再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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結束バンドLIVE恒星、最高だったな……。




75.プレゼント渡された時の反応って意外と難しい

 

 

 

「そういやライブどうだったんだ?」

 

 結局光と闇のテーブル離しておく理由なくねって話になり二つのテーブルをくっつける事になった。

 光と闇が合わさり最強に見える……。普通にテーブル離してたら話しにくいからってだけなんすけどね。

 

 ライブに来てなかった店長がポテトをひと摘まみしながら聞いてきた。

 

 

「ライブはね~、みんな大盛り上がりでモッシュにダイブにサークルまでできてね!」

 

「おぉ、すげえじゃん」

 

「ライブ終了後には10分間のスタンディングオベーション……なんて事もなくふつーにアウェーでした……」

 

「モッシュの時点でだろうなとは思ってた」

 

 さすが店長、妹の嘘に気付くなんて姉してるだけあるじゃん。

 そもそも結束バンドにモッシュやダイブするような曲とかないからな。曲はみんないいけど。

 

 ちなみに俺の右隣でビクッと反応したのはヨヨさんだ。

 なくなったポテトの代わりにチキンナゲットに手を伸ばそうとしてたところで動きが止まった。そしてそのナゲットを気付かずに後藤さんが手に取って美味しそうに頬張った。おい何個目だそれ、後藤さんの分のディップ用ケチャップもうねえじゃねえか。

 

 

「まあ初めての箱じゃそんなもんだよ」

 

「そ、そう!」

 

 仕方なく俺の分のケチャップを後藤さんにあげていると、ここぞとばかりにヨヨさんが立ち上がる。

 

 

「演奏の出来と客の盛り上がりは関係ないから! その日のライブの空気なんて色んな要素が関係するしそりゃそれをひっくり返せるくらいのライブをするのが一番なんだけどそれに緊張して気付いてなかったかもしれないけど後ろの方ではノッてる人も結構いたし足だけリズム刻んで見てた人もいたからあながち完全アウェーだった訳でもないしむしろあの状況で良い演奏しつつ何人かの心も掴んでたから悪い結果には」

 

「一言で要約すると結束バンドで盛り上がってた人もちゃんといるから気にすんなって言ってます」

 

「全部持ってくんじゃないわよ!? 合ってるけど!!」

 

 いやだって長いんだもんあなたのツンデレ。

 上手くいくと言った手前気まずかったんだろうが、後方で撮影してた俺も見てた限りノッてる人がいたのは確認したし本当にあんま気にする事はないと思う。案外演者の見えてないとこで自分なりに楽しんでる人もいるのだと今回のライブで分かったのは収穫かもしれない。

 

 手を上げて体を揺らすのだけが楽しい訳じゃないのだ。

 ある者は足でリズムを刻みながら、ある者は腕を組み軽く首を振りながら、ある者はただ集中して目に焼き付けながら、ある者は一定のリズムを鼻歌にして口ずさみながら、ある者は目を閉じて耳に意識を集中させながらなど。

 

 楽しみ方は人それぞれ。

 それがライブなのだと、ゲストという立場であのステージを後ろから撮影して改めて感じたのだった。ステージ上からだけでは見えない、演者のサポート役だからこその客観視で得られた情報だ。少なくとも俺は手応えあったと思う。

 

 

「でも本当に感謝しかないから! 今の結束バンドが絶対出られないような場所でさせてもらったし、大人数の前でのライブの経験も積めたからあとは曲数増やしてたくさん練習するだけだね!」

 

「ですね!」

 

「曲数、か」

 

 チラリと左隣を見る。曲作りはどうなっているのかという目線を送ってみると。

 そもそも話を聞いてないのか、後藤さんはお気に召したらしいナゲットをまた頬張っている。……揚げたチキンなら何でもいいのかこのから揚げ好きは。

 

 

「ケチャップジャージにちょっと付いてんじゃねえか。一回に付けすぎなんだって。今拭くから動くなよ」

 

「あっうん……」

 

 ピンクジャージの裾に付着していたケチャップをコップの水で濡らしたティッシュで軽く押さえながら拭き取る。

 本当なら台所用中性洗剤などを使うと良いらしいが、あれは服も色落ちしてしまう事があるため今回はなし。ちなみにケチャップは水溶性なので水に流した後でティッシュで水気を拭き取ると結構綺麗に取れたりするのだ。何この無駄な豆知識。

