再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
徐々に上がっていく日間ランキングを見て絶句しました。
皆様に感謝の気持ちを表すにはもうちゃんと更新していくしかないと思ったので、このまま書き続けていきます。
けど休日の更新ペースが落ちるのだけは勘弁してつかぁさい!
それ以外は毎日頑張るんで!
あ! やせいのバンドじょしがとびだしてきた!
ごとうひとりはどうする?
にげる おびえる
かくれる ➤とくとうせき
ごとうさんはおれのうしろにかくれた。しかしまわりこまれてしまった。ごとうひとりのめのまえがまっくらになった!
いや交ざってる交ざってる。ポケモンクエストになってるから。
と、冗談はさておき。
いきなり俺達の前にやってきたのは黄色い髪を左に結んだサイドテールで、アホ毛がちょこんと立っているキュートなバンド女子だった。
今も俺の背中に隠れている後藤さんへ「それギターだよね? 弾けるの!?」と質問しているが、初対面の他人と話す事が久しぶりすぎて上手く声を出せていない。
身内と他人じゃこうも違うのか……。というか俺を挟んで会話してない? 大丈夫? 俺人間じゃなくて電柱扱いされてないよね?
「あ、いきなりごめんね。あたし下北沢高校二年、伊地知虹夏!」
ふむ、二年って事は一つ先輩か。
「あっ、後藤ひとり秀華高校一年です……」
「君は?」
「同じく秀華高校の一年、清水優人です」
良かった、一応人として認識されてたみたいだ。危うく後藤さんよりも先に人間としての尊厳を捨てさせられるとこだった。
「ちなみにひとりちゃんはさ、ギターどのくらい弾ける?」
おっといきなり名前呼びからの俺への興味既にスルー。オーケー、今日から俺は電柱です。人と人との会話を結ぶ伝心柱になります。誰が上手い事を言えとやっかましぃあッ!
「あっ、そこそこかと……」
噓である。この女、素人目の俺から見てもギターめちゃくちゃ上手い。たまに好きなバンドの曲を弾いてもらうくらいにはリクエストもしてたりする。
だがここで後藤さんめっちゃ上手いですよとか言ったら確実に爆散するしな。せっかく人に話しかけてもらえたんだ。プレッシャーかけないためにも俺はノーコメントでいこう。
「清水君は?」
「コードって何? って感じです」
あ、俺は名字呼びですのね。まあ見知らぬ男子だしそれは当たり前か。ギター持ってる後藤さんが本命だから一気に距離を縮めるために名前呼びしたんだろう。
ちなみに俺は楽器全然弾けない。一回後藤さんにちょっとだけ教えてもらおうとしたけど、知らん単語がたくさんあるのと指の動きが複雑すぎて指が攣りそうになったからだ。こんなの弾ける人普通にすげえわ。
「そっかぁ……あのさ、実は今ちょっと困ってて、無理だったら大丈夫なんだけど……大丈夫なんだけどぉ、困ってて……」
「(ぜ、絶対だいじょばないやつ……)」
「(それには同感だけど、後藤さんのギター見て声掛けてきたって事はそういう事なんだろ。話聞いてみるのはありだと思うぞ)」
何とか声を聞き取れたので逃げないよう言っておかなければならない。すぐ逃げようとするからなこの子。
「……うん、思い切って言っちゃおう!」
パンッ! と両手を叩いて伊地知さんが意思を固めたようだ。さすがに口寄せの術ではなかったか。
「お願い! あたしのバンドで今日だけサポートギターしてくれないかな!!」
予想通りだった。しかし、後藤さんがこれで素直にはいと頷くようにも思えない。ほとんどイエスマンの彼女だが、肝心なとこで怖気づいてしまうのが欠点だ。
伊地知さんはそのまま縋るように手を合わせながら、
「これからライブなのにギターの子が突然辞めちゃって……。ある程度弾ける人ならすぐできる曲だから、何卒~……!」
「あっ……え、む、む……」
「ん? おい後藤さんまさかことわ」
「ありがとう! じゃあさっそくライブハウスへゴー!」
まだちゃんと何にも言ってないのに!? いやでもこの強引さは引っ込み思案の後藤さんにとってありがたいかもしれない。
俺の聞き間違いじゃなければ後藤さん無理って断ろうとしてたからな。多少顔が崩壊しても新しい景色を見られるなら行く価値はある。
そして、彼女の門出を祝いつつ俺は後藤さんを伊地知さんに差し出して、
「じゃあ俺は先に帰ってるからがんばぶぇぼぁっ!?」
「ゆっ、ゆ……くんも、一緒に……!」
こいつ……後ろから制服の襟首がっつり掴んで引っ張りやがる……。く、首がぁ……どこからそんな力湧いてくんだよ握力限界突破でもしてんのか!?
