再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
久々にちょっと早く更新できた……。
区切り的に今回は少し短め。
「もっと結束バンドの活動を宣伝して広げていく?」
「はい」
何とか尋問を振り切りバイトも終わって最後の掃除中、俺は虹夏さんにそう提案した。
「文化祭ライブを機にうちの学校でも少しずつ知名度上がってきてるし、前から次のライブはいつやるかって話してましたよね。だからここでいっちょライブをしてもっと広めていくべきかと思いまして。もちろん場所はスターリーですけど」
「なるほどぉ、あたしもそろそろライブしたいと思ってたからちょうど良いかもね。今ならもっとお客さん来てくれるかもしれないし」
「はい。それと喜多さん、SNSの宣伝もっと頻度増やせないか?」
ちょうどイス運びを終えた喜多さんにも話しかける。
「ええ、それはできると思うけど」
「とりあえず写真付きでトゥイッターとかイソスタに投稿してくれればいい。楽器とか、演奏してるメンバーの風景でも構わん。何ならバイト中でも暇があれば写真撮って投稿するのもありだな。スターリーでバイトなうとか呟いとけば、結束バンドだけじゃなくてスターリーの知名度も少しは上がるかも」
「分かったわ。それって自撮りとかでもいいの?」
「ああ、あくまで結束バンドのSNSだから呟きや写真が音楽関連であれば問題ないと思う」
あとは何ができるかな。
ライブの様子を写真とか動画で撮影して投稿するのも悪くない気がする。バンドなんだから曲を聴いてもらってなんぼだもんな。だとしたら一眼レフで動画撮るか? いや、それともちゃんとしたビデオカメラを用意すべき? どっちがいいんだろ。
写真を撮るならライブハウスは照明ライトがあるにしても暗いのには変わりないし、新しく明るいレンズも買わないとだよな。
ビデオカメラについては……また家に帰ったら調べるか。
「けど優人くん、何でいきなりそんな積極的になったの?」
「優人にしては珍しく変な草でも食べた?」
アンタと一緒にすんな。
「や、結束バンドのサポート役とはいってもそういや俺何にもできてないなって思い出して、肩書きだけに収まってるのも嫌なので何かできる事はないかと俺なりに模索してみたんですよ。そしたら結束バンドをもっと有名にしていく手伝いをするのが俺の役目かなって」
「おぉ、あたし達のためにそこまで考えてくれてたなんて……さすが優人くんだね! 略してさすゆう!」
いやそんなさすおにみたいに言われても。
俺には何でも持て囃してくれる可愛い妹なんていませんよ。
「それにあたしだって何も考えてなかった訳じゃないよ~。次のライブに備えてちょっとしたサプライズも用意してあるしぃ~!」
「え~、何ですかそれ! 気になります!」
そのサプライズ、私、気になります!
「ふふーんっ、それはライブの時のお楽しみだよ~! といっても早くお披露目したいから次のライブはすぐにやるとして、今週のどこかにしよっか。それなら今ある曲だけだしみんなもやりやすいと思うから問題も特にないよね?」
「賛成です!」
「異論なし」
「あっ、私も大丈夫です……」
意外と早く次のライブが決まった。
みんなもちゃんとモチベが上がってるようだ。文化祭ライブも途中で打ち切りになったとはいえ、感触は全然良かった。色んな意味で話題になってるから、そこから興味を持ってくれた人もいるようだし、これから徐々に客も増えてくるかもしれない。
「で、ぼっちちゃんはいつまで優人くんの腰にしがみ付いてるの? いい加減離れないとぼっちちゃん腰痛めちゃうんじゃない?」
「あっ、前から落ち込んだ時はたまにやってたので慣れてます……」
「慣れてるんだ……」
そう、バイト開始からほぼずっと、忙しい時間帯以外で後藤さんは俺の腰にしがみ付いて離れなかったのだ。
俺としてももう慣れてるので今更何も思うところはない。凄いよね、女子に密着されてるのに何とも思わないなんて。これが後藤耐性Aの付いた俺の固有スキルである。
「ほら、ひとりちゃん。そろそろ離してあげないと優人君も掃除しづらいでしょ? ねっ?」
「大丈夫だよ喜多さん。俺も慣れてるからこのくらいじゃ邪魔でも何でもないし」
「優人君は良くても私の気持ちがこう……何というか、収まらないというか……もうっとにかく引っ付きすぎよひとりちゃぁん!」
何がどう収まらないんだろう。
俺と後藤さんが密着したところでさっきのヨヨさん同様アオハルイベントなんて起きないぞ。
だって普通に考えたら女の子にしがみ付かれてドキドキするもんなんだろうけど、後藤さんだよ?
