再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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そうか、明日でぼざろは終わりか……。





35.観光するにもまずは興味があるかどうかだ

 

 

 

「一応本人の口から聞いておきましょうか。いつ返してくれる予定なんです?」

 

「らい……今度必ず返す。私は約束破った事ない」

 

「前の返してもらってないですけど。あれ何ヶ月前のやつですっけ?」

 

「……」

 

 顔逸らしてんじゃねえこっち見ろ山田。

 江の島の有料エスカレーター、通称江の島エスカーでのんびり上っていた俺達はその最中で大事な話をしている。そう、お金は大事な話なのだ。

 

 

「ごめんね優人くん、バイトの給料から払わせるから」

 

「そんな殺生な!」

 

「被害者面してんじゃねえよ」

 

 何でお金持ちの家に住んでるのにすぐ楽器に全部つぎ込むんだ。もしかして我慢て言葉ご存知でない? 

 せめてもう少し計画的に使うとか、ある程度貯金しておくとか色々あるだろうに。高校生にもなってそんな簡単な事もできないなんて将来大丈夫かこの人。

 

 

「そもそもですけどリョウさん、アンタ今日ここに来て一発目に塩ソフト買いに行きましたよね」

 

「行った。美味しかった」

 

「で、そのあとたこせんも買いましたよね」

 

「私の美味しいセンサーに狂いはなかった」

 

「元々お金が少なかったら自分は買わずに誰かに少し分けてもらう事もできたはずなのに普通に買ってた。つまりあの時点でもうお金無くなるって予測はできてたはずです。そしてアンタは財布が空になる事を想定した上で、そうなった時は誰かから貸してもらえばいいやと借りる前提で勝手に話を進めてた。違いますか?」

 

 ほんの五秒間、リョウさんは顎に手をやり考える素振りを見せる。

 そして、無表情のままこう言った。

 

 

「優人のような勘の良い男子は嫌いだよ」

 

「俺から借りておいて何だその言い方dmdks@k@んgkんぼえいえjkッ!?」

 

「ステイ! ステイだよ優人くん!? 全面的に正しいのは優人くんだけどここエスカレーターだから今だけは抑えて!?」

 

 さすがにこれはキレていいと思うんだが。

 こいつこのクズベーシスト……お金の使い方を一から叩き込んでやろうか……! 

 

 

「今度返すから」

 

「……信じていいんですね?」

 

「絶対……多分」

 

「山田ァ!!」

 

 ちょっと自信なくしてんじゃねえ!! 

 結局、江の島エスカーで上に上り着くまで俺達のいざこざ話は続いた。みんなもお金の貸し借りは程々にね。信用できる人だけにするんだよ。

 

 

 

「やっと着いた~!」

 

「せっかくだしこのまま展望台まであがりましょう!」

 

「エスカー使ったとはいえ少し疲れたね」

 

「階段で来てたらと思うとゾッとするな」

 

 結構上まで上がってきたような気がする。これを階段のみで上がってくる人もいるとなると普通に凄いかもしれん。ある意味修行だぞ。

 少し歩くとサムエル・コッキング苑という南国ムード感がある庭園の入口前までやってきた。

 

 

「結構距離あった……」

 

「ですね……」

 

 そして少し歩いただけでインドアの二人が疲れ果てていた。

 リョウさんはまだしも途中からおぶられて楽してた後藤さんは何で疲れてんの。エスカーで回復もしてただろ。マジで体力ないのか。

 

 まあ、もう体力使いそうなとこはあんまなさそうだし大丈夫だろう。

 喜多さんはピンピンしすぎてて逆に凄いと思う。太陽光で力溜めれる系女子なのかな。関係ないけど何か昔面白いゲームないかネットで調べてたら、実際に太陽光を使って遊ぶ携帯ゲーム機ソフトがあったような気がする。「太陽~!」とか言うやつ。

 

 真夏の陽の下で騒げる年頃でもなくなったなあ。昔は休み時間は暑くてもグラウンドで走り回ってたってのに、今はもう涼しい室内から出たくなくなった。

 しかしこんだけ暑いと熱中症とかならないように気を付けないといけない。視界の隅に自販機が見えた。ちょうどいいか。

 

 

「ちょっと飲み物買ってきます」

 

「おっけー」

 

 パパッと用を済ませて戻ると、

 

