再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
まさかの主人公と山田家の両親三人きりの会話がほとんどという異質な回になりました。
「はっはっはっは! いやぁ、ごめんね。娘が男友達を連れてくるなんて初めてなものだったからつい気になっちゃって。まさか
「そうですよね~! 自分もビックリして思わず本気でツッコんじゃいましたよ~! リョウさんのマイペース振りにはいつも振り回されてるからほんともう大変で大変で!」
「けどそういうリョウちゃんも可愛いのよね~!」
「「「はっはっはっは!」」」
さて、この地獄空間からどうやって脱出しようものか。
多分向こうはそんな気全然ないと思うが、謎の圧が凄い。とにかくもう、何か凄い。手汗が止まらない。まるで雰囲気の明るい圧迫面接をさせられてる気分だ。
寒いからという理由でこのくそでかいリビングに招かれたはいいが、笑い声が響いているのは俺とリョウさんのご両親三人だけである。
あの後、比較的信用度の高い虹夏さんがフォローに入ってくれて誤解はすぐに解けたけど、元々俺達がここに来た理由は作曲担当山田の様子を見に来たというもの。
様子というのは調子や進捗も含まれていて、それをリョウさん一人に押し付けてしまっていたのではないかと心配した虹夏さんを思っての事でもある。
当然、遠出の旅に出ようとしていた時点でリョウさんがスランプというのはみんな見抜いていた。何せ無断で学校とバイトを休むほどだ。というか学校ならまだしもバイトも休むとか命が惜しくないのかと思う。店長に殺されるぞ。
とまあ、そこで結束バンドの結束バンドたる所以の協力プレイが始まった。
困っている仲間を協力して助けようと三人が立ち上がったのだ。あ、後藤さんもちゃんと自ら立ち上がったから。あの子友人のためにならそういうのできるタイプだから。寿命を削るリスクはあるけど。
リョウさん曰く、山田家の親御さんは随分と彼女を溺愛しているらしく、何かと干渉してくる節があるとの事。
そんな過干渉気味の両親がバンドメンバー達を招いて愛娘が部屋で何かをしていれば、必ず侵入してくるに違いないと判断。ただでさえスランプなのに親が来れば事態は悪化してしまうと小声で話し合った結果。
バンドメンバーじゃないわたくし清水優人がご両親の
はっはっは、面白いねまったく。誤解は解けたが黒一点という事でまた変な解釈されるリスクがあるとか考えない浅はかな選出ですな。あとで覚えとけよ山田。
そんな訳で俺は山田パパと山田ママとの三人で楽しくお喋りなうなのだ。
嘘である。いつボロを出してしまうか分からない焦り、向こうから関係性の深堀りをされる事で墓穴を掘ってしまわないかという恐怖の中での極限の会話。いったいこれのどこが楽しいのか。さっきから永遠にリョウさんエピソード聞かされてるだけだぞ。軽い洗脳か?
「ところで清水君、君には悪い事をしたね。虹夏ちゃんのおかげで勘違いだと分かったから良かったけど、もしリョウの恋人だなんて関係になっていたら正気を保っていられたか分からなかったよ」
「ははは、滅相もないですよ。リョウさんと俺が恋人だなんてそんな事ある訳ないじゃないですか」
「それはうちの娘に魅力がないと言いたいのかい?」
「あの美人聡明パーフェクトリョウさんに俺なんかが釣り合う訳ないってだけですお願いだから眼鏡を不穏に光らせないでください人体実験しないでください産まれてきてごめんなさい」
もう全力土下座である。
生きて帰るためなら己のプライドなんか全部捨ててやる所存だ。眼鏡の奥の瞳が見えなくなるのマジで怖い。直樹さんが恋しい。やっぱ後藤家の皆さんが一番の癒しなんだなって。ふーちゃんに会って何も考えないままじゃれあいて~(健全な意味で)
「もうっ、そうやって冗談言ってリョウちゃんの友達を困らせたらダメよパパ。清水君も真に受けて土下座なんかしなくていいからね~。にしてもどうして高校生なのにそんな立派な土下座ができるのかしら~?」
「清水君顔を上げて! ご、ごめんよ! 娘の男友達と打ち解けるにはどうすればいいかまだよく分かってなくてっ。ああどうしよう、こんな事させたなんてリョウに知られたらまた部屋にいる時間が長くなってしまう!」
「え、は、はい」
冗談だったのアレ。全然そうには見えなかったんだけど……演技派なのかな?
