再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
四軒回って何とかきららMAX買えたけどラスト一冊だったのを見るに相変わらずの人気なようで……。
にしてもぼっちちゃん福笑い、どうあがいても正解なの面白すぎでしょ。
炎天下の中、仲見世通りまで走ってきた俺と結束バンド御一行。
息を整えてからせっかくだし適当に食べ歩きしながら観光しようという事になった。
という訳で一発目はあの有名なアレである。
五人分買ってそれぞれ手渡していく。ようやく元の形に戻ったのに顔色の悪い後藤さんにもだ。
「ほい、これ後藤さんのな」
「えっあっ、ありがと……。えっと、これって……?」
「たこせん。聞いた事くらいはあるだろ。たこを一トンの力でプレスしながら焼くおぞましいせんべいだ」
「優人くん言い方。気持ちは分からなくもないけど」
だってプレスしてる時とか急にきゅるきゅる言い出すんだぞ。既に死んでるとはいえ断末魔にしか聞こえなかった。
この作り方考えた人中々やべー人なんじゃないのかって思うレベル。あ、うまっ、めっちゃ美味い。結構しっかり味付いてる。
「食ってみ。美味いぞこれ」
「一トンの力……はむっ…………おいひぃ」
「だろ? どうせ名物もんだし味自体は大した事ないと思ってたから予想以上だったわ」
しかも薄いから軽い。ペロリとイケてしまう。何か一気に食べるの勿体なくなってきたな……。
「私、美味しい物センサーも抜群」
「さ、さすがです……!」
「家では良い物食べてそうですもんね」
「この前優人が作ってきてくれたスコティッシュオムレツの方が美味しかった」
「スパニッシュオムレツな。俺が作ったのより下ってそれはそれでどうなんだ……」
金持ちの晩ご飯とか適当に高い物食べてそうな雰囲気しかない。とりあえずキャビア乗せてトリュフふりかけときゃ良いだろ的な。
それか高級外食。回らない寿司屋とかJOJO苑よく行ってそう(偏見)
「とにかくぼっちちゃんが元気になってよかったよー!」
「このたこせん、おっきくて可愛いし映えますね!」
かわっ、可愛い……???
この丸ごとタコ押し潰しせんべいが可愛いとか正気かこの小娘。SNSに毒されるともはや何でも可愛いとか映えると思っちゃう生き物なの女子高生って。
俺には分からん世界だ。そして気付いたら最後の一口だった。美味かった、ごちそうさまでした。お前の事は一日くらいは忘れないぜタコ。
よく考えたら薄くされたとはいえタコ丸ごと二匹分が腹の中にいるって相当だな。
「よし、記念に写真撮ろー!」
「あ、じゃあせっかくだし俺のカメラで撮りますか。結束バンド江の島に降臨記念っすね」
人通りの少ない場所に移動してカメラを構える。
「いきますよー。はい、結束バン」
「「ド~!」」
「ど~……」
何その合図と思ったそこのあなた、深堀りしちゃいけない事も世の中にはあるって知っておいた方がいいぜ。
ちなみに俺もよく分かってない。虹夏さんと喜多さんがきゃぴきゃぴしながら自分達だけの掛け声とか作っちゃおうと勝手に作ってたのだ。次撮る時はこれ言ってね~ってな感じで。俺も巻き込まれたクチなんすよ。
写真の方は良い感じに撮れている。後藤さんも珍しく普通の顔だ。普通の顔が珍しいってどういう事なんだろうね。
ひとまずカメラをバッグに直す。俺の愛機に長時間の直射日光はできるだけ避けておきたい。
「優人くんも一緒に撮ろー!」
「俺は別にいいですよ。カメラマンとして結束バンドを撮ってた方が性に合ってますし」
「本音は?」
「女子四人の中に男一人だけ入って撮られるのは結構キツい……ハッ!?」
ついそのまま本音を言ってしまった。くそう、誘導尋問が上手いな虹夏さん……。俺をハメるとは中々やりおる。
漏れ出た言葉を聞いた虹夏さんは一瞬ムッとした顔になり、強引に俺の手を引っ張ってきた。
「いいから撮るよ!」
「いやほら、俺ってばカメラマンだし結束バンドの思い出を切り取って残すのが仕事なとこあるんで……」
「でもそれだと優人くんがずっとその思い出のアルバムの中に入れないじゃん」
「えっと……何か問題でも?」
「……いいから撮るの! リーダー命令! 喜多ちゃんやっちゃって!」
「用意バッチリです!」
ほとんど強引にポジションにつかされた。こういう時の女子の謎の結束力って何なんだろうな。団結しないといけない空気感というか、一種の同調圧力さえ感じる。
そしてそういうのには逆らわない方がいいのだった。女子の圧は強い。ぼくはまなんだ。
「はいチーズ!」
いや結束バンドの合図やらんのかい。なに、思ったより恥ずかしかったの。だとしたら実際言わされた俺が一番恥ずかしいんだけど。人の心ある?
