに時間がかかった。危うく感染するとこだった。

 こういう時ってマンガなら同じクラスになったりするのにな。どうやらここは日常系とは無縁の世界らしい。

 

 さて、後藤さんのクラスに着いた。同時にひっそりと後ろの引き戸から覗いてみる。

 いた。一番後ろの手前から二つ目の席だ。意外と近いので顔だけを覗かせる事にした。

 

 

「……あー」

 

 案の定、後藤さんは俺と同じように一人でただ座っているだけであった。

 いや、まあ今は俺も同じだしそこまで気にする必要は……ない、と言い切れないところが後藤さんクオリティーなのだ。

 

 俺はまだ人と普通に話せる方だし何なら自分からでも話しかけに行ける。

 だが、後藤さんは当然そんな事もできない。しようとしたら席を立つ前に爆発四散するからだ。教室でそんな大惨事は俺だって見たくもない。下手すると学校自体爆発しかねないし。

 

 すげえ、変に思われないために視線すらキョロキョロさせずに微動だにしない。姿勢の悪い大仏かよ。

 そんな後藤さんを見て俺はいったいどこで何を間違えたんだろうとますます疑問が浮かんでくる。

 

 後藤さんがあんな性格になってしまった原因は俺にもあると思ったから色々手伝ってきたつもりだ。

 少し大目に見てた自覚もあるにはあるが、めちゃくちゃ甘やかしてた訳でもない。自立心を育てるために後藤さんだけで頑張れるようにフォローだってしていた。震えながらでも彼女は奮闘していたはずなのにどこで歯車がズレたのだろう。

 

 ……いや、もしかしてそれこそが間違いだった説あるか? 

 百人中百人が根暗陰キャコミュ症と答える後藤さんにまず友達作りをさせようとした事自体荷が重かったのかもしれない。実際ロックマンがやられた時みたいにティウンティウンって消えた時もあったし。

 

 

「……!!」

 

「あ」

 

 何かの気配を察したのか後藤さんが勢いよくこちらに振り向いた。

 変だな、気付かれないよう顔だけしか出してないのに、気でも感じ取れるのかあの子。地球育ちの陰キャ人なのか。それはただの陰キャだわ。

 

 俺に気付くや否や後藤さんは音もなくスライドするように俺の方に近寄ってきてすぐ背後にピタッとくっついてきた。

 あれぇ? 

 

 

「いや何してんだよ何で後ろに来たんだよ用があるなら向き合うだけで良いだろどうした急に」

 

「あっ、いや……ここが凄く落ち着くので……特等席です……」

 

 俺の背中はいつからイスになったんだ。背後霊かよ。せめて守護霊みたいに後光出してくんない。落ち込む時の青黒い背景出すのやめてくれ後光さん。じゃない違った後藤さん。

 てか用もないのに俺見つけただけでここに移動してくるのもどうなんよ。金魚のフンってこんなしつこかったっけ。

 

 

「もうHRだから俺もすぐ教室に戻るんだぞ? 今の内に俺がいなくても大丈夫なように慣れておいた方が良いんじゃないか? まあ見に来た俺にも非はあるけど」

 

 だって気になってしまったんだからしょうがない。言うなれば今の後藤さんは獣の群れの中に放り込まれた虫だ。上手く擬態してバレないように存在感を薄くするのか、一歩踏み出そうと勇気を出すのか見に来たのだが、当然前者であった。

 

 

「も、もう、学校辞めたい……」

 

「早い。早いよ。まだ何も始まってすらいねえよ。退学RTAやってる訳じゃないんだぞ」

 

 これじゃただ二時間かけて登校しただけだ。極限のバカじゃん。親に何て説明すりゃいいんだ。

 

 

「せめて最低限の努力はしてみようぜ。何てったってここは誰も後藤さんの過去を知らない高校だ。上手くいけば高校デビューして何かが変わるかもしれないじゃんか」

 

「う、ぅぅぅ~……でもぉ~」

 

「まずは自分で思い付いた案とか実行してみるのも良いと思うぞ。会話を聞いて共通の趣味を持ってそうな人に話しかけたりとか……いや無理か」

 

 言いかけて止まる。そう、それができていたら最初からそうしている。

 人に話しかけるのが無理だからアピール(本当にアピールだけ)して話しかけてもらえるのを待っているんだから。とことん受け身女子の後藤さんだ。聞こえは良いがただ自分から動かないのでマジで直立不動状態である。そんで話しかけられたら奇行に走り自ら駆逐される。救いはない。

 

 

「(も、もうゆ、くんがいれば私は……)」

 

 背後でごにょごにょされても何言ってるか全然分からない。呪詛じゃない事だけを祈る。

 この子はいったいどこに向かおうとしてるんだ。

 

 

「とにかくもう予鈴鳴るから俺は教室に戻っ……ちょ、こら、はなっ、離しなさいっ。離せっ、普通に嫌な目立ち方するからやめろぉ、俺を巻き込むんじゃねえ!」

 

 後ろから掴まれてるせいでこっちの力が入れづらい。というか振り返ろうにもスライドしやがるせいで全然見えねえ。何だこのいらん特技、ゴルゴが相手でも後ろに付けそうだな。

 基本非力で運動神経悪いのにたまに人間辞める癖を直してほしいところだ。

 

 

「はぁぁなぁぁれぇぇろォォォおおおおおおおお……ッ!」

 

「んぎぎぎぎぎぎぃ……っ!」

 

 俺と後藤さんの攻防は予鈴二分前まで続いた。

 