「ちょちょちょ、締まってる! 清水君の首が締まってるよひとりちゃん!?」
「こ、この野郎……は、はな、離しやがががががが」
「壊れたロボットみたいな声になってきてる!? ひとりちゃんそれ以上はやばいから! 清水君も一緒に行くから離そ! ねっ!?」
「あっ、はい……」
何故だか俺も行く事になってしまったが伊地知さんのおかげで命拾いした。こんな形で命の恩人を作ってしまうとは何事だ。
とりあえず。
「……あだぁッ……!?」
「ハァ、ふぅ……引っ張りすぎだっつうの。バーカ」
後藤さんにお仕置きのデコピンを喰らわした。
マジで目の前が真っ暗になりかけた。死ぬかと思ったぞ。
────
下北沢駅周辺まで俺達は移動していた。
来た事ないから周囲の景色は結構新鮮だ。
「ひとりちゃん達は下北はよく来るの?」
「あっ、いやぁ……」
「こんな個性みなぎるオシャレタウンに来れる訳ないって言ってます。ちなみに俺も来るのは初めてです」
「あそこから言ってる事分かるの!? 清水君凄いね!」
ぼっち脱却大作戦でよく会議してたからな。大体の事は分かる。おおよそ六割は当てられるはずだ。後藤さんもこくんっと頷いてたから今回は正解だった。
あと残りの四割は適当である。後藤さん基本「あっ」「えっ」「その」「いや」「あの」しか言わないからな。もはや暗号。
「あ、ライブハウスもうちょいだから」
「はい。というか、俺まで付いてきて良かったんですか? 後藤さんのせいとはいえ楽器できる訳でもないし却って迷惑なんじゃあ……って分かった。分かってる。分かってる今更帰らないから右腕の袖だけ強く引っ張るな変に伸びちゃうでしょうがっ」
「んんんんんぅ~~~……!」
その内後藤さんが原因で俺の制服よれよれの伸び伸びになっちゃうんじゃないか。どうせならゴムゴムにしてください。
「うん? 大丈夫だよ。お客さん扱いでも良いし今日はひとりちゃんに頼んでるのはこっちだからお代もいらないし! ひとりちゃんも清水君が一緒じゃないと嫌そうだしねっ」
「せっかくだから俺無しでも行けるようになってほしかったですけどねえ」
まあそう簡単にはいかないか。徐々に慣らした方がいいかもしれないな。お役御免の道のりはやはり遠い。
俺が帰ろうとしたらこれだもんな。育て方を間違えたか……?
当のご本人は俺が帰らないと分かった瞬間機嫌を取り戻し、また自分の世界に入っている。しかし片手はしっかり俺の右袖を掴んだままだ。絶対に逃がさないという意志を感じる。
しかもいきなり前を歩いてる伊地知さんの匂いをすんすんと嗅ぎ出した。何やってんだこいつ。いつから変態スキルを取り込んだんだ。やめろ、袖掴まれてるから離れたくても離れられない。俺まで変なレッテル貼られそうで怖いんだが。
「ん? 歩くペース速い?」
「い、いえ」
「そうそう、今日出演するライブハウスは『STARRY』っていうんだけどね。あたしのお姉ちゃんが店長やってて……ていうか店の上のマンションにあたしら家族が住んでるんだー」
「あっ、はい」
伊地知さんが後藤さんの方に振り向いて話しかけた途端目を逸らした。恐るべき速さ、俺でなきゃ見逃しちゃうね。いや全然伊地知さんも見逃してないけど。
すると突然攻防戦が始まった。
「でね、あたしがそこでバイトやってて……」
「あっ、はい」
「他のスタッフの人もみんな優しいんだー」
「あっ、はい」
「だからそんなに緊張する事もないよーって」
「あっ、はい」
伊地知さんが何とか後藤さんと目を合わせようと必死に動いているが、対する後藤さんはそれよりも先に動きを読んで避けている。
何だこの無意味な戦い。後藤さんは同じ事しか言わねえし。NPCかよ。途中から水陸両用モビルスーツの事を言ってるかと思ったぞ。それはアッガイ。
「……ひとりちゃんって実は運動できる?」
「あっ、いえ……でもドッジボールだけは何故かいつも最後まで残ってました……」
「そ、そっか……」
おいやめろ。誰も得しない回答とか悲惨な結末しか見えないぞ。現に伊地知さんがとても困った顔で俺を見てくるのが証拠。
やめてください。俺だってまさかデフォでミスディレクション使える女の子が幼馴染だったとは思わなかったんです。気を遣ってボール当てられなかった説が濃厚だけど。
