再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
もうこの作品書き始めてから約半年経過したってマジ?
まだエタってない自分偉いッ! 偉いッ!
「私が大槻ヨヨコ。どう、これで分かった?」
「シデロスのギターボーカルの人だ……でも、何でここに?」
服装が違って眼鏡をしてるだけでヨヨさんだと分からなかった俺は申し訳なさと恥ずかしさで轟沈。
そんな俺の目を覆い隠すように後藤さんと喜多さんが両手で背後から二重のだーれだホールドをしてくる。その間に変装(?)から着替え終わったヨヨさんがいつもの衣装姿になっていた。
え、まさかトイレに行くとかじゃなくて俺が目隠しされてるすぐ近くで着替えてたの?
正気か?
「私の変装が完璧すぎて貴方も気付かなかったようね。……何で気付かないのよ」
「いや今までその衣装姿しか見てないのにそんな眼鏡っ子姿されると気付きませんて。真逆のタイプじゃんそれ。もしかして普段はああいう恰好なんですか?」
「そうだけど」
「……ほぉ?」
うん、良い。ナイスギャップ。
衣装が派手な分、私服は地味目ってのが素晴らしいですね。俺のストライクゾーンど真ん中ですわ。後藤さんのギャップには劣るけど。
勝手にふんふん頷いてると、俺の肩を誰かがとんとんと叩いた。
何だ何だよ何ですか。今ギャップ萌えを堪能してたっての──、
「やっぱり知り合いだったんだね、優人くん?」
「……………………………………………………………………………………あの、弁護士用意してもらっていいですか?」
「だーめ☆」
くぅ~ダメかぁ~~~☆
「ちゃんと説明しなさい」
「うぃっす……」
人は天使に勝てないのだった。
「とまあ、そんな感じでヨヨさんとは知り合いになったんです」
「初めてFOLT行った時にそんな事があったなんてねぇ」
最近は正座にも慣れてきて足が痺れることもなくなった。嬉しい事なのか悲しい事なのか俺には判断がつかない。
これがほんとの正座に慣れたらってね。
「だから優人君ライブ始まっても合流できなかったのね」
「そゆこと」
「大槻ちゃん私のライブでゆうきゅんナンパしてたの~? わーるいんだぁ~!」
「し、してませんよ!? 断じてそのような事はしてません! ほら清水優人っ、貴方も何か言いなさい!」
「逆ナンってこういう感じなんだって思いました」
「最初全力で逃げようとしてたくせによくそんなこと言えるわね!? あと知り合いじゃなくて友達でしょ!」
いやぁ、ちょっと慌ててるヨヨさんが面白くてつい。
てか訂正するとこそこなのね。どっちもそんな変わらんしょ。
「まあ大槻さんと知り合った経緯は大体分かったよ。でもね」
「はい?」
「やっぱりあたし達の言った通り女の子絡みでいなくなってたんだね?」
……あ、やっべ。
「あの時はただ謝罪ばかりではぐらかされたけど、推測は間違ってなかったようだよ喜多ちゃん。どうする? 優人くん、あたし達に噓ついてたんだって」
「え、いや、あの、虹夏さん? それには一応事情がありまして……」
「埋めますか」
「どこに!? 主語がないから余計怖いんだけど!? ご、とうさんは無理か……リョウさんヘルプ!」
「いくら?」
「冬休みの間三日分の昼食奢りで!」
「安い。一週間分」
マジかこいつ。
こいつマジか。
「ええい、じゃあそれで!」
「交渉成立。虹夏、郁代、今は優人の事は一旦置いといて問題はシデロスの方。何でここに来たのか聞かないといつまでたっても話が進まない」
「うっ……た、確かに……放置しとくのは失礼だよね」
「じゃあ優人君は後でですね」
おっとぉ? もしかしてこれ俺助かってなくない?
ちょっと延命しただけで根本的な解決には全然なってなくない? なくなくなーい?
