再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

52 / 143


無事Twitter凍結解除されました! 復活ッッ!
Twitterを見ない一日は何気に初めてだったのである意味精神上健康的に過ごせたかも?




52.メイド最高、されど思春期発動

 

 

 

「一年二組のメイド喫茶へようこそ~!」

 

「おかえりなさいませご主人様~!」

 

「ここが天界ってやつか……。よぉーし、ご主人様いっぱいご奉仕してもらっちゃおっかな~!」

 

「優人くん完全に現実逃避してるね」

 

「後藤さんの方一切見ないですもんね」

 

 さあいよいよやって参りましたメイド喫茶! 男の楽園、男の天国、男のドリームランドぉ! 

 アキバなどで経営されているプロメイド喫茶とは違い、高校生が素人ながら僅かな恥じらいを含んだまま接客をしてくれるまさに究極の癒し空間ッ! 

 

 しかもここは後藤さんのクラスなので生徒ほぼ全員の顔は把握していますが、女生徒のレベルがとにかく高い! 

 どこを見ても可愛らしいメイドさんしかいない眼福祭りです! 壁のポスターには明日は執事喫茶と書いてますねえ。今日は女子で明日は男子と交互にやるようですが、明日の執事喫茶はどうでもいいでしょう。今日のメインはメイドさんなのでね! 目の保養ですなあまったく! 

 

 

「あ、そうだ。後藤さん連れてきたわよ! ほらっ」

 

「ありがとう喜多ちゃん! いやぁ、後藤さんも戻ってきてくれて良かったよ~。無理に着せちゃってごめんね、後藤さ……後藤さん? なんか口から緑色の液体出てるけど……」

 

「今色々あって模型と化してるだけだから気にしないで。やっと人型に戻ってきたから」

 

「人型ってなに!?」

 

「優人君、後藤さんどうすればいいと思う?」

 

「適当に外置いときゃいいんじゃね」

 

「いつになく優人くんがドライだ……」

 

 模型になってるなら宣伝係やらせとけばいいんだよ。接客しなくて済むし喋らなくていいんだから後藤さんもそっちのが楽でしょ。

 それより今はメイドさん。メイドさんが俺を呼んでいるよ! 

 

 

「そういえば、えっと……そちらの方は……」

 

「ああ、この人達は私がやってるバンドの先輩よ。今日は遊びに来てくれたから一緒に回ってるとこなの!」

 

「どもども~!」

 

「お腹減った。早く入ろう」

 

「そうなんですねぇ! 喜多ちゃんの事、よろしくお願いします!」

 

「もぉ、何言ってるの~!」

 

 メイドと可愛い女の子が戯れているでござる。

 拙者、誠に眼福で候。

 

 

「それとぉ……」

 

「……ん?」

 

 何やら二人のメイドさんが俺の方を見ている。

 どうしたんだろう。バンドメンバーじゃないのに何一緒に来てんだオラァみたいな感じかな。ここの教室に入った事はないから俺が一方的に知ってるだけで面識もないはずだけど。

 

 すると視線に気付いたのか喜多さんが、

 

 

「この人は私と同じクラスの人でね」

 

「「知ってるよ」」

 

「え?」

 

 え? 

 喜多さんと心の中だけどハモっちゃった。知られてんの俺? なして? ホワイ? 

 

 

「だって休み時間になったらよく教室の前の引き戸から後藤さんのこと覗いてるし」

 

「いかにも見てませんよ的なオーラ出してスマホ触ってるけど、めちゃくちゃバレてるよ。クラスの大半は知ってるかも」

 

「優人君……」

 

「うわぁ……」

 

「ぶふっ」

 

「いやっ見ないでっ! ちょっと今羞恥心でどうにかなっちゃいそうだから! そんな可哀想なヤツを見るような目はやめてっ!」

 

 なに、このっ……恥ずかしい、とにかく恥ずかしいっ。

 絶対バレてないと思ってたのに大半の人にバレてんの俺。しかも誰を見てるかまで知られてるとかバカじゃん。アホやん。何してんだよ清水優人! 