あと土下座に関しては慣れです。主に店長に技掛けられる前にいつもやってるので。まあ最近は問答無用でやられるけど。もはやどうすれば許してくれるのか分からない。
山田ママの助力もあって俺は再び高級そうなソファに座る。
そして山田パパが咳払いを一つ。
「こほん……えー、清水君」
「な、何でしょうか」
「君は娘がやってるバンドのサポート役としてあの子達を支えている、という認識で合っているよね?」
「まあ、はい。虹夏さんが説明してくれた通りですね」
娘の友達の中に男がいるのは想定外だったのか、やはりあちらも距離感を測りかねていたという事なんだろう。
認識のすり合わせをして改めて俺の立場を再確認したいのかもしれない。よし、俺も娘にとって無害の男だという事を証明しなければ。
「なら娘に変な虫が付かないように護衛もしてくれているという事かい?」
「あの人良いのは見た目だけなんでそういうのは大丈夫だと思いますよ」
「え?」
「ふざけた男が寄り付かないようにいつも俺が見守っています」
危ない危ない、思わず本音が出てしまった。気を付けないと。
ふむ、だけど実際ライブを見に来る人の中には男性もいるが、今まで言い寄られた事は一度もないな。ただ単にスターリーに来る人達の民度が良いだけだと思うけど、謎の力でも働いてるんだろうか。何か知らんがきらら空間的な感じするもんね。
「あの子はみんなに迷惑とか掛けていないかい?」
「7割くらい迷惑被ってますね、主に借金の面で俺が」
「え?」
「作曲やライブではいつも頼りになってます。掛け替えのない人ですよリョウさんは」
何で勝手に口が滑るんだろう。聞かれた事について体良く答えようとしてるだけなのに心が脊髄反射で本音を先に出してしまう。
正直者すぎるのも考え物ですな、がっはっは!
「そうか、それは良かったよ。話を聞いてる限り清水君は信用していい男子だという事も分かった。心配は吹っ飛んだよ」
「虹夏ちゃんが最初にそう言ってたんだから当たり前でしょ~。私は最初から分かってたもの。リョウちゃんのお友達はみんな良い子だって事くらい。だってリョウちゃんが良い子だからね~!」
虹夏さんの信用度高いな。あとリョウさんを過信しすぎじゃないかこのお二人。
周りが良い人ばかりなのは否定しないけどリョウさん自体は普通にクズですよ。だって店長にもそう言われてたもの。
ところで上の階に行ったみんなは今どうしてんのかな。後藤さんとか上手くやれてるだろうか。
スランプの原因は何となく分かるけど、それを解消できるのはバンドメンバーの後藤さん達だけだから何とか頑張ってほしい。俺は俺で一つ年上の女友達の親御さんに初対面三人きりで話すとかいう気まずさMAXで頑張ってるんだから。むしろ問題解決しないと俺が囮になった意味ないからね。
「ねえねえ清水君、ちょっと聞いてもいいかしら~?」
「あ、はい」
「女の子の友達は虹夏ちゃんや他のバンドの子がいるから良いんだけど、男の子の友達は清水君しかいないのよね?」
「あー、多分いないと思いますよ。基本学校でも虹夏さんと二人でいるみたいですし、男子よりも女子からの方が人気あるっぽいです」
「あら~そうなのね~。さすがリョウちゃんだわ~! あの子の魅力は同性をも虜にしてしまうのよねぇ!」
それは過言……とも言えないのがリョウさんの不思議なとこである。
実際喜多さんは最初リョウさん目当てでバンド入ってたしな。今は後藤さんへの憧れの方が少し大きめにも見えるが、今日だってリョウさんがいなくて落ち込んでいたのは紛れもない事実。まったく、異性ながら女子からモテるのは普通に羨ましい限りだ。俺もあんな美形だったらいいのに。
「じゃあ~、この際聞いちゃおうかな~。清水君から見てリョウちゃんって魅力的なのかしら? どうして男の子なのにリョウちゃんを見て平然としてられるのかな? 貴重な機会だから同年代の男の子の意見も聞いてみたいのよね~」
「確かにそれは気になるね。清水君は信用できるけど、逆にいつも娘と近くにいるのにあんな平常でいられるのも凄い事だ」
それは単にお二人が親バカなだけでは?
