再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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71.初対面の人と思って喋ってたら知り合いだった時は超恥ずかしい

 

 

 

 最初に言っておく。

 初対面の人に対してはできるだけ丁寧に接するのが俺の人との関わり方だ。というか一般的に大体の人がそうだろうと思う。

 

 丁寧な対応をされれば余程のドMかイカレた類人猿以外は気分も良くなるし、それを返されればこちらも気持ちがいい。

 だから相手がやべーヤツじゃない限り俺は初対面の人に失礼な対応はしない。今回だって接客する立場としてもファンの人にもっと結束バンドを好きになってもらえるよう、サポート役の自分の印象も上げておくべきだと判断したから笑顔で対応した。

 

 はずなんだが。

 

 

「あ、あああ、ああああばばあああばば……」

 

 目の前にいる眼鏡っ子少女が若干涙目になっておられた。

 あれ、俺何か失礼なこと言ったっけ? 対応としては間違ってないと思うんだけど。

 

 

「(は初めましてって……? 嘘……もしかして私……友達なのに気付かれていない……? こいつなら変装してたって何だかんだ気付いてくれるって思ったのに。……まさか知らないうちに私、嫌われるような事して無視されてるんじゃ……? 確かに普段から口調は強めになっちゃってるけど、いつもはロインだってしてるし仲良くなれてるつもりだったのに……うぅ……)」

 

 なんか一人でぶつぶつ言っている。どうしよう、さすがに挨拶も返されないとは思わなかった。

 ……ハッ!? そうか……この子の見た目は至って普通。しかも眼鏡っ娘で地味目の印象をしてる事から察するに、おそらく人見知りかコミュニケーションを上手くとれない人なのかもしれない。

 

 そうなると話は簡単。こちとら身近にレジェンドレア(LR)の『絶・コミュ症/後藤ひとり』を所持してるんだ。

 しかも周りにキャラが強い人しかいないせいでこういう普通の地味っ子女子とか逆にレア。ファンとして重宝しておきたい。コミュ症と決めつけるのは少々気が引けるが、普段から人外承認欲求モンスターと接してる俺からすれば、この子の心を開く事もできるはずだ。

 

 

「あの、大丈夫ですか? もしまだ前の方でライブが見づらいのであれば後ろの方で見る事をオススメしますよ。客もまだ少ない分、例え好きだとしても演者と目が合うと恥ずかしい人も一定数はいますので、後方から全体の雰囲気を楽しむのもライブの醍醐味だと思いますが、どうでしょうか?」

 

 自分から来れない人にはこちらから歩み寄るのが定石だ。なるべく警戒心を与えずに、何となくでも相手が求めていそうな情報と踏み込んでいい心の距離感を測りつつノックをする。

 それで相手がドアを開けてくれれば成功だ。

 

 

「ふぐぅっ!?」

 

 うん、どうやら失敗したらしい。眼鏡っ娘が両手を胸に当てくの字に折れ曲がった。精神ダメージを与えてしまったようだ。

 優しさは時に人を傷付けるとはよく言ったものですな。シャニP並のコミュ力と会話術が欲しいぜまったく。

 

 

「あーもう優人君何してんのさ。君の言葉は女の子にとっては毒になる事多いんだからもっと自重しなきゃだよ。つっきー大丈夫?」

 

「いや普通のこと言っただけだと思うんですけど……。え、俺接客側として普通の対応でしたよね二号さん?」

 

「ゆうと君、いつか刺されても知らないよ」

 

 真顔で言うのやめてもらっていいですか二号さん。なんかよく分からないんですけどあなたがそう言うと洒落にならないような気がしてくるんですよね。

 ヤンデレの素質ありそうこの人。一見こういうふんわりした人ほど素質が隠れてたりするんだよ。俺知ってるよ、アニメで見たことあるから。誠死ね。

 

 ついでに最近撮影の師匠である一号さん達の俺への対応が少し遠慮なくなってきてる件。

 これは仲良くなれたというべきか、はたまた少しずつ嫌われていっているのか定かではない。男女の友情って成立する? するよね? 