しがみ付き方がもう普通じゃないもの。後ろから抱き付かれるならともなく腰だけに手回してきてるんだもの。鏡で見たらこれただのケンタウロスだよ。こんなのでどうドキドキしろってんだ。
「まあ今はほっといてやってくれ。帰りにずっとケンタウロス状態でいられるより、ここで少しでも精神的に安定してくれた方が俺の身のためでもあるから」
主に外で変な目で見られないためにね。
「ほんとに何も思ってなさそうな目してるわね……」
「お姉ちゃんにライブの日程伝えてきたよ~! ライブは三日後、平日だけど今のあたし達ならノルマも達成できそうだし、優人くんも良かったら学校の人に話してみてね」
「あー……分かりました。一応クラスの奴らに適当に声掛けてみます」
「よぉーし、それじゃあ次のライブも頑張ろ~!」
────
という事で翌日の朝、さっそく声を掛けてみたのだが。
「「「部活あるから無理」」」
「だよなぁ」
そうだろうと思ったよちくしょう。
うちのクラスの男子は俺以外運動部所属という何ともまあアクティブな奴らの集まりな訳で、平日なんてそりゃ部活があって当たり前か。ダメ元で言ってはみたものの案の定だった。これは他の男子に声掛けても無理そうだ。
「何で平日にやるんだよ~。部活がない日曜なら行けたのによぉ~。なあ、今からでも日程変えてくんね?」
「俺の一存で決められる訳ねえだろバカ田中。元々お前らに声掛けたのもダメ元だし、うちの男子は全滅って事にしておくか。女子の方なら喜多さんに任せてるから大丈夫そうなんだけどな」
チラッと喜多さんを見てみるともう既に何枚かチケットを手渡している。
いやノルマ裁けるのは凄いけどその場でチケット代渡して了承してくれる女子達もすげえな。これも喜多さんの人脈あっての賜物か?
「俺も部活がなかったら行きたかったんだけどな。文化祭ライブ見てて興味出たし、ちゃんとしたライブハウスで見てみたかったよ」
「その気持ちだけはありがたく貰っておくよ佐藤。今度は日曜辺りにライブを設定してもらうから、そん時にみんな来てくれ」
「ん、僕もその時に行かせてもらう。二曲目のやつ好きだったし、またやってくれたらありがたい」
「分かってんじゃん鈴木。曲数自体はまだ少ないから、今の内にライブ来たらもれなく全部聴けると思うぞ」
やはりあの文化祭ライブは成功だったんだなとこいつらの反応を見て思う。
終わりは最悪だったが、それまでは客を魅了していたのも確かな事実だと判明したから良かった。
「何よりバンドメンバーみんな可愛かったよなぁ」
「………………あ?」
急に何を言いだすんだこの猿?
「バンド女子って何であんなにひと際輝いて見えるんだろうな。クールそうなベースの人とか女子からも人気あったし、喜多さんは言わずもがな美声とギターソロ? が超良かったよなぁ。それに一見パッとしなかったドラムの人も性格の明るさで良い子なの丸分かりだから好感度めっちゃ高ぇ!」
地味に分析が正確なの何なんだよ気持ち悪いなこいつ。無駄に見る目あるのが普段から視線だけで女子を追ってるのがよく分かって余計キツい。
けどラブリーマイエンジェル虹夏さんをパッとしなかったと言うのだけは許さん。万死に値する。一番まともで良い人なんだからな。ぶっ飛ばしてやろうかこの坊主。
「あとは弦が切れても何かよく分かんねえ事して乗り切ったピンクジャージの子、いや~あれは普通に見惚れたわ。アドリブであそこまでかっこよくできるなんて普通思わねえよな。あの子って確か二組の子だっけ……っておい清水、何でお前がめちゃくちゃドヤ顔してんだよ」
ふふん、見る目あんじゃねえか田中。そこだけは認めてやろう。
まあ後藤さんの実力はそんなもんじゃないけどな? 本気出せたらもっとすげぇんだぞ。誰もが見惚れるギタリストの素質持ってんだからなあの子。
「まあいいか。それにしてもあのジャージの子、俺の見立てではちゃんとすりゃ見た目も化けると踏んだね。最後のダイブにゃあ少しドン引きもしたが、俺クラスの人間にもなるとそこも推せる! なあ清水、あの子についてもっと詳しく教えてくれよ。二組の子だけど知ってるんだろ? 確か後藤さんって呼ばれてたよな? 俺の見る目は間違いねえってとこをこいつらにも見せてやりたいんだよ。そしてあわよくば知り合いの特権としてちょっとメンバーの皆様方とお近づきにさせ」
「殺すぞ」
「お前が言うと冗談に聞こえねえよ……」
やっぱ猿はどこまでいっても猿か。
こんなヤツにうちの結束バンドひいては後藤さんに近づけさせるのは危険だな。いっそ俺に隠してこっそり声を掛けないようにここで殺っとくのもありか? ありだな。ありだと思います。よし、殺ろう。
「今のうちに芽は摘んでおかないとな。という事で田中死」
「おはよー」
「ナイスタイミング高橋! 何か今清水に殺されそうになるイメージが脳内を駆け巡ってきてやばいとこだった!」
チッ、運良く高橋の後ろに隠れやがったか。
まあいい、片鱗を見せた時に一気に片付けてやる。それまでは生かしておいてやろう。
「珍しく遅かったな高橋。寝坊か?」
「剣道部の朝練がなかったからゆっくり来ただけだよ。というかさっき校門で変な女の人いたんだけど、みんなは見た?」
「「「「変な女の人?」」」」
田中達と顔を見合わせるもみんな顔を横に振る。もちろん俺もだ。
変な女の人ってなんだ。そんなの後藤さんかリョウさんかきくり姐さんくらいしか知らんぞ。後藤さんは俺と一緒にいたし、他二人はここにいようものならそれこそ通報してもらって構わない。
「俺が来た時はそんなのいなかったけど」
「なんか人を探してたっぽいんだよね~。ご……なんとかさんって人。中国人留学生の事かな? 首に包帯巻いてたりぶりっ子っぽい感じで地雷臭凄かったよ。教師に追い出されてたけど」
ご……なんとかさんってなんか聞き覚えあるんだけど。
確か文化祭ライブの後藤さんがダイブする直前でそんな感じのこと言われてなかったっけ? 名前覚えられてないからインなんとかさんみたいに呼ばれてた気がする。
いや、でもさすがに考え過ぎか。
そんな都合よくピンポイントで俺の予想が当たるはずもないよな。後藤さんに限ってそんな知り合いの人とかいる訳ないし。
そう考えていると、高橋の後ろに隠れていた田中がおもむろに口を開いた。
「つうか変な女の人って事はアレだろ。清水の知り合いなんじゃねえの?」
「いや何でそうなるんだよ」
知り合いに変な女の人達がいる事は否定できんけども。
「ウチの学校で女絡みといやぁ清水関連に決まってんだ。どうせ修羅場ってんだろ? さっさと出頭して刺されてこい」
「勝手に俺を修羅場の中心人物に置いてんじゃねえよ!? 何でもかんでも女性関連の話を俺に結び付けようとすんな!」
「だって、なあ?」
「「「うんうん」」」
こいつら……ノータイムで頷いてやがる。
普段から俺をどういう目で見てんだ。失礼極まりねえな。
「ふざけんな! 俺だってさすがに見てもねえのに勝手に知り合いとか決めつけられて良い気分になる訳ねえだろうが!」
「「「「あ」」」」
「そうやって謂れのないバッシングを受ける痛みをテメェらにも思い知ら……何だよ、お前らどこ見て……あっ」
田中達が俺のすぐ後ろに視線をやっているのを見て俺も後ろを見る。
大声でやり取りしていたのがいけなかったらしい。教室全体に俺達の会話が響き渡っていたのだ。
それはつまり。
「修羅場って何の事かしら、優人君?」
にっこり笑顔の魔王の耳にも内容が筒抜けだったという事。
「……いや、あの、姫……? どこまで話を聞いてたか分かりませんが、どうかわたくしめの言い分も聞いていただけると凄く助かると言いますか……」
「もうHR始まっちゃうからあとでひとりちゃんとゆっくりお話しましょうね~!」
やべえ、喜多さんの瞳がめっちゃ黒い。
これもうアレだ。キタサンブラックだ。今の声はめっちゃミホノブルボンに似てるのにオーラはキタサンブラックになっておられる。いつもサポカでお世話になっております。
「「「「清水、南無」」」」
「ちょっ、お前ら友達ならもっと助け船と」
「「「「ついでに逝ってこい」」」」
「即刻見捨てられた!?」
そうして俺は喜多さんの隣、自分の席へと首根っこを掴まれたまま連行されたのだった。
何で俺が悪いみたいな風潮になってるんだろう。
喜多ちゃん無自覚にどんどん重くなってってない?
最近こういうオチばっかだなと思いつつ、清水とぼっちちゃんがオチとして便利すぎる素材だからついやっちゃう。
男子達との絡みも文化祭ライブでの感想言わせてみたかったので入れる事に。
何だかんだこいつらモブも物語の駒として便利なんよなぁ。
では、今回高評価を入れてくださった
☆10:アスリアさん、einsatz fsさん、vongolaさん
☆9:ゃ1〇u千πさん、モチモチこしあんさん、鳩兎さん、タスマニアさん、けん0912さん、レイティスさん、イキョウさん、完全無欠のボトル野郎さん、Ryonganさん、喰鮫さん、光の狂信者ペニーワイズ@シングレ買ったさん
☆8:ナナナットさん
本当にありがとうございます!
読者のみんながどんな文章が好きかを分析するためにここすき覗いてる事が多いので、みんな気に入ったとこあったらどんどんここすきしてってね!
あと純粋に感想たくさんくらはい!