再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
ぼざろアニメ制作に携わった方々全員に感謝しかありません。
関係者みんな人間国宝でいいだろもう。
ただただ満足感、虚無感、虚脱感に襲われ何もやる気が起きない……続きをどんどん書きたいのに書けない……これがぼざろロス……?
サムエル・コッキング苑付近。
俺と喜多さんはそこで虹夏さん達と合流し一休みする事にした。
ちなみに喜多さんと撮ったツーショットに関しては、彼女から「みんなには内緒ねっ!」と口を封じられている。理由は分からん。
結局自撮りの撮り方もそんなに工夫がある訳でもなく、加工はアプリでやればいいとの事だった。いやアプリ使ってまで盛りたいとは思わんけどね。
近くの売店でソフトクリームを買い、適当に座れそうなとこへ座ってひと息をつく。
後藤さんと虹夏さんがミルク味、喜多さんとリョウさんがミルクとアップルマンゴーのミックス味、俺が夕張メロン味のソフトクリームを買った。一口食べたけど誠に美味である。
喜多さんはまたソフトクリームと一緒に自撮りしてる。ほんと飽きないね君。
「そういえばリョウさっき塩ソフト食べてなかった?」
「アイスは無限に食べれる」
「アイス代出したの俺ですけどね。ちゃんと返してくださいよ? じゃないとその内リョウさんの家に押しかけますんで」
「今度絶対返す」
そう言うヤツほど返してこないんだよなあ。この人の場合返せそうな時だとしても普通に忘れてるとかありそうで余計怖い。
つうかお金借りるならもっと申し訳なさそうにするとかないんか。
合流した途端無表情のまま華麗に俺に向かってスライディング土下座してきたぞ。
さすがに断ろうとしたが、俺が断ると矛先が後藤さんに行きそうな気がしたし、何より周囲からは女の子に土下座させている男子というレッテルが貼られかねなかったので断れなかった。つまりこのベーシストに上手く空気を利用されたのだ。お金の借り方を熟知してやがる……。
「あとは何します~?」
「もう結構遊んだけどねえ」
「そうですか? まだもうひとイベントくらいは足りてない気が」
海行ってたこせん食って階段上ってエスカー乗って展望台行ってアイス食ってるのにまだ足りないんですか。
イベントも詰めすぎると逆に大変になってくるんだよ喜多さん。気持ちはありがたいけど後藤さんの体力的に持つかどうか。
「うーん……じゃあしらす丼食べたい! 有名だし食べてみたかったんだよね!」
しらす丼か。確かにそれなら食べる系だし体力も使わないから後藤さんも行けそうだな。
「無理。もうお腹いっぱい」
「ほんとに自由だなおい」
「リョウさんの言う事は七割信用したらダメですよ」
「全然信じてないじゃん……」
前科しかないからね。この人とまともな会話したの最初の内だけな気がする。
基本黙ってるか好き勝手言ってるだけだもの。
「……こ、この音……何ですか?」
後藤さんの言葉で耳をすませると、聞こえた。
ピーヒョロローと音色のような音……というか、鳴き声?
後藤さんの質問に答えたのは虹夏さんだった。
「あ~、トンビじゃない?」
みんなで上を見上げる。いた。
そういえば聞いた事あるな。トンビって確か人の食べ物を狙って取ってきたりする事があると。見た事はないから実際どうなのかは分からないけど、もし本当ならむしろ見てみたいものだ。
人が近くにいるのに構わず狙ってくるなんてカラスでも珍しいぞ。どんだけ恐れ知らずなんだろう。
こちらとしては狙えるものなら狙ってみろ精神だぜ。受けて立ってやらあ!