 

 

「はぁ……一号さん、とりあえずその人が本当に体調悪い訳でもなくただ人見知りなだけだったら側にいて色々教えてあげてください。一号さん達なら俺も信頼できるので。あ、できるだけ優しくですよ。こういう人には一気に詰め寄っても警戒されやすいから徐々に目線を合わせて諭すように話すんです」

 

「さすがひとりちゃんで慣れてるだけあるね……」

 

「(……あれ? 清水優人、まさか本当にただ私に気付いてないだけ? 口調からしてもわざと無視してるようには見えないし……それだけ私の変装が完璧すぎたって事……? ふ、ふふんっ、さっすが私、変装の才能を持ち合わせていたなんて自分でも驚きだわっ)」

 

「つっきーちゃん? ボソボソ喋ってるように見えたけど、本当に大丈夫? 緊張してるの?」

 

「えぅあっ!? べ、別にそんなことない……大丈夫だから……」

 

「んん?」

 

「えっ……ちょっ」

 

 さっきまでほとんど驚いた声しか聞かなかったから気付かなかったけど、今の眼鏡っ子の声、なんか聞き覚えのある声だったような……。

 

 

「ん~……?」

 

「あっうっ……ち、近いぃ……」

 

「……気のせいか」

 

 もしやと思ったがどうやら違うようだ。まあそうだよな。この人がヨヨさんな訳ないか。

 あの人ならこんなしおらしい反応するはずないし、もし敵情視察ならライブ衣装ばっちし着て敵対心むき出してくるようなちょっと頭のネジが飛んでる人だもんな。

 

 

「はい優人君女の子の顔をそんな近くで覗き込まないの。君はひとりちゃんと普段から距離が近すぎて他の女子との距離感もたまにバグってる時あるから気を付けなね。気の強い人ならビンタされてもおかしくないよ今の」

 

「あっ、そういやお客さんですもんね。すいません、少し聞き覚えのある声だったもので勘違いしてしまうとこでした」

 

「え、あ、うん……」

 

 一号さん達とは違ってこの人は初めてなんだから適切な距離を取らないとだよな。

 俺とした事が、知り合いかと思って変に踏み込んじまうとこだった。反省だ。

 

 

「じゃあ俺は撮影の準備するんで。あー一号さん(師匠)、カメラの設定だけどんなもんか見てもらっても大丈夫ですか?」

 

「おー任せなさい! 師匠が見てあげちゃうよ~!」

 

 こういう時ノリの良い一号さんは頼みやすくて助かるな。

 いや実際師匠的存在だから間違ってはないけど。

 

 三脚にカメラをセットし終えて色々設定したが、やはり自分より詳しい人がいるなら確認と助言は欲しいものだ。

 こういう時変に渋って質問しないと後々困ったりすることもあるからな。理解できそうなものは早めに取り込んでおきたい。

 

 

「うん、ホワイトバランスもフォーカスも設定合ってるね。明るさは照明によって変わるからマニュアルじゃなくてオート……にもなってるか。ふんふん、さっすが私の弟子ぃ! 教えた事ちゃんとできてるね~!」

 

「いでっ、まあメモもしてるし一号さんの教え方も上手だからあだっ、こっちも助かってまっ……ちょ、いたっ痛いって、何回も背中叩かないでくれません!?」

 

 なーはっはっはっと笑う一号さん。仲良くなってから知る。意外とこの人も遠慮がないことに。

 二号さんが一号さんの首根っこを掴みながら眼鏡っ子と共に前の方に移動してくれたので、俺も自分の作業に専念する事にした。

 

 カメラのセッティングはOK。アングルもステージメイン且つ観客も少し映る程度に収めている。

 物販はさっき確認したから良いとして、大体こんなもんか。今日は店長にも撮影に専念していいと言われたからここから動かなくてもよさそうだな。

 

 ライブももう始まるし、あとは演奏を見つつその都度カメラを確認するとしよう。

 そしてライブが始まる一分前。一応最後の確認として設定を見直していると、

 

 

「……」

 

「……ん? あれ、どうしたんですか? 一号さん達と前に行ったはずじゃ」

 

 いつの間にか眼鏡っ子が俺の右隣にちょこんと立っていた。

 

 

「……貴方が後ろでライブ全体の雰囲気を楽しむのも良いって言うから……」

 

「ああ、なるほど……?」

 

 にしても俺の隣に来る必要性はあるんでしょうか。一応スタッフみたいなもんだから客からすれば近寄りがたい存在のはずなんだけど。

 というか距離近くね? 30センチも開いてないんだが。めちゃくちゃ友達感覚の距離で居座るじゃん。

 

 いや、もしかして位置の問題か? 撮影するためにセンター陣取ってたけど、客なら真ん中で見たいと思う人もいるよな。

 仕方ない、撮影は大事だが多少位置がズレても全体が映っていたら問題ないし少しズレるか。今の結束バンドにとって大事なのは新規ファン獲得と知名度拡大だし、ここでセンターを譲っておけば少なくとも悪印象は付かないだろう。

 

 

「前失礼します」

 

