再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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あけおめ!
そして40話まで続いてる驚き。まだエタってない。偉い!

今年もこの作品を暇潰し程度でもいいから楽しんでくれよな!




40.逡巡、後に死亡

 

 

「おはようございまーす」

 

「あっ、店長さんおはようございます……」

 

 いつも通りスターリーまで来た俺と後藤さん。二つだけ違うと言えば、今日は喜多さんが用事があって一緒に来ていない事だ。

 あと駅までワガママ姫をおぶったせいで俺まで色んな人に奇異な目で見られた事。額の包帯が目立ってなかったらもっと注目を浴びていたかもしれない。

 

 どうやら何かあればすぐ他人のプライバシーなんて関係なくスマホで動画を撮るような現代人ばかりの今でも、おぶられてる人が頭に包帯巻いてるケガ人だった時は好奇な視線も数秒ほどで消えるらしい。撮られてなくてよかった。

 動画撮影なんてされたらそれこそそいつのスマホぶっ壊す。

 

 

「えっ、いや仕事してよ……。何自然にゴミ箱の中に入ってんのぼっちちゃん。あと優人も流れのままにぼっちちゃん放置してくな。二人してなに……何かあったの?」

 

 え、後藤さんはゴミ箱の中に入るのがデフォなのでは? まるで自分の巣に帰るような自然な流れ。俺も違和感とか一切感じなかった。もはや居住地だと思う。

 スターリーまでは普通に歩いてたし、もう怪我の方も大丈夫そうだな。

 

 

「いや、まああるにはあったけど……って感じですかね」

 

「何だよ煮え切らねえな。ほれ、みんなのお姉さんに言ってみ」

 

「お姉さんって……ハハッ」

 

「今笑ったか」

 

「笑ってないです睨まないでください」

 

 おれのぼうぎょがさがっちゃうよ~。

 

 

「ったく……そもそもぼっちちゃんが挨拶をスムーズにしてきた時点でおかしいのは分かってんだよ。いいから話せ」

 

 その認識もどうなんですかね。店長とはいえさすがに酷いと思いません? 

 俺は思いません。事実なので。

 

 それにしても後藤さんの事をよく見てるなぁ店長。どんだけ気に入ってんだよ。気付けば目で追ってたってか。恋かな。

 ともあれ隠し事という程でもないしバレてるならば無理に黙ってる必要もないか。

 

 ゴミ箱と一体化なうの彼女を引きずり上げる。

 

 

「後藤さん出てこい。困った時は大人へ悩み相談だ。さぞ良いアドバイスをくれるかもしれないぞ」

 

 という事で店長とついでに近くにいたPAさんに事情を話してみた。

 

 

「ふーん、迷ってんなら出た方がいいと思うけどね。一生に一度の青春の舞台だし」

 

「でしょ? 後藤さんにも学校で良い思い出の一つくらいは作ってほしいと俺も思ってるんですよ。行事イベントで後藤さんが輝けそうなのって文化祭しかないし」

 

「お前も言ってる事大概だな」

 

「球技大会でこの子の失態を目撃してる身としてはもう文化祭しか希望はありません。それ以外の行事は諦めるほかないです」

 

「何を見てきたんだお前は……」

 

 個人競技なら誰の迷惑にもならないと考え他クラスだったけどお互い卓球にしようと事前に打ち合わせし、見事に同じ体育館での対戦(男女別)になったから遠目で見ていたのだが、とても見てられなかった。

 個人競技であっても同じクラスに卓球を選んだ人がいる時点で気付くべきだったのだ。

 

 試合をするのは個人だけど五人組で一人ずつ対決していく形式だと。

 つまりは五人中三人は勝たなくてはいけないというある意味のチーム戦であった。そこで発揮される運動神経壊滅ウーマン。後半からもう彼女の組のメンバーは後藤さんを戦力外として数え、四人で勝ち上がろうと士気を上げていた。

 

 本人は真剣に頑張っているつもりなのに捨て試合扱いされ、終わればメンバーと二メートル離れた場所で孤独のまま体育座り。

 家に帰った時の彼女がずっと部屋の隅で「私は誰から見ても戦力外の女……」と呟きながら静かに泣いていたのを思い出す。ふーちゃんはそれを見て無邪気に笑っていた。俺は心の中で泣いていた。こんな悲しい思い出ある? 

 

 

「その話、します……?」

 

「いやいい。お前が珍しく死んだ目になってるから聞いたらこっちまでダメージ来そう」

 

 楽しい思い出を作るためのお悩み相談なのに何で余計雰囲気暗くなってるんだろう。

 うわっ、後藤さんのエピソード……暗すぎ……? 

