再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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静岡と東京へ聖地巡礼旅行行ってました。
下北沢に行ってぼざろの聖地もちゃんと見れて大変満足できた休日だった。
その代わりにおもっくそ風邪引いたけど。へへっ、ウケる。




79.ツンデレの扱いは常に難しい

 

 

 

 一月もそろそろ中旬に入る頃。

 

 外は相変わらずの寒さの中、俺は休み時間の教室で一人スマホの画面を見つめていた。

 

 

『ねえ、何でいつまでたっても来ないのよ』

 

 送り主はもちろんみんな大好きツンデレヨヨさんである。

 今日の今朝方、後藤さんと登校中の電車内でこれが送られてきてたのだ。当然後藤さんと話してる最中にスマホを触らない俺はこのメッセージが来てた事に気付かなかった。

 

 そして教室に着いてから田中達と駄弁りつつ朝のHRと授業を終え、今は三限目前の休み時間。

 ここでようやくスマホを開いた俺はヨヨさんからのメッセージに気付き、今に至る。

 

 ちなみに隣の席の喜多さんは俺と二言くらい会話を交えてから女子友の方へ行った。

 前までなら休み時間になると後藤さんのクラスへ様子を見に行っていたのだが、文化祭以降は行っていない。何故だか見に行くとあちらさんのクラスから視線を感じるようになってしまったから。

 

 という訳で暇になった休み時間は喜多さんと佐々木さんと喋るか田中達と男子トークという名のアニメ談義をするのがここ最近の過ごし方だったけど、今日は一人で思考に耽る事にした。

 ヨヨさんとのロインは最近まで毎日あっちから送ってきてたのに、クリスマス会以降から全然送ってこなくなったのだ。

 

 最後に送ってきたのは新年を迎えたあけおめロインくらい。

 で、そこからトークは途切れていたはずなのに、今日このメッセージが来た。

 

 来ないのよって何がなんだろう。やっぱりあの時のシデロスをサポートしろって言葉は冗談じゃなかったのか。

 その翌日の時もロインで本気だって言ってきてたし、いったい何を考えてんだ? 

 

 普通に考えて俺が結束バンドを放っておいて他のバンドのサポートをする訳がない。そんな事はヨヨさんだってもう分かってるはず。

 確かあの時サポートしろって言う前に言ってたっけ。俺の動きを見て思った事を言うって。

 

 俺の動き、というのは結束バンドのサポート役としての働きを見ていたという事だろう。

 それを見て俺に声を掛けてきた理由だが、これがまたいまいちピンとこない。ましてやあんな別れ際にいきなりみんながいる前で言ってきた理由が。

 

 単純にスカウト? もしくは結束バンドからの引き抜き? 

 そういやあのぽいずん野郎も似たような事を言ってたか。バンド界隈じゃ他のバンドから引き抜きの声が掛かる事は当たり前だと。

 

 だとしても何故俺なのか。そこだけが分からない。

 楽器隊でもボーカルでもない、そもそもバンドメンバーですらないただの裏方だ。そんな俺を引き抜く理由なんて本来一つもないはず。

 

 ヨヨさんに限って意味もなくあんな事を言うなんてあるのか……? 

 どうしよう、めちゃくちゃありそう。普通に友達だからっていう理由だけでありえそうだわ。さすが後藤さんとは違う意味で悲しい人なだけある。

 

 

「さっきから一人で難しそうな顔してどしたん清水」

 

「んぁ~さっさんか」

 

 俺の前の席の椅子に座り俺の机で頬杖をついたのはワカメ色の髪をしたヤンキー風女子、佐々木さんだ。

 いきなり話は変わるがここで小話を一つ。冬休みが明けてからの席替えはもう最後だしクラスの生徒だけで決めていいという担任の粋な計らいによって、バカでノリの良い我らは好き勝手に席替えをした。

 

 席が被った場合はじゃんけんで勝敗を決める中、俺は窓側の一番後方を勝ち取り見事マンガでよく見る主人公席をゲット。

 で、勝ち誇った顔で席に座っていると右に座ったのが喜多さん、俺の前に座ったのは佐々木さんだった。

 

 この周囲の席も人気なはずだしおそらく二人もじゃんけんで勝ち取ったとは思うのだが……二人共じゃんけん強かったんだろうか。

 それにしても何故佐々木さんが喜多さんの前ではなく俺の前の席に決めたのか、理由を聞いてみたところ『色々と面白そうだったから』と返された。何が? 

