再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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エタる前にまず30話まで続いた事を褒めて!
まあ別サイトの小説の方はエタり始めてるけどね!!

毎日更新してる方の執筆速度どうなってんだ……?




30.打ち上げは楽しいけど疲れる

 

 

 かんぱぁ~い! という声が店内で響く。

 俺達は今スターリーでのライブを無事に終え、片付けが終わってから徒歩十分ほどの場所にある海鮮居酒屋『かおみせ』に来ていた。

 

 そう、ライブの打ち上げだ。パーリナイだ。

 あれだけ荒れていた台風もライブ中に通過して天気は回復し、絶好の打ち上げ日和になった訳である。

 

 

「ライブよく頑張った。今日は私の奢りだから飲め」

 

「お姉ちゃんありがとー! あたし達飲めないけど」

 

 俺の隣にPAさん、店長、何故いるのか分からないきくり姐さん。

 対面に後藤さん、虹夏さん、喜多さん、リョウさんという席順になっている。

 

 何気に居酒屋来たの初めてかもしれない。こういう場所は酒が飲める大人しか来ない印象があったけど、今はそうでもないのか。

 中学生高校生とかはカラオケとか焼肉に行くイメージがある。あくまでイメージだ。俺は家事ばかりやってたからそういうのに縁がなかったし、あったとしても事情を知ってる友人達からは一度も誘われた事がない。彼らなりに気を遣ってくれてたんだろう。……あれ、何故か今更悲しくなってきたぞ。

 

 

「わーい先輩しゅき~!」

 

「お前は自腹だよくっつくな!」

 

 隣の隣ではきくり姐さんが店長に抱き付いていた。おかしい、女性同士の絡みってもっとキラキラしてるはずなのに……てぇてぇとか何とも思わないぞ。

 やはり女性同士というより女子同士なのかね。やっぱごちうさとかきんモザって偉大だわ。だって凄いキラキラきららしてるもの。

 

 酒臭い大人同士はもうダメである。だって酒臭いもの。主に一方が。

 あ、そういえばさっきここに来る前コンビニでこういう事もあろうかと思って買ってたのがあったな。えっと……あった。

 

 

「きくり姐さん、もう手遅れかもしれないけどまた飲み過ぎる前にこれ飲んでください。ウコンの技かゼパリーゼ、どちらか好きな方どうぞ」

 

 確か飲酒する前に飲めばいいやつだったよな。この人もう飲んでるけど大丈夫なんだろうか。うん、まあないよりはマシだろう。

 

 

「んもぅ、やっぱ優人きゅんは気遣いの鬼、いや阿修羅だね~! ちゅき~!」

 

「うがぁーッ!? だからいきなりこっち来てくっついてくん……っ、あぁもうっ……はいはい、分かりましたからまずはちゃんと飲みましょうね~」

 

「うへへぁ~、優しい男には弱いぞぉ~!」

 

「優人くんが阿修羅じゃなくて急に菩薩みたいな顔になって優しくなった!?」

 

 心を殺し、俺はくっついてきた酒カ……きくり姐さんの背中をあやすように叩いて落ち着かせる。ついでに自分の気持ちも。ていうか酒臭いな。

 心頭滅却すれば泥酔女もまた普通の女子。よし、いけるな! いけるか? 

 

 

「わはは~! 優人きゅん代わりに飲ませろ~!」

 

「どっちが良いですか? それとも両方ぶち込みますか?」

 

「てっ、ててててていうかその人どなたなんですか!? 清水君と近すぎますけど!」

 

 ナイスだ喜多さん。良いパス出した! 