 

 

「まあこんなもんか。シミになったら美智代さんに迷惑かかるんだからな。気を付けて食べるんだぞ」

 

「う、うん、ありがと……へへっ」

 

 このアホピンク……性懲りもなくまたナゲットに手を伸ばしてやがる。

 まあいいか。今日はクリスマスイブだし少しくらいは大目に見てやろう。ダメ主人に仕えるメイドか俺は。いや性別的に執事か。

 

 と、こんなどうでもいい事をしている間にも虹夏さん達の方では会話が進んでいる。

 

 

「そうそう。未確認ライオットっていうフェスに出ようと思ってて。この前ライターさんが来たんだけどさ……その……」

 

 フェスに出る経緯を虹夏さんが話している途中だったらしい。

 ともすればあの女の話は必要不可欠で、むしろそれがきっかけだから話さない訳にもいかなかったのか、虹夏さんは事の顛末を大体話した。結束バンドや俺への指摘の言葉も含めて。というかあの時の会話結構覚えてるんすね虹夏さん。もしかしてちょっと根に持ってません? 

 

 俺はもうそんなに根には持っていない。思うところはあるしあの毒女の事は好きでも何でもないが、言っていた事は概ね合っていた。

 だからもっと成長するための努力をしようとみんなで決意もした。きっかけは不本意でも、あの女の言葉のおかげでバンドとしての上を目指す理由ができたのは事実なのだ。まあ腹は立つけど。

 

 

「何すかそれ。失礼な話ですね~」

 

「うーん、でも図星な部分もあったし、あたし達もあの時はまだちゃんと上を目指すための覚悟ができてなかったのは本当だったしね。だから今こうして練習も頑張ってフェスにも出ようって決められたから、結果的には良い方向に向かってると思ってるよ」

 

 見事に虹夏さんが俺の気持ちを代弁してくれた。さすがっす。

 いい加減一人でナゲット全部食いそうな後藤さんから一つ奪ってケチャップに付けて頬張る。うん、美味い。

 

 やっぱジャンクフードって神だわと思いながらもぐもぐしていると、隣のヨヨさんの様子がおかしい事に気付いた。

 いや、大人しいというか黙ってるのはいつもの事なんだけど、何だか少し不機嫌ぽく見える。ナゲットそんなに食ってなかったのにもうなくなりそうだから拗ねてるのか? 可愛いとこあんじゃん。

 

 

「……そのライターの名前、教えなさい」

 

「…………はい?」

 

「貴方達に対してそんなふざけた事を言った女の名前を教えろって言ってるの。SNSに晒してまともに活動できなくしてやるわ」

 

「アンタならほんとにやりかねんしちょっと影響力あるからやめて」

 

 全然違った。可愛いとこよりアホなとこあったわ。

 何で俺らよりヨヨさんの方が怒ってんのさ。あれか、きくり姐さんが認めてるバンド(ヨヨさんが認めてるかどうかはさておき)を侮辱するヤツは許せんみたいな感じか。何もここでツンデレ発動せんでもいいのに。

 

 

「いくら正論だからって言い方ってのがあるでしょ」

 

「ヨヨさんが言いますか」

 

「聞いてる限りだとその人の言動は度が過ぎてる。姐さんが気に入ってるバンドに頑張ってない人達なんていない。そんな何もない人達の演奏じゃ姐さんには響かないんだから。見る目のないライターが言うような事なんて何一つ気にしなくていいわ。どうせ普段からくだらない批評記事しか書いてない輩でしょ。ああいうのは一度くらい痛い目見ないと改心しないわよ」

 

「ツンデレっつうかツンドラ要素しかない発言なんだけど。トゥイッターフォロワー数1万人の人が晒すと割と普通に拡散されてマジで終わるかもしれねえからやめてくれよ。そんな復讐紛いなこと望んでる訳じゃないから」

 

 幕張イベントホール分の拡散力とか怖すぎるわ。

 大丈夫かこの人。いつかトゥイッター炎上しそうで心配になってきたんだが。変な輩にリプで絡まれてクソリプ合戦という名のレスバしてそう。けどヨヨさんレスバ弱いからなぁ。

 

 

「貴方だって失礼なこと言われたんでしょ。悔しくないの!」

 

「え、まあ、みんながあんなこと言われたし、悔しいよそりゃ」

 

「だったらなん」

 