 

 

「さっさんて何だし~。初めて呼ばれたんだけど」

 

「なあさっさん~」

 

「あ、それ続けるんだ。まあいっか、どした?」

 

 俺の机で頬杖をつきながら軽く笑みを浮かべてさっさんがこちらを見る。

 一人で考え事をと思ったが、女子の行動の謎は同じ女子に聞けば何とかなるかもしれない。この場合後藤さんは女子(特異点)なので該当せず。

 

 

「女の子からさっさと自分のとこに来いって言われたんだけどこっちはこっちで他に面倒見なきゃいけない女の子いるしこれって真に受けるべきかそうでないかどっちだと思う?」

 

「ごめんそれって修羅場の話?」

 

「違うけど」

 

「違うんだ」

 

 どう聞こえたら今の話が修羅場になるんだよ。

 

 

「冗談だと思ってたけどそうじゃないって本人が言ってたんだよなぁ」

 

「随分男らしい心意気だね~その子。女子としては珍しいタイプかも」

 

 確かに女子にしては色んな意味で珍しいタイプではあるけども。むしろやべー女の部類に入るか。

 

 

「何々~清水って女子からそんな熱烈なアプローチ受けてんの~?」

 

「アプローチ……になんのかねぇ」

 

「あれ、そこは完全否定しないんだ」

 

 もしヨヨさんのあれがスカウトや引き抜きの話だとしたらアプローチというのも間違いではないが、なーんか引っかかるんだよなあ。

 何せ店長と肩を並べるほどのツンデレガールだ。しかもツンデレといえばツインテールという王道も兼ね備えてる。

 

 根は優しいを地でいく彼女の事だから、結束バンドから反感を買うような真似はしないと思うけど……。

 となると考えられるのはやはり別の意図があっての事か。くそ~、本人が近くにいれば表情とかで何となく読み取れるんだけどな~。

 

 いっそ頬杖をついてるさっさんの横に腕枕もしないまま俺は窓側を向きながら顔ごと置いて、

 

 

「さっさんってツンデレ女子の翻訳できる?」

 

「ウチに何を求めてんの」

 

「いやさ、さっさんは見た目イケ女じゃん? だから女子の友達多そうだし一人くらいはそんな子いないのかなって」

 

「ん~確かに友達は少なくないけど、そういう子はいないかな~」

 

「だよな~そんな都合よくツンデレ女子なんて見つかる訳……」

 

 そこで俺の脳内にティキーン! キロリロリーン! というガンダム特有の音が鳴った。

 嘘、そんな気がしただけである。

 

 

「……いたわ、ツンデレ女子」

 

「お、マジ? リアルツンデレとかいう貴重な存在が身近に二人もいるって凄いじゃん」

 

「女子って言っていいかは分かんねえけどな。これ本人の前で言うと絶対殺される」

 

「てことは年上か~? はぁー年上女性の知り合いとか清水も隅に置けんな~おりゃおりゃ~」

 

「どさくさに紛れて頭わしゃわしゃしないでくんない?」

 

「いやぁ、清水の髪って猫っぽくてついね~。ウチは犬しか飼ってないからこの毛ざわり感は中々味わえないものなんですよ~」

 

「人を猫だか犬だかに例えるのもどうなんだよ。……あ、やばい何か眠くなってきた」

 

 と言っても手を止めるつもりはないらしい。

 こうなったら強引に頭を上げて止めさせるのも一つの手だが、何故か人に頭を撫でてもらうのって結構気持ちよかったりする。

 

 しかもいつも早朝から二時間かけて登校し、果てには窓際の席だから外からの太陽光で冬なのにぽかぽか気分だ。

 こんなの誰だって眠くなるに決まってる。そう、今の俺みたいに考え事なんか吹っ飛びただただ心地よい眠気と撫でられてる気持ちよさで意識が薄くなっ──、

 

 

「あら、何をやってるのかしらさっつーと優人君?」

 