「清水君は運動できるの?」
俺にもちゃんと話題を振ってくれる辺り普通に優しいなこの人。今日に関してはハッピーセットのおまけみたいなものなのに。
「普通よりはまあ、くらいですかね。基本体育の授業以外で買い物とかしか外出しなかったんで」
「へえ、そうなんだー。結構インドア派なんだね!」
「ですねえ。家事とか料理とか色々やる事あって友達と遊びに行く事もそんなになかったんですよ」
友人が放課後誰かの家に行って遊んだり部活に勤しんでる間、俺はその日の晩飯を作るために買い物したり洗濯物を取り込んだりしていた。
おかげで娯楽といえば家で済ませられるマンガや一人用とかオンラインゲームだけだったな。今でもそれは続いていてソシャゲとかデイリーミッションとか日課になっている。後藤さんの世話で忙しいので古戦場から逃げさせてください。
「なになにー? 今流行りの主夫系男子なのー? 料理もできるなんて優良物件だねお主~っ」
「流行りかどうかは分からないですけど、そう言ってもらえるのは素直に嬉しいです」
「私は武道館をも埋めた女……」
「え!?」
いきなりブリザガ放つのやめてもらっていいですか後藤さん。唐突すぎて会話の流れぶち壊してるやん。伊地知さん顔真っ青ですやん。
あははと苦笑いしながら前を見る伊地知さん。多分やばい子だとか頼む相手間違えたとか思ってそう。ほんま後藤さんの墓穴クオリティーには頭が下がるでえ。
そして数分後。
「あ、着いた。ここだよー」
案内されたのは上にマンションがありその下へ続く階段の店。上にマンションあるとは言ってたけど一階とかじゃなくて地下にあるのか。
まさにライブハウス独特の暗い雰囲気を入口の時点で醸し出している。隣にいる後藤さんは何故か青ざめていた。何で、むしろホームなんじゃないの?
「おっはよーございまーす!」
伊地知さんの挨拶と一緒に入ると、おお……これはすげえ。バンドは聴くけど主にネットだから直接ライブハウスに来た事はなかったけど、無用にテンションが湧き上がってくる感覚に襲われる。
この暗さと圧迫感がむしろ良い。ここで大音量の好きな音楽を生で見れるのなら、ファンが現地にわざわざ見に行くのも頷けるな。
「私の家……」
「あたしの家なんだけど!?」
隣では後藤さんが伊地知さん家を侵略しようとしていた。すぐ負けそうだけど。
「あれが照明さんで、そこにいるのがPAさんね」
「おはようございます……」
おおう、何だか耳にピアスばっか付けて雰囲気イケイケな女性が出てきたぞぅ。これは後藤さんにはキツそうだ。
「いいいいイキってすみません……」
半泣きであった。
どうした、後藤さんの中で何があった。何かしら調子乗ってたか同士だとか勘違いしてたんじゃないだろうな。言っとくが後藤さん程の人物なんてそうそういないからな。
「やっと帰ってきた」
不意に奥から誰かがやってきた。
「あ、リョウ~!」
リョウと呼ばれた人は、何だか伊地知さんとは対照的に大人しめな雰囲気を感じた。
一言発しただけで分かる女子にしてはトーン低めな声、肩まで切り揃えられた髪は毛先がふわりと整えられており、左に泣きぼくろもあるからか可愛いというよりも綺麗、女の子というよりかは女性の印象の方が強かった。
「この子、後藤ひとりちゃん。奇跡的に公園にいたギタリストだよ」
「へえ……」
後藤さんが怯えている。無理もない。PAさんで既に致命傷を喰らってるのに更に追い打ちかけられたようなものだ。もはや泣きっ面に蜂ではなくサメである。
「こっちは?」
「ひとりちゃんの保護者的な子で、清水優人君。楽器はできないけど、一緒にいたしせっかくだから来てもらったの!」
「どうも、清水です。後藤さんの監視役みたいなものなんで、基本的にいない者扱いしてくれて大丈夫です。それより後藤さんの事よろしくお願いします」
「何で自分を卑下するような事言ってるの!?」
いやだって楽器弾かないからモブと変わらないし卑下したつもりもないんですけど。タダで来させてもらってるのにバンドマンよりも変に目立っちゃまずいでしょ。
後藤さんはさっきから怯えで凍結してるし。
