再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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何気に祝50話突破ァ!
こんなハイペースで書き進めたの初めてかもしれない。





50.文化祭は青春イベントの一つ

 

 

 10月1日、土曜日。

 第31回秀華高校文化祭。通称秀華祭1日目。

 

 結構自由な校風という事もあってか、それは文化祭でも如実に表れていた。

 バルーンや横断幕、派手な立て看板や屋台、コスプレに着ぐるみなど、とにかく高校にしては豪華すぎる飾り付けがそこかしこにされており、今日明日の秀華高はいつもと違った姿を見せている。

 

 秀華高の生徒や教師も、外から来る他校の生徒や保護者なども、今日ばかりはみんなお祭り気分で盛り上がる事間違いなしだろう。

 わざわざ校内マップまで作っているし、そこにはお化け屋敷や演劇、被り物の売店とかまるでテーマパークのような催し物ばかり書いてあった。

 

 誰もが楽しいと思える一日を過ごせる。秀華高ならそんな文化祭ができると信じみんなで作り上げた集大成。

 早くも他校の生徒などがたくさん来訪し繁盛しているのが廊下から少し見えた。

 

 

 さあ、前書きはもうこの辺りで十分だろう。

 

 本来、今日の校舎内は豪華な飾り付けがされており、本校の生徒や客が通る公共的な通路となっている。

 しかし一部の校舎や端の方の廊下には、関係者以外立ち入り禁止と書かれた黄色いテープをカラーコーンに貼るなど、本校の生徒しか立ち入れない場所がいくつか存在する。

 

 そこは催し物がたくさんやっていて人が集うとこより、誰も使っていないからか電気が点いていない箇所もあって薄暗くなっているのだ。

 人が少ないからこその配慮。基本的には誰も通らない陰の薄い廊下。

 

 

 そしてわたくし清水優人はそんな薄暗い廊下を全力疾走していた。

 

 

「ヤツを絶対逃がすな何としても掴まえて殺せええええええええええええええええええええええええ!!」

 

「清水死すべし! 悪は裁くべし! 清水死すべし! 悪は裁くべし! 清水死すべし! 清水死すべ死ねえええええええええええ!!」

 

 そう、後ろから追いかけてくるクラスの男子共と捕まったら最後のリアル鬼ごっこなうなのだ。

 ただし俺以外全員が鬼というまさに鬼畜のデスゲームである。

 

 

「一人だけ女子グループと文化祭を回ろうなんざ万死に値するッ!! よって問答無用で死刑!!」

 

「だから手伝ってるバンドの人達が遊びに来るから案内するだけって何度も言っただろ!?」

 

「案内=遊びまわる確定だろうがカス! 絶対殺す! 死ね! そして死ね! ついでに死ね! あとなんか死ね! あー、えっとぉ……死ねぇ!!」

 

「語彙力ねえなら黙ってろたなカスゥ!!」

 

 暴言吐かれまくりの俺は絶賛誰もいない校舎内を走り回っていた。この前よりも人数は少ないが、それでもクラスの男子半数以上はいる。

 せっかく虹夏さん達に案内するって言ったのにぃ! これじゃ一生文化祭見て回れねえじゃん! 

 

 それもこれも喜多さんが直前に、

 

 

『優人君っ、結束バンドのみんなと文化祭見て回るの楽しみね! 私ったらずっとそわそわしちゃってるわ!』

 

《絶許ッッッッ!!》

 

 なんて言うからもうすぐさま教室を飛び出るしかなかった。

 あの後何度も逃げながら説明してるのにあいつら聞く耳持たねえしっ。

 

 

「大人しく捕まって殺されろお!!」

 

「いいや生温いッ! 散々嬲ってから体育館でパンツ一丁のまま吊し上げて燃やすべきだ!」

 

「そんなのは甘い! パンツ一丁のまま足を縛って校舎内を市中引き回しの刑に処してから屋上から突き落とすべきだ!」

 

「そんなんで死ぬようなヤツじゃねえよあいつは! まずはパンツ一丁にしてからクレープ屋の生クリームパクってヤツの体にクリームを盛り付けバンド仲間の前に晒し社会的に殺す! そして……物理的に殺す!!」

 

 あいつらとにかく俺をパンツ一丁にして殺す事しか考えてねえな……。

 しかしどうする。もう虹夏さん達も来てるだろうし、このままじゃ埒が明かない。逃げ続けても体力勝負で全員運動部のあいつらに勝てる見込みもねえし……。

 

 この前みたいにいっそ玉砕覚悟で殴り込むか? 