 喜多さんの質問にきくり姐さんは俺の肩を組みながら、

 

 

「誰よりもベースを愛する天才ベーシスト、廣井きくりでぇ~す! ベースは昨日飲み屋に忘れましたぁ。どこの飲み屋かも分かんなぁい。どうしよう優人きゅうん!」

 

「どうしようかぁ」

 

「一瞬で矛盾したんですけど……というか近いですって!」

 

 喜多さんのナイスパスはきくり姐さんのキラーシュートによってゴール外へぶっ飛んで行った。ブルーロックに入って訓練してきてほしい。あと超酒臭い。

 いまだに俺から離れずすぐ隣で酒の匂いを撒き散らかしているきくり姐さんをどうしたものかと考えてると、天から救いが差し伸べられた。

 

 

「優人、泥酔女には普通にキレて良いぞ」

 

「占めた! ええい離せ酔っ払い! さっさとドリンク飲めこの野郎!!」

 

「ぶへぁっ!? いきなり天国から地獄に堕とされた!?」

 

 店長からの許可を貰いきくり姐さんをひっぺがし元の席まで転がす。吐かなくて良かった。

 うっ、間近で酒の匂い嗅ぎ過ぎたか。一瞬視界がぐらついた。父さんもいつも酔っ払って帰ってきてたし、もしかして俺酒弱い説ある? いや、きっとたまたまだ。父さんを介抱してた時もベッドに連れてく間ずっと酒臭い息吐きながらしゃべってたけどこんな事はなかったし。

 

 目の前にあったコーラを一気飲みして微かに感じた変な感覚を全て掻き消す。喉いっっっった!! 

 俺が喉の痛みと格闘してる間に、リョウさんが実はきくり姐さんのバンドのファンだという事が分かったらしい。話を聞く限り相当ヤバいライブをしているとの事。客に酒吹きかけるとかありなの? 

 

 

「お前絶対ウチでライブさせねえわ。酒撒き散らかされるの堪ったもんじゃねえし」

 

「え~みんなそれで結構喜んでくれますよぉ~?」

 

「ウチに来るのはヘンタイバンドのファンばっかじゃねえんだよ」

 

 まあうちの後藤さんステージでバチボコ吐いてましたけどね。

 

 

「でもまあ、とりあえずライブ盛り上がって良かったね~!」

 

「観客十人くらいでしたけどね」

 

「でもその人達は全員満足してくれたじゃーん!」

 

「ですかねっ」

 

 実際、結果的にライブは成功した。

 結束バンドはトップバッターだったけど、それもあってか最初に植え付けた印象は強く、ライブ終わりには結束バンドの事を話している人も何人かいたのだ。一曲目がああだっただけに、後藤さんのギターソロから入った二曲目のインパクトは強かったんだと思う。

 

 ほんと、彼女達が全部頑張ったおかげだ。

 

 

「ま、続けてればどんどんファン増えてくよ。だから次のライブでも頑張れよ。ちゃんとノルマ代は払ってな」

 

「最後のがなかったら感動したのに……」

 

「ツンデレなんですよ」

 

「何か言ったか?」

 

「いえ何も」

 

 PAさん越しに睨むの怖いんでやめてください。

 寒すぎてツンドラかと思っちゃった。

 

 

「それより後藤さんどうします? さっきから動きませんけど」

 

「真っ白に燃え尽きてる!?」

 

「ぼっちちゃん灰にならないで!」

 

 ずっと黙ってるかと思えば彼女はジョー的な何かになっていた。

 いや、パトラッシュか? 色々交ざってない? やめろ、それは俺の専売特許だぞ! 

 

 

「後藤さん、腹減ってんだろ? ほら、何か頼みな」

 

「あっはい」

 

 起きた。さすがよく食べる子は食に敏感だな。

 ついでに俺も一緒にメニュー見させてもらおう。と思ったら虹夏さんも後藤さんに寄ってきた。

 

 

「ぼっちちゃん何にするー? あたしはね、から揚げ頼みたいかなぁ。ね、優人くん」

 

「お、いいですね。じゃあ芋餅とかもいっちゃいます? どうよ後藤さん」

 

「あっうん……良いと思う……」

 

 海鮮居酒屋って聞いたけど、結構バリエーション豊富なんだな。

 というか虹夏さん、後藤さんがジャンクというかこういう子供が好きそうな物が好きって分かってきてるな。自分で主張しにくいから代わりに選びそうな品を選出してくれてる。そのうち後藤さん係の副班長に任命してもいいかもしれない。

 

 

「他に食べたいもんとかあるか? せっかくの居酒屋なんだし、他じゃ食えないような物とか頼もうぜ。海鮮はいけるんだっけ?」

 

「う、うん……大体は大丈夫……サーモンとかマグロは好きな方、かも」

 

 子供舌にも程がありませんかね後藤さんや。いや定番っちゃ定番だけどさ。

 変に尖ったもの頼むよりかは確実に食べれるやつの方が良いか。無難にお造りとかにしておこう。後藤さんが無理そうな物あっても大人組に全部食べてもらえるだろ。

 

 食べるよりも飲む方優先するみたいだし腹も満たされてないはずだもんな。

 現にリョウさんとかはバクバク食ってんのにPAさんやきくり姐さんは飲んでばっかだ。店長は……、

 

 

「何で消えかけてんの?」

 

「喜多ちゃんの陽オーラにやられちゃったみたい」

 

 ああ、どうりで喜多さんの背後がSSR確定演出みたいになってる訳だ。いやもしくはゲーミング喜多さんか? 

 

 

「後藤さんはもう良いか? ほい喜多さん、こっちは決まったからメニュー」

 

「ありがとうっ」

 

 何でメニュー貰っただけでそんな眩しい笑顔になれるんだろ。顔の筋肉疲れないのかな。

 

 

「えーと……じゃあ私、アボカドのクリームチーズのピンチョス。あとスパニッシュオムレツのオランデーズソース添えください!」

 

「なんて?」

 

「このオムレツ、オランデーズソースのやつです!」

 

「オランダ……?」

 

 喜多さん随分とオシャレなもん頼むのな。海鮮居酒屋なのにそんなのもあるのか。海鮮のページばっか見てたから気付かなかった。

 そして店長は店長で何も分かってないってマジ? あなた料理とかしない系女子の方ですか。確かに珍しい名前かもしれないけどせめてピンチョスくらいは知ってると思ってた。

 

 

「基本的には小さく切ったパンの上に少量の具材とか乗せて串か爪楊枝に刺してるやつがピンチョスで、スパニッシュオムレツが色んな具材を炒めてから溶き卵を入れて円形状に焼くやつですよ。簡単に言えば具材入りのオムレツですね。オランデーズソースは確か、バターに卵黄とレモン汁塩コショウで作られたソースだったような……。エッグベネディクトとかによく掛かってるあれですよ」

 

「エッグイベネズエラ……?」

 

 ダメだこの店長、音楽の事はめちゃくちゃ詳しいのに料理の事になるとアホになる。

 

 

「清水君詳しいのね?」

 

「ん? ああ、喜多さんには話した事なかったっけ。俺小三から中三の途中まで父親の単身赴任に付き合って代わりに家事炊事諸々やってたんだよ。だから大体の料理は知ってるし作れると思う。海外料理のレシピも見てたし割といけるかな」

 

「ず、随分と家庭的なのね……」

 

 何でちょっと落ち込んでんだよ。褒められると思ったのに。

 あの頃は真面目すぎて一ヵ月間毎日ローテーションみたいに料理が被らないよう、どうにかレパートリーを増やすために色んな料理を調べたり動画など見たものだ。

 

 さすがに被らなすぎて父さんから心配されローテーションでも大丈夫だよって言われた時の安堵感を今でも忘れない。

 子供の吸収力って凄い。やろうと思えば海外の料理まで覚えちゃうもんな。フィリピン料理のシシグとかカンボジア料理のクイティウを出した日には何これ? って言われた事もあった。めっちゃ美味いって食べてくれたけど。

 

 

「変なとこで生真面目すぎなんだよお前は。お堅い委員長か」

 

「ウッ、痛い所を……」

 

 店長からの言葉が刺さる。ちょっと今はチクチク言葉やめてくれません? 

 あなたツンデレのツンだけに徹したらただの毒吐きヤンキーだからね? 

 

 いかん、気を紛らわさないと。

 

 

「……何をぷるぷる震えてんの君は」

 

「わ、私もオシャレっぽいもの頼みたい……」

 

 どこに対抗心向けてんだこの子。あの陽キャ代表みたいな喜多さんに勝てると思ってるのか? 

 やめとけ、浄化されるぞ。悪い事は言わんから普通にフライドポテトとか頼んでおきなさい。可哀想な事か面白い事しか起きないの優人さん知ってるんだからね! 

 

 

「ぼっちちゃんは何頼む?」

 

 あーっとここで後藤さんの事がお気に入りの店長から無駄なパスが通ってしまうー! 

 果たして彼女はこのパスをどうするのかぁー!? 

 

 

「あっじゃあ……マチュピチュ遺跡のミシシッピ川グランドキャニオンサンディエゴ盛り合わせで……」

 

「なっ何ィ……!?」

 

「マチュピチュマチュピチュ……ど、どこだ……!?」

 

 店長が何やら真面目に探しているがそんな事はどうでもいい。そう、どうでもいい。

 後藤さんがどんなふざけた注文をするのかと思っていたら、まさかの珍回答だったのもどうでもいい。ただ俺はいつも成績悪いこの子が世界で有名な土地や遺産をちゃんと言えてる事に感動しているんだ。

 

 アホの子の成長ほど嬉しいものは中々ない。後藤さん、よくふざけながらマチュピチュ遺跡なんて言葉が出てきたな。偉いぞ、本当なら褒めてやりたいとこだが絶対メニューにないからそれはナシで! 

 よぉーし、俺が後藤さんからのキラーパスを繋いでやる! 

 

 

「じゃあ俺はアルティマヤ・ツィオルキンドラゴエクィテスアルティミトル・ビシバールキンのゴギガ・ガガギゴ添えで!」

 

「絶対ねぇだろふざけんな!」

 

 何か言いにくい遊戯王のモンスターじゃダメだったか。すまん後藤さん、ゴール外したわ。

 

 

「ならフライドポテトで」

 

「ならも何もないだろ……」

 

 しばらくすると頼んだ品が色々やってきた。

 サーモンなどのお造りとポテトを後藤さんの近くに置くと、彼女は静かに嬉しそうな反応をした。まるで待ちに待ったおやつの時間を迎えた子供だ。

 

 ポテトを一つ取って小さく頬張ると、美味しそうに頬を緩めている。俺なんか一口で食べるのに女の子ってこういうものなんだろうか。

 小動物にしか見えない。何だかこちらまで頬が緩んでくる。こうしてると普通の可愛い女の子なんだけどなあ……。奇行がなあ……。

 

 

「美味いか?」

 

「う、うんっ」

 

「そっか」

 

 ライブの時とのギャップが激しすぎて見てるこっちが混乱しそうになってくるレベル。

 まあ無理矢理ポジティブに捉えるなら色んな一面が見られるってとこか。八割ほど見たくない一面なのがネックだけど。

 

 後藤さんがポテトともっもっと謎の擬音を発しながら食べているのを眺めてたら、一番遠くにいるリョウさんが話しかけてきた。

 

 

「優人、このスプラッタオムレツ作れる?」

 

「スパニッシュな。意味合い怖えわ。一応作れますけど、それがどうしたんですか?」

 

「美味しい。だから今度作ってきて。虹夏でもいい」

 

「じゃあ最初から虹夏さんでいいじゃないですか」

 

「虹夏はあまりがっつくと騒がしいから」

 

「聞こえてるよリョウ」

 

 笑顔に影が差すだけで恐怖を覚えるってこういう事だと思う。矛先が俺じゃなくて心底良かった。

 自分で作る発想はないんだな。それか親に作ってもらえばいいのに。

 

 

「じゃあ今度適当に作ってきますよ。てか虹夏さん料理できるんですね」

 

「ん? まあねー! これでも毎日家事と料理してるから優人くんと一緒だよ!」

 

 絶対良いお嫁さんになるじゃん。こんな人に出迎えられるならどんな仕事でも頑張っちゃう。

 あ、でもバンド一筋だからそういうのはないか。人気になったらむしろ練習とか曲作りで夜遅くなりそう。そう考えるとバンドマンってのも大変そうだな。

 

 

「ひいいいいいあああああああああああああああッ!? やっぱりニートォォォああああああああああああああああああああああッ!?」

 

 正面のピンクがいきなり発狂した。

 どうした、SAN値がピンチにでもなったか。ニャル子さんでも見ちゃったのか。

 

 

「ぼっちちゃんいきなりどうした!?」

 

「ああ、いつもの発作ですね。顔もズレ始めてる。修理作業に入ります」

 

「あれいつものなんだぁ~!」

 

 確かトートバッグの中に修理用具は常備してたはず……と、あったあった。

 

 

「怖いんだよな、ぼっちちゃんのこの顔」

 

「そうですか? 結構味があると思いますけどっ」

 

「マジかよ……」

 

 マジかよPAさん、この顔癖になってきてんの? いや俺も割と長く見てきたから何とも思わなくなってるけど、さすがに味があるとは思わんよこれ。

 人間じゃないもの。

 

 

「喜多さんとリョウさん手伝ってくれ」

 

 二人を呼んで俺は両手を病院ドラマでよく見るあのポーズをする。

 これより、手術を開始する。

 

 

「喜多さん、紙やすり」

 

「はいっ」

 

 まずは両目を元の位置にかざし、紙やすりで擦り付けていく。よし、こんなものだな。

 

 

「鼻はリョウさんに任せます」

 

「よしきた。紙やすりこっちにもちょうだい」

 

「どうぞ!」

 

 リョウさんが鼻を直している間に俺は口と顎の作業に入るとしよう。

 顎の修繕はトンカチで長さを調整しなきゃいけないから集中しないと。

 

 

「喜多さん、トンカチ」

 

「はいっせんせっ」

 

 乗り気だな。

 トンカチで叩きながら紙やすりで形を整えていく。

 

 

「……よし、この調子でいけぶぇっくしょいッ!!」

 

 あ、やべ、ミスった。

 いやだって急に鼻ムズムズしちゃって……。

 

 

「まあいっか」

 

「よくないでしょ! 何か凄く顎長くなってないかしら!?」

 

 確かに。よく見ると顎が少し長いような気もする。無駄に鼻も高くなってるような……。

 学園ハンサムかと思った。あるいは御門。

 

 

「また修正し直さないとか……結構大変なんだよなこれ」

 

「私がトンカチやるから清水君は紙やすりでやって分担しましょ。ね?」

 

「私は終わったから戻って酒盗食べとく」

 

「鼻もおかしいんだからアンタも手伝えやぁ!」

 

 居酒屋では本来聞こえない工事音と共に、無事後藤さんの修繕は完了した。

 

 

「ふぅ、疲れた」

 

「あっ、ありがとゆうくん……」

 

 いつもの暗い顔に戻っておる。我ながら完璧な作業だった。

 集中力めっちゃ使ったからか暑いな。ここ冷房の効き悪いのか。

 

 

「疲れたんでちょっとトイレがてら外涼みに行ってきます」

 

 誰かの適当な返事(絶対きくり姐さん)を流して席を立つ。

 

 

 

 

 

 用を足してから俺は一旦外に出た。店の人にはあの金髪の姉さんが全額払うって言ってるから大丈夫だ。

 

 すっかり雨も上がり、上を見上げると澄んだ夜空が広がっていた。近くにあった電柱にもたれかかる。

 真夏なのにあれだけの台風だったせいか、今は結構涼しい。ほんの十メートルも歩けば道路に出るが、やけに周囲は静かだ。

 

 誰もいない涼しい夜に一人。あれだけ騒がしい店内とは裏腹に、ここの空間は静寂に包み込まれて落ち着く。

 楽しい空間にいるとそれなりに気分も盛り上がるけど、逆に言えば何もない空間に行くと気分は一定か微かに下降する。

 

 何も考えずバカ騒ぎしていれば余計な事は考えずに済んだのに、それではダメだと外に出た。下手な噓ならたくさん出てくる。

 そういうとこは俺も後藤さんの事強く言えないな。

 

 

「……」

 

 きっと、大人ならここで煙草を吸いながらもの思いに耽るんだろう。俺は一生吸わないつもりだからあくまで想像でしかないが。

 ただ、思うところはたくさんある。

 

 ライブ終了後、片付けをしている最中に店長に呼ばれ二人きりで話していた事を思い出す。

 自分の欠点や反省点をつらつらと並べられ、俺はそれを素直に聞いていた。言い返すつもりも毛頭なく、ただただ店長が正しいと思うからその言葉を戒めと共に胸に刻みつけておくために。

 

 

『結束バンドを支えたいならまずお前自身が成長しろ。あいつらの事を本気で思ってるならな』

 

 俺自身の成長。

 それが今後の課題。

 

 結束バンドはオーディションの時にバンドとしての成長を見せていた。

 なら俺も変わらないといけない。今後も可能な限り彼女達の側にいるためには、やらなければならない事がたくさんある。俺にできる事なら何だってやらないと。

 

『かおみせ』の引き戸の開く音がした。

 他の客が出てきたのかと思ったが、まさかの見知った顔だった。

 

 

「やっほ、優人くん」

 

「虹夏さん」

 

「あたしも涼みに来ちゃった。一緒してもいい?」

 

「もちろん」

 

 沈黙の時間が一分ほど続く。ライブの感想などはここに来るまでに話していたから、特に何か言う事もない。

 店の中からはきくり姐さんっぽい声を中心に騒ぎ声が聞こえる。外まで聞こえるって相当だな。涼みにって言ってたし虹夏さんも暑くなって来たんだろう。

 

 ただそう思っていただけに、次の虹夏さんからの質問に一瞬目を見開いてしまった。

 

 

「優人くんさ、何かあったでしょ?」

 

「…………え?」

 

 思わず彼女の方を見る。

 虹夏さんは真っ直ぐこちらを向いたまま笑みを浮かべていた。

 

 

「そこですぐに何も言ってこないって事は、やっぱそうなんだね。いつもはふざけながらすぐ言い返してくるのに」

 

「……あーそうですっけ?」

 

「はぐらかし方が雑。そんなのすぐに分かるよ」

 

 顔に出してたつもりはなかったんだけどな。

 

 

「あたしはドラムで結束バンドのリーダーなんだよ? みんなの事をいつも見てるし、それは優人くんだって例外じゃないんだから」

 

「さすがみんなのまとめ役ですね」

 

「それがあたしだからねっ」

 

 にっと笑う虹夏さんに思わずこちらも笑みが零れる。

 そして、彼女は俺に近づいて、

 

 

「それじゃあ優人くんの悩み相談ついでに」

 

 こう言った。

 

 

 

「ちょっとお話しよっか」

 

 

 






二次創作だからってただオリ主を投入するだけというのは何か嫌だから、ちゃんとこの世界にこいつはいるんだぞと深みを持たせていきたい所存。

詳しい事は次回で。


では、今回高評価を入れてくださった

☆10:bigbenさん、shelling51さん、フェリアルさん、氷山空母さん、ささかなさん、シャヂャミさん

☆9:Alicemeticさん、shia.さん、Tahoさん、ぬーちゃろさん、アルト・ゼロさん、城和泉正宗さん、MaoAlさん、よしよしjさん

本当にありがとうございます!
みんなに頼み込もうとしてたのにもう総評価数600超えてるやん!マジでありがとうしかない……。
もっと高評価お気に入り感想貰えるように頑張るからよろしくね~!



メイドぼっちちゃんのバストネタは果たしてあるのかカットされるのか、問題はそこだ。
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