「一週間分の昼食、ゲットだぜ」
「解決した訳じゃないから報酬はなしで」
「なん……だと……!?」
一時的なその場凌ぎで依頼成功したなどと、その気になっていた山田の姿はお笑いだったぜ。
「それはそうとぼっちちゃんは分かるけど、何で大槻さんも優人くんの隣にずっといるの?」
「友達だから」
「来たはいいけど完全アウェーだし人も多いから友達のこいつの隣にいればとりあえず安心するし安全よねって言ってます」
「ちょっと何翻訳してるのよ!」
「当たってるんだ……」
伊達に後藤さんの翻訳家してないんで。
左右に後藤さんヨヨさんと挟まれている状態だ。これじゃ両手に花ではなく両手にコミュ症である。なんも嬉しくねえ。
「とりあえず本題に入りましょう。ヨヨさん、何で今日スターリーに来たんですか」
多分結束バンドの空気感だといつまでたっても話が進みそうにないので俺からヨヨさんに振ることにした。
「そ、それは……」
俺の目を見て一瞬躊躇いを見せたヨヨさん。
しかしそれを見越してか先に反応を示したのは酔っぱらい怪人キクリンであった。
「え~、その感じだと大槻ちゃん、まだ私が結束バンドを誘ったの納得してない感じなのぉ?」
「……あー」
「そ、そうですっ!」
うん、やっぱりか。
基本的に人付き合いと慣れない場所が苦手なヨヨさんがわざわざここに来る時点で何か理由があるのは分かっていた。当然ポジティブではない方向でだ。
俺との関係はまあまあ良好というか普通に話せるくらいになったとしても、元々は結束バンドを敵対視していて特にきくり姐さん関連で後藤さんを快く思っていないのがヨヨさんである。
突然同じ日に結束バンドとステージに立つ事が分かって実力を確かめに来たのもあるのだろう。気に食わなければきくり姐さん本人に断りを入れるくらいに思っていたとしても不思議じゃない。
成長しているとはいえ実力はまだシデロスよりも劣っているのは自覚してるし、俺としては何とかヨヨさんを説得するくらいしかできないだろうから許してくれるとありがたいんだけど……どうなるか。
だから結束バンドのみんなと会わせるのもまだ早いとか俺と知り合いなのをまだ黙っておきたかったんだけどなあ。
「演奏レベルもまだまだ私達に並んですらないのに……あっ、この前動画で見た時よりは全然成長してるけど……それでも姐さん達のゲストを務めるほどの力に達してないのは分かりますっ。……いや、まあ絶対ダメとかではないんですけど……」
何できくり姐さんより隣にいる俺の方をチラチラ見るたびに優しめな訂正が入るんだろう。
そして何で後藤さんは無言のまま俺の腕をずっと掴んでるんだろう。湯たんぽ代わりはもういいって言ったよね。あ、言ってないか。心の中で言っただけだったわ。
それにしても、やはり語気は強くても根本的な優しさを隠し切れてないのがまたヨヨさんらしい。
似たような憎まれ口を叩かれようともあの女よりは何億倍もマシだな。むしろちょっと可愛げがあるくらいだ。反抗期のチワワだと思えば愛おしくなってくるレベル。
「う~ん、酔った勢いとはいえ私も結構考えてるけどな~」
ほんとかよ。
さっき何故か送信履歴に入ってたって言ってたじゃねえか。
「それとも何? 大槻ちゃんは私の目が節穴だって言いたいの?」
「そういう意味じゃ……うぅ……」
「ストップきくり姐さん。何か見てられないんでからかうのはやめてあげてください」
ヨヨさん耐えられなくて俺の背中に隠れたじゃん。しかもそのせいで後藤さんパーソナルスペースにちょっと侵入されてめっちゃ慌ててるじゃん。トウバンジャン。
確かにあんだけふざけてたくせにいきなりグルグル目のままあんなこと言われたら怖いよね。酔っぱらいだから突然何しでかすかも分かんないもんね。
「ありゃりゃ~大槻ちゃん真面目で可愛いからついね~!」
「それはまあ、分からなくもないですけど」
うん、俺も少し分かる。
いや、めっっっっっっちゃ分かる。
「~~~っ! も、もう今日は帰りますっ!」
「おっと」
バッと背中に隠れていたヨヨさんが勢いよく飛び出した。
「結束バンド! 特に後藤ひとり! ってちょっ、貴方そんな近い距離でずっとくっついてたの!?」
ああ、俺を挟んでたから見えてなかったのね。
「何で貴方も少しは強引に振り解かないのよ!」
「まあこれが日常なんで」
「慣れすぎてる……!?」
慣れって怖いっすよね。
ワイトもそう思います。
「と、とにかくっ……私と姉さんのライブを台無しにするのだけは許さな……台無しにしないように頑張る事ね!」
捨て台詞優しいなおい。
だいぶ緩和されてたぞ今の。素でツンデレっちゃうのほんと才能あると思います。店長とヨヨさんでツンデレ二大巨頭できちゃうね。
そんなツンデレヨヨさんは急いで帰り支度を済まして出口の方へ向かっていった。
そのまま帰るかと思いきや、彼女は最後の最後でこちらに振り向き、
「あっ、それと清水優人! たまには私からじゃなくて貴方からもロインか通話かけてきなさいよ! 私ばっかりじゃ不公平でしょ! 忘れたら承知しないわよ!」
最後にはた迷惑な台詞を吐いてツインテールコミュ症はスターリーから出ていった。
捨て台詞としては完璧な置き土産だったな。さて、どうしたものか。
「いや、まあほら、友達と毎日ロインするくらいは別に普通でしょ。なっ、後藤さん?」
「わ、私は毎日直接話してるから別に何も……」
誰に対してのマウントだよ。
「いやぁ~大槻ちゃんに怒られたくないから適当な事言っちゃった! みんな頑張ってね☆」
「廣井さんのせいでプレッシャーが凄い事に……」
そして虹夏さん達は虹夏さん達でライブの事で頭がいっぱいいっぱいな様子だった。
よかった、また何か問い詰められそうと思って身構えてたけどどうやらお咎めはないらしい。そうだよね、異性といっても友達とロインしてるだけだからね。何もおかしい事なんてないんだ。俺の勝ち!