 

「でもいざ上まで来ると開放的になる」

 

「あっ何かポジティブな気持ちになってきました……」

 

 気持ちのビフォーアフターがあった。あの後藤さんがポジティブな気持ちになってくるって何気に相当凄いぞ。いつもは二言目とか一分に一回は必ずネガティブになるし。

 しかしポジティブになれるならそれはそれで良い。少しはここまで上ってきた甲斐があったというものだ。

 

 

「最高の眺めと空気だね!」

 

「みっみんなで写真撮りますぅ?」

 

「後藤さんから写真撮影を誘うなんて……明日は空から槍でも降ってくるのか……!?」

 

 いつもポジティブとは真逆の位置にいるからかプラス思考が働くと一気に積極的になるのね。

 リョウさんでさえ普段絶対見れないような笑顔になってる。激レアじゃん。顔の筋肉死んでるのかと思ってたのに。

 

 そして後藤さんはどこから自撮り棒出してきたんだ。いい加減四次元ポケット使うのやめなさい。

 だがそれはそれとしてノリノリな二人がちょっと面白いので俺も一眼レフを出し構える。虹夏さんも乱入してきた。インドア人ほど開放的な気分になったらはっちゃけようとするのか。

 

 

「へいちーず!」

 

 虹夏さんの掛け声で後藤さんと俺が同時にシャッターを押す。

 もう完全に「結束バンド~」の声はやらないのね。後にも先にも俺だけかもになっちゃうのね。

 

 

「急にハイテンションになり始めた……」

 

「三人揃ってこういうとこ来た事ないんだろ。ちなみに俺も初めてだからちょっとテンション上がってる」

 

「とてもそうには見えないけど?」

 

「アレだよ。自分よりテンション上がってるヤツとか怖がってる人がいたら逆に冷静になるってヤツ」

 

「分かりやすい例えね……」

 

 にしても無駄にハイテンションすぎるような気もする。

 日差しが強いからか三人の頬は紅潮していた。ないとは思うけど一応確認しとくか。

 

 

「三人共ちょいと失礼しますよ~」

 

「んっ、どしたの優人くん?」

 

「……熱はないみたいだな。熱中症とかでも脱水症状でもなさそうか」

 

 撮り終わった三人の額に手を当てていく。

 真夏でいきなりハイテンションになられるとちょっと怪しいので確認しておきたかったが、まあ大丈夫そうかな。そもそもマジでやばかったらこんな元気にはならんか。

 

 

「いや、何かいきなりテンション上がりだしたんで熱でも出たのかと」

 

「微妙に失礼!」

 

「とまあ冗談はさておき、そこの自販機で全員分のスポドリ買ってきたんで飲んで下さい。熱中症対策には必要でしょうし」

 

「え、いいの? やったー!」

 

 虹夏さんから順に渡していきながら、

 

 

「リョウさんも、はい。これは俺の奢りだから気にせず貰っても大丈夫ですよ」

 

「優人優しい……好き……」

 

「一ミリも思ってねえ事言うな」

 

 さてはアンタお金ですぐ釣られるタイプのちょろい女だな。

 女子から初めて好きと言われたのに感動も喜びも欠片ほど湧いてこなかった。やはり思いの込められようで分かるもんなんですね。

 

 

「あれ、『に』? キャップにあたしの名前の頭文字書いてある?」

 

「ああ、みんな同じ飲み物なんで分かりやすくしようと思ったんです。虹夏さんと喜多さんはバッグあるけど後藤さんとリョウさんは鞄とか持ってきてないし、俺が買ったのに虹夏さん達だけ持たせておくのは悪いから飲み物は俺が預かっときますよ。飲みたくなったら都度渡すんで、気軽に言ってください」

 

「な、何てできる男なんだ優人くん……!」

 

「気遣いの鬼だわ……」

 

「へへ、じ、自慢の幼馴染です……」

 

 何故後藤さんが自慢気なのかは分からんが、俺が勝手に買ったのにバッグあるから虹夏さんと喜多さんは自分で持っててねとかできないじゃん普通。

 それこそ鬼だよ。

 

 ひと通り水分補給を終え飲み物を回収していると、後ろからこんな会話が聞こえた。

 

 

「ちょっとぉ、何ぼうっとしてんの?」

 