 ……いや、負けてパンツ一丁にされるのはさすがに嫌だな。さて、どうしたもんか。

 

 何か良い案がないか考えていると、およそ()()()()()先にある曲がり角の階段から突然誰かが飛び出てきた。

 まさか知らないうちに挟み撃ちされてたかとも思ったが、その姿を見てそれはないとすぐに判断する。

 

 だって、それはメイド服を着ていたから。

 だって、それはピンク髪の子だったから。

 だって、十メートル以内で気付いたから。

 

 だって、見間違えるはずがなかったから。

 

 少女は俯きながら前を見ずに走っているせいか、俺に気付かないまますれ違った。

 あの格好を見るに、おそらく怖くなって逃げ出してきたんだろうと思う。おおかたトイレに行くとか噓言ってそのまま誰もいない校舎に来たんだろう。

 

 でもってすれ違った彼女を放っておける訳もなかった。

 何せ俺とすれ違ったという事はだ。自然と俺の後ろにいる獣共の視界にも彼女が映るという事になる。

 

 女子に飢えた野獣がメイド服を着た女の子なんて見てしまったが最後、どんな行動をとるか分かったものではない。

 そして案の定、ヤツらはすれ違っていった少女に反応した。

 

 

「メイド服ッ!!」

 

「癒しの象徴!!」

 

「奉仕という名のぐへへ!!」

 

「万歳ッ! メイド万歳!!」

 

「不肖この田中、あのメイド少女に声をかけてきま」

 

 猿共が振り返って走っていくメイドに見惚れている。

 俺は即座に集団の方へと逆走していき、掴みやすい坊主頭を後ろから片手で掴み、

 

 

「はいレッドカード即刻退場ォォォおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 カスの顔面を勢いよく床に叩き付けてやった。

 

 

《田中ァァァああああああああああああああああああああっ!?》

 

「欲望丸出しのバカ共が。テメェらの相手は俺だろ間違えてんじゃねえ!」

 

「おのれ清水ぅ……! やはりこの男は生かしておけん! 八つ裂きにしてくれるわあ!!」

 

「おい田中また息してないぞ」

 

「ほっとけ! 最優先は清水だ!!」

 

 さて、注目がまた俺に集まったのはいいけど、結局どうするかは決めてないままだ。

 とりあえずもっかい逃げながら考えるしかな──、

 

 

「あれは……」

 

 逃げようとして振り返る瞬間、廊下の窓の外。

 文化祭で賑わっている喧騒の中に、それはいた。今の俺にとっては全てを覆す逆転の一手が。

 

 俺は窓を開けた。

 

 

「おいお前ら、俺なんかと鬼ごっこを続けててもそっちにメリットはないだろ。どうせならもっと有意義な事をしたらどうだ?」

 

「窓を開けたと思ったら何を言っている? 諦めて二階から飛び降りるつもりか?」

 

「そうじゃない」

 

 まだ何も理解していないヤツらのために、俺は外のある一点を指差した。

 

 

「あれを見ろ。うちのクラスのサッカー部期待の新人エース、本田が他校の女生徒をナンパしてるぞ!」

 

「何ぃ!?」

 

「あいつ、珍しく清水抹殺作戦に乗ってこないと思ったらあんな堂々と……!」

 

「抜け駆けしやがってええええええええええええええ!!」

 

 予想通り喰い付いてくれた。

 

 

「裏切者は即刻抹殺対象だっけか。ならまずはあいつをやらなきゃだよなあ!」

 

「ターゲット変更! 現行犯で今すぐ本田を潰せえ!! その後は俺達も乗っかって他校の女の子と遊ぶぞお!!」

 

《きゃっほおおおおおおおう!!》

 

 バカがバカな方向に転換していった。

 なるほど、ナンパ目的があるから他の男子は追っかけてこなかったんだな。少しは考える頭があったか。

 

 逆に今まで俺を追いかけてきたこいつらはマジでただのバカという事になるけど。

 豹変してもうどっかに行ったし。とりあえずは助かって良かった。

 

 

「……さて」

 

 少し息を整えてから、俺は外へと目を向ける。

 

 

「俺も本田のクソ野郎を潰しにいきますかね」

 

 身代わりで犠牲になってもらった事に一瞬だけ感謝し、あとは殺意へと変更する。

 そう、勘違いしてもらっては困るが、俺は俺でクラスの男子がリア充になるのを許せない。こんな時だけ俺を追っかけてこないからって、俺が許すと思ったら大間違いだ。

 