 ということで最前にいる客とカメラが被らないとこがドリンクカウンター近くだったため、三脚を持って眼鏡っ子の前を通り過ぎる。

 眼鏡っ子さんや、どうぞど真ん中で楽しんでいってくださいや。

 

 パパっと移動して再び三脚を置いてアングル調整をする。

 こんなもんか。思ったより違和感なさそうだ。そんでもって時間がやってきた。

 

 フロアの照明が落ちて結束バンドの面々が出てくる。

 喜多さんの簡単なMCからライブが始まった。撮影の方も問題なくできている。よし、これなら大丈夫そうだな。

 それにしても。

 

 

「……」

 

「……」

 

 何で眼鏡っ子さんはまた俺のすぐ左隣にいるんだろう。

 センター譲ったよね? 真ん中で見たかった訳じゃないの? というか何で俺の隣なの? ライブ始まっちゃったからもう移動できないんだけど。俺の移動した意味は??? 

 

 なんてことを言えるはずもなく、俺はただ眼鏡っ子との肩と肩の距離感約15センチの中で、その日のライブを最後まで見届ける事になった。

 

 

 

 特にトラブルもなく無事に全てのライブが終了。

 今回はあの野郎もいないのでライブが終わっても変に身構える必要もないのが精神的にとても楽だ。

 

 そしてライブ終了後、結束バンドだけ恒例のちょっとしたファンとの交流会があった。主に一号さん達だけだけど。

 

 

「みんな~今日のライブも良かったよ~!」

 

「一号さん達! どうもありがとうございます~! お、優人くんはあたし達のライブどうだった?」

 

「前回よりもさらに成長が感じられて見応えのあるライブになってましたよ。撮影もバッチリです。練習の成果がちゃんと出てる証拠ですね」

 

 あれからみんな真剣に練習する日々も多くなり、明確に上達しているのが俺でも分かった。

 演奏技術は間違いなく上がっている。まだ上で通じるレベルには達していないかもしれないが、伸びしろは十分にあるだろう。

 

 これなら次の新曲のクオリティーも上がりそうだ。

 そのためにはリョウさんに頑張ってもらわないとだけど。

 

 

「やっぱ客観的にそう言われると嬉しいものだね~。……でさ、優人くん」

 

「はい」

 

「隣の女性の人、どなた?」

 

「はい?」

 

 何ともまあ良い笑顔で虹夏さんが言うもんだから反応に遅れた。

 左を見るといつも通り後藤さんがいる。結束バンドパーカーを着てぴったりと俺の腕にくっついてる状態だ。別に室内だから湯たんぽ代わりにならなくていいのに。

 

 でもって右を見る。

 眼鏡っ子であった。

 

 腕を掴まれてるとかではないが後藤さんに匹敵するくらいくっついてきていた。

 小柄だから気付かなかった……。何で俺の側にくるんだこの人。一号さん達のとこに行けばいいじゃん。どうして俺が虹夏さん達に冷たい目で見られなきゃならんのだ。

 

 

「「優人(くん)、また?」」

 

「何が!? 言っとくけど今回はマジで何もないからね! 元はといえば一号さん達が連れてきた結束バンドの新しいファンですよこの人! 俺よりも虹夏さん達の方によっぽど興味ある人なんですって! つうか今回はって何だよ別に誤解与えるような事これまで一切したことねえわ!」

 

「……ハッ!? 下手するとバレるかもしれないし帰ろうと思ってたのに気付いたらこいつの隣にいた……」

 

「「こんなこと言ってるけど」」

 

「なんでっ!! そうっ!! なるのっ!!」

 

 頭どうしちゃったんだこの眼鏡っ子。もしかして普通な地味っ子枠じゃなくてこの人もやべーヤツ枠だったりするのか? 

 何でまともな人いないんだ俺の周りはぁ!! 

 

 

「殺せぇ! もう殺せよぉ!」

 

「どうしよう、優人くん自暴自棄になっちゃった」

 

「放っておきましょう。たまには軽率な行動を反省させないとですよ」

 

「これが結束バンドの日常なの……ウチとは大違いね……」

 

「あっゆ、ゆうくん、しっかりして……私はそんなゆうくんも応援してるから……」

 

「それより新しいリストバンド買ってくれた?」

 

「買いましたよ~! 新色買うのはファンとして当然なので!」

 

「……は? そんなの売った記憶……おい山田ァ!!」

 

「あ、怒りで優人くん元に戻った」

 

「何なのこのライブハウス……」

 

 そこから一悶着あって数分後。

 

 

「まあ、そういう感じで新規のファンらしいです。ですよね?」

 

「……えっとぉ」

 

「あれ、何か見たことある気が」

 