「めっちゃ良い感じです!」
「お~良いね~!」
明るい女子達がキャッキャしておられる。写真一枚でこんな楽しそうにできるなら幸せ者ですな。陽キャって何でも楽しめるように脳みそができてるんだろうか。
陽キャと陰キャの中間にいる俺には難しいや。とりあえずほほえま~と思っておけばいいだろう。
「どう優人くんっ、良い写真でしょ!」
「ん? あー、まあ、そうですね。俺だけたこせん持ってないですけど」
これじゃ俺だけお預けくらった人にしか見えない。しかも女子四人の中にいるせいで異物感半端ない。
やめろ、俺は百合の間には挟まらない男なんだ! ちさたきとスレミオが大正義なんだよ異論は認める!!
「こういうのは撮ることが大事なの」
「そんなもんですか?」
「そんなもん! あと忘れてそうだから言うけど、今日はぼっちちゃんだけじゃなくて優人くんにも楽しい夏の思い出作ってもらうんだからね! 今日は目一杯楽しむ事! リーダー命令!」
「……リーダー命令なら仕方ないか。じゃあ今日は楽しませてもらいますよ」
「ふふーん、よろしいっ」
腕組みしてドヤッてるけど一番身長低いから威厳もくそもない。年上だけど年下の子が頑張って大人ぶってるようにしか見えないわ。
あと虹夏さんの感情に連動してぴょこぴょこ動いてるアホ毛は何なの。ただただ可愛いな。
俺も今日は楽しむ事を優先しよう。
せっかくの江の島だしな。時間の許す限りは観光しまくるのも悪くない。
「あっ、今日は、皆さんありがとうございました……。お疲れ様でした……」
「何でもうクライマックスに!? これからでしょ!」
楽しもうと思った矢先に終わろうとしてる全身ピンクちゃん。たこせんがそんなビッグイベントだったのか。
いや、違うな。俺はポッケからハンカチを出す。
「これで涙拭けよ、後藤さん。そうだよな、友達とこんな遠出したのがまず初めてだったもんな。『普通』が分からないから観光イベント一つ終わっただけで遊ぶの終了と思っちゃっただけだもんな。大丈夫、まだまだ楽しい事はこの先もあるぞ」
「う、うぅ……」
「ぼっちちゃんの悲しい現実が……よ、よぉーし、楽しい思い出をもっと作ろーう! 喜多ちゃん良さげなとこ連れてって!」
「任せてください!」
観光に困った時は陽キャに頼めば勝手に調べてくれて良さそうな場所に案内してくれるやつだ。
喜多さんなら安心して任せられる。みんなが楽しめそうなとこを選んでくれるはず。
────
そんなこんなでやってきました江の島神社の大鳥居前。
目の前に朱くて大きな鳥居があり、遥か彼方まで続いてそうな階段が既に精神を億劫にさせてくる。はっはっはっ、バカだ、バカがいるぜい!
「よ~し、ここから頂上まで登りますよ~!」
「えっ、階段……!?」
「自力で上がって見る景色ほど、素敵なものはないと思いませんか……!?」
「いやそんなのはいい……」
「真夏にここをチョイスする喜多さんのメンタルどうなってんの」
さすがの俺も素直に喜べそうにないよ。あの三銃士から少しでもパリピ成分を吸収しておけば良かった。俺の中にいるもう一人の俺が登りたくないと拒絶してる。
これ後藤さん絶対無理だろ。途中でリタイアするのが目に見えてるよ。戦う前から敗北が決まってるようなものだよ。
「頑張りましょう!」
「嫌だ!!」
リョウさん初めて出会ってから今日が一番ボリューム出てません?
そんなに嫌なんだ。気持ちは分かるけど。
「後藤さんも!」
「あっ……うっ……」
ここでハッキリ断れないのが陰キャの辛いところよな。
清水、動きます。
「喜多さん、さすがにこの炎天下の中で階段登るのはキツいんじゃないかなって。特に後藤さうおっまぶしっ!?」
「喜多ちゃんがいつになく眩しい!」
「な、なんで……!?」
「い、いつもは抑え気味な陽のオーラが陽の光を浴びる事によって……」
「リミッター解除されてんのか!?」
な、何だこの眩しさは……!? 太陽拳か!? 天津飯なのか!?
