再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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62.口実または事実

 

 

 

「ふぅ……よし、こんなもんか」

 

「と、投稿完了……だね」

 

「ああ」

 

 あの後、テイク2では無事に撮り終え今回は既に作ってあったカラオケトラックを使用したため打ち込み作業もなく、軽い編集だけして動画を投稿する事ができた。

 アップロードも終わったし、今日やれる事はひと通り終了ってとこかな。

 

 

「……」

 

「すいません虹夏さん、せっかく来てもらったのに見てるだけってのも暇でしたよね」

 

「……え? あっ、全然そんな事ないよー! 撮影風景とか編集気になるって言ったのはあたしだし、見てるだけでも結構楽しかったよ!」

 

「それなら良かったです」

 

 撮影中は何か落ち着かない様子というか何だか焦りを感じてるような顔してたけど、どうやら心配なさそうだ。

 俺も一息つこう。練習してたとはいえ、世に出す動画……それも登録者数の多い後藤さんの動画編集を手伝うとなると少し緊張する。何度も確認したけどおかしいとことかなかったよな? 

 

 思わず隣の後藤さんを見てみると、

 

 

「ふ、ふへへ……初めての共同作業だね……」

 

「言い方に語弊がありすぎる事を言うな」

 

 何だか気持ち悪いトーンでにへらっていた。相変わらず頭がちょっとアレらしい。

 まあ何も言ってこないって事は編集への不満点はないと判断しておこう。PCの前で正座待機してるとこを見るにコメント早くつかないかなとか思ってんだろうな。そんな早く来るのはガチファンくらいだろ。

 

 

「やっぱりトゥイッターとかイソスタはやらないの?」

 

 隣にいる虹夏さんが両足を立てたまま座って後藤さんに質問した。

 こらっ、膝なんて立てないでちゃんと伸ばすかもう少し気を付けなさい。スカートだから若干太ももが見えてしまってるでしょうが。男が隣にいるという事忘れてません? や、チラリズムとか別に期待してないから。そんなの見たら俺自ら命落とすから。マジだから。

 

 

「あっそんなに興味は……」

 

「え~、手軽に動画あげられて便利なのに~」

 

「虹夏さん、後藤さんにSNSは酷ですよ」

 

「え、なんで?」

 

 なんでってそりゃあ、ねえ? 

 言わずもがなでしょ。

 

 

「承認欲求モンスターの彼女がそんなの始めたらいいね欲しさに何しでかすか分かりませんよ。変にのめり込んで痛い目見て終了です」

 

「ほんと信用ないねぼっちちゃん……でもちょっと見てみてよ。こうやって色んな人が動画とか画像あげてるんだよ!」

 

 言って虹夏さんはPCでちょちょいと検索をかけてトゥイッターの画面を表示する。

 ふむ、ギターの画像上げてる人もいるんだな。my new gear.という呟きはあれか。新しい楽器買った時の恒例行事みたいなコメントなのかな。

 

 

「楽器の写真だけでたくさん反応貰ってる……。まいにゅー……げ……あ?」

 

「後藤さん……」

 

 中学生レベルの英語も読めなくなってるってマジかよ。

 先月のテストで叩き込んだばっかなのにもう忘れてるのか。

 

 

「マイニューギアだよぼっちちゃん」

 

「パプアニューギニア……」

 

「誤答さん……」

 

「あっ、字が……」

 

 次回のテストもどうやら俺は寝不足確定のようだ。

 グッバイ未来の俺。無事に生き残るんだぞ。過労で倒れるなよ。

 

 

「新しい機材や楽器買ったらみんなこうやって写真あげるんだよ。高価な楽器はいいねたくさんつくね~」

 

「しゃ、写真あげるだけでこんな簡単にいいねが……!? 演奏動画あげるのもうやめようコスパ悪すぎる……あいたっ!?」

 

「自分から破滅の道行ってんじゃねえよ。広告収入ある分オーチューブのがマシだろ。あと俺の仕事いきなり奪おうとすんな」

 

 手刀チョップで正気に戻させる。

 と思ったけど正気でこれなんだったわ。どうしようもねえな。

 

 

「ったく……ん? この人、高い楽器速攻で売り買いしてますね」

 

「あ、ほんとだねー。せっかく高いの買ったんなら大切にすればいいのに……って山田!? 何やってんだあいつ!」

 

 え、これリョウさんのアカウントなの? まじ? 