「で、こっちがベースの山田リョウだよ」
「ほれ後藤さん、挨拶」
「ごごご後藤ひとりです大変申し訳ありません!」
よし、ちゃんと挨拶できたな。相手が如何なる人であれ初対面ではちゃんと挨拶する事は大切であり、何より序盤のコミュニケーションでもある。
人に話しかけられるに続いて第二ミッションクリアだ後藤さん。よくやったな。何で謝ったのかは謎だけど。
「大丈夫だからっ、リョウは表情が出にくいだけなの。あ、でも変人って言ったら喜ぶよ~」
「嬉しくないしぃ」
噓である。この人、口ではそう言っていても表情がもうとろけている。完全に喜んでいる人の反応だ。
思ったよりも親しめそうな人だな。
後藤さんも今ので少しは和らいだのか、先ほどよりも怯えはなくなっているように見える。
あの明るい伊地知さんの友人なのだ。怖い人な訳ないもんな。
「あ、そういえば店長が」
「え」
「時間まで練習しとけって。あと虹夏が勝手にライブハウス抜け出した事、怒りながら買い出し行った」
「ひぃっ! 噓!? 帰ってくる前にスタジオ行こ!」
店長って事は伊地知さんのお姉さんだっけか。え、怖いの? もし会ったら後藤さん耐えられないんじゃない? 大丈夫? 死ぬ?
「ひとりちゃんも、ほら!」
それが当たり前のような声があった。
後藤さん自体はまだどう思ってるか分からないけれど、伊地知さんの中では既に後藤さんは仲間の一人として数えられている。そんな些細な事実が、何故か後藤さんよりも俺の気持ちを高揚させた。
軽く、後藤さんの背中を押す。
「ほれ、行ってこい」
「は、はい……! あ、でも、ゆう、く……は……?」
「俺は元々部外者だから外で待ってるよ。邪魔したくな」
「何言ってんの? どうせなら清水君も来てよ! ライブ前に知ってる人に見てもらえた方が練習にもなるでしょ!」
「え、いやでも」
「は~や~く~!」
「い、行きましょ……!」
「な、ちょ、分かったから押すなって……!」
今度は急に積極的になった後藤さんに背中を押されながらスタジオに連行される俺。
良い感じに送り出したと思ったのに。
締まらねえな~……。
原作の序盤虹夏は一人称『あたし』と『私』が混在していて今はもう『私』で固定されてると思うのですが、この作品では区別しやすくするために一人称は『あたし』で進めていきたいと思います。ご理解の程よろしくお願いいたします。
では、今回高評価を入れてくださった
幕張魂さん、週間ドヴォルザークさん、もなせさん、量産型ワイズマンさん、ミートソースカブトムシさん、stalin114514さん、山奥の夕焼けさん、竹林の筍さん、紫彩さん、namoさん、雲耀煌めきさん、テネンさん、ナースさん、badhonさん、カルシウムDAさん、His@giさん、黒乃輝さん、nolwSyさん、いしがめ。さん、オニオンキングさん、ブーーちゃん 一和山さん、鶉さん、ゲベックさん、Losutoさん、ナキネナ・F・Aさん、Kumoraseさん、さるべじょんさん、榊 樹さん、霧雨 祐介さん、キラーエルモアさん、kanure3588さん、メヴィさん、まつもっこりさん、泉野晴凛さん、はりま高岡さん、勝ち越しさん、偉大なタマネギさん、の氏さん、宇治川ゐ太さん、カスタムさん、仏蘭西お嬢様さん、rain@さん、グラハムタロサァンさん、一般通行さん、小型ハサミさん、517777777さん、毒蛇さん、るしうすさん、瑞柿けろさん、りん200さん、アラフジさん、hakuyulumiさん、アングラーバードさん、ソネッシーさん、アルカードcxさん、赤犬さん、ヨミタカさん、laranaさん、Youdaiさん、ID-F85さん、えふえふさん、ちゅだぬきさん、R-01さん、クジラマッコウさん、ADveruさん、彩那さん、◼️匿名希望◼️さん、アニメ好き456783さん、ナイルナハトさん、多喰召威さん、下Heyヘさん、なっぴーなっつ菌さん、withさん、とんもさん、ソメイヨシノさん、hakuneiさん、テンプル騎士さん、花崗岩さん
本当にありがとうございます!
このままみんなで超元気玉作ろう!!
みんなの力が俺の執筆速度を上げていく……!!