今まであれで陽の気を抑えてたなんて、俺は喜多さんの気をほんの一部しか感じ取れていなかったんだ。ヤツはずっと解放する時を待っていた。太陽光を浴びて陽の気を一気に放出させるために……!
「ほら行きますよ!」
目がチカチカするぅ! チカっとチカ千花ぁッ!
背景がUR確定演出になってやがる。【陽の気を纏いし者】UR喜多郁代が自ら排出されにきた。しかもSSRから覚醒しているだと……!
これにはみんな怯えるしかない。インドア人が何人集まってもたった一人の陽キャには勝てないのだ。こいつが伝説のスーパー陽キャ人キタリーだったのか。
四対一。本来なら多数決、民主主義によって我らが勝つのだが、キタリーにはそれで勝てるはずもなく、いつだって陰は眩しすぎる光によって消滅させられるのだ。
という訳で全員敗北。
頂上まで登り確定です。さて、みんなどこでリタイアするかな。
「みなさ~ん! 早く~!」
テンポ良く駆け上がって行くバフ陽キャの喜多さん。いつも色んなとこ歩き回って体力ついてんのか?
虹夏さんもリョウさんもノロノロとだけど何とか上がっていくが、現役女子高生とは思えないスピードだ。あまりにも遅すぎる。
そして、だ。
もう一人、現役女子高生とはかけ離れた速度で階段を上がってくる少女を見下ろす。
後藤ひとり。真夏にピンクのジャージと自ら熱中症に立ち向かっていくおバカな思考の持ち主は、右足を上げて一段上り、また右足を上げて一段上りと左足負傷してんのかみたいな上り方をしていた。
めっちゃ息切れしてるし、汗すげえし。
遅すぎてとうとう見知らぬおばあちゃんに抜かされている。それでいいのか女子高生。体力ないにも程があるぞ女子高生。
というかまだ神社の入口近くだぞ。この時点でこれって先が思いやられる。頂上まで何時間かかるの。
ちょっとフラついてきてるけどマジで大丈夫かあれ。
「……はぁ、見ちゃおれん」
彼女のとこまで駆け下りて屈む。
「後藤さん、とりあえずそこまでおぶってやるから乗れ」
「ぜぇ、はぁ……ぜぇ……あっ、でも……ゆうくんがしんどいんじゃ……」
「この暑い中じっと待たされる方が辛いんだよ。だから早く」
「うっ、ごめんなさい……」
一人で上らせて変につまづいて転がり落ちるよりはマシだろう。後藤さんの場合スライム化してすぐ再生しそうだけど。
背後から重みがもたれ掛かる。自然と首に手が回された。密着してるせいか余計暑苦しいな……。何でジャージなんだよもうちょっと薄着でもいいだろ。
「急に暴れたりするなよ。下手すると二人仲良く落ちて死んじまうからな」
「うっうん……」
神社の前で縁起でもない事は言うもんじゃないが、この階段の長さだとマジであり得ない話じゃないから怖い。
「できるだけ俺の方に体重預けとけよ。バランス崩したくないから」
「うん……あっ、でも」
「どうした?」
「えっと……その……」
やめろ、密着してる状態でもじもじするな。変に動くなって言ったばかりでしょうが。
ゆっくり階段を上りつつ、後藤さんの言葉を待っていると、
「私……お、重くない、かなって……。初めてのバイトの時におんぶしてもらったら、重いって言われたし……」
「え? ああ、その事ね」
そんな事まだ覚えてたのか。後藤さんは気にしがちなとこあるからな。そしてあの時の俺も後藤さん相手だからとはいえ、さすがにデリカシーがなさすぎた。
女の子に対して重いなんて思ってても口に出しちゃダメだ。うん、ダメダメ。
「全然重くないよ。むしろ今は軽い方だ。あん時の俺が単純に非力なだけだったんだよ。だから後藤さんは元々軽いって事」
「あっ、そ、そうなんだ……。一応ご飯の量とか気にして食べてたんだけど……そうだったんだね……。ゆうくんも、へへ……き、気にし過ぎないでね……」
この野郎、誰のために筋トレ始めたと思ってんだ……。こういう事がいつあっても対応できるよう鍛えてたってのに。
あと耳元でニヤけんな。可愛い笑い方とかならまだいいけど、へへっとかうへへとか言われても普通に寒気するぞ。どんなASMRだよこれ。
