再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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俺のターン! ドロー!
俺は速攻魔法『衝動のままに投稿』を発動ッ!!
このカードの効果は、ランキングに載っている内に最新話を投稿してあわよくばもっと勢いに乗ってくれたら嬉しいなってお祈りする事ができるッ!!

俺には、祈る事しかできない!!



4.運命の出会いとは案外突然来るものである

 

 

 さて、高校生活が始まって一ヵ月が経ちました。

 

 皆さん、俺はもうダメです。後藤さんがあまりにもマイナス方面に強すぎて手も足も出ません。

 そもそも人に話しかけれない時点でもう無理とは薄々勘付いてはいたけど、高校デビューすら既に失敗の領域なんです。こんなの初手からチェックメイトされてるようなものだ。どう巻き返せばいいんだよ詰みゲーだろこんなの。

 

 朝の歯磨きを済ませ一旦制服に着替えるため自室へ戻る。

 出るのは微かに歯磨き粉のミントが香る溜め息ばかりだ。外は良い天気だってのに俺の心は灰色の雨模様です。

 

 まずいな。何だか最近俺まで陰キャ思考に陥ってきてないか? まさか後藤さんを見てるとこちらも気分が暗くなってくるのは感染の前兆だったのかもしれない。

 いかん、何とかして陰キャウイルスを追い出し清潔な雰囲気を取り戻さないと俺まで生きててごめんなさいとか言い出しそうだ。

 

 ネクタイを締め制服を着る。よし、気持ちがしゃっきりしてきた。

 そしてスマホを取ろうと机に視線を向けた時、タイミング良くロインの通知音が鳴った。

 

 こんな朝から誰だろうか。俺と後藤さんは通学に二時間かかるので他の生徒よりも早く起きて登校する。そのため今はまだ朝の六時前だ。

 つまり相手は一人しかいない。そう、一人だけに後藤ひとりからロインが来た。

 

 まあどっちみち後藤さんからロインしてくるのも結構珍しい方ではある。

 最近はもうご飯とかはこっちで食べるし、以前と比べると後藤さんの家に入る事は少なくなった。行っても週に三~四回くらいだ。……いや行ってる方だなこれ。

 

 スマホのロックを解除しロインを開く。

 トーク画面にはこう書かれていた。

 

 

『今日は話しかけてもらえる秘策を編み出したので先に学校行っててください。決してサボりはしません。ちゃんと学校には行きます本当です信じてください』

 

 後半必死すぎるだろ。毎日のように学校行きたくないとか呟いてるしこいつサボるんじゃねえかって勝手に俺が思ってる事にしてるな。正解だ、よく分かったじゃないか。

 しかし、後藤さんなりに一応はちゃんと考えてたんだな。もう諦めてると思った。俺もそうだし。

 

 だけど秘策って普通なら期待できそうなのに、後藤さんが使うとフラグにしか思えないのは何故なんだろう。多分今までの失敗を見てきたからかもしれない。

 成功した試しがないのだ。後藤さんの言う秘策ってあれだ。弁当に入ってるマジックカットの『こちら側のどこからでも切れます』とジョセフの乗る飛行機くらい信用ならない。

 

 話しかけてもらう秘策という事は自分から何かしらのアピールでもするのだろうが、不安しかねえ。

 何で俺が無駄に緊張しなくちゃならないんだ。こんなに頼りにならなくてむしろ怖い秘策も中々珍しいぞ。

 

 とりあえず早く返信をしないといけない。そうしないと彼女は俺がとうとう愛想尽かしたと思い込み派手に落ち込んで学校を休みかねないからだ。

 実際中学の時に風呂入ってて返信が遅れた際、翌日布団にくるまって全然出ようとしなかった事がある。あの頃は何とか説得して事なきを得たが、今またそうされると非常にめんどくさい。

 

 だから俺は既読を付けて適当に入力する。

 

 

『了解。期待しておくよ。けどもし学校来なかったら後藤さんのクラスの人に後藤さんの分のノート書いておいてもらうよう頼んどくから、次の日見せてもらえよ』

 

 よし、退路は断っ……じゃないフォロー完了、と。ロインは文だけを送れるから凄く楽だ。顔を合わせながらだと声の抑揚や表情まで伝わってしまうので少し気を遣う。

 それに後藤さんは相手をよく見る(遠目から限定)から相手が今どういった気分なのかを敏感に察知してくる。例えば今の俺の顔を見たら全然期待してない事がバレてしまうとか。