 

 

「ぼっちちゃんの事見にいってる事は江の島の時に聞いてたけど……結構その、アレだよね。優人くん変なとこで抜けてるとこあるよね」

 

「そこ追い打ち禁止ぃ!!」

 

「えっと、ちなみに優人君のこと、みんなどう思ってたり……」

 

「後藤さんのボディーガード? 保護者?」

 

「覗き魔? 不審者?」

 

 あれ、ここって人を地獄に送る冥土喫茶だったっけ。最後とかほぼ犯罪者なんだけど。

 おっかしいな~、看板の文字見間違えたかな。あ、何だか目から水が……。

 

 

「やばい! 優人くんまで液体化しそうになってる!?」

 

「もうっ変なとこで精神弱くなるんだから!」

 

「優人って意外と身近な人以外からは評価低いよね」

 

「トドメさすな山田ァ!! 喜多ちゃん、後でこのクラスの子達に誤解解いといてあげて! さすがに天国と思ってた場所で地獄に送られるのは可哀想だから! あと直前までの記憶消してから蘇生させてね!」

 

「分かりました! 優人君、ちょっと痛いかもしれないけど許してね。フンッ!!」

 

 

 

 目を覚ますと俺はメイド喫茶の中で席についていた。

 

 

「あ、意識戻ったね」

 

「俺はいったい……」

 

「優人君、メイド喫茶に来れたのが嬉しくて昇天してたのよ。覚えてない?」

 

「うっ……言われてみればそうだったかもしれない……」

 

 そうか、俺そんなにメイド喫茶に来たのが嬉しかったんだな……。気絶するほどってのは自分でもちょっと引くけど。

 

 

「……何か、目が合うメイドさんみんな俺に優しい視線送ってくれるんですけど、何なんですかね。……ハッ!? ご主人様に対しての視線と受け取ればあれもまた自然ということか! やはり徹底して完成度高いなここのメイド喫茶は……恐ろしいぜ」

 

「(上手く記憶は消せてるようだね)」

 

「(意識ない間にみんなに事情説明しておおよそ分かってくれたのが良かったですね)」

 

 そういや後藤さんはどこに……いたわ。外で看板持ちながら宣伝係やってる。

 微動だにしないからまだ気を失ってるようだ。未熟者め、気絶するなどまだまだだな。

 

 すると、一人のメイドさんがこちらにやってきた。

 

 

「こちらメニューになっております。ご注文お決まりになりましたらお呼びくださいね、ご主人様!」

 

「ご主人様了解しましたぁ!」

 

「元に戻ったら戻ったで厄介だな……」

 

 誰か今チクチク言葉言った? 

 

 

「さてさて、メイドさん達が作る最高のメニューはっと」

 

「……ん? 廊下の方騒がしくない?」

 

「何かあったんでしょうか?」

 

 虹夏さん達の言葉に俺も視線を廊下に向ける。

 すると壁の上にある窓から天井を擦るようにして進む何かが見えていた。何あれ、ブラシ? 

 

 そう思ったのも束の間、それはメイド喫茶の前で止まる。

 正確には気絶している後藤さんの前で。

 

 

「あ、世紀末的風貌の輩だ」

 

「ほう、このご時世に珍しい見た目してんなあ」

 

「何で入れてんの!? というか優人くん意外と冷静だね!? 普通なら真っ先に助けに行きそうなのに!」

 

「まずは見に徹そうかなと」

 

 こういう時は一旦冷静になるのが大事なのだ。それに学校だし感情的になって対峙すれば大事になってしまうからだ。

 それにしてもあの風貌、北斗の拳のファンか何かか? 全然きらら的風貌じゃないぞ。出る作品間違えてますよ。

 

 後藤さんに狙いをつけたのか、世紀末ボーイズ(今命名した)は後藤さんに話しかけ始めた。

 

 

「お嬢ちゃーん、看板持ちしてるくらいなら俺らと遊ばなーい?」

 

 あの世紀末ボーイズ、言うに事欠いて後藤さんをナンパ……だと……!? 見る目は多少あるようだけど正気か!? 