「さあ清水君、君から見てうちの娘は魅力的かい? そして何故娘といて平気でいられるのかな。自分ならすぐにでもカメラを用意して写真に収めるというのに! よっぽど女性に対して耐性がないと説明がつかないよ!」
ほんとに医者かこの人。娘を世界的美女とでも思ってるんじゃないだろうな。
いや父親なら自分の娘をそう思ってしまうのも無理はないのか? それにしても度が過ぎてるとも思うが。
で、何だっけ。
俺から見てリョウさんが魅力的かそうじゃないかだっけ。なるほど、難しい質問をぶつけてきたな。
まず俺からリョウさんへの印象はクズ、借金、ベーシスト、草、甲斐性なし、作曲者、クズ辺りか。
……大変だ。褒められるとこが2割くらいしかねえ。しかもどっちも音楽関係でリョウさん自身に備わっている魅力ではないとこが変に勘繰られそう。
考えるんだ清水優人。ご両親に対してあなた達の娘は借金クズベーシストですなんて口が裂けても言えない。例えそれが事実だとしても。
落ち着け、つまりここはリョウさんに元から備わっていて異性から見ても良いと思うような印象を伝えればいいんだ。
そう、変に誤解を与えるような嘘を言うのではなく、俺が思った素直な感想を言えば嘘偽りなくリョウさんの魅力ポイントを言えるはず。
ここは大事な局面だ。信用してもらってる以上、下手な事は言えない。
リョウさんの良いとこ、リョウさんの良いとこ、リョウさんの良いとこ、リョウさんの良いとこ、リョウさんの良いとこ、リョウさんの良いとこ、リョウさんの良いとこ、リョウさんの良いとこ……。
よし、これだ!
「手足が二本あって目も二つあるとこですかね」
「え?」
「容姿端麗でクールな部分もありながら内心ビビったりするギャップとベースを弾いてる時のアンニュイな表情が惹きつけられます」
「ベースを弾いてる時のリョウちゃん見てみたいわ~!」
うん、上手く言えたな。よくやったぞ俺。
「それでそれでっ、どうして清水君はあのリョウちゃんの近くにいて普通でいられるのかしら!」
「見た目以上に普段からやってる事が借金とか草食べたりで好感度の振り幅がマイナス寄りになりがちだからですね」
「え?」
「実は見た目だけなら本気出すと一番やばい子が身近にいるのでそれで耐性がついたのかもしれません」
「あら~そうなのね~」
何となく分かった。この二人の前ではとりあえずリョウさんを褒めておけば大体誤魔化せる。
ほとんど愛娘に関しては盲目だからこれで時間を稼いでおけば、あとは虹夏さん達が何とかしてくれるはず。たまにはこちらから仕掛けてみるか。
「リョウさんって結構自由人な方だと思うんですけど、お二人は昔からリョウさんの好きにさせてきたんですか?」
「そうなのよ~。リョウちゃんったらあまりにも可愛いから欲しい物は何でも買ってきたし基本あの子のやりたい事を尊重してきたのよねぇ」
その結果があの金遣いの荒い自堕落ベーシストになった訳ね。
というか欲しい物買ってきたんなら今もねだれば買ってくれるんじゃないのか。それなら俺に借金する必要もないんじゃ……。
「けどあの子、私達に構われるのがあまり好きじゃないみたいでね。お小遣いは受け取ってくれるんだけど、それ以外だと楽器弾いたり作曲するからって部屋からあんまり出てきてくれないのよ~」
「はあ」
お小遣いだけは受け取るの完全に都合の良い反抗期ですやん。
そういや親からの過干渉への反抗心でロック始めたってさっき虹夏さんが小声で教えてくれたっけ。親が好きなものと真逆の事をすればグレたと思って干渉してこなくなると思ってたとか。この感じだとほぼ無意味に終わってるっぽいけど。
「もう高校生だしそういうのが好ましくないと思われるのは仕方ないと自分達も分かってはいるんだけどね。仕事がない日とかはどうしても娘と遊びたくてついお小遣いや豪華な料理で釣ろうとしちゃうんだ。いつもお小遣い受け取ったらすぐ出掛けていくから結局遊べてないけど」
単なる親バカというかメンタル強いというか全然懲りねえなこの人達も。
あとお小遣い貰ってすぐ外で使い切るリョウさんほんと良い性格してる。どうしよう、今度からお金貸さないでおこうかな。
山田ママが高そうなカップを持って紅茶を一口啜る。
それをそっと置いてから、
「でもね、最近は前よりも色々話してくれるようにもなったのよぉ」