 ビクゥッ!! と反射的に俺の体が跳ねそうになった。

 眠気なんてものは彼方へひとっ飛び。謎の悪寒と冷や汗が止まらない。何でだろう、不思議と振り向いたら終わりだって脳内が警告音鳴らしてる件。

 

 声の正体は当然喜多さん。今更聞き間違えるはずもなく、だからこそやばいというのが理解できる。どうしようめっちゃ怖い。声音からして笑顔なのは分かるけど、笑ってないようにしか聞こえない。

 うん、これはあれだ。いっそもう寝た振りしてやり過ごすしかない。いくら喜多さんでも寝てる相手に何かするような女の子じゃないだろう。

 

 

「んー? 清水から相談事をちょいとね~。あとは髪わしゃわしゃしてたら眠気に負けたっぽい」

 

「へえー」

 

 生返事怖すぎませんこと? いつもならお得意の陽キャコミュスキルで会話広げてくのにもう会話終わってんじゃん。

 広げる気一切ないじゃん。頼むからいっそ寝てくれ俺。さっさと意識失えよ俺ぇ! 

 

 

「じゃあ私もついでに髪触ってもいいわよね優人君?」

 

「……」

 

「ゆ・う・と・く・ん・?」

 

「は、はいぃ~……」

 

 頭を鷲掴みにされあまりの恐怖に女芸人のやす子みたいな返事が出てしまった。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「で、結局私に相談する事にしたと」

 

「そゆことです。という訳で店長ってツンデレの翻訳得意ですよね?」

 

「オーケー、とりあえず一発シバいてから話を聞こうか」

 

「え、もしかしてそれもツンデレの一種なんいでぇッ!?」

 

 ほんとマジで今時げんこつしてくるのこの人くらいなんじゃないの!? 

 今の時代に暴力系ヒロインなんて流行らないんだからね! いや俺は好きだけどさ。

 

 

「ったく、そんでクリスマスパーティーん時にいたシデロスの子がお前の働きを見てうちに来てサポートをしろって話だったか」

 

「いつつ……まあ、そんなとこです」

 

 カウンター席に座り腕を組む店長と側に立つ俺。

 現在スターリーには俺と店長とPAさんしかいない。結束バンドのみんなは今日のバイトは暇だからと買い出しに出掛けていて、PAさんも裏の方で作業をしているからか実質フロア内は俺と店長の二人きりだ。

 

 

「普通に考えりゃそのままの意味だろう」

 

「新宿FOLTでヨヨさん達のサポートをしろって事ですか?」

 

「ああ。頭がぶっ飛んでない限りあそこでわざわざ嘘を言う必要なんてどこにもない訳だしな」

 

 あの人割とぶっ飛んでる方だと思うんですが。

 

 

「けどお前から聞いた話だとそのヨヨコって子は実力もあって基本的な言動はキツいけど根は優しい子、なんだろ」

 

「はい。まさに店長みたいなひぶびゅッ!?」

 

「で、そんな不器用で優しい子がみんなの前でわざと反感を買ってしまうような言動をした意図がよく分からないと」

 

「ふぁい」

 

 顎に手をやり少し考える素振りをしてから数秒、意外にも早く店長は結論を出してきた。

 

 

「そりゃお前、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……え」

 

「前ここに来たぶりっこメルヘン年齢鯖読みライター女みたいな性格の悪い子じゃねえんだ」

 

 俺が言うのも何だけどもの凄え言われようだな。

 

 

「なら少しの期間だけでもいいから結束バンドより忙しいシデロスで色んなサポートをする方が、お前のためにもなるって話になるのが普通なんじゃないか」

 

「俺個人の、成長のため……」

 

 確かに、言われてみて納得できる部分が多々ある。

 ヨヨさんの性格なら素直に言ってこないのは重々承知。それでいて遠回しに優しさを見せてくるのも彼女なりの気遣いとして理解できる。

 

 結束バンドは間違いなく成長している。個人の実力もさることながら、バンドとしての一体感も日に日に増していく一方だ。

 それに引き換え俺はどうだろう。やるべき事は分かっていても、する事は結局以前からしている事により力を注いでいるだけ。伸びしろとしてはどうしても幅が小さくなってくる。それではいつまでたっても視野は広がっていかない。

 

 それを知ったヨヨさんは俺個人の成長の幅が広がりやすくなるようにたまには違う現場で経験を積んでいけと、遠回しにそう言っていた? 