 憎いものは憎い。

 リア充死すべし慈悲はない。

 

 

「ナンパなんてさせるかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「それで他の男子と混ざってサッカー部の子をボッコボコにしようとしてたと」

 

「はい」

 

「あたし達を案内してくれるって言ってたのに、忘れたまま校舎内全力ダッシュしてたと」

 

「はい」

 

「何か言い訳は?」

 

「足痺れてきたんで正座崩してもよろしいでしょうか」

 

「リョウ、喜多ちゃん」

 

「「了解っ」」

 

「うぐぅぅぅおおおおおおおおおおお足がああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 リョウさんと喜多さんに足をしっかり刺激され床をのたうち回る俺。

 それを見下ろす虹夏さんと後藤さん。何か俺、今すっげえダサくない? 

 

 実はあの後、本田を屠るために仕方なく生徒と客もいる廊下を走り抜けていたら後藤さんを探し当てたボロボロの虹夏さん達に見つかり、階段の踊り場でまた正座させられていたのでした。

 最近こんな事ばかりだ。俺が何をしたというんだろう。悪いのは本田なのに。

 

 足の痺れでちょっと涙目になりながら、

 

 

「……あれ、そういや何で虹夏さん達ボロボロなんです? そっちも一戦交えてきたとか?」

 

「優人くんと一緒にしないで。こっちは喜多博士の指示通り、ぼっちちゃん探すためにゴミ箱とかタンクの中探しに行ってたんだから!」

 

 そりゃあご苦労なことで。

 後藤さんの事だからナメクジがいそうな暗いとこにいたんだろうけど。さっきすれ違った時も暗いとこ探してたんだろうなあ。

 

 

「とにかく、これでやっと全員揃ったしぼっちちゃんをクラスに連れ戻すついでに文化祭の出し物見て回ろう~!」

 

 よほど楽しみなのか虹夏さんのアホ毛がブンブン回っている。あれで大体感情読めるの便利だな。

 どこから行くか校内マップを見ている虹夏さん達を見ながら、俺は隣にいる後藤さんに話しかけた。

 

 

「ちゃんと文化祭見て回るの初めてだな」

 

「……」

 

「で、自分のクラスで接客するのが怖くなって逃げたのか?」

 

「……」

 

「……あの、何で黙ってんですかね……?」

 

 隣から一切返事がない。

 チラッと一瞬見てみてもこっちに顔を向けていないから表情も読めなかった。

 

 

「……ゆうくんなら、最初に見付けてくれると思ったのに……」

 

「え……いや、それはこっちにも一応理由あったし、そもそもあいつら後藤さんに声かけようとしてたから体張って止めたんだぞ?」

 

 体張ったのはもうそのままの意味で。

 

 

「……」

 

 顔が見えなくても大体分かる。

 何でちょっと拗ねてんだよ……。喜多さん達が見つけてくれたんだから別にいいでしょ。

 

 

「……あー、じゃああとで何か適当に食いもん奢ってやるから、それでチャラにしてくれ」

 

「……あっあと、動画半年くらい出せてないからネットの居場所も危うくて……ギターヒーロー死んだんじゃないかとか言われてる……」

 

「よぉーし姫! 俺が何でも奢ってしんぜよう! 好きなとこへ行くんだ!」

 

 もちろん忙しいという理由もあるが、動画を出せていないのは俺が編集作業を手伝うと言って色々教えてもらってるからというのが最大の原因となっている。

 そんなん言われたら俺が全力出すしかないじゃん。言い訳何もできないじゃん! 

 

 

 かくして、俺と結束バンドの文化祭見回り編が始まるのだった。

 

 

 

「……何か優人くんぼっちちゃんと目合わせないね。いつもは見てるのに」

 

「ハハハ、キノセイデスヨ」

 

 

 





話の区切り的に短めと思ったけど、いつもはこのくらいの長さなんだよね……。
そして田中はすぐ死ぬ。


では、今回高評価を入れてくださった

☆10:ジンジャさん、クロゴマさん、鷹ヒーローさん

☆9:141421さん、twoDsさん、タスマニアさん、完全無欠のボトル野郎さん、けん0912さん、イキョウさん、待宵月さん、5837さん、KYBMさん

本当にありがとうございます!
総合評価20000突破ァ!!みんなありがとう!こんな大台乗ったの初めてだよ!
愛してるぜセンキュー!!
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