「そうなんですか?」
普段口数の少ないリョウさんが音楽関連以外でペラペラ話すイメージはないんだけど、親ともなれば多少は違ってくるのだろうか。
「ええ、虹夏ちゃん達とバンドをするようになってからは今まで話してくれなかったバンドの事とか教えてくれるようになったの」
なのに俺の事は一切伝えてなかったんかいとツッコミをここでするのは野暮ですかね。
まあ男だと分かればさっきみたいに問い詰められるの確定してたし、リョウさんなりの気遣いだったという事でプラスに解釈しといてやろう。
「普段話す時はいつもと変わらない表情なんだけどね、バンドの事を話す時だけは少し目元や口元が綻ぶのよリョウちゃん」
そうなのか。あまり意識して見ないから気付かなかったかもしれない。基本俺にお金借りる時とか無様な姿を晒してるから余計か。
何だかんだ親はいつも子供をちゃんと見ているという事かね。
「それであのリョウちゃんがたった一度だけ自慢気に話してくれた事があったのよ~。あの時のリョウちゃんの笑顔は今でも忘れないわ~!」
「うんうん、あの時ほど写真に収めたいと思った事はないね」
「へえ、どんな事があったんですか?」
ライブ中とか少し口角が上がる時もあるが、あのリョウさんが笑顔になるなんて基本ないから純粋に俺も気になる。
「
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………そ、そうなんですか~」
「あら、顔に両手くっつけちゃってどうしたの清水君?」
「な、何でもないです……」
絶対俺の事じゃんそれ。確かにあの時のリョウさんも笑顔だったけども。
くそ、今顔上げたら絶対赤くなってるのバレる。あの人は時々やる事がマジで俺の心臓に悪い時あるからほんとやめてほしい。いや聞いたのは俺だけどさ。今度多めにお金貸してやるか……。何なら昼飯も作ってあげちゃう。
さっさと紅潮した頬よ治まれと祈っていると、上の階からドンッという音がした。
え、なに、暴れてんの? ……いや、この感じだと虹夏さんがリョウさんに技仕掛けた音か?
俺にも聞こえていたという事は、当然前のお二人にも聞こえていたという訳で。
「……清水君」
「はい?」
「リョウには今まで自分のやりたいようにさせてきたけど、本当に今が一番楽しそうにやってるんだと思うんだ」
「はあ……」
普段はアレだがライブをやってる時は本当に活き活きしていると俺から見ても分かる。
あれこそ自分のやりたい音楽をしているという証拠なのかもしれない。
「その上でもう一度、君に問いたい」
顔つきが変わった。
過干渉気味の愛娘溺愛親バカなどと思ってはいても、この人はまず病院の経営者だという事を忘れてはならない。つまり頭がめちゃくちゃ良いのだ。俺の思ってる以上に様々な事を考えていて、そんな人に何を問われるのか。
僅かに息をのむ。
そして。
「
「
即答した。
「といってもリョウさんだけをじゃなくて、結束バンドのみんなを支えるっていう点を強調させてください。後が怖いんで」
「ふむ、確かにそれならあの子の表情にも納得がいく」
「表情? あの時のリョウさん無表情じゃなかったでしたっけ?」
「これでもあの子の親なんでね。表情と口調の僅かな違いくらいは分かるよ」
そういうものか。俺にはさっぱりだったけど。
多分いつもの時とさっきので写真撮ったとしても表情の違いとか分からないと思う。さすがは病院の経営者、患者の僅かな異変も逃さないみたいなものだろうか。
「ある程度の誇張はさっきもしてたと思うけど……うん、そうか。やっぱり君やバンドの子達なら安心できそうだよ」
「は、はあ」
分からん。どんだけ脳内で自己完結してるかすら分からんけど何か勝手にどんどん信用度上がってる気がする。
「元々虹夏ちゃんもいるんだし心配なんて最初からいらないわよパパ~。みんな良い子だって事は心配して家に来てくれてる時点で分かってた事だものねぇ」
「ははっ、それもそうだね」
うーん、いまいちペースが掴めん。さすがリョウさんの親だ。
どちらも結構マイペースなとこある。そりゃ娘が家にずっといるからって病院休みにしてるくらいだもんな。いや大問題だわ。
「ちゃんと君からリョウを支えると聞けて良かった」
「結束バンドみんなですけどね」