 いや、でもそんな事あるのかね。トゥイッターとかサブ垢含めたら普通に億とか余裕で超えるくらいアカウントありそうなのに、その中で身内一人特定しちまうなんてそんな……。

 

 

「これ見て! この呟きでお金ないから山菜ご飯食べるって言ってる! 絶対リョウだよ!」

 

 まじでした。何やってんのこの人。バカなの。アホなの。

 チンするご飯にワラビとか食えそうな山菜をとにかくぶっ刺してるとこがもうやばい。そのうち雑草博士とかになれそう。

 

 つうか昨日俺に楽器を買う事に意味を見出してるのは良い事とかなんだ言ってたくせに、自分普通に売り捌いてんのどういう事だよ。

 昨日感動した俺の気持ち返せこの野郎。楽器に関してはいつだって本気とか噓じゃん。平気でコレクション手放してるよ。サイコかな。

 

 

「身内のこういうの引くわ……てかリョウフォロワー3000人もいるんだ……お金で買ってないよなあいつ……」

 

「可能性は否定しきれませんね」

 

 だってリョウさんだし。昨日見惚れてたのがバカバカしくなってきた。

 何だよ世界のYAMADAってアカウント名。矢沢かナベアツのどっちかだろ普通。いやYAZAWAもあるか。何たってにこにーだもの。

 

 んで後藤さんは何を唸ってるんだろう。

 何となく考えてる事は予想できるけど。どうせマイニューギアりたいとか思ってんだろ。承認欲求スイッチ入ってきてるなこれ。おお、葛藤してる葛藤してる。

 

 自分の中の承認欲求モンスターと戦ってるのか。本体エクソシストみたいになってるけど大丈夫なの。

 悪魔に憑かれ始めてないかな。うん、どうせ後藤さんの中にいるのが天使でも悪魔でも見た目が後藤さんならくそ雑魚確定だし放っておいてもいいだろう。

 

 

「あ、ちょっとお花摘みに行ってきます」

 

「普通にトイレ行ってくるでいいよ~。ぼっちちゃんはあたしが適当に何とかしとくね。あの態勢はちょっと怖いけど」

 

「すいません、頼みます」

 

 後藤さんの部屋を後にする。

 女子の前でトイレ行ってくるって何か言いづらいから女子っぽく言ったけど、逆に気を遣われたな……。

 

 男版のお花摘みはどんな言い方するんだろ。

 一回調べてみたけど忘れちまった。それより数年前に一番かっこいいトイレ行ってくるの言い方考えた奴優勝みたいなスレを見付けて、ドイツ語っぽく書かれた書き込みでめっちゃ笑った記憶しかねえや。

 

 確かイッヒ フンバルト デル ウンコ ハイル フンデルベン ミーデルベン ヘーヒルト ベンデル フンバルト ヘーデル ベンダシタイナー フンデルト モレル ケッツカラデルド フンベン モルゲン モーデルワ イッヒ アーデル ゲーベン ワーデルだっけ。

 当時は中学生だったから一人でバカみたいに笑ってたなぁ。今思い出すと呪文かよってなるけど。二階に虹夏さん達いるのに何無駄なこと思い出してんだ俺。

 

 手早く用を足し手を洗っていると、玄関の鈴が鳴ったのが聞こえた。

 誰か出ていったのか? 美智代さん辺りが買い物に出掛けただけかな。

 

 そう思い特に気にも留めずトイレから出て二階へ戻る。

 と、そこにいたのは虹夏さんだけだった。足伸ばしてめっちゃリラックスしながら座っていらっしゃる。

 

 

「あれ、後藤さんは?」

 

「なぁんか急に行ってきますって言って家から飛び出していっちゃった」

 

「……はい?」

 

 じゃあさっきの玄関の鈴が鳴ったのは後藤さんが出ていく音だったのか? 

 って、いやいやそうじゃなくて。

 

 

「え、何しに出てったんですか後藤さん」

 

「あはは~、えっとねぇ……」

 

 どうやらエクソシストを鎮めるべく虹夏さんの気遣いで後藤さんのトゥイッターアカウントを作成、一枚だけ写真をあげれば落ち着くだろうとおニューでもないのに元から使っていた直樹さんのギター写真を投稿。

 しかしアカウント作成したすぐにいいねがたくさんつくはずもなく、謎の衝動に駆られた後藤さんはそのまま外へ飛び出していったと。

 

 

「あんのアホ……」

 

「適当に時間潰しててって言われたんだけど、ここぼっちちゃんの部屋だし勝手に触るのも何だかな~って思ってたから優人くんがいて助かったよ」

 

「見られて困るようなものはここにはないと思いますけどね。楽器機材と音楽雑誌くらいしか置いてないし。まあ俺でよければ暇潰しの相手になるんで飽きない限りはここにいてもらって大丈夫ですよ」

 

 とは言ってもさすがに勝手にPCで遊ぶのは気が引けるので閉じておくか。まだトゥイッター画面開いたままだな。

 ……ん? ああっ!? 

 

 

「あのピンク野郎……勝手に俺のギターまでマイニューギアにしてやがる……」

 

「あたしもそれはやめといた方がいいんじゃないって言ったんだけどね~。ゆうくんなら許してくれますって謎の自信を持って言ってたよ」

 

 まじで謎の自信だな。俺の物は後藤さんの物とでも認識してんのか。それどこのジャイアンだよ。

 本当なら俺のトゥイッター垢でマイニューギアしたかったのに……相互のアニメオタクフォロワーからどんなリプ来るかちょっと内心ワクワクしてたけどこれじゃもうできねえじゃん! ギターヒーロー垢だから下手すると特定されそうだし。

 

 

「ねえねえ優人くん、気になってたんだけどさ」

 

「何です?」

 

 振り返ると虹夏さんが四つん這い状態で部屋の隅に移動していた。スカートなんだからもっと気を付けてほしいんですけど。

 

 

「このおっきいメンダコ? のぬいぐるみって前来た時はなかったよね? ぼっちちゃん水族館にでも行ったのかな? あんまりそういうとこ行かなそうだけど」

 

「ああ、それは俺が後藤さんにお土産であげたんですよ。殺風景な部屋だからぬいぐるみでもあった方がいいかなってね。ほら、文化祭の時にも言いませんでしたっけ。喜多さんと二人でシーパラに行ったって。そん時のやつです」

 

「……あ~そういえばそんなことも言ってたね」

 

 後藤さんの好みとかは分からんのでとりあえずあげてみたらこれが気に入ったようで、寝ている彼女を起こしに行くと100%の確率で抱き枕にしている。

 何でも触り心地が良くて寝る時にちょうど良いのだとか。確かに触り心地がいいのを買ったから気持ちは分からんでもない。俺も小さいの買っとけばよかったと今更思ってる。

 

 お~ふわふわだぁ~と言いながらメンダコぬいぐるみをぽんぽん触ったり抱き締めたりしてる虹夏さん。

 くそっ、おいメンダコちょっとそこ変われこの野郎。天使に抱き締められるとかどこで徳を積んだんだお前。今この時ほどぬいぐるみに羨ましいと同時に変わりたいと思った事はないぞ。

 

 

「あっ、喜多ちゃんと二人で水族館行ったので思い出した! そういやまだ昨日リョウとしたデートの件、詳しく聞いてないよ!」

 

「誤解しかない言い方! ほんとあの人俺に厄介事押し付けるのだけは上手いな!?」

 

 その後、俺は何故か正座をして昨日の出来事を全て説明した。

 自分の楽器を買いに御茶ノ水に行ったら偶然リョウさんと出会った事。そこから取引の提案を受け、昼食を奢る代わりに機材選びを手伝ってもらった事。半ば強引に手を繋がれ色んな楽器店に連れ回された事など。

 

 聞かれているのはリョウさんの事だけだし、最後に出くわしたぽいずん何たらって人の事については別に話さなくてもいいかな。

 

 

「ふぅ~ん、なるほどね~」

 

「事の顛末は全てお話しました。噓偽りなんて一つもございません。だからどうかお許しくださいませ虹夏姫!」

 

 何で俺は許しを請うてるんだろう。ただ説明してるだけだよね。正座する理由も特にないよね。

 なのに何で虹夏さんの顔を見てると正座して許しを請わなきゃって思ってしまうんだ? まさかこれが天使への信仰……? 

 

 胡坐をかいたまま特大メンダコぬいぐるみをギュッと抱き締めてる虹夏さん。

 その表情は何となくだけど納得がいっていないようにも見えた。ナイスだメンダコ、女の子が胡坐というスカートなのに非常に危険極まりない態勢をとっていてもお前が防いでくれるなら安心して正面を見ていられる。

 

 

「うん、リョウとの件については理解したよ。あのリョウに限ってそれはないとは思ってたからねぇ」

 

 あれ、でもあなた昨日ロインで冷静さを欠こうとしてなかったっけ。

 大丈夫、あれでも虹夏さんの幼馴染なんだ。大事なリョウさんを取るような真似とかしませんて。

 

 

「喜多ちゃんにもあたしからロインで説明しとくから、優人くんは何もしなくて大丈夫だよ」

 

「ありがてえっす天使様」

 

「もう普通にそういう事言ってくるようになったね……」

 

 天使に天使と言って何が悪い。虫見付けたらあ、虫だって言うのと同じだよ。目の前に天使がいてあ、人だとはならんでしょ。そういう事。

 

 

「けど優人くんも気を付けなよ~?」

 

「何をですか?」

 

「優人くんってば気が付いたらどっかで女の子引っ掛けてくるんだから。男友達より絶対女の子の方が連絡先多いでしょ」

 

「言い方に棘がありすぎる……。さすがに男友達の方が多……」

 

 最後まで言いかけて止まる。

 スマホ、今となっては主流のロインで友達確認してみると。

 

 男友達がクラスでつるんでる田中達五人くらいに対して、だ。

 女の子がまず結束バンドの四人、店長にPAさん、ファン一号二号さん、からかい上手の佐々木さん、きくり姐さん、志麻さん、イライザさん、オヨヨさん、最近では文化祭ライブ以降の評判もあってか、喜多さんの女子友とも何人か知り合っていて三人くらい増えた。

 

 

「……フッ、やはりモテ期か」

 

「やけくそポジティブになっちゃった」

 

 だって男子みんな俺の事ちょっと敵視してくるんだもーん! クラスの奴らだけだよまだ普通に接してくれるの。

 けどバイトとか後藤さんの事もあるから中々交友を広める機会も親睦を深める機会もないのでおわおわりである。まずバンドの手伝いしてるのに何で周囲にはガールズバンドしか集まってこないんだろう。しかもクセが強いのばかり。また謎の力でも働いてんのかな。

 

 

「はぁ……出会いがほしい……」

 

「それ絶対男子の前で言っちゃダメだからね!? また追い掛け回される事になるから! あとぼっちちゃんと喜多ちゃんの前で言うのもダメっ、何ならあたしの前でも言ったらダメ!」

 

「制限強すぎませんかね……」

 

 俺だってもっとこう、人並みの青春くらい送ってみたいんですよ。何せこれまで家で家事しかしてこなかったからそういうのとはほとんど無縁だったし。

 高校入ってバンドの手伝いとかちょっと青春ぽいことはできてるけど、こう、何? ピンク色のラブコメティックな青春だってちょっとはしてみたいと思うのが男子高校生の健全な願望でしょうが! 

 

 癖強ガールズしかいないスターリーとかじゃそんなの望めないだろうし、ちょっとくらい欲望吐き出させてくれてもいいんじゃない? 

 ちくしょう、やはり俺の青春ラブコメは間違っているとでもいうのか!? 

 

 

「それよりさ……」

 

「え? あ、はい」

 

 俺の願望なんて一切気にする様子もなく、虹夏さんはメンダコを抱き締めたままこちらを見ていた。

 

 

「優人くんっていつもここでぼっちちゃんと一緒な訳じゃん?」

 

「まあ、そうですね」

 

「そんでこの前は喜多ちゃんと二人でシーパラ行ってたでしょ?」

 

「はい」

 

「昨日は偶然とはいえリョウと一緒にお昼ご飯食べてお店に行ったと」

 

「そうなりますね」

 

 え、何、怖い。ちょっとずつ質問攻めされてる感が凄いんですけど。

 まだ何か問い詰められんの俺。清水さんそんな悪い事したっけ。

 

 いつでも謝罪できるように身構えていると、虹夏さんは少しむくれたように頬を膨らませてこう言った。

 

 

「ズルいな~」

 

「………………はい?」

 

 むしろ呆気に取られてたのは俺の方だった。

 

 

「だってみんな優人くんと二人でどっか行ったって事でしょ? ぼっちちゃんはいつも一緒に家でいるから例外だけどさ、優人くんは結束バンドのメンバーじゃないけど手伝ってくれる大事な人だし、親睦を深めるのに二人で出掛けるってのは結構良いアイデアだと思うんだよね」

 

「は、はあ……」

 

「つまりあたしとも二人でどっか出掛けたりしようよ! それこそお互いの理解を深めてもっとサポートしやすくなるかもしれないしさ!」

 

「天使と……二人で、だと……!?」

 

 そんなの俺どうすりゃいいんだよ。銀行から全財産下ろしてもエスコートするには足りないんじゃないのかそれ。

 サポートしやすくなる理屈がイマイチ理解できないけど、虹夏さんには虹夏さんなりの考えがあるって事なんだろうか。

 

 いやしかし落ち着け清水優人。虹夏さんと二人でどっか行くって事はそれこそ俺の命に関わる出来事だぞ。

 結束バンドとサポート役として必要な事かもしれないけど、彼女の背後には必ず店長というファイアウォールがいる。店長がいる限り二人で出掛けたとしても、どこかで絶対耳に入ってシスコン店長が俺を八つ裂きにしてくる未来しか見えない……! 

 

 どうする俺、天使か悪魔、どっちを取る!? 

 

 

「優人くんはあたしと二人は嫌……かな?」

 

「二人でどこまでも行きましょう」

 

 気付いたら即答していた。

 いやだって無理やんそんなの。虹夏さんからの誘いを断れる奴がいるとしたらそれはもうリョウさんか邪教徒くらいだよ。

 

 

「おぉ、良い返事いただいちゃった~。それじゃあ約束ねっ。もし破ったらお姉ちゃんに言い付けちゃうから!」

 

 どうやら逃げ場は完全に潰されたようだ。

 というか逃がす気がないっぽい。いや破る気なんて更々ないけど。

 

 

「へへ~、日程とかはロインであたしが送るから、当然だけどバイトとか練習がない休日にするね」

 

「どっか行きたい場所でもあるんですか?」

 

「ん~、別に? 二人で親睦を深められそうならどこでもいっかなって。一応調べてみる?」

 

 結構サッパリしていらっしゃるようで。

 これはこれで男として見られてなさ過ぎてちょっと思うところはあるが、これも結束バンドのためになるなら構わないか。そもそも天使と人間じゃ釣り合いとれる訳ないしそんなこと考える事すら失礼だな。

 

 

 そして俺と虹夏さんはどこに行くかを適当にネットで調べつつ後藤さんが帰ってくるまで待っていたのだが、一時間たっても全然帰ってくる気配がないので虹夏さんが帰る事になり、駅まで見送ることにした。

 

 

「じゃね~優人くん! 送ってくれてありがと~!」

 

 元気に手を振ってくる彼女に軽く手を上げて振り返す。

 結局どこに行くかは決まってないが、虹夏さんがあたしが考えとくよ~と言っていたので全部任せることにした。

 

 改札を過ぎて虹夏さんが見えなくなったとこで俺も来た道を引き返していく。

 結束バンドのサポート役。それが俺の役目だ。今のところは何もしてあげられていない気がしてしょうがないのだが、もっと自分でも何ができるか考えてみるか……。

 

 バンド活動以外でなら何か役に立てることだってあるかもしれない。

 例えば宣伝場所をもっと増やすとか、SNSをもっと利用するとか。考えるだけでも結構案は出てくるもんだな。これらを活用すれば知ってもらえる機会も増えそうだし、後日色々提案してみよう。

 

 そんな事を考えながら俺は第二の家、後藤さんの家に帰っていく。

 

 

 

 帰るとどこかですれ違っていたのか既に帰宅していた後藤さんと、何故か大量のエフェクターが部屋に置いてあった。

 

 

「……おい、何だこれは」

 

「ヒィッ!? あっ、あ、えっと……その……」

 

 話を聞くとこのエフェクターに前の収益代の残り二十万円を全て使いきって写真をトゥイッターにあげたところ、いいねどころか『そんなにエフェクターあってどうするんですか?』や『練習しないの?』というリプが来て嘆いている途中だったらしい。

 憐れすぎんだろ。そしてバカすぎんだろ。一時の感情に振り回されて二十万を無駄にしやがったのかこのアホピンク。

 

 もはや同情の余地はねえ。

 お金を無駄遣いするヤツには少しお灸を据えてやらんとな。数百円ならまだしも、数十万はさすがに度が過ぎている。

 

 

「お金の使い方を一から勉強し直そうか、後藤」

 

「えっ……あ、あれ……ゆうくん? 名字、何で呼び捨てに……」

 

 叱る時は叱る。

 それが俺のやり方だ。このアホのアホさ加減には上限がないから、言う時は徹底的にキツく言わんとまた繰り返すからな。

 

 絶対ギャンブルやらせたら一瞬で全てを失うタイプのバカだ彼女は。

 将来はギャンブラーにならないよう見張っておかなくてはならない。とりあえずはまあ、一喝いれておこう。

 

 

 

 そして、雷よりも鋭い轟音が後藤家に響いた。

 

 

 

 





虹夏ちゃんはまだバンドと夢のために必死で恋愛とかまだ興味なさげだからフラグが立ってるとかでも全然ないけど、きっかけがあれば可能性は普通にあるとだけ。
そのために支える主人公がいる訳なんでね。


では、今回高評価を入れてくださった

☆10:なんか変な色の翼さん、Mr.アヒルマンさん、ザラメ雪さん

☆9:カズーニ神さん、閻魔刀さん、つくしからえりんぎさん、ハイーパ0429さん、bilibiliさん、キヨシさん、ねこめいしさん、けん0912さん、ナニモさん、タスマニアさん、悠久の支配者さん、モチモチこしあんさん、OGINOさん、イキョウさん、完全無欠のボトル野郎さん

☆8:AXEL0329さん

本当にありがとうございます!
栄養素は主に評価や感想などです。たくさんくれると健康になります。ウスッ。
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