 

 後藤さんへのロインはさりげなく肯定して調子に乗らせつつ、逃げられないよう脅迫、もしくは外堀を埋めていくのがコツだ。そして最後にこちらからトークを強制的に終わらせるためのスタンプを送りつけて、もう話終わったから返信しないぞと遠回しに釘を刺しておく。

 コミュ症の後藤さんはそういう雰囲気をすぐ感じ取って絶対に返信を送ってこないからこれをいつも利用しているのだ。

 

 それじゃあ、というスタンプを送って、と。これで後藤さんは学校に来ざるを得ない。

 何かスタンプを送った一秒後に『え、あ、ちょ』とか来たけど見て見ぬふりだ。あとで聞かれてもロインを閉じる瞬間にメッセが来て気付かなかったと言い訳すればいい。何故かタップ入力だけは早いんだよな。誰とも喋らなくてずっとスマホ弄ってるからか? 

 

 高校からは少し厳しく接すると決めたのだ。じゃないと後藤さんのためにならない。

 いつまでも俺のフンのままでいさせる訳にはいかないのだ。いや俺のフンはただのうんこじゃねえか。

 

 せめて信頼できる同性の友人ができるまでは一緒にいる。できた時は晴れて俺はお役御免だ。責任も無事取れて安心して後藤さんを見届けられる。

 これが理想。しかしその日がいつになるか皆目見当がつかないのが最大の欠陥だけど。だって今のところ見込みゼロだもの。

 

 

「なるようになる、か」

 

 未来がどうなってるにせよ、俺が今見届けるべきは後藤さんの秘策とやらである。

 期待はしてないが、努力しようとしてる姿勢は評価しないといけない。叱っても落ち込むだけだし褒めても調子に乗って伸びないようなクソめんどい彼女だが、努力だけは惜しまないタイプだ。

 

 それを見守ってやるのも、俺の役割だろう。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 登校してから何分経っただろう。

 そろそろ後藤さんも来てる頃合いかな。退路は断ってるし来ないなんて事はさすがにないと思う。

 

 ふう、おし、腹を決めた。見に行くか。

 いつも通り二組まで足を運ぶ。これももう俺の日課となってるな。ここ一ヵ月ずっと同じような事してるし。でも一応クラスの人ともそれなりに話してるから変には思われてないはずだ。思われてないよな……? 

 

 そして最近俺は気付いた。後藤さんを観察する時、彼女が最後方の席だからって見やすい後ろの引き戸から覗くのはいけないと。

 後ろから見てたら俺の気配を感じ取った後藤さんがすぐ俺の後ろに来ようと追いかけてくるからだ。緑の悪魔かよ。

 

 だから絶対安心で安全を確保しながら後藤さんを覗ける場所は、むしろ前方のドアから見る事である。

 後藤さんは常に俯いて下を向いてるから前を見ない。誰かと目が合ってしまう可能性があるから。つまりここなら後藤さんに見つからずに後藤さんを観察できるのだ。うむ、俺も日々成長しているな。何の役にも立たない成長だけど。

 

 さてさて、では後藤さんの秘策とやらをいっちょ見させてもらいますかねー。

 引き戸に背中を預けさりげなく視線を後藤さんの方へ向ける。

 

 見た。

 見てしまった。

 

 

「うわぁ……」

 

 自然と出た声は頑張った後藤さんへの正当な評価だった。

 ギターを机の横に置き、手提げバッグにはバンドの缶バッジを全面に付け、両腕にはラバーバンドをこれでもかと大量に装着し、ピンクジャージの下には禍々しいロゴTを着ており、音楽雑誌を見ながらニヤケている。

 

 何というかこう、あれだ。痛い、痛すぎる。何だアレ、遠目に見てるだけなのに痛すぎてこっちにダメージ来るんだけど。遠隔攻撃の一種か? 