「ああ、ごめん。みーたん綺麗だから見惚れちゃってぇ……」

 

「もうっ、ばか♡」

 

「みーたん♡」

 

「たっくん♡」

 

 何だろう。無性に腹が立ってきたな。

 ただでさえ暑いのに余計温度上げるのやめてもらっていいですか。後藤さんに奇行させて空気ぶち壊してやろうかこの野郎。

 

 

「チッ」

 

「移動だ移動。こんな場所にいつまでもいられるかってんだ」

 

「今度は清水君のテンションが急に下がり始めた!? もうっ、早く展望台行きましょうよ!」

 

 ちくしょう、精々幸せな生活送りながら結婚して孫達に囲まれながら老衰で死ねバーカ!! 

 許せねえ、俺にはリア充が許せねえよ……。

 

 

 

 

 気を取り直してやってきたのは江の島シーキャンドルの展望台。

 江の島名物の一つである。

 

 エレベーターが開かれたすぐ前にはもう景色が広がっていた。

 

 

「わぁ~、見てください! 展望台からの眺めはもっと絶景ですね! 目に焼き付けとかないと!」

 

「へえ、360度見渡せるのか。こりゃすげえや」

 

 ガラス越しにはなるけどカメラで撮っとこう。やっぱ景色を撮るのも中々良いな。

 喜多さんは既に何十回とスマホカメラで撮りまくっている。同じ角度から何枚も撮ってるけど意味あるのかあれ。SNSに上げる用だとしても選ぶのに時間かかるだろ。もしかしたら実は俺も同じ角度から撮るの真似した方がいいとかあんのかな。

 

 

「あ~クーラー最高……」

 

「極楽」

 

「うっ、思ったより人が多い……ゆ、ゆうくぅん……」

 

 三人は三人で景色よりも室内に関しての感想のみだった。

 後藤さんはそそくさと俺の後ろにしがみ付いてきてるし。まあ、観光スポットなんだから当たり前だけど確かに結構人がいるな。

 

 涼しいから余計室内に集まっているという感じか。

 しかも夏休み中の観光スポットという事はだ。最終日だから最後に行っとこうぜ的なノリで来てるカップルとかが割といる。男女二人組ばっかじゃねえか。もっと家族とかで来いよ。

 

 俺だって高校一年生。まだまだ思春期で青春ラブコメみたいな事に少しでも憧れがないかと聞かれてないと言えるほど達観はしてない。

 人生一度きりの高校生だ。誰だって甘酸っぱい青春を送ってみたいと思うのは当然である。

 

 ……よく考えたら俺も一応バンドとはいえ女子四人と観光スポットに遊びに来ているという事になってるんだよな。

 後藤さん、喜多さん、虹夏さん、リョウさんの順にちょっと視線をやる。

 

 うん、まあこの面子じゃなー。はははっ、ラブコメ的な展開を期待するだけ全部無駄か。

 

 

「「なんかムカつく」」

 

 何故か喜多さんと虹夏さんの両方から頬をつねられた。あと後ろからしがみ付いてる後藤さんの力も強くなりだした。

 口に出してもないのに何でこんな事されてんの。そんな変な顔でもしてた俺? ラブコメ展開諦めてただけじゃん。

 

 何せ観光スポット大冒険に、根暗コミュ症陰キャ、超陽キャSNS中毒者、大天使、借金クズのパーティー編成ではどうしたって偏りがあるに決まってる。

 平凡男子高校生の俺の手に余るヤツしかいねえ。一番マシなのが虹夏さんと言っても、彼女は大天使。むしろ俺なんかじゃラブコメ展開を期待するのすら烏滸がましすぎる。高嶺の花には手なんて届かないのだ。

 

 

ふぇふぃふぃうぃわひょうぇひひ(景色見ましょ景色)

 

 ようやく頬が解放された。伸びてないよねこれ……。

 

 

「ほら、結構綺麗でしょ?」

 

「おー……」

 

 虹夏さんが少し感嘆の声を漏らしたかと思えば、それっきりで言葉が途切れた。

 え、どうしたの。

 

 

「生だとこんなもんかぁ……」

 

「ネットで見たドローン映像の方が綺麗だった」

 

 何てこと言うんだこいつら。そういうのは例え思ったとしても言わないのが鉄則でしょうが! 

