再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
アニメ最新話が良すぎて夜中の内に書き上げたので初の予約投稿です。
みんなちゃんと見た?きくり姐さんのグビ姉っぷりが原作より上がってて笑っちゃった。
「何で俺も連れてこられてんの」
下北沢駅周辺、STARRYへ向かう足取りは当然重かった。
理由はただ一つ。
「今後のバンド活動について話し合うってのは分かったけどさ、それ呼ばれてんの後藤さんだろ? 俺関係ないじゃん。ただの部外者だぞ」
何故かバンド活動でのミーティングに俺も連行されている事。
今日は普通に帰ろうとしていたら後藤さんに手を引っ張られ下北沢駅で降ろされたのだ。バンド活動あるだろうし仲間もできたなら俺いなくても大丈夫だし家に帰れる。そう思っていた時期が僕にもありました。
「あっ、いてくれた方が、私が助かると思って……」
めちゃくちゃ個人的な理由じゃねえか。もっとマシな言い訳考えられなかったのかよ。
とは言いつつ一緒に歩いてる時点で俺も引き返せなくなってる訳だけど。今帰ろうとすると何しでかすか分からんからなこの子。急に液状化するかもしれんし。騒ぎになったら面倒だが、どうもなあ。
「つっても今ライブハウス開いてる訳じゃないんだろ? それこそ無関係な俺は入れな」
ポンッと、ポッケに入れていた俺のスマホからロインの通知音が鳴った。
喋っている最中なのに不思議なもので、ロインが鳴るとどうしても気になってしまうのが俺の性だ。グループロインか両親か、あるいは友人か。
スマホを出してロインを開くと、見知らぬ誰かからだった。いやほんとに誰。
スパムか? とも思った束の間、俺の視線はアイコンの方に吸い込まれた。なんか黄色いアホ毛がドアップで写っている。あれ、妙に見覚えがあるような……。
トーク画面を開くと友達追加しますか? というアプリからの質問と同時にこう書かれていた。
『やっほー! 虹夏だよー! ぼっちちゃんから清水君のロインのID教えてもらっちゃった! という事で今日ぼっちちゃんと一緒にSTARRY来てねっ! 名目としてはぼっちちゃんの保護者枠で良いから!』
個人情報だだ洩れであった。え、噓でしょ。俺のIDこんな簡単に流されんの? 伊地知さんも普通に送ってきてるの中々にやばい事してるの気付いてほしい。ご丁寧にカモン! と書かれた猫のスタンプまで貼ってある。
いやとりあえずは隣の犯人に問い詰めるべきだな。
「おいこら情報漏洩者」
「は、はひっ……!」
返事しちゃったよ認めちゃったよ。まあ逃げ場ないし一人しかいないから当然だけど。
「よくもまあ人のロインIDを軽々しく他人……て言うのは何か気が引けるけど流してくれてんなあこの野郎。何で許可なく勝手に流した? 言ってみ」
「あっ、えと……虹夏ちゃんに教えてって言われて、断れなくて……」
「……」
そうだった。後藤さんは基本頼まれたら断れないイエスマンだった。俺に許可取る前に教えてしまったのもおそらくテンパって早く教えなきゃと思ったからだろう。
後藤さんの性格を知ってるからこそ、こう答えられると強く言えない。
「……はぁ、まったく。今回は許すけど、次からはこういう事がないようにしろよ。ただでさえ後藤さんは危ねえやつとかに引っかかりそうだから怖いってのに」
「あっうっ、ごめんなさい……」
「謝ったからもういいよ。これ以上は追い打ちとかしねえから。伊地知さんにロイン返しとくか」
バンドメンバーじゃないから別にロイン交換する必要もないと思ってたんだけどなあ。まあ普通に友人として交換したって事でいいか。
一応これで俺もSTARRYの中に入れる理由ができた。やはり罪悪感とか気後れしてしまうような事は避けておきたい。
『分かりました。というかもう着きます』
これで良いな。送信、と。
ロインを送ったは良いがどうしよう。本当にもう着いてしまった。道は覚えてるけど景色を見慣れてないからどうにも時間と距離の感覚が掴めないんだよな。
おっと、そうだ忘れてた。
「あ、悪い後藤さん。俺今日普通に帰るつもりだったから飲み物買ってないわ。コンビニで適当に買ってくるから先入っててくれ」
「……え!? あっ、ちょ」
「後藤さんの分も買ってくるから気にすんな~」
そう言って俺はコンビニへダッシュした。
これに関してはいきなり俺を連れてきた後藤さんが悪い。行くと分かっていたら学校の自販機であらかじめ買っていたのに。
そして数分後。
俺が戻ってきたら階段の前に座っている後藤さんがいた。……え、いや、何で?