 

 

「そんな訳で高校一年の一度っきりしかないイベントを良い思い出にするために出た方が良いと俺は思ってるんですけど、当の本人の気持ちを無視する訳にもいかないので店長何かアドバイス言ってやってくだせえ」

 

「さっきも言ったが少しでも出たいと思ってんなら出ればいいじゃん。まあ私は高校ろくに行ってないから適当に言ってるけど」

 

「私は高校中退でーす」

 

「ダメだ後藤さん、相談相手間違えてるわ。ロックすぎて何の役にも立たねえ」

 

「あっうっ」

 

「お前って最初は丁寧なのに仲良くなると雑に扱ってくるタイプの人間だよな」

 

 そのくらいじゃ関係が壊れないと思ってるという信用の表れです。

 あと話してみとか言ってたくせに適当に答えてる時点でマジで役に立ってないのはそっちでしょうが。

 

 

「おっはよ~う。あれ、どうしたのぼっちちゃん達、お姉ちゃんと何か話でもしてたの~? てかぼっちちゃん頭の包帯何? だいじょぶ?」

 

「助けてママッ!!」

 

「えっ急に何!? ママ!? あたしが!? 何でっ!?」

 

 天使が降臨なされたぞぉ! 助けを乞え! 神託を授かるのじゃあ!! 

 

 

「実はかくかくしかじかなんですよ」

 

「あー、なるほど、そゆことね!」

 

「今ので分かんのかよ」

 

 天使を舐めないでいただきたい。ニジカエル様は全知全能ぞ。

 

 

「良いじゃん文化祭ライブステージ! 出ようよ!」 

 

「うっ……でもぉ……」

 

 よし、いいぞ。もっと言ってやれ! ちょっと強引にいくくらいがちょうどいいんだ後藤さんには! 

 バンドメンバーの虹夏さんの言う事なら八割は言う事聞くしね! 

 

 

「ライブハウスとはまた違う良さがあるよ~?」

 

「に、虹夏ちゃん出た事あるんですか……?」

 

「うん、中学ん時ね~」

 

「虹夏さんの文化祭ライブか。そりゃ見てみたかったですね」

 

 きっとみんな信者になったに違いない。崇め奉りご奉納されまくったに違いない。

 

 

「私もある」

 

「りょ、リョウさんも……?」

 

「やっぱり観客みんな沸きましたか?」

 

 この人ベースは普通にめちゃくちゃ上手いからなぁ。

 女子達にキャーキャー言われてそう。

 

 

「マイナーな曲弾いて会場をお通夜にしてやったっ」

 

「台無しだよ」

 

 絶対普通に弾いた方が盛り上がるじゃん。普通の人なら絶対にやらない事をやってのける。まさにロックだ。

 さすがリョウさん、俺みたいな凡人の考えとは違う世界を見ている。そこに痺れないし憧れねぇーッ! 

 

 

「あたしもリョウとは出た事ないし文化祭ライブやりたいな~」

 

「えっそうなんですか?」

 

「結束バンド組んだの最近だしね」

 

「前は別のバンド組んでたんでしたっけ」

 

 アー写撮影の日に後藤さんから軽く聞いてたのを思い出す。

 

 

「まあね。だから次は今の四人で出てみたいなって!」

 

「私も、オリジナル曲をここ以外でやりたい」

 

「だってよ。こういうバンドがあるって知ってもらう良い機会なんじゃねえか?」

 

 スターリーだけだとどうしても知名度を広げるにも限界というのがある。

 たまには外に出てライブをし、色んな人に興味を持ってもらうのもありだろ。なお後藤さんの心労は考えないものとする。

 

 

「……で、でも、高校の文化祭って青春ロックで盛り上げないと退学なんじゃ……」

 

「俺達の高校を何だと思ってんだ」

 

 そんな校則あったら不当で訴えてやるわ。

 こいつの場合青春イベントに偏見持ちすぎるのも考えものだな。下手に妄想力激しい分、思い込みと偏見で無駄なハードルと壁まで作っちまう。

 

 後藤さんの顔はまだ浮かない。出たい気持ちと不安や恐怖の中で逡巡しているんだろう。

 まあここで変に調子乗って出るとか言うと変なフラグ立つに決まってるし、軽断するよりは慎重になる方がまだマシか。何より真剣に考えている証拠だ。

 

 

「とはいえ、ぼっちの迷う気持ちも分かる」

 

 それを言い出したのはリョウさんだった。

 

 

「下手したら……というか絶対ここより多い人数の前で演奏する訳だし。だからそんなに焦って決める事でもないよ」

 