「だから今度はこちらから言わせてほしい。何、友人の親からの軽い頼み事みたいなものだよ」
眼鏡の奥にある瞳と目が合った。
「これからもどうか娘を支えてあげてくれないかな」
「……」
初対面の高校生にこんな事を言える親がいるなんて、とは思わなかった。
ただ本当に自分の娘を大切に想っているが故の純粋な頼み事。どこまでも真っ直ぐな瞳には芯があった。
だから、俺もそれに応えなければならない。
確かに山田リョウという少女は簡単にお金を借りようとするし、すぐ人に集るような自堕落人間だし、面倒ごとは全部押し付けてくるような人だけど。
こと結束バンドの音楽に関しては常に真面目に向き合ってきた人だ。
唯一作曲ができて楽器体としてもかなりの実力がある頼りがいのある人でもある。
あの日の笑顔を思い出す。
既に言うべき言葉は決まっていた。
「当然そのつもりです」
その場で立ち上がる。
さっきリョウさんが言った一生支える事については冗談って事にして有耶無耶にしたが、今度は自分の口からハッキリと。
「俺は結束バンドのみんなが望む限りは、一生彼女達を支えていきますよ」
────
その日の夕方。
どうせなら一緒にバーベキューをしようと誘われ、結束バンド一同+俺はありがたく山田家で晩ご飯という名のバーベキューを供にさせていただいていた。
真冬の庭でやるバーベキューも中々乙なモノですなぁ。
見るからに高級肉を網で焼いてしまう背徳感がまたたまらん。
「ねえ、優人」
「どうしました? ああ、そういやスランプ問題は解決したようで良かったです」
「うん、一応優人にも謝っておこうと思って。勝手に休んだりしてごめん」
「別にスランプ脱したんならいいですよ。俺としては次の新曲を楽しみに待っておくだけなんで」
肉やら野菜やらを焼きつつ隣のリョウさんを見る。
片手には皿を持っており、見事に肉ばかり乗せていた。抜かりないな。
「親から何か言われたりしなかった?」
「特には。普通に囮として雑談してただけですよ」
「ゆ、ゆうくん、このお肉もうそろそろ食べていいかな……?」
「ん、このくらいならちょうど良いかな。食べていいぞ。……ああ、そういや山田パパから頼まれ事だけしました。分かりきってた事なので承諾も何もありませんでしたけどね」
「え、何を? 何か吹き込まれたんなら私からキツく言っとくけど」
愛娘からそんなこと言われたら落ち込むってレベルじゃなさそうだからやめたげて。
後藤さんの皿に肉と適度な野菜を入れつつ、トングをカチッと鳴らしながらリョウさんの方へ向いた。
「これからも娘を支えてやってほしいって言われましたよ」
「……虹夏が誤解解いたはずなのに」
「別に誤解でもないでしょ」
「え?」
あの時、山田パパはリョウさんの僅かな表情と口元の違いに気付いていた。リョウさんの言葉はおそらく冗談半分、本気半分。
それにリョウさん自体が気付いているのかどうかはさておいてだ。
「結束バンドが続いていく限りは一生支えていきますよ、俺は」
冬の夕方は暗くなるのが早い。
庭の灯りはもはやリビングから漏れている部屋の灯りとバーベキューの火だけ。
そんな灯り自体が少ない光源の中に、俺はリョウさんが目を見開くのをしっかりと見ていた。
オレンジ色の火がそのままリョウさんを照らす。その顔はどことなく赤いのかオレンジなのか区別が付きにくい。
「……優人も言うようになった」
「俺とリョウさんの仲でしょ。俺達マブなんで」
「その設定も久しぶり」
「おいこら今ハッキリ設定って言ったな?」
「ゆ、ゆうくんっ! お肉がっ、お肉が燃え上がっちゃった!?」
「だああああもう何で自分の肉すらまともに焼けねえんだお前はぁ!! うおっ!? やべえ、良い肉すぎて油が落ちまくるもんだから迂闊に手が出せねえ!?」
「……期待させてもらうから、優人」
「誰かぁ! 水か氷かいっそ消火器持ってきてえ!!」
清水優人、不覚にも異性の友人の親へご挨拶を済ませる段階すっ飛ばしイベントを達成。
では、今回高評価を入れてくださった
☆10:野原しんのすけさん、Re07さん、TAWARAさん
☆9:小型ハサミさん、タスマニアさん、白銀蜥蜴さん、オトマトペさん、モチモチこしあんさん、完全無欠のボトル野郎さん、イキョウさん、ジマリスさん
☆8:訪貴さん
本当にありがとうございます!
次回は予告通りオリ回になる予定。