 

 

 

「ふう……」

 

 ようやく後藤さんから解放され教室に戻る。

 相手が人間を辞めてる時の対処法のコツはこちらも人間を辞める、である。もう目ん玉飛び出しそうになるくらい力込めてた。もうガッシュの清麿くらい顔を変形させてたと思う。俺自身やろうと思えばできた事にビックリしたけど。

 

 

「あっ、清水君、だよね?」

 

「ん? 俺?」

 

 席に座ったら突然声を掛けられた。

 赤い髪を少し左で結び、毛先はセットしているのか少しウェーブがかっている。ザ、陽キャ美少女という二つ名でも持ってそうな女の子だ。

 

 

「そうそうっ、今クラスでロインのグループ作ってるんだけど教室にいなかったから声掛けるの遅れちゃってね、清水君も良かったらどうかなって! ちなみに私は喜多って言いますっ」

 

 わお、何というコミュ強少女なんだろう。こういうのって普通自己紹介とか終わった放課後にするもんじゃないのか。

 周囲を見たところおそらくこの子が言いだしっぺで色んな生徒に声を掛けたのだろう。周りはもう若干打ち解け始めている。俺が後藤さんを覗きに行ってる短時間の内にこんな事になってるとは……陽キャ、恐るべし。

 

 

「ああ、迷惑じゃなければ入っても良いかな」

 

「あははっ、こっちから誘ってるのに迷惑な訳ないよ! そうだ、清水君ってどこの中学から来たの? この辺だったりする?」

 

 いや距離の詰め方凄いな。男女分け隔てなくとか物怖じしないのかね。

 しかしここで中学の質問されると後々の自己紹介でネタにしにくいんだが、まあ良いか。

 

 

「いや、実は県外から来たんだよ。中学は横浜の西凛中学校ってとこで、通学に二時間かかるから起きるのとか結構大変だったりするかな」

 

 早起きは得意だから別に大変とかではないが、まあ会話でのご愛嬌だ。

 これで共感とか得られるとまた少し会話が広がったりする。会話を続けさせるコツは共感を引くのと聞き手の興味、相手に取っ掛かりを与える事だ。ちなみに後藤さんはそれら全てを産まれた頃に分娩室で落としてしまったようだ。

 

 

「二時間!? へえ、凄いのね~。そんなにこの学校に来たかったの?」

 

 と言いながら喜多さんは席に座る。いや隣かよ。こんな陽キャオーラしかない子が隣なの。後藤さんにはない後光さんが光っておられるよ。陰と陽の差で風邪引きそう。

 

 

「まあ色々あってな。部活とかそういうのが目当てではないって事だけは言っとくよ」

 

「ふぅーん、そっかぁ」

 

 頬杖をついてこちらを見てくる喜多さん。一挙一動がもう後藤さんにはできなさそうな陽の者っぽい。

 俺の周りに集まるのはゼロか百の人間なのか? 何かに極振りしてるヤツしか目の前に現れないのだろうか。

 

 何となくもし後藤さんが喜多さんのようになった時の事を想像してみる。……うん、違和感がすげえ。違う、そうじゃないって感じがプンプンする。

 後藤さん、喜多さんと話したら一瞬で陽の光で塵にされるんじゃないか。俺でさえちょっと眩しいもの、敵わないなって思うもの。あれ、もしかして俺ちょっとずつ後藤さんに毒されてる? 陰キャオーラ感染してない? 

 

 チャイムが鳴った。

 初の高校生活開始の合図だ。

 

 ふと俺は自分の事よりも後藤さんの顔が真っ先に浮かんだ。

 そういや後藤さん、自己紹介の時どうするんだろう、と。うん、気にするだけ無駄だ。後藤さんの事だし、帰る時に話を聞けそうな感じならそこはかとなく慰めつつ周りに目立たないように帰ろう。

 

 

 

 

 そして、俺の自己紹介はややスベりながらも逆にクラスに溶け込む事ができ、帰宅途中の後藤さんはずっと俺の背中に顔をくっつけていた。

 何だか背中が濡れてるような気がしたのはきっと気のせいだ。

 

 高校生活では少し厳しめにいこうと思っていたけど、今日だけは家に帰ったら慰めてやろう。

 自己承認欲くっそ高いしすぐ立ち直れるだろ多分。

 

 

 





早く原作本編にいけよ(戒め)

オリ主がぼっちちゃんにフランクな喋り方になってるのは六ヶ月の間に打ち解けてるからです(オリ主だけ一方的にそう思ってる)


では、高評価を入れてくださった

ゾン兵衛さん、トークんさん、めらちゃんさん、白花 遥さん、ねじまきドラゴンさん、コメコメくんさん、EFENさん、mirさん、hakuyulumiさん、ひもさん、格差社会の塵芥さん、x+iさん、Syureiさん、タコスさん、顎なguyさん、TS秋月さん、サヤさん、キャラメルフラペチーノさん、るしうすさん、めろいさん、村岡8bitさん、くろうささん、塩結びさん、LW_Lilyさん、Sakuyaさんさん、カマンベールたうよりさん、ハルカゼさん、ユリーナさん、remkさん、あとらす0901さん、暇人人人さん、煎茶555さん、くらくらぴえろっとさん

本当にありがとうございます!
みんな更新を待っているという事……?


新作の方でランキング入りしてたらしく驚いてます。
何故かこの作品ならどれだけ感想評価乞食しても許される風潮、あると思います。
やっぱ一番モチベ上がるのって感想と高評価なんですよねえ(大声)
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