「とはいえ明確な目標は決まったんですし、まずはクリスマスイブのライブまで詰められる部分は詰めていきましょう。さっきヨヨさんも言ってた通り成長はしてるんですからまだまだ改善できる箇所はあるはずです」
「……うん、そうだねっ。お互い意見出し合って良い所と悪い所を確かめていこう! 喜多ちゃんもぼっちちゃんも臆せずどんどん言いたい事は言ってきてね!」
「はいっ! 当日までにやれる事は全部やっていきましょう!」
「あっはい」
よし、最初はどうなる事かと思っていたが結果的に良い方向に風向きが向いたな。
あのぽいずん系女のせいで変に警戒しすぎてたようだ。ええい、俺の頭の中から消えろ反町隆史ィ!! じゃないぽいずん♡やみィ!!
「とりあえず今日はライブ終わりだしもう解散にしよっか。明日また練習しながら完成度高めていこうっ」
「分かりました。じゃあ片づけも終わったんで俺達はこのまま帰りますね。おつか」
「あとは優人君をどこに埋めるかですねっ!」
「行くぞ後藤さん今こそ人間離れできる俺達の馬力を発揮する時だッ!! 俺に力をくれツインターボ! うおおおおおおおエンジン全開大噴射ァッ!!」
「えっあっびゃッッッ!?」
「ほんとに人間離れした速さで逃げてった!?」
「ぼっちの残像がまだここに残ってるくらいの速さだった」
「……まあ明日もどうせ会いますしね」
────
12月24日。
クリスマスイブ。
新宿FOLT、SICK HACKワンマンライブ当日。
やあみんな、土の中って割かし温度は変わりにくいんだぜ。あれが地中熱ってやつだったんだな。
とまあそんなどうでもいい事はさておき。
バイトと練習を重ねていると日にちが進むのも早く、気付いたら学校は冬休みに入っていた。
世間はすっかりクリスマスムードに浮かれ、街中では至る所にイルミネーションが飾られている。外を歩いてるだけで不思議と定番のクリスマスソングが聞こえてくるほどだ。
さて、世間がそんな浮かれモードの最中、我々清水優人と結束バンドの面々は外界のぽやぽやしたオーラに充てられる事もなくライブハウス、新宿FOLTで絶賛リハーサル中であった。
リア充爆発してくんねえかなぁ。
リハーサルを見ているとつくづく思う。
同じライブハウスといっても会場内の構造は当然ながら全くの別物。だからスターリーでいつもやっているようなリハでは音の聞こえ方や反響の仕方も全然違ってくるのだ。
つまり細かい調整が普段よりも必要となってくる。
普段通りでは意味がない。せっかく演奏レベルが上がっていても客への聞こえ方が悪ければ印象は下がっていくだけなのだ。
だから演奏している本人含め、一番結束バンドの音を聴いている俺も聴く側としてリハに参加させてもらっている。
一人ずつ楽器を鳴らし音を聴いて相談しつつ新宿FOLTのPAさんと話しあったり細かい部分を決めていく。
「ふぅ、あたしはこんなもんかな」
「ひとまず個人リハお疲れ様です」
「ありがとね。優人くんが聴き手してくれるからこっちもありがたいよ」
「結束バンドの一番良い音を知ってるのは虹夏さん達に次いで俺ですからね。そこに妥協は一切しませんよ」
虹夏さんにタオルを手渡して周辺を見る。
リョウさんは終わったし次は後藤さんだが、不意に虹夏さんが俺の肩をトントンと叩いた。
「ねえ、あれ何」
虹夏さんが指差したのはステージの下の隅に置いてあるどでかい段ボールの塊だった。
「ああ、後藤さんの完熟マンゴーフルドライブガンダムの残骸です」
「完熟マンゴー進化してる! 何であんなの置いてあんの!?」
「進化した後藤ひとりを見せるんだってさっき着てましたよ」
「防護力上がっただけじゃん! ……ん? 着てましたって、何で過去形? いやぼっちちゃんステージにいるから着てないのは分かるけど」
「着てたのを俺がボッコボコに剥いで撃墜したからです」
「どうりで完熟マンゴーフルドライブガンダムがベコベコになっちゃってる訳だ……」