 てか顔でけえ、後藤さんの数倍あんだけど何したらあんなでかくなるんだ。むしろそっちの方が気になる。

 

 

「ぼっちちゃん声かけられてるよ!? いいの行かなくて!」

 

「優人君!」

 

「本気でやばかったら行きますけど、ああいうのって大体雰囲気で分かるんですよね。空気の重さとかで。でもって今の雰囲気ならおそらく大丈夫です。まあ見ててください。うちの後藤さんが世紀末ボーイズ如きに後れを取る訳ないんで」

 

 俺の言葉に虹夏さん達が後藤さんの方を見る。

 展開はすぐに変わった。

 

 

「こ、こいつ俺達のガン飛ばしにビクともしねえ!?」

 

「それになんだ……!? 口から緑色のナニかが出てるぞ!?」

 

「ナニィ!? な、何だこの液体は……に、人間じゃねえ……! こいつ人間じゃねえぞお!?」

 

「化物だ! 化物が変顔で俺達を煽ってやがるんだぁ!?」

 

「……な、何だ? く、口からナニか出てきて……ぎ、ギター……!? う、うわあああああああああああああああああ!?」

 

「「す、すみませんでしたああああああああ!!」」

 

 世紀末ボーイズが勝手に都合の良い方へ解釈してくれたようでむしろ土下座している。

 たかが人間如きが気を失ってる後藤さんに声かけるからこうなるんだよ。意識ない時の彼女はある意味一番無敵なんだぞ。怯えないし人間やめるから常人に相手なんて無理だ。

 

 

「ほらね?」

 

「後藤さんが役に立ってる……?」

 

「風評被害もちょっとありそうだけど」

 

 それより口からギターって、何を言ってたんだろうあいつら。

 

 

 

「気を取り直してぇ、あたし達も何か注文しよっか!」

 

「そういや決めてる最中でしたね」

 

「あっ、私後藤さん呼びますね! おーい、後藤さ~ん! 注文おねが~い!」

 

「なっ」

 

「んはっ!?」

 

 チィッ、喜多さんめ……せっかく俺が他のメイドさんに頼もうと思ってたのに何てことしてくれるんだ……。

 後藤さんももっと気絶しとけよ! あと世紀末ボーイズ何気に来店してんのね。

 

 

「ご、ごごごごご注文は……!?」

 

 知り合いに声かけられるとすぐ反応しちゃうところ、まさに後藤さんって感じする。

 

 

「ん~とね……むふっ」

 

 何だ、虹夏さんがなんか思い付いたような表情してるんだけど。

 嫌な予感しかしない。

 

 

「てか、それにしてもぼっちちゃんメイド服似合いすぎじゃない~?」

 

 予感的中である。

 

 

「後藤さんはこういう甘い系の服似合いますね~!」

 

「あっうっ」

 

 逃げ場は、逃げ場はないか……!? 

 

 

「分かるぅ~。ジャージ以外の服も着ればいいのに。ね~優人くん? 優人くんはぼっちちゃんのメイド服、似合ってると思わない?」

 

 ほら~絶対俺に振ってくるって思ってたもーん! 

 この人たまに意地悪モード入ることあるから警戒してたのに案の定だよ! 

 

 

「……ははは、そうですねぇ。良いと思いますよー」

 

「の割には後藤さんの方見ないわね」

 

 見たらなんかこう、アレな気がするんで……。

 

 

「んもぉっ、しゃらくさいなぁ! 優人くん、ぼっちちゃんに可愛いの一言も言えないの!」

 

「それで後藤さん家で一度どうなったか覚えてないのかアンタは!?」

 

 胞子化してネガティブモードになってたじゃん! 元に戻った時めっちゃ顔赤くしてたの覚えてるからな! 