「人の食べ物狙ってくるので、気を付けて食べ」
「うわぁ!?」
喜多さんの言葉に視線をやった瞬間、その隙を突いてトンビは後藤さんのアイスを奪い去っていった。
恐ろしく速いスティール……俺でも見逃しちゃうね。いやそんな事思ってる場合じゃなかったわ。
「言った傍から!? ぼっちちゃん大丈夫ぅ……?」
「俺のアイス食べるか? まだ一口しか食べてないから結構残ってるぞ。夕張メロン味すげえ美味いから、な?」
幸い上手く盗まれたのか、手などに怪我はしてないように見える。
そして俺のアイスを渡そうと立ち上がった時、先ほどの鳴き声が複数、頭上から聞こえた。
……え、何か多くなってません? さっき一羽だけだったのに、今八羽ぐらいいませんこと……?
しかも頭上をずっと旋回している。それが何を意味するのかは、動物の知識に疎い俺でも何となく予想できた。
まずい、まさか今度は俺か……!? だったらできるだけ後藤さん達から離れて危険から遠ざけないと!
と、俺が走り出そうとしたその時。
トンビの群れは俺ではなく真っ直ぐに後藤さんの方へ飛びかかっていった。
「ぼっちちゃんが獲物にされてるー!?」
「何で俺じゃなくてそっちなの!? 狙う相手間違えてんだろテメェら!」
まさか弱い相手を狙ってんのか。だとしたらこのトンビ共賢いな。弱肉強食の世界、最弱のヤツを狙うのは道理ってかしゃらくせえ。
「鳥にまで舐められてる」
「そんな事言ってる場合じゃないですよ! た、助けないと……!」
「喜多さん、俺のアイス持っててくれ!」
「え、し、清水君!?」
喜多さんにアイスを渡して後藤さんの元へ走る。
今も彼女はトンビ達に群がられている。大事な幼馴染を狙うなんて許せねえ。俺がぶっ飛ばしてやる。
と言っても俺は人間、ヤツらは自然界を生きる猛禽類である。
数も圧倒的不利、恐れを知らないあいつらに勝てるとは思えないが、後藤さんから俺に狙いを変える事ならできるはず。
「うおおおおおおおお! ご、ごはああああああああああん!!」
「何言ってんの優人くん!?」
構わず後藤さんとトンビ達のとこへ飛び込む。
そこから数十秒間、俺は猛禽類の猛攻をただただ受け続けた。
「ダブルヤムチャの出来上がり」
「料理番組みたいに言うな! もう、あぁっち行けぇーッ!!」
「後藤さん、清水君! 大丈夫!?」
「無理です……」
「き……貴様といた数ヶ月……わ……わるく……なかったぜ……。死ぬ、な……よ……悟……飯……」
「悟飯じゃなくて後藤さんでしょ!?」
守り、きれなかった……ウッ。
「ひとイベントあった」
「私こんなイベントは望んでないですけど!?」
「まあ、ちょっと名残惜しいけどあんまり遅くなってもあれだし、そろそろ帰ろっか。ぼっちちゃん達も満身創痍だし……」
「そうですね……。清水君、立てる?」
「ん、大丈夫」
「治りが早いね……」
俺と後藤さんクラスになると、わざと大ダメージを受けた演出をして相手の戦意を削ぐ事ができるのだ。多少は痛いけど。
なあ後藤さん。……あ、この子ガチのダメージ受けてる。元々の体力ゲージがなさすぎたのがダメだったか……。
「それよりもさ、喜多さんはそれでいいのか?」
「え……?」
「ごめん、さっきエレベーター降りてる時にチラッと喜多さんのスマホ画面が見えちまった。調べてたのって、ここの神社の事だよな」
江の島にはいくつか神社があると聞いていた。
喜多さんが行きたがっているのはおそらくその一つだろう。スマホを見ているだけで楽しみにしているのが分かったんだ。ここで行かないという選択肢を選ぶのは早計すぎる。
「みんなと行きたかったんだろ? なら言っちまえ。あと一つくらい寄ってく時間と体力くらいはみんな残ってるさ。後藤さんなら俺が担いでくしリョウさんが面倒くさがるなら借金チラつかせて同行させてやる」