「リョウさん……」

 

「うぐふぅぁッ!?」

 

「優人くん!? 胸を押さえてどうしたの!? ちょっと吐血してるし!」

 

「ギャップが……ギャップがぁ……」

 

 俺の心にこうかばつぐんだった。

 普段がクズだからたまにこういうまともで良い事を言うと、そのギャップで俺は大ダメージを受ける。くっ……顔が良いから余計かっこよく感じちまう。卑怯だろあんなの。

 

 俺はギャップに弱い。

 マンガとかでいつもは能天気な態度なのに戦闘になるとめっちゃ強かったり、普段は大人しいのに大事な場面では凄くかっこよく見えたりするのに滅法弱い。はい、大好物ですそういうの。見るとテンション上がるか撃ち抜かれる。

 

 

「正直お通夜状態だったライブたまに夢に見る……」

 

「強がりだったのかよ」

 

「ふぅ、それでこそリョウさんだ。実は打たれ弱いギャップもあるとは恐れ入ったぜ。よっしゃしょうがねえ! 明日リョウさんが好きな食べ物作ってくるんで元気だしてください! 何がいいですか?」

 

「黒毛和牛のローストビーフと最高級の松茸ご飯……」

 

「調子乗んな」

 

「回復はやっ。そしてギャップを喰らったせいか一時的に甘やかそうとしてる……!」

 

 超速再生とでも呼んでください。最近コツ掴めてきたんで。

 

 

「私は質の良い食べ物を欲している」

 

「んな贅沢料理は家で食っててください。俺が作れるのは庶民のものばかりなんで」

 

「けど優人の作る料理は素材の質とか関係なく絶品なのは確か」

 

「誤魔化そうとしたって高級食材を最初に選んだ事実は消えないからな! 卵焼きで手を打ってやる!」

 

「打つんだ」

 

 やっぱ人に自分の作った品を褒められるのは嬉しいんすよ。ギャップ関係なく作ってあげたくなっちゃう。美味しいものは人を笑顔にするんだ。

 あれ、そういや何の話してたっけ? 

 

 

「文化祭ライブどうするかって話をしてたんでしょ。はい優人くんもリョウに構ってないで戻ってくる」

 

「……ん? 虹夏さん今俺の心を読ん」

 

「あとあたしにも卵焼き作ってきてね」

 

「え」

 

 何か今労力が一つ増えたような気がするんですが気のせいですかね。

 というか心読まれたっぽいんだけど、ほんとに天使だったりする? いや、天使か。

 

 

「ゆ、ゆうくん……わ、私も……」

 

「お前にゃ昼休みの時いつも分けてんでしょうが」

 

 まだ食い意地張るつもりかこいつは。見境ねえな。

 

 

「とーにーかーくっ!」

 

 手を叩いて虹夏さんが場の空気をまとめにかかる。

 

 

「ぼっちちゃんの悔いが残んないような選択をしなよ。それが一番なんだからさ。優人くんも、ちゃんと意見聞いてあげてねっ」

 

「仰せのままに」

 

「うむ、よろしい」

 

「わ、分かりました……もう少し、考えてみます……」

 

 その日のバイトは特に忙しくもなく終了した。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 後藤さんの部屋。

 そこでいつも通りギターを教えてもらっている俺は、彼女の顔を見つめていた。

 

 

「よし、今日はもう帰るかな」

 

「……え? あっでも、今日はまだ四十分くらいしかやってないけど……」

 

「考え事してるからかたまに上の空になってんぞ」

 

「うっ……ごめんさない……」

 

 借りていたギターを渡して軽く体を伸ばす。

 

 

「文化祭ライブの事だろ」

 

「……うん」

 

 ギターよりも考え事の方に持ってかれているのは非常に珍しい。

 それだけ彼女の中で文化祭ライブというのが大きくなっているんだろう。もしかしたら文化祭ステージに立って結束バンドでライブができるかもしれない。叶えられなかった一つの夢が叶えられるチャンスが目の前にある。

 

 承認欲求の塊である彼女からすればあまりにも巨大な餌が撒かれているような状態だ。

 本来ならすぐ喰い付いてもおかしくないが、彼女の性格がそれを阻んでしまう。リョウさんの言っていた通り、観客はスターリーの数倍。そこで後藤さんが普通に演奏しなければならないのだ。不安にならないはずがない。

 

 

「虹夏ちゃんもやりたいって言ってたし、絶対気分良いんだろうなって思ってはいるんだけど……」

 

「あと一歩が前に出ないと」

 

「……はい……」

 