 

 

「今のぼっちちゃんなら少しは耐性できてるかもしんないじゃん! それに心の準備さえしとけば大丈夫だよきっと。ねっ、ぼっちちゃん」

 

「あったっ、多分……」

 

 何でちょっと前向きに頑張ろうとしてんだよそこで。

 もしこんなとこで胞子になったらここにいる人全員終わるぞ。

 

 そういう事を阻止するために俺はあえて後藤さんを見ないように努力してるってのに、それを妨害してくるのはダメだと思います! 

 

 

「ならこうしよう優人くん」

 

「……なんですか」

 

 嫌な予感パート2なんですが。

 

 

「ぼっちちゃんのメイド服の感想をここで言うか、ぼっちちゃんをここで名前呼びするか決めること!」

 

「ふっっっざけんな!! それ俺に一切の得ねえじゃねえか! 横暴だ! 断固拒否する!!」

 

「そう言うと思って一応ゲームを用意したよ」

 

 ゲーム……? 

 そのまま虹夏さんはメイド喫茶のメニュー表を開いて俺に見せてきた。

 

 

「その名も、『冷食オムライスに美味しくなる呪文かけて誰のが一番美味しく感じるのか選手権~!』」

 

「いやそれ店員にやってもらうでしょ!」

 

 それよりメニューに名前だけ変えた同じオムライスしかないし全部冷凍食品という事にショックを隠せないんだが。

 メイドさん手作りじゃないのか……。服の予算にほとんど使っちゃったんだろうな……。

 

 

「店員のぼっちちゃんは当然として、優人くんもでしょ。こっちからは喜多ちゃんを出すよ!」

 

「私が相手になるわ優人君!」

 

「何でノリノリなんだよ……」

 

 陽キャってこういうのにほんとすぐ乗っかってくるよなあ。

 

 

「もちろん優人くんが勝った場合の事も考えてるよ」

 

「……というと?」

 

「優人くんが勝ったら……あたし達もメイド服着るってのはどう! いくつか撮影用にレンタルしてるみたいだし! ……っていうのは、ちょっと自意識過剰、かな……?」

 

「きゃっほうさっさとオムライス注文しましょう!! 負けても文句は言わせませんからねえ!!」

 

「ちょろいわね優人君」

 

 何とでも言いな! これは絶対に負けられない戦いだ。

 虹夏さん達にメイド服を着させて合法的に俺の一眼レフで写真撮りまくってやるからなあ!! 

 

 そうして各々頼んだオムライスがやってきた。

 ちなみに俺が頼んだのは『愛♡と勇気☆だけがズッ友卍オムライス』だ。マジでただの冷食っぽい。

 

 

「ルールは簡単だよっ。とにかく美味しくなると思う呪文を唱えるだけ! プラシーボ効果でも相手に伝わるインパクトが大事だからね! という訳で……さあ、先攻はぼっちちゃんだ! それではどうぞ!」

 

 虹夏さんの合図に、もはや拒否権なく強制的に参加となっていた後藤さんが嫌々ながらも仕方なく手でハートの形を作った。

 

 

「あっ……ふっふわふわぴゅあぴゅあみらくるきゅん……オムライスおいしくなれ……へっ」

 

「うわっ」

 

 ヘドロばくだんみたいなのが出てきたから自分のオムライスの前に腕を置いて死守する。ベチャッとか汚い音なってたけど大丈夫か。プラシーボ効果云々じゃなくて普通にマズくなってそう。

 審査員の虹夏さんとリョウさんが後藤さんの呪文がかかったオムライスを一口食べると、

 

 

「……パサついてる」

 

「あっ、あくまで冷凍食品なので……」

 

 不評っぽかった。そりゃ紫色の負のオーラしか感じられないもの。無理もない。

 呪文は何でもいいとの事だが、後藤さんは割と無難な感じで言ってたな。とりあえず後藤さんがビリなのは確定か。……そもそも後藤さんが勝った場合のご褒美って何だったんだろう。

 

 

「後藤さんっ、もっと愛情込めて唱えないとダメよ! 見ててね、こんな感じで!」

 

 そのまま自然な流れで喜多さんのターンへ。

 彼女が指ハートをした途端、まるで背景が変わったかのように辺りがキラキラし始めた。これは……固有結界!? いや違うっ、ニチアサにありそうな変身空間か!? 

 

 

「ふわふわぁ~☆ ぴゅあぴゅあ~♡ みらくるきゅんッ☆ オムライスさんっ美味しくなぁ~れっ♡」

 

 キターンという謎の効果音と共にハートの形をした何かがオムライスへと刺さる。

 俺にはもう喜多さんがプリティーでキュアキュアな人にしか見えない。ぷいきゅあ~がんばえ~。

 

 そして審査員達の評価はというと、

 

 

「ケチャップの程よい酸味とソースの甘さが溶け合い温かな家庭を感じる味に変わった!?」

 

「まろやかっ……!」

 

 めちゃくちゃ好評価だった。嘘でしょ、そんな変わる? 確かにオムライスもちょっと活き活きしてるように見えるけどさぁ。いやオムライスが活き活きって何だ。

 喜多さんもこちらに向かってピースしている。勝ちを確信しているようだ。

 

 なるほど、喜多さんはあえて後藤さんの真似をしつつ表現の違いを見せる事で差を見せつけてきたか。

 いいだろう。しかし俺もやると決めた以上本気でいかせてもらう。

 

 こちとら三人のメイド服を見られるチャンスがあるんだ。

 喜多さんにゃ悪いがここは勝たせてもらうぜ! 

 

 

「呪文なら何だっていい。オムライスの味が変わるほどのインパクトを与えりゃいいだけでしょ。それならこっちだってとっておきのがある! いくぜ!!」

 

「本気だ……いつになく優人くんが本気だ!」

 

「けどああいう時って大抵フラグな気がする」

 

 言いたいヤツには言わせておけばいいさ。

 伊達に俺だって後藤さんと張り合うために人間辞めてる訳じゃないってとこを見せてやるよお! 

 

 

「滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器、湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる、爬行する鉄の王女、絶えず自壊する泥の人形、結合せよ、反発せよ、地に満ち己の無力を知れ! 破道の九十・黒棺!!」

 

 そして。

 オムライスは衝撃の変化を迎えた。

 

 

「オムライス真っ黒になったんだけど。嫌がらせ?」

 

「焦げてる訳じゃない。けど味は一ミリも変わってない。見た目最悪になっただけ。優人、オチとしても失格」

 

 大不評であった。

 噓だろ……完全詠唱の黒棺だぞ……それが色変わっただけって……。しかも笑いとしても失格の烙印押されてしまうとか……終わりだ……。

 

 

「はい、という訳で一位喜多ちゃん、二位ぼっちちゃん、ビリは優人くんで~す! それじゃあさっそくぼっちちゃんのごほ……優人くんの罰ゲームいってみよ~!」

 

「ちょっ、早くないですか!? もう少し心の準備とか」

 

「そういうのいらないでぇ~す! メイド服の感想を言うか名前呼ぶかどっちかなー?」

 

 完全にこっちに選択権を与えない気だこの人……。

 仕方ない、苦渋の決断だがもうそれしか生き残る方法もないか。服の感想なんか言ってしまうとまた後藤さん胞子事件の再来になってしまう。前は部屋を密室にしてたから被害も最小で済んだが、ここじゃ下手すると廊下まで広がっちまう。

 

 それだとこの学校なんかすぐに崩壊してしまうぞ……。

 かくなる上は……、

 

 

「……な、名前呼びで」

 

「おぉ~、そっちを選んだか~! これは見ものだー!」

 

「これは胸キュン展開確定ですね!」

 

「シャッターチャンス」

 

 好き放題言いやがってこの信号機トリオ……。

 

 

「ちゃんとぼっちちゃんの事も見てあげるんだよ!」

 

「分ぁってますよ! ……後藤さん、一応言っておくけど、崩壊しないように精神を限界まで保つんだ。いいな、くれぐれも自分を見失うなよ」

 

「あっえっう、うん……」

 

「「……すぅ~……」」

 

 二人して軽く深呼吸する。

 目を開け、ゆっくりと後藤さんをちゃんと見る。

 

 基本は周囲と似たようなメイド服、カチューシャを付け、首元に黒いリボンもありコスプレ特有の短めのスカート。

 なのに他のメイド服と一ヵ所だけ違うのは胸元だった。後藤さんのメイド服だけ何故か胸元が少し開いており、普段のジャージでは目立たない後藤さん本来のスタイルの良さが完全に浮き出ていた。

 

 これは、ズルい。

 しかし、今回は服装について感想を言う訳ではなく、後藤さんの名前を呼ぶだけだ。

 

 大丈夫、昔呼んでたようにひとりちゃんと一瞬呼ぶだけでこの罰ゲームは終わる。

 そうだ、虹夏さんやリョウさんのように気兼ねなく言えばいいだけなんだ。とても簡単だろう清水優人。言ってみろ清水優人。さっさと言え清水優人。

 

 

「……ひ」

 

「っ」

 

 彼女がピクリと反応した。

 同時に、俺の口が何故かそこから動こうとしなかった。心の中では言おうと思っているのに、踏ん切りもついているはずなのに。何故か詰まる。

 

 すぐ近くでは虹夏さん達が「お?」「おお?」とかちょっと茶化しながら凝視してきている。

 名前を言うだけなのに何でこんな体が熱いのだろう。久しぶりすぎて思春期特有の恥ずかしさが勝っているんだろうか。きっとそうだ。しかもこんな見られてるのなら尚更。

 

 だけど、言わないとこの地獄が終わらないのもまた事実。

 さあ、決心の時だ。

 

 

「すぅ……。ひっ」

 

「ッ」

 

「「「お?」」」

 

「ひ……ひと……ひ、ひひひひ……ひとっ」

 

 見られているせいか上手く口が回らない。

 ええい、覚悟を示せ清水優人! 男だろ! 罰ゲームの一つや二つくらいできないで何が男だ! 決心したならば思い切って言ってしまえ! 

 

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 

 

 

 

 

「ひ……ひとうさん……」

 

「温泉になっちゃった」

 

「……」

 

「伊地知先輩っ、後藤さんが微笑んだまま昇天しかけてます!」

 

「それで良かったのぼっちちゃん!?」

 

「良い動画が撮れた。これで揺すれる」

 

 

 

 嗚呼、神様。

 俺は成し遂げたでしょうか。もう、ゴールしていいよね? 

 

 

「今度は優人君が灰に!?」

 

「ああもうこの幼馴染コンビほんとめんどくさいな!?」

 

 

 そうして俺は、メイド喫茶が終わるまで灰になり邪魔にならないようゴミ袋に詰められていたとさ。

 

 

 






まさかの虹夏ちゃん達のメイドカット。
ヤツはそれ以上にダメージを負いすぎたようです。多分結束バンドみんなのメイド服見たら普通に耐えられなくて爆発しそうなんで。


では、今回高評価を入れてくださった

☆10:a-ruさん、kazusinさん、sophiaさん

☆9:nyankaz_さん、SNMAGNさん、イキョウさん、タスマニアさん、小型ハサミさん、先行者(小)さん、さとっちさん、完全無欠のボトル野郎さん、待宵月さん

☆8:猫宮カラスさん

本当にありがとうございます!
特に感想ここすきとかいっぱい貰えると嬉しいなって!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。