「だからこそそんな陰湿な仕返しは望んでないんだ」

 

「い、陰湿……!?」

 

 あ、余計なダメージ入れちまったかもしれん。

 一気にしおらしくなっちゃった。ヨヨさん負けず嫌いなのに打たれ弱いとこもあるからどこが急所なのかよく分からん。

 

 

「あいつを見返すために結束バンドの音楽で結果を出す。みんなでそう決めたんだよ。俺の必要性は結果の副産物でいい。みんなが少しでもバンド活動に専念できるようサポートするのが俺の役目だからな。自分のやる事はそれ以上でもそれ以下でもないんだ」

 

「(……やっぱり欲しくなってきたわね)」

 

「?」

 

 なんか小さく呟いてるせいで聞こえない。これは別に俺が難聴系主人公だからという訳でもなく、マジで隣にいるのにボソボソ言ってるから聞こえないだけだ。

 コミュ症特有のボソボソ声ってほんと何言ってるか分かんない。後藤さんはまだスキンシップで伝えてくるからまだ何となく分かる方だけど。

 

 

「……まあ、貴方が望んでないならいいけど。ふんっ」

 

「お、おう……?」

 

 よく分からんけど収まってくれたのならありがたい。

 ヨヨさんもヨヨさんで暴走したらどうなるか分からないもの。

 

 何はともあれ不穏なムードから平和なクリスマス会に戻って良かっ、

 

 

「あ~~~~!! やっぱここにいらぁ~! わらしずっとひとりでまってたんらよ~!!」

 

「チィッ! 閉店の看板出して関係者以外(酔っ払いも)立ち入り禁止って書いたのに普通に入ってきやがったか!? 店長対策失敗です! 俺達の平和な誕生日会が潰されますよ!?」

 

「諦めろ優人。ヤツが来た時点でもう手遅れだ」

 

 なん……だと……。

 来ただけで全てを終わらせられるのかきくり姐さんは。それなんてシャンクス。

 

 

「バレちまったならもういいか。つうかお前はSICK HACKのみんなともう飲んでるかと思ってたわ」

 

「あ~イライザはどうじんし? の締切があるんだって~」

 

 なんと。イライザさん結構切羽詰まってたのか。

 ちょくちょくロインでアニメについて語り合ったり同人活動してたのは知ってたけど、そういや冬コミに当選して同人誌出すって言ってたな。良かったら来てネ~とか言われたし、年末はさすがにバンド活動も休みになるから一人で行ってみるか。

 

 

「んで志麻はなんかドラムぶっ叩きまくってて荒れてたよ~! ライブ後は毎回こうなるから手がつけられないんだよね~。けど私がいたおかげでドラム上手くなったんだな~」

 

「全部お前のせいだって自覚はないのか。ないよな」

 

 店長ほんとに諦めてる反応だな。確かにこの酔っ払いには何も効きそうにない。

 強いて効くなら酒没収ぐらいか。……いやそうしたらしたで暴れそうだな。

 

 

「さすが姐さんね」

 

「絶対ああいうとこは見習わないでくださいよヨヨさん。厄介がクソ厄介になるんで」

 

「何が厄介よ!」

 

 だからそういうとこだって。

 隣からヨヨさんにチクチク言われ続けるのを適当に流していると、いつの間にかどっか行っていた虹夏さんと喜多さんが戻ってきて、

 

 

「え~ではそろそろ店長と21日に誕生日だった優人くんへの誕生日プレゼントお渡しタイムに移りま~す! シデロスのみんなは急だったから気にしないでね~!」

 

「何もそこまでしなくてもいいのに」

 

「同感です」

 

 男子高生が同年代の女子達からプレゼント貰うって結構むず痒いんですが。店長にあげるだけじゃダメなんですかね。

 そして両隣から驚愕の視線をいきなりぶつけられたんですけど。

 

 ヨヨさんからはこの前誕生日だったの!? 何で前もって言ってこなかったの!? みたいな視線を送られてきた。言う必要ないしそもそもこのクリスマス会始まった最初に虹夏さんが言ってたでしょうが。

 そんで後藤さんからは店長のプレゼント買うの忘れてたんだけどどうしよう助けてゆうくん!? って視線が送られてきた。やっぱ何も覚えてなかったなこいつ。それは忘れてた君が全面的に悪いです、以上。

 

 

「まずは喜多ちゃん!」

 