 クリスマスパーティーの別れ際、結束バンドに書類選考で落ちないようわざわざ改善点のメモ用紙を渡していたし、結束バンドが一次審査を通過できるようアドバイスもくれていた。

 

 つまり、結束バンドだけでなく俺自身も成長できるように場を用意してくれているのだとしたら、今日のロインで何で来ないのかって言ってきたのも何となく頷ける。

 いや頷けねえわ言い方まどろっこしすぎるだろ。分かるかそんなの。ある意味後藤さんより解読難しいじゃねえか。

 

 

「ま、あくまで私の推測だけどな。どうだ、少しは役に立ったか」

 

「……はい、やっぱ店長に相談して正解でした」

 

 ただ単に引き抜きだったなら蹴飛ばして終わりだったが、こうなってくると話は変わってくる。

 俺のサポートだけで審査の結果が変わるような事はないと思うが、一ミリでも可能性があるのならそこに手を伸ばさない理由はない。

 

 あれから今までロインを送ってこなかったのに今日ヨヨさんがわざわざメッセージを送ってきたという事は、せっかくのチャンスを逃してしまうタイムリミットが迫っているかもしれない。

 くそっ、言い方がいちいち遠回しすぎるんだよあの人は! 

 

 時間は四時半。向こうでライブが控えてるかは分からないが、もしライブがあってもまだ始まるまで時間はある。

 なら今からでも間に合うか。善は急げとも言うし、迷ってる暇もなさそうだな。

 

 ……いいや、結束バンドのためになるなら迷う必要なんてそもそもどこにもない。

 

 

「けどまあ、どうするかはお前しだ」

 

「店長。いきなりで悪いんですが、しばらくバイト休ませてください。俺ちょっと新宿に行ってきます」

 

「い……え? いや、おいっ、ちょっ待っ」

 

 鞄を持ってスターリーを飛び出す。

 今は時間が惜しい。ヨヨさんの事だ。もしかしたら気が変わって今更頼んでも了承してくれるか分からない。とにかく今は走る事に専念しろ。後藤さん達に連絡をするのは後になってしまうが、きっと許してくれると信じよう。あとは店長に任せるか。

 

 

「……はぁ~……まったく、何であいつらのためとなったらああも迷わず突っ走ってくんだあいつは……あーどう説明すっかなぁ~……」

 

「こっちの作業終わりましたよ~ってあら、どうしたんですか店長? 面倒事に巻き込まれたみたいな顔して」

 

「たった今弟分のケツを拭く羽目になったんだよ……」

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 清水優人がスターリーを出て二分後、結束バンドの面々が帰ってきた。

 

 

「ただいまー、買い出し終わったよ~。あれ、どしたのお姉ちゃん。体調悪い?」

 

「……あー、いや、別に悪くはない」

 

「ならいいけど。そういえば優人くんは? 見かけないけど、裏の方にいるの?」

 

「……えーとぉ」

 

 星歌の何だか歯切れの悪い返事に首を傾げる虹夏。

 次に言葉を発したのは荷物をテーブルに置いていた喜多育代だった。

 

 

「優人君の鞄もないですよ。買い出し行く前はここに置いてあったのに。優人君も買い出しに行ってすれ違いになったのかしら?」

 

「そ、そういえばゆうくん、最近ずっと考え事してたようですけど、まさかそれと何か関係あったりするとかじゃ……」

 

「さすが幼馴染の事になると鋭いなぼっちちゃん……」

 

「「「え?」」」

 

 ついうっかりひとりの呟きに反応してしまったが最後。

 買い出しの途中で郁代に買ってもらったから揚げを頬張っているリョウを除いた三人が星歌の方へ振り向いた。

 

 

「あ」

 

 そしてそうなってしまえば逃げ場などない。

 妹の虹夏が向こうにいる時点で星歌に回避の選択肢は許されなかった。

 

 

 

「つー訳で、それが最近あいつが悩んでた理由だよ」

 

「優人君、私達にも相談してくれたらよかったのに……」

 

「さっきまで真に受けるべきか冗談かで迷ってたヤツだぞ。んな状態でお前らに相談できるあいつじゃねえよ。……もうめんどくさくなってきた、あとは全部優人に押し