「しれっと飛び火してきたんだけど」
自業自得です。
ぐったりしたままの後藤さんをおぶる。
「ほら、どこに行きたいって?」
問うと、喜多さんは虹夏さん達の方へ顔を向けた。
「……じゃあ、最後にみんなで一緒にお参りして帰りたいです!」
「よしきた! じゃあさっそく行こー! リョウもいいよね!」
「優人様の命とあらば私はどこにだって行く」
「よろしい」
良い返事だ。その調子でちゃんと借金も返してくれればもう文句なしだけど、絶対返ってこなさそうだから見直すのはまた今度で。
エスカレーターは上り専用なので下りは必然的に徒歩となる。
一人後藤さんをおぶりながら膝に負担かけまくりつつ俺達がやってきたのは、辺津宮にある奉安殿前。
「後藤さんもう起きてんのバレてるからな。途中からずっと腕の力入ったままだったぞ。ほら降りれ降りれ」
「……あぅ」
こっそり楽しやがってこのピンク。下りは下りで結構疲れるんだぞ。いやまあ修行と考えればトレーニングにはなったけどさ。
「ここに祭られているのは妙音弁財天という女性の神様で、音楽、芸能の神様なんです! 江の島行くならみんなで絶対行きたいって思ってたんです!」
「じゃあ、あたし達のバンドの活躍をお願いしないとね!」
それぞれ財布から五円玉を出して参拝する。
リョウさんもさすがに一円玉や五円玉はあったようで、それを賽銭箱に投げ入れていた。
音楽や芸能の神様、か。俺の願いは……そうだな。
この先も様々な試練や難関が待ち受けてるかもしれないけど、どうか結束バンドがこれから少しずつでも前へ進んでいけますように。そして、後藤さんがいつかみんなの前で本当の実力を出せるようにしてやってください。
本当は神様に願うものではなくこういうのは自分達で叶えてこそなんだろうが、せっかく有名な神社に来たのならたまには神頼みも悪くない。
願い終わって目を開く。隣では後藤さんがまだ入念に願い事をしてる最中だった。……いや、これあれだな。入念にどうでもいい事願ってる顔だ。
俺には分かる。何か変なもやもや出してるし。
音楽と芸能の神様だっつってんのに無関係な事願ってるぞ絶対。俺が後藤さんの分の願いをしてて正解だったな……。
「ぼっちちゃん、さっきは凄く真剣にお願いしてたねっ」
「長かった」
「えっ……そ、そうですか……? き、気付かなかったな~、なんて……はは、ははは……」
お参りも終わり、階段を下り始めたところで虹夏さんが口を開いた。
後藤さんの反応ですぐ分かっちゃった。やっぱロクな願い事してないぞこの子。めっちゃ目逸らしてるし。
「優人くんもちょっと長かったよね?」
「あれ、そうですっけ?」
自分ではそんな時間かけてないような気がしたけど、そういや俺が目を開けた時にはもう後藤さん以外終わってたっけ。
「どんなお願いしたの?」
「一説によると神様への願い事って口に出したら叶わないとか言いますよね」
「あれ、そうだっけ? あぶなっ、あたしお礼とかお願い普通に言おうとしちゃってた!」
「お礼は別に言ってもいいんじゃないですかね?」
そうだよ、そもそも虹夏さんは天使なんだから神様とほぼ同格だし別に言っても大丈夫っしょ。
何なら虹夏さんの方が格は上まである。……つまりそれってさぁ、虹夏さんに願い事をしてもそれは神社のお参りと同義……ってコト!?
「あ、そっか! じゃあお礼だけ言うとねっ。神様、ライブ成功させてくれてありがとうって言っといたんだ!」
やっぱ大天使やこの人。もう虹夏さんが神様でいいんじゃないかな。母性の女神的ポジションで俺達を導いてください。一生着いていきますんで!