 まだ黙って見てる後藤さんの方がマシってどういう事よ? この子はコミュ症陰キャだけど基本的に何かを下げるような事は絶対言わない良い子なんだ。俺は信じてた。

 

 

「喜多ちゃんも満足したみたいだし降りよっか!」

 

「涼しいのは最高だったけどここに来るまでの労力と報酬が釣り合ってない」

 

「疲れた……」

 

「あ、まだ景色見てたかったら見てていいからね~。あたし達先に降りとくからー」

 

 俺でもビックリするくらい景色に関心ないなこの人達。

 いや、カメラがあるからまだ俺も写真撮ったりしてるけど、一眼レフ持ってなかったらこうなってた可能性もあったのか……? 

 

 横を見ると喜多さんが珍しく拳を握り締めていた。

 

 

「ぐぬぬ……インドア人達めぇ……!」

 

 さすがにこればかりは俺も喜多さんに同情せざるを得ない。

 自分だけ景色に感動してバカみたいに見えるもんな。大丈夫、今回ばかりは喜多さんが正しいよ。

 

 

「俺も喜多さんの味方してやりたいけど、どっちみち二対三でこっちの負けだもんなあ。景色をバックにみんなの写真撮りたかったのに迷わずエレベーターに向かってったぞ」

 

「みんなを楽しませるための私の計画がぁ……!」

 

 ああ、事あるごとにスマホで何か調べてると思ってたら江の島観光について見てたのか。

 はしゃぎまくってたから何も考えてないと思ってたけど、インドア共(俺を含める)でも楽しめるよう喜多さんなりに気を遣ってたのね。あの階段は擁護できんが。

 

 元々は俺と後藤さんの思い出作りのためにここを提案してくれた訳だしな。

 俺にできる事は、喜多さんのみんなを楽しませる計画とやらに甘えさせてもらう事だけだ。

 

 

「喜多さん、次のエレベーターで降りよう」

 

「うぅ、分かってるわよぅ……」

 

「だからその前にさ、俺に上手い自撮りの撮り方教えてくれないか?」

 

「……え?」

 

「たまにゃ高校生らしくスマホを活用してみたくなってな。そういうの、得意なんだろ?」

 

 喜多さんが顔を上げる。

 落ち込んでいた表情がみるみる明るくなっていくのを感じた。四つん這いで項垂れていた彼女が勢いよく立ち上がる。

 

 

「ま、任せてっ! 清水君を可愛く盛れる撮り方伝授しちゃうから!」

 

「できればかっこいい盛り方が良いんだけど……。あの、ちょ、聞いてる?」

 

「ほら、一緒に撮りましょ!」

 

「え? いや教えるのが先じゃ……というか俺のスマホじゃなくて喜多さんのスマホで撮んの?」

 

「いいから! この後で清水君ので撮りましょ!」

 

 一度立ち直った陽キャというのは行動が早い。

 ものの数秒で何枚も写真が撮られた。

 

 

 そして、俺のスマホの初自撮り記念は喜多さんとのツーショットになった。

 

 

 

 






コメディー回は書くの楽しすぎて伸ばしちゃう……。
結果的にはアニメ最終回に追いつくまで長くなるから良いのか……?


では、今回高評価を入れてくださった

☆10:さんぱちさん、よしよしjさん、psypsypsyさん、第九の怒濤さん、ヴぁいさん、紅明緑酒さん、黒蛇二等兵さん、nkm3200さん、猫の頃さん

☆9:チョウシュンさん、しゃけシャケさん、イキョウさん、月の眠り人さん、どっへーいさん、megane/zeroさん、ゼルゼルエルさん、bigpploverさん、エスパーダさん、ゾディアーツさん、りゅーりゅーさん、むらんどさん、イエローケーキ238さん、完全無欠のボトル野郎さん、Dレイさん

☆8:ソメイヨシノさん、ソルテさん

本当にありがとうございます!
総合評価15000目指すために久々に2日連続投稿しようとしてたらもう達成していた件。感謝しかない……ありがとう、ありがとう!!
みんなのおかげでモチベ保っていられるので、どんどん高評価とお気に入り登録して甘やかしてください。
Twitterでも承認欲求モンスター生まれるようになったからね。みんなで満たしていきましょうや。


まずは今日の0時からやるふたりちゃんの特番見っぞ!
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