「うぉーい後藤さん、何で入ってないんだよ? 鍵閉まってるとかじゃないよな?」
話しかけたらグルンッ!! と勢い良くこちらに振り向いて迫ってきた。
「な、何ですぐどっか行っちゃうんですか……!? 一人にされたら……は、入れる訳ないじゃないですかぁ……!」
「いや入れよ」
いや入れよ。当たり前の事すぎて口と心の中から同時に出ちゃったわ。
さすがに見知らぬ店って訳でもないんだし入れるだろ。けどそれで入れないのが後藤さんなのでしたー。はい、ざんねぇーん!!
「うぅ……一緒に入りたい……」
「……あーもう、分かったからとっとと行くぞっ。いつまでも待たせてちゃ悪いだろ」
いつも通り俺の背中にくっついてくる後藤さんを尻目にドアを開ける。
予想通り、既に伊地知さんと山田さんが中にいた。
「あ、やっと来たねー。ロインの返事からずっと待ってたんだよー?」
「すいません。急に連れてこられたんで飲み物買ってくるの忘れてしまって。コンビニに買いに行ってたんです。っと、これ後藤さんの分な」
「あっ、ありがとうございます……」
買ってきたペットボトルを渡し、伊地知さん達が座っているテーブルの方へ行く。
ちゃんと俺の分のイスまで用意されていた。
「そうなんだぁ。でも飲み物ならウチにたくさんあるからそれ飲んでもいいのにー!」
「店用のとか勝手に飲んだらダメなんじゃないですか普通」
「?」
テーブルの上にはいかにも店の物と思わしきカップとジュースが注ぎ込まれていた。普通にやっちゃってるわこの人。
身内が経営してるからそこら辺のルールが緩いのだろうか。
「まあいいや。ほら座って座って!」
促されるまま座る。
「という訳で第一回結束バンドメンバーミーティング開催しまーす! はい拍手~ぱちぱちぱちぱちぃ!」
山田さんも後藤さんも続くようにまばらと拍手している。
というかマジで俺全然関係ないな。場違い感半端ないんだけど。バンド知識ある三人とほぼ無知な俺一人って何。昨日に比べて思ったより居づらいわ。
「それじゃあえっと……思えばあんまり仲良くないから何話せばいいかよく分かんないやっ」
「身も蓋もねえな」
「そんな時のために、こんなものを用意しておいた。じゃじゃーん、ごきげんいかがサイコロぉ」
「何でバンジージャンプとか書いてんだよ」
あれ、何か昨日より思った以上に自由だぞこの人達。こんなさばさばしてたっけか。
「おぉ、清水君ナイスツッコミだねえ」
「あ、すいません。思わぬボケについ敬語外れてしまいました」
いかんいかん。いくらボケとは言っても相手は先輩。後藤さんの恩人なんだから敬意をもって接さないと失礼だ。
「え~、別にあたしらは良いんだけどなあ。ねえリョウ」
「男友達感があって良いと思う。これもロックならでは」
ほんとかよ。結構半信半疑だぞそれ。つうかロック免罪符すぎません?
「まあほら、それは置いときましょうよ。せっかくならサイコロ回しましょ」
「何か流された感あるけど、まあいっか。じゃあサイコロ回すよ~。ほいっ、なにっがでーるかな、なにっがでーるかなっ♪」
言うな言うな。よくは分からんが何か言っちゃいけないような気がする。どことなくお昼の雰囲気がしてくるから。
伊地知さんの転がしたサイコロの止まった目は、
「学校の話~略してガコバナ~!」
「はいどうぞ」
「えっ、あぁ、えっと……そういえば二人共同じ学校……」
「そう! 下高だよ」
「二人共家が近いから選んだ」
後藤さんが話を振られて割かし普通に話している……だと……?
伊地知さん達は普通にしてるけど俺からすれば結構衝撃的なんだが。どうした後藤さん、一度成長したらずっと成長できていくタイプなのか。
「し、下北沢にお住まいで……」
「あれ、ぼっちちゃんと清水君秀華校でしょ? 家ここら辺じゃないの?」
「あっ、いや、県外で片道二時間です……」
「え、何で!?」
「高校は誰も自分の過去を知らないところに行きたくて……」
「俺は後藤さんの面倒見るために一緒のとこ受けました」
「清水君の理由も大概だね!?」
ほっとけなかったからな。この子一人だと今頃学校生活どうなってたか分からないし。いや今も大概か?