それに比べて隣のピンクジャージを見る。
「虹夏さんはさすがですねぇ。まああくまで一説なんで事実かどうかは分からないですけど。試しに後藤さんの願い事を口に出してみたらいいんじゃないか?」
「……わァ、あ……!?」
どうした、ちいかわみたいな反応して。いや後藤ひとりだからひいかわか。常に悲鳴挙げてるみたいだな。あながち間違いではないけど。
やっぱり変な事願ってたっぽい顔してる。他のみんなは欺けても俺には通じんぞ。どれだけ前髪で隠れて見えづらい表情を覗き込んできたと思ってる。大体分かるかんな。
少しからかうような顔で後藤さんを見てたらこちらの意図を理解したのか、人差し指でとても小さく何度も突いてきた。
「ゆうくん……あ、あんまり意地悪しないで……」
「ははっ、悪い悪い。後藤さんの事だからほんとに真面目なこと願ってんのかちょいと気になっただけだって」
「…………な、ナンノ、コトカナ?」
目線が明後日の方向に行っている。図星だなこいつ。確信しました。
すぐ顔に出るじゃん。幸い虹夏さん達は前で違う話をしていて聞こえていないようだ。仕方ない、幻滅されないように今回は黙っておいてやろう。
────
帰りの電車内。
太陽は夕陽へと変わり、青かった空が朱く染まりつつある頃。
俺達は端からリョウさん、虹夏さん、俺、後藤さん、喜多さんの順で座っていた。
電車に乗る前から既に疲労でウトウトしていたリョウさんを端に寄せる事にしたのだ。一人で外出する事はあると聞いていたけど、リョウさんの場合は古着屋とかをのんびりブラブラするだけでこんなに歩き回る事はなさそうだし、そりゃ疲れるか。
「ここから下北まで一時間くらいだっけ?」
「ですねぇ。あ、後藤さんと清水君は藤沢で乗り換えね」
「あっはい」
「うーい」
最後までケアしてくれる喜多さんシステム優しいな。喜多さんのナビ音声とかあったらバカ売れしそう。勝手に陽キャが行きそうな店ピックアップして案内してくる可能性高いけど。
大きく息を吐く。電車の柔らかいイスに座り、程よく効いた冷房で体がリラックスしていくのが分かる。藤沢までは割とすぐだったか。
「清水君もちょっとお疲れ気味って感じね」
「んー? まあな、後藤さん背負って階段上ったり下ったりしたから今頃疲れが来たんだと思う」
「あっうっ……ご、ごめんなさい……」
「あぁ、気にすんなって。そういう時のために俺がいるんだし」
もし俺がいなかったらどうなっていたんだろうという想像をしそうになってやめる。
多分誰も救われない。後藤さんという一人の存在の負荷があまりにも大きすぎるんだ。
「下北着いたら起こして……」
「しょうがないですねぇ」
声の方を見たらリョウさんが寝る態勢に入っていた。
虹夏さんに至ってはもう完全に寝ている。しかも少しヨダレが垂れ出ていた。めちゃくちゃ疲れ溜まってる時の寝方じゃん。
「あぁ~あ、本当は鎌倉も観光したかったし、みんなで晩ご飯したかったんだけどな~」
「本当に行きたいとこには行けたしいいじゃん。というかあれ以上行ってたらそれこそリョウさんとか後藤さんの体力尽きてるぞ」
「それはそうだけどぉ……」
「しらすどぉん……」
虹夏さんから声が聞こえた。
まさか寝言か……? か、可愛すぎるぞこの天使。めちゃくちゃ可愛い。もうどのくらい可愛いかっていうともう、あれ、えーと……あの、そう……めちゃくちゃ可愛い。
「よっぽど食べたかったみたいねぇ」
「今すぐしらす漁に行って俺が作ってやりたいくらいだな……」
「そこまで!?」
そりゃあだって、ほら、虹夏さんの願いはできるだけ叶えてあげたいじゃん?