「私からはこれです! 店長にはハーバリウムとお花のリップです!」

 

「おお、ありがとう……」

 

 さすが喜多さん、いかにも女子って感じのプレゼントだ。

 実用的なリップに可愛いインテリアのハーバリウムとは、プレゼントの手慣れてる感が凄い。これが陽キャか。

 

 

「優人君にはこれねっ」

 

「これは……ブレスレット?」

 

「そう! 優人君って普段あんまりアクセサリーとか付けないから、これを機に付けてみるとかどうかなって! 好きなデザインと文字を入れられるやつをネットで買ったから文字もちゃんと入ってるわよ!」

 

 赤を基調として所々ピンクと黄色と青の縦線が入ったブレスレット。結束バンドのそれぞれをイメージしたカラーになってるのか。

 それで肝心の文字は、『結束バンド』と白く書かれていた。……うーん、オシャレ……なのか? やべえ、分かんねえ。けど一応文字を裏側にしても使えるっぽいし、普段使いならそっちでいいかな、多分。

 

 

「これでメンバーじゃなくても優人君が結束バンドの大事な一員って証になるわね!」

 

「……ありがとな、喜多さん」

 

 裏側にするのはもうちょっと後でいいか。

 しばらくはそのままにして付けてみよう。せっかく貰ったんだし厚意には甘えておこうかな。

 

 

「じゃあ次はリョウ!」

 

「プレゼントって値段じゃなくて大切なのは気持ちですよね」

 

「それあげる側が言う台詞じゃなくない?」

 

 絶対用意してないじゃん。いや容易に想像はできたけど。

 

 

「用意してくる」

 

 そう言ってリョウさんは飛び出ていった。

 さっきあんなに寒がってたのに自ら外に行くとは、その意気だけは認めてやろう。つうか買いに行くとしてもそもそもお金持ってないはずだよな。何しにいったんだ? 

 

 

「戻ってくるまでまだ時間ありそうだし、次の人にプレゼント渡してもらおうかな」

 

「はいは~い! じゃあ私が渡しま~す!」

 

「「嫌な予感しかしねえ」」

 

 きくり姐さんの言葉に店長とハモッた。

 や、まあ、ね……。そうなるでしょ。

 

 と、危惧していたのも束の間、

 

 

「私は~なんと肉と現金れす!」

 

「姐さんどこから盗んできたんですか!」

 

「真っ先にその可能性に至るのおかしいでしょ」

 

 ツッコミはごもっともだが普段がアレなので擁護できねえ。

 

 

「肉と現金が当たるポイントシール10点分ですよ~! 先輩とゆうきゅん二人で協力して残り10点分これ買ってね」

 

 しかも一人一つじゃなくて店長と協力制かよ。どっちか当たったとしても報酬は半分ずつなのね。

 まあ、きくり姐さんにしては珍しくまともなプレゼント……になるのか。大事なのは気持ちだもんな。

 

 

「……ありがとな」

 

「きくり姐さん、ありがとうございます」

 

 店長が紙を受け取る。残り10点分は自腹だが、ちょっとした夢を見る気分で楽しむのも悪くはないか。

 そして、スマホでそのサイトを確認していたきくり姐さんが言った。

 

 

「あ、これ期限すぎてるわ」

 

「ゴミ」

 

「カス」

 

 流れるように店長が即座に紙を破り、俺がそれを受け取ってゴミ箱へダストシュートのコンボ。

 一瞬で感謝の気持ちはゴミ処理場へと消え去った。

 

 

 

 






話の区切り的に今回はここまで。
プレゼントお渡し回は次回も続く。

他のメンバーカラーも入ってるとはいえ赤色がメインのブレスレットを渡す喜多ちゃんって。


では、今回高評価を入れてくださった

☆10:紅蓮大地さん、Rodríguezさん、ザラメ雪さん、斜陰さん

☆9:チゲさん、愛と勇気だけが友達ださん、モチモチこしあんさん、よこやたさん、イキョウさん、タスマニアさん、小型ハサミさん、完全無欠のボトル野郎さん

☆8:ユウ・十六夜さん

本当にありがとうございます!
最近海外の人が翻訳アプリ使って読んでるよってTwitterで応援リプとかイラスト送ってきてくれて驚きと共に感謝でいっぱいです。……ちゃんと翻訳できるもんなのかこの作品。
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