そもそもあんなくそでかい段ボールをどうやって持ってきたのかという疑問になるかと思うが話は簡単。
でっかい袋に段ボールを重ねて入れ、会場に着いてから順序通りに組み立てるとあら不思議、完熟マンゴーフルドライブガンダムの出来上がりである。
「あんなの作ってる暇あったならもっと練習しててほしかったよ……」
「あれ作ったの直樹さん、後藤さんの父親ですよ」
「お父さん暇なの!? てかそれを容赦なくボコボコにしたの優人くん!?」
「さすがに目の前で壊すのは申し訳なくてしなかったですよ? なのでここで着たのを見計らってから遠慮なくぶっ壊しました」
「配慮があるのかないのかよく分かんないよそれ」
俺も分からん。家で勝手に着るならいいけどここで着るのは論外だ。
せっかくの場を荒らすのは言語道断である。よって容赦なしと判断した。直樹さん、娘に甘くしすぎるのはダメですよ。俺がそうはさせません。
俺が完熟マンゴーフルドライブガンダムをぶっ壊したおかげで後藤さんのリハはつつがなく終了。
喜多さんのリハは……違うライブハウスと面子のせいで緊張しているのかむせる事もあったが何とか無事に終えた。
個人のリハが終われば次は当然全体のリハとなる。
しかし音の確認も終わっているので自分達の気になるところだけ再確認程度に流すといった感じだ。
「じゃあ2曲目のサビだけやろう!」
「はい!」
……うーん、何か全体的に演奏が走ってるな。
みんな喜多さんほど顔には出さないもののさすがに会場が違うと緊張もしてくるか。まあ今までとは勝手も違うし無理もない。本番でどこまで修正しつつ力を発揮できるかだな。
さっき見たSICK HACKとシデロスのリハ凄かったもんなあ。シデロスなんてまだ新メンバー入れて間もないのに完成度が桁違いだった。
あんな人達と同じステージでやるんだからそりゃ焦る気持ちも分かる。こっちが成長しているという事は、あちらも日数を経るたび練習を重ねて上達していっている訳だ。溝なんてそう簡単に埋まるものではない。
「ん……?」
ふとフロアの隅に視界をやると、ヨヨさんがエナジードリンクを片手に険しい表情でステージを見ていた。
あの演奏は緊張でちょっと走ってるだけなんで、本番ではもっと上手くやるんで……なんて言い訳をしに行こうものなら何を言われるかなんて大体想像がつく。
向こうはリハでも高い完成度だったのだ。リハだから下手な演奏をしていい理由がない以上、こちらに弁明の余地なんてないに等しい。
ロインでは結構ツンケンしながらもアドバイス的な事を遠回しに言ってくれたりもしてたから、そんなに邪険にされてる訳でもなさそうだけど。
つか何で今エナジードリンクなんて飲んでんだあの人。
あれデッドブルじゃん。翼を授けるやつじゃん。今飲む必要ある? 単に好きなだけ? ヨヨさんの事まだまだ知らないとこだらけだな。知りたいかどうかでいえば別にそんなだが。
デッドブルを一口飲んだヨヨさんはそのまま楽屋の方へと歩いて行った。
おそらく次に彼女と話す時はツン要素多めだろうな、と思う俺であった。
や、むしろデレ要素が最初の時なんてなかったか。
毎回一話書き終わってから「あれ、今回ぼっち喋ったっけ?」ってなるくらいにはぼっちちゃん普段どんだけ心の中でしか話してないんだよって思ってる。
マジで一言しか喋ってない時とかありそう。
では、今回高評価を入れてくださった
☆10:9819さん、ポンの助さん、バハトさん、いぐぁさん、蒼天桜猫さん
☆9:Rukinaさん、タスマニアさん、umrat_tawilさん、ハゲすぅさん、小型ハサミさん、モチモチこしあんさん、イキョウさん、Esuty3510さん、完全無欠のボトル野郎さん
本当にありがとうございます!
おかげでエタらずに済んでおりますえ!
GWで日曜の夜まで家にいないから執筆できません。
なので次話は来週確定だよ! というか最近は忙しくて週一更新が普通になりつつあるぜ!