いつも癖の強いメンバーをまとめ上げるのは大変だろうし苦労してそうだから労ってあげなきゃだろ。
しらす丼に代わった代用料理とか作れないか? と思ってたら左の肩にストンッと黄色い頭が収まった。虹夏さんだ。
よく見たらリョウさんも虹夏さんの肩に頭を預けている。つまりはドミノ式にこちらに倒れてきたという訳だ。ふむ、困ったな。身動きが取れなくなったぞ。降りる時どうしよう。
まあいっか。その時の事はその時に考えよう。
「ねえねえっ、冬休みは全部結束バンドのみんなだけで遊びましょう! 後藤さんどこ行きたいっ? 毎日思い出作りましょうね!」
「えっあっえっ……!?」
良かった。結束バンドだけって事は俺は入ってないな。
さすがの俺でもクソ寒い時期に毎日外出なんてしたくない。後藤さん、ファイトだよっ!
「もちろん清水君も一緒よ!」
でぇすよねぇ~~~~!! なんか分かってましたぁ!
俺だけ都合良く逃れられると思ってたのに世界は厳しい。夏休みでも毎日誰かしらと外出してる喜多さんってマジ何者なの。そう簡単に毎日とか言うなよ。震えるだろ。
「「考えておきます……」」
「うんっ!」
どうやら後藤さんも同じ事を考えていたらしい。ハモッた。
俺でもこんな気持ちなんだ。後藤さんからすれば毎日外出とかバイトじゃない限り嫌でしかないだろう。
「そうだ、後藤さんも眠かったら起こすけど」
「あっ、いや、行きの電車でずっと意識なかったので、割と目は冴えてて……」
「あら、清水君は?」
「俺も電車までは意識失ってたからな。そもそも藤沢まで寝てもすぐ起こされるだろ?」
「ふふっ確かに。じゃあ藤沢までまだまだ楽しいが続くのねっ!」
片瀬江ノ島から藤沢まではおよそ六分程度である。
なのにその短時間をまだまだ楽しいが続くと言える喜多さんに脱帽した。ここでそういう言葉が出てくる時点で、喜多さんが何故色んな人から人気があるのかすぐに分かる。
嫌味や裏なんて感じさせない純粋な笑顔は、それだけで人を惹き付けるに値する。
「あ、あの……喜多さん」
「ん?」
後藤さんが珍しく自分から話しかけにいった。
「今日は、みんなと遊べて……楽しかった、です。明日から、頑張れそうです……多分」
最後がなければ120点だったんだけどなぁ。
まあ、自分から顔見てそう言えたし、今回は100点にしといてやろう。
「……本当!? よかった~。新学期も一緒に楽しみましょうね!」
「はい……!」
「清水君も、ね!」
「はいよ~」
虹夏さん寄りかかってきてるからそんな動けないんだって、勘弁してくれ。
「んにゃんにゃ……」
電車の中でよくそんな気持ち良さそうな顔して眠れるな……。
ああもうさっきよりヨダレ垂れてきてんじゃん。ポッケからハンカチを出し、後藤さんの涙を拭いた面とは逆の方を使って虹夏さんのヨダレを拭き取る。
何で俺自分のハンカチを他の人のために使ってるんだろう。自分で使えなくなるんだが。
次から予備持ってきておこうかね……。
「あ、次が藤沢じゃない?」
「分かった。……さて、虹夏さん達を起こさないようにしないとな」
そこから俺は喜多さんに手伝ってもらいつつ、できるだけ虹夏さんを起こさないように肩からどけてもらった。
少し名残惜しかったのは内緒だ。
────
電車を乗り換えて数十分。
金沢八景駅から降りていつもの帰路についていた。
「あっ、ゆうくん……今日はウチでギターの練習、していく?」
「急遽遊びに行く事になったからギターはスターリーに置いたまんまだろ」
「あ、そっか……」
結束バンドの初ライブを終えた頃から俺は後藤さんにまたギターを教わっていた。
一度はコードとかよく分からなくて挫折してしまったけれど、曲がりなりにも今は音楽関係のバイトもさせてもらって再び興味が湧いてきたのだ。