 バンド組んでないのにギター持ってきてる時点でもうアレだが、百歩譲ってギターはまだ大目に見よう。

 

 バッグとかどうしたんだ。そんなに缶バッジ付けて何がしたいんだ。防御力でも固めてんのか。何に備えてんだよ。

 ラバーバンドに至ってはもはや装備品みたいになってんじゃねえか。攻撃力上げてるつもりか。防具名は『ラバーアーム』ってか。うるせえよ。

 

 しかも音楽雑誌見てニヤケてるのがもうダメ。笑うとこねえだろ音楽雑誌。あれか、コラムとか見てんのか。だとしても笑うとこないだろ。

 ちくしょう、ツッコミが止まらん。素直にドン引きだ。秘策がこれかよ。どうしてアレで話しかけてもらえると思った。みんな見て見ぬふりしてんじゃん。不審者と変わんねえよもう。

 

 あの子もう手遅れなんじゃないか? 手の施しようがない。ここに来て黒歴史増やしやがったぞ。どうやってフォローすればいいんだこれ。

 これはさすがの俺もどうしようもない。なるほど、俺は後藤さんを見くびっていた。彼女はいつだってこちらの想像を軽く超えてくる。どれだけ用心したって草食動物が肉食動物に捕食されるのと同じだ。食われる時は食われる。すなわち自然界の掟。

 

 あばよ後藤さん、俺はクールにここを去るぜ。もし万が一見つかってバンドフル装備野郎に付き纏われるのだけはごめんだ。俺まで何言われるか分からん。

 どうして彼女はあんなにもバカなんだろう。俺が一緒に登校してればすかさずあんなバカ装備外させたのに。……やっぱ俺も押し切って一緒に行けば良かったな。そうすれば後藤さんも黒歴史を生まずにすんだのに。

 

 子供の頑張りを見守る親のような気分で放置していたが、再び失敗。しかもちゃんとしてれば防げたのだから、黒歴史を生んだ原因が俺にもある。

 どうしよう、俺の未来が心配になってきた。同時に後藤さんの未来には暗雲しかない事も分かりきっている。このままでは一緒に地獄まで落ちてしまう。やっぱり感染してるんじゃないか? 

 

 自分の席まで戻り両肘をついて頭を抱える。

 間接的に見ただけの俺でさえこんな気持ちなのだ。当人の後藤さんの心境を考えるとやばい。ポケモンバトルに負けた訳でもないのにめのまえがまっくらになりそう。疑似的に俺まで黒歴史を生んでしまったような錯覚に陥る。幻術かよ。

 

 

「頭抱えてどうしたの、清水君。悩み事?」

 

 隣の席の喜多さんが声を掛けてきた。

 彼女ともここ一ヵ月で席が隣だからか、何度か話した事もあって仲良くなっている方だと思う。ただこの子の場合は誰かを特別視する訳でもなく誰にでも平等に接するから友人も多く、俺は所詮その中の有象無象の一人に過ぎない。

 

 他の男子よりかは話してる方かもしれないが、ヤツらの視線が怖くて自分からは基本的に話しかけにはいかないようにしている。

 人気者と話すのも中々苦労するものだ。

 

 

「ああ、ちょっと知り合いがバカすぎてな。どうしてあんなにバカな事するんだろうって思ってさ。前世で何したらあんなバカになるのか分からないんだ。もはやバカボンの生まれ変わりなんじゃねえかな……」

 

「そんなに!? で、でもほら、その人も好きでそうなった訳じゃないかもしれないじゃない? その人にもその人なりの考えがあるだろうし、少しだけでも尊重してあげたらどうかなって……」

 

「よく考えた末に周りがドン引くようなどうしようもない黒歴史を生んでしまったら?」

 

「……よ、寄り添ってあげる、とか?」

 

「……あー、うーん、でもなあ……」

 

 優しすぎませんこの子。ただの陽キャじゃねえ。陽キャの中でも体が全部善性でできているガチ陽キャだ。

 喜多さんの陽キャ成分をほんの少しだけでも良いから後藤さんに分けてあげて。多分ちょっとだけマシになるか反発して弾け飛ぶかもしれないけど。

 

 

「ふふっ、清水君って優しいのね」

 

「そうか? 発言的にも結構バカにしちまってる方だと思うけど」

 

「けどその人の事をちゃんと想ってないとそんなに悩む事もないでしょ? よっぽど大事な人なのねっ」

 

「……どうだろうな」

 

 まあ、今よりもマシになってくれたらそれで良いとは思ってるけど。大事……大事、か。陰キャコミュ症になってしまった一因の責任を取る形として今の関係性になってるが、実際のところはよく分からない。

 向こうは俺の事を家族以外で面倒を見てくれる人としか思ってないだろうし、俺は俺でこの根暗早くどうにかしないとと思ってる訳で。

 