 初ライブの打ち上げの時に虹夏さんと話していた時も思っていた事だけど、後藤さんは少しずつだが変わり始めている。

 周りからちやほやされたいという気持ちは大前提にあるけれど、それ以上に自分以外の誰かのためにやりたいと思えるようになってきているのだ。

 

 今だって虹夏さんもやりたいって言っていたと、気分が良いんだろうという承認欲求よりも先に来ているのが良い例である。

 この変化は普通の人なら小さな事だけど、後藤さんにとってはとてつもなく大きな変化なのだ。自分だけの気持ちを優先するのではなく、結束バンドの気持ちも汲めるようになってきた。

 

 それが何だか、俺にはとても嬉しかった。

 

 

「良いんじゃねえの」

 

「……え?」

 

「出るも出ないも結局は後藤さんが決める事だ。喜多さんにバレたら嫌でもゴリ押しされるだろうし、どちらにしてもその前にハッキリ決めておくのは悪い事じゃねえ。虹夏さんだって言ってたろ。一番は後藤さんが悔いのない選択をする事だって。なら本当に悔いのない選択をしたなら、虹夏さん達も分かってくれるさ」

 

 あくまで俺は後藤さんに選択を委ねるだけだ。ライブをやるにしてもやらないにしてもな。

 本音はやってほしいというのはあるが、彼女の気持ちを無視してまでさせるのは違う。背中を押すのと無理矢理やらせるのでは差が大きすぎる。

 

 だけど、これだけは言っておきたい。

 

 

「ただ、後藤さんが文化祭ライブに出たいって選択をするなら、俺はそれを全力でサポートするよ」

 

「サポート……?」

 

「ああ、俺にできる事なら何でもしてやるさ」

 

「(……なん、でも……)」

 

 彼女の夢を叶えられるならやれる限りの事は尽くすつもりだ。

 そうして後藤さんがまともに近づいてくれれば一歩前進なのである。更生計画は地道に進ませていかないと一気にやったら爆散しちゃうから調整が難しいんよね。

 

 程なくして、後藤さんから返答があった。

 

 

「ゆうくん……わ、私……やってみる……!」

 

 決意に満ちた表情に、俺の口角は自然と上がっていた。

 

 

「よく言った」

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 翌日。

 学校に着いた俺達は早々に別れていた。

 

 後藤さんに文化祭ステージの出演希望申請書を出してくると言われたのだ。

 何でも俺がいると変に揺らぎそうだから一人で行くとの事。彼女が成長していて嬉しい限りである。別れ際にめちゃくちゃ震えてたのが少し気になるけど。

 

 教室に着き自分の席に向かい鞄を置く。

 

 

「おっは~清水。今日も遠方はるばるご苦労さんだね~」

 

「はよっす佐々木さん。もうすぐ半年だしさすがに慣れてきたよ。若いっていいな。遅寝早起きでも割と体にガタが来ねえし」

 

「いやそれいつかガタが来るフラグのやつじゃん」

 

 軽口を叩き合いながらいつも通り田中達のとこへ行こうとして気付く。

 

 

「あれ、そういや喜多さんはまだ来てないのか? 珍しいな」

 

「ああ、ちょっと寄ってくとこあるから少しだけ遅れるってロイン来てたけど」

 

「へえー」

 

 コンビニとかかな~と思っていると、俺のスマホがロインの通知音を鳴らした。

 朝っぱらから誰だ? 

 

 スマホを出して画面を見ると噂の喜多さんからの個人ロインだった。

 何だろう。お目当ての物がコンビニで売ってなかったとかそういう嘆きのロインか? とにかくトーク画面を開いてみる。

 

 そこには簡潔にこう書かれていた。

 

 

『清水君どうしよう……私、後藤さんを殺しちゃった……』

 

 

 

 

 なにごと? 

 

 

 

 





年明けから殺されるぼっち。

次回はアニメではなかった幻の中間テスト回やります。

では、今回高評価を入れてくださった

☆10:おとぎソールさん、越前忠相さん、リューノスケさん、くろゆいさん、ziriayakaさん

☆9:りんくすさん、konsome11さん、けん0912さん、風音秋郷さん、黒たんさん、ヴェントさん、シャウタさん、月餅甘天さん、七枝八重道灌さん、堀田瑞松さん、ファッション狂人さん、完全無欠のボトル野郎さん、クロルフェナピルさん、ヨミタカさん

本当にありがとうございます!
良かったら新年一発目の高評価をお年玉としてくれると凄く嬉しいな~って! お年玉ちょうだい!!(無邪気)
お気に入り感想ここすきも待ってる!
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