最初は後藤さんの事を理解しようとしか思っていなかったためにすぐ諦めたが、今回は結束バンドのためにできる事があるかもしれないと思い再開してみた。
身近に上手い人がいるとこういう時はありがたい。それに喜多さんにも教えてるからか、今の後藤さんはギターの教え方も分かりやすくなっている。これも一つの成長か。
当然バンド活動やバイト、喜多さんに教えるのが最優先なので後藤さんに無理のない時や時間に余裕がある時だけ教えてもらっているのが今の現状である。
後藤さんも不思議と俺に教える時は活き活きとしているし、できない事がほんの少しずつでもできていくのが何より楽しくて仕方がない。バンドに関わるようになってから俺に起きた心境の変化がこれだ。
バンドをしたい訳じゃないけど、カメラと同じで新しい趣味にできそうだな。
近い内に自分のギターも買いに行くかぁ。
「じゃ、じゃあ晩ご飯だけでもウチでど、どうかな……」
「うーん、いや、今日はそのまま家に帰るよ。明日から新学期だし、準備もしなきゃいけないからな。今夜は編集作業の練習とネットとか本で知識のインプットでもしとくわ」
「……そ、そうだね……」
「後藤さんも、明日からまた早起きしねえとなんだから、夜は早めに寝るんだぞ?」
「う、うんっ……」
明日から新学期。
高校に入ってから初の長期休み明けとなる。
二時間かけて登校する学校というのは億劫なものだけど、隣の少女がいるおかげで退屈と思った事は一度もない。
そういう意味では、俺はいつも奇行に走る後藤さんにもっと優しくしてやってもいいかもしれないな。虹夏さん達には過保護とか言われたが自覚もないし、そうしてるつもりもない。
いつか彼女が普通になれるその日まで、きっと俺は後藤さんに手を差し伸べつつ見守っていくのだろう。
明日からが少し楽しみだ。
翌日早朝。
美智代さんから呼ばれた俺は急いで後藤さんの部屋へ向かった。
自分がどんな顔をしているかも分からないで、だ。
襖を開ける。布団の中にヤツはいた。
「あっ、ゆ、ゆうくん……ぜ、全身筋肉痛がぁ……」
スゥッと、自分の体温が下がっていくのが分かる。
美智代さんは隣で困ったように頬に手を当て、釣られて早朝に起きるのが日課になってる元気なふーちゃんは布団ダルマを見てキャッキャしている。
低い声が出た。
「オイ……明日から頑張れるって喜多さんに言ってたよなぁ……?」
「……そ、それは、そのつもりだったんだけど……体中が痛くて……う、動けな……ヒィッ!? あ、阿修羅!?」
「いいからさっさと準備しろゴルルルルルルルルルルァッ!!!!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃあぁぁぁああぁぁあああっ!?」
新学期早々、朝っぱらから絶叫と悲鳴が響き渡った。
欲張っちゃっていいかな……年末までに総評価数700行きたいなって(承認欲求モンスター)
みんな高評価ポチって押してってね! あと調整平均9.10行ってるのありがたすぎる……。
あともしかしたら活動報告か何かで話のネタを募集するかもしれない。
では、今回高評価を入れてくださった
☆10:400さん、橋本 詠海さん
☆9:メーアさん、マグノリアさん、サンチェさん、UMEdama48さん、張本さん、かかきさん、燐々さん、一般通過愉悦部さん
☆8:ソメイヨシノさん、噂のあの人さん、老松こもさん
本当にありがとうございます!
お気に入り4000超え圧倒的感謝……。感想とかお気に入り登録とかここすきとか、気軽にしてってね! アニメロスでモチベに影響しそうなので!
みんなの感想で元気がでます。
ぼざろロスえぐすぎんか……?
曲全部良すぎんか……?
二期までコールドスリープしてたい。