 結論、保護者と子供とそんなに変わらないんじゃないか。

 後藤さんが手の掛かる子すぎて他の生徒に構ってる時間も最低限しかないしなあ。休み時間はほぼ後藤さん見に行ってるし。その内後藤さん観察日記とか書けそう。

 

 はあ……この高校生活、前途多難だ。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 俺と後藤さんはとある公園に来ていた。

 彼女はブランコに座って俯いている。通常状態に見えるが、普通に落ち込んでいるのは一目瞭然だ。

 

 

「失敗の原因は分かってるな?」

 

「え、あっ、ちょっと派手にしすぎたかも……」

 

「そういう事じゃねえ。いやそういう事でもあるけど」

 

 グッズの量を減らせばいいってもんじゃない。普段全然話さない暗い子がいきなりバンドグッズフル装備でやってきたら誰だって触れたらダメってなるぞ。

 触るな危険みたいなもんだ。危険物扱いされてるんだからもう少し自分のポジションを弁えた方が良い。

 

 後藤さんの隣のブランコに座る訳でもなく、俺は向かい合って手すりだか柵だかよく分からないとこにもたれている。何て言うんだこれ。

 どうしたものかと考えつつも、ここで説教したところで閉じこもるだけだ。そんなのは無意味である。

 

 彼女は彼女で何故か少し離れたベンチに座っている男性と、それを迎えに来た家族らしき女性と子供を見て勝手にショックを受けていた。これ絶対迷惑な勘違いしてただろ。

 後藤さんはよく自分の世界に入る。表ではあまり喋らない代わりに心の中でめちゃくちゃ独り言を話しているのだろう。頻繁に自問自答と自己完結を繰り返し自傷ダメージを負っている。レベルが高いのか低いのか分からない。

 

 今度はスマホを見始めて一人で笑っている。

 こいつ……目の前に俺がいるのに何で自分の世界に入り浸ってんだ。反省はもう終わりか。いや、もしかするともう自分の中で猛反省し終わった後なのかもしれない。心なしか表情も普通に戻ってるし。

 

 ……しゃあない。

 

 

「そこの自販機で飲み物買ってくるから、何がい」

 

「あー! ギターッッ!!」

 

「ん?」

 

 背後から声がして、明らかに後藤さんに向けて掛けられたであろう声を聞いて振り返る。

 まさか学校外で話しかけられるというミッションクリアの変化球がやってきた。

 

 

 これが、後藤さんの運命を変える出会いとなった。

 

 





イワああああああああクッ!(日間ランキングに載ってる事に気付きLP0)
反響次第で続き早く書くとかほざいておきながら、いざ反響があると少しプレッシャーを感じ始めるタイプのやつ。

ランキング一桁とかマジかよ……。みなさんありがとう。
もっとだ、もっとオラに元気を分けてくれ……!主に感想とか!


では、今回高評価を入れてくださった

蚕趣味さん、奏近さん、燦魔さん、春風しふるさん、あかさたなあかさたなさん、ラジカセさん、mmmuさん、葉月とうかさん、紅王陰口さん、saflanさん、御納忠さん、天下の翠さん、レトロニカさん、Zoooooiiiさん、libra0629さん、にゃんてるさん、銀ちゃん杏さん、芋箱さん、ルシファー獣神化マンさん、アイリ2号さん、イナズマルドンさん、妖しい妖さん、ミエさん、とろとろトマトさん、空言秤さん、グリム・ノワールさん、hakuyulumiさん、錆缶鐙武さん、羽田共也さん、有機栽培茶さん、笑う山田君さん、親子丼00さん、LG21さん、の氏さん、ナメクジ次郎さん、幼児退行したモブおじさん、限界感情さん、0.02さん、慎彩さん、カプチーノ山田さん、ヨピさん、VV8さん、樽笊さん、tanamaさん、さといさん、ちるださん、Re:Takeさん、あゝ美しきさん、タビさん、灰虎さん、あるえるさん、すしざんまいさん、研究員さん、わけみたまさん、メヴィさん、座馬八郎さん、ガイドラインさん、Nemurigokeさん、龍子さん、ヒオンさん、この世すべての塵さん、八白02さん

本当にありがとうございます!
こんなにくれるなんて調子に乗ってもいいのかい!?


やっと原作本編入りしてきた。
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