「うえぇ!? き、気のせいでは……?」

 

「ダメですよリョウさん。この人は人見知りっぽいんであんまりジロジロ見るのはなしです。かわいそうでしょ」

 

「(え、優しい……! 私に気付いてないってだけでこんな丁寧に扱ってくれるのこいつ……いつもはちょっとイジッてきたりするのに……)」

 

 何か下手に深掘りするとこの人も厄介そうな雰囲気出してたからちょっと怖いんだよなぁ。

 叩いたら何かしらの埃が出てきてもおかしくない。だってここにいるまともな人とか虹夏さん……は天使か。一号さんと二号さんくらいだぞ。この二人も最近怪しいけど。

 

 そんな時だった。

 

 

「みんらぁ~!」

 

「やべーのが来た!」

 

 妖怪サケカスキクリンがやってきた。

 店長まだ出禁にしてなかったのか。してても勝手に入ってきそう感しかないが。

 

 

「今日のライブもよかったよ~。あの~あへ~~~4曲目のエモ曲!」

 

「絶対今来ただろ……。今日は3曲しかやってないですよサケカスキクリン」

 

「ありゃ~そうらっけ~? てかサケカスキクリンってなに?」

 

「言い間違えです」

 

「あはは~ゆうきゅんもおバカだね~!」

 

「何すか。俺の名誉を毀損したいんですか。受けて立ちますよ」

 

「優人くんどーどー」

 

 誰がふたごどりポケモンノーマル・ひこうタイプじゃい。

 

 

「あ、廣井さん新宿FOLTにゲストで呼んでくれてありがとうございます! 今たくさんライブしたかったから助かりました!」

 

「え~いーのいーの!」

 

「でもどうして私達を? 他にも知り合いのバンドとかいたんじゃ?」

 

「いや~何故か送信履歴に入ってたんだよね~。不思議なこともあるもんだ~!」

 

「やっぱ酔っぱらって送信しただけかアンタ!? ほんともう……マジでそういうとこだぞ!?」

 

「うへへ~怒られちった~。でもシラフでも結束バンド呼んでたよ~」

 

 絶対嘘だろ。……いやこの人のバンド癖強すぎるから知り合いのバンドがいても断られそうなとこあるけど。

 もはやため息しか出てこない。何だかんだきくり姐さんはいつでもたってもきくり姐さんなのだ。俺達の想像なんて軽く超えてくる。そこに痺れない憧れない。

 

 

「やっぱり適当だったんじゃないですか……」

 

 ふと隣からそんな声が聞こえた。

 どこか、聞き覚えのある声が。

 

 俺よりも先に反応したのは酔っぱらっていたきくり姐さんだ。

 

 

「え? 大槻ちゃん?」

 

「……あっえっいやっ違います!」

 

「大槻、だと……?」

 

「……あ」

 

 ぐぎぎ……と俺の首が眼鏡っ子の方へと向く。

 すると、彼女もやっちまった感を出しながら俺を見ていた。それはもう冷や汗だらだらで。

 

 おいおい、嘘だろ。

 まさか……。

 

 

「なっ、やっちょ、近っ……!?」

 

 思わず眼鏡っ子に近づき両手でその眼鏡を取る。

 

 

「……………………………………………………………………………………おぉふ」

 

 いた。

 見知った人がいた。

 

 眼鏡の縁で分かりづらかったが確かに見覚えのある吊り目がちな瞳、普段よりも下で結んでいるツインテール、コミュ症特有のこれまでの態度。

 よくよく考えてみれば今までそれっぽい要素は確かにあった。まさかそんなはずはないと自分の中で選択肢を外していたのだ。

 

 つまり。

 

 

「ッ……そうです! 私が大槻ヨヨコ!」

 

「えっ誰!? 何で優人くんは四つん這いで倒れてんの!?」

 

 

 

 初対面だと思って丁寧に接していた人がおもっくそ知り合いだった時の気持ちを30字以内で述べよ。

 

 

 

 





ヨヨさんバレ。
このコミュ症、自称仲良い人の側からは基本離れないとこある。



では、今回高評価を入れてくださった

☆10:光るさん、神流しさん、vongolaさん

☆9:あきたいぬさん、25さん、Danchoさん、タスマニアさん、鬱エンドフラグ【旧名:無名永久空間】さん、Ryonganさん、モチモチこしあんさん、イキョウさん、完全無欠のボトル野郎さん

本当にありがとうございます!
ゆったり更新でも待ってくれてるの感謝しかない。



ぼざろイベント配信楽しかった。
新曲も楽しみだしライブも配信で見たいね。
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