その後も音楽の話だったり、後藤さんが青春コンプレックスを刺激する歌が苦手だどうのこうの言ってまた幻想世界に入ったりとミーティングになってるかよく分からない事になった。
気付けば今度はライブの話になっている。
「今度はボーカルありのライブがしたいんだよね〜。けどあたしは歌下手だし……ぼっちちゃんは……だよねえ」
後藤さんが人前で歌うなんて無理に決まってるじゃないですか!! 歌う前に発狂してブリッジとかしだすに一票。
それはそれで見てみたいかもしれない。これもまたロック。俺も分かってきてしまったか……。
「あの、リョウさんは……?」
「フロントマンまでしたら私のワンマンになってバンドを潰してしまう……」
「その湧き出る自信は何?」
いやほんとこんな自信持って言えるのむしろ凄いと思う。後藤さんもちょっと分けてもらいなさい。ワンチャン調子乗って自爆するとこまでがオチになるかもだけど。
「そうだ、ボーカル見付けたら曲も作ろうよ! リョウ作曲できるし、歌詞に禁句が多いならぼっちちゃんが書けばいいよ!」
「ああ、それはありかもですね。後藤さん俺と再会した中学の時も基本ずっと図書室で本読んでましたし。語彙力とか比喩表現は得意かもしれません」
それを話せる事はまずないけど、までがセットである。
当の振られた本人はずっと俯いてぷるぷる震えてた。武者震いかな。
「虹夏は何するの」
「……ど、ドラムにはバンドでの潤滑油としての役割があるから……」
「就活生か」
いや、でも割とこのメンバーの中では大事な役割かもしれない。後藤さんは上手く話せないし、今のところの印象だけど山田さんも結構マイペースで独特なとこあるし。
あながち間違いでもないような気もする。一人はしっかりした人がいないとまとまらないもんな。
その後は意外にも順調にミーティングは進んでいった。
ノルマの話になってバンドマンには売れるまでお金がたくさんいる事、しかし前回のライブクオリティーだと集客の見込みもない。
友達がいない後藤さんと山田さんは期待できないしな。あれ、思ったほどミーティング順調かこれ? 悲しい現実しか分かってないけど。
「清水君は誰か呼べそう?」
「生憎俺も高校ではライブ呼べる程仲が良い友達多い方ではないんですよね。いないって訳じゃないんですけど、さっきも言った通り登下校に時間かかるせいで放課後親交深める時間がないと言いますか。一緒に来るとしても後藤さんもいるので、多分来る途中で現実からログアウトします」
休み時間も後藤さん何してるか見に行ってるからマジで交友関係は広くない。最低限の交流しかしてないから男友達が数人いるくらいだ。
何なら学校で一番喋ってるのは喜多さんまである。女子じゃん。ラブコメか?
「そっか〜」
「それに俺はバンドメンバーじゃないんで余計呼びづらいってのもありますねえ。もし呼ぶにしても、もうちょっとクオリティー上げないと何とも……」
「ごもっともだぁ〜!」
今まで放課後遊んだ事なかったのに急にライブ誘っていざ来てみれば、クオリティー低いしボーカルいないし一人は完熟マンゴー段ボールだしで下手すると俺まで学校でぼっちになりかねない。
これじゃぼっちくんになっちゃう。やだ、男のぼっちってだけでより悲壮感増すのエグい。やっぱ呼ぶのやめとこう。生命線は確保しておかないと。
「うーん、まあその辺はひとまず置いとこっか。とりあえず当分ライブのために数万円必要だから、ノルマ代機材代諸々稼ぐためにバイトしよー!」
「はい……」
意外にも素直に返事したな後藤さん。
いや違うなこれ。いつも通り適当に返事しただけでちゃんと話聞いてないだけだ。また固有結界の中に入ってたのか。
でも聞き慣れない単語と聞き入れたくない単語が同時に耳に入ってしまうと、人というのは嫌でも現実に引きずり落とされるのだ。
目の前の後藤さんのように。
「……バイトぉ!?」
「今日一声出たね」
ぼっちは声のボリューム調整が下手なんです許してやってください。
後藤さんのバンドマン人生は前途多難のようだ。
無自覚甘やかし系オリ主。
それがヤツだ。
今回は予約投稿のため、高評価を入れてくださった方々のご紹介は明日の投稿時にご一緒に紹介させていただきます。申し訳ございません。
高評価も感想くれる人もみんな神だと思ってるので軽率に崇めていきます。ははーっ!
初めて一言コメント評価を頂いてずっとニヤけてた。
今ならネット見てニヤけてるぼっちちゃんの気持ちが分かるぞ……。