ほとんど階段よりも後藤さんに対して悪戦苦闘しながらも何とか階段を上りきった。
俺の肩に後藤さんが顔を置くものだから双頭怪獣みたいになってる。汗のせいで頬に彼女の長い髪がべたりとくっついたりして非常に微妙な気分だが、自分からおんぶすると言った手前何も文句は言えない。
辺りを見渡すと端の方に喜多さん達がいた。虹夏さんとリョウさんはへたり込んでいる。
入口付近だってのにもう三人グロッキーなのか。着いたのにまだ下りようとしない後藤さんを仕方なく背負いながら近づく。
「二人ももうリタイアですか?」
「そうなの清水君。聞いてy……後藤さんおぶってきたの!?」
「いや危なっかしかったからさ。安全面を考慮して連れてきた。こいつが後藤ひとりならぬ護送ひとりだ」
「うへへ……ドッキングです……!」
「微妙に意味違ぇしその言い方やめろ」
ていうか何で下りようとしないのこの子。完全にこの流れのまま頂上まで行かそうとしてない? さすがに俺も無理ですよそれは。
「清水君よくおぶって来れたわね? 大丈夫なの?」
「一応体力作りと筋トレは継続してやってるからな。今くらいの階段ならまあ何とかって感じ。この先はさすがにキツいから降りてもらうけど」
「えっ……!? む、むむむむ無理です! これ以上は上がれません~……! むむむむむむむむむむむむむむむっ」
久々に後藤さんのむむむ神拳(拳じゃなくて頭)が炸裂した。
俺の顔の真横でやってるから、後藤さんの髪の毛がめちゃくちゃ俺の顔にくっついて乱舞している。むずむずするし摩擦凄いからやめろって。暑苦しいのに更に熱発生させてどうすんだ。
「あー! ぼっちちゃんズルーい! 優人くんあたしもおんぶして!」
「伊地知先輩!?」
「階段じゃなければいつでもやったりますよ」
「清水君!?」
ただ、今のこの状態で全員頂上まで登れそうにないのが事実。
これからだってのに既に過半数リタイア寸前て。暑くてキツイのは俺も嫌だけど高校生が聞いて呆れるぜ。
「あっ、ゆ、ゆうくん」
「っ、どした?」
いつの間にかむむむ神拳を止めていた後藤さんが俺の頬をめちゃめちゃ軽くぺちぺちと叩いてきた。
やめろ、馬じゃねえぞ俺は。ウマ娘でもなければウマ息子でもねえ。
「あそこ……え、エスカレーターで行けるみたい……」
「なぬっ」
後藤さんの指差す方を見ると、確かにあった。
江の島エスカー乗り場と書かれた看板がでかでかと立てられている。なるほど、お年寄りや小さな子供にはこの長い階段は厳しいもんな。意外と優しいとこあるじゃん江の島。
「これは使わない訳にはいかないね!」
「文明の利器、素晴らしい」
「階段で登りましょうよ~!」
「喜多さん、さすがにもうこの三人の意見を覆すのは無理だと思うぞ。限界を超えたインドア人は梃子でも動かない時あるから。あ、一応俺も入って四人側で。そういう訳でナイス発見だったぞ後藤さん。歩かなくていいからこれで下りれるな」
「あっうっ……」
何でそんな残念そうなんだよ。エスカレーター乗れるんだからむしろ喜べ。
うっ、ずっとおんぶしてたせいで背中の汗がぐっちょりしてて気持ち悪い。着替え持ってくりゃよかったな……。
そして数分後。
俺の前で高校生とは思えない立派な土下座をしている少女がいた。
「優人、お金貸してください」
「またかアンタ!!」
そういやこの作品のタグにラブコメ入ってるんだった……忘れてた……。
では、今回高評価を入れてくださった
☆10:RubyStarさん、白龍サンダジェさん、はむすたーさん、アルティメットデモンズさん
☆9:里芋の煮物さん、icenonさん、高村恭司さん、完全無欠のボトル野郎さん、ひかぽんさん、イキョウさん、gokikunzさん
本当にありがとうございます!
年末までに総合評価15000、お気に入り4000行きたい所存。行けるか……?
という事で、そういやまだ高評価☆9~☆10押してなかったやごめん☆って人はモチベのためにどうか入れておくんなまし! お気に入り登録も忘れずにね!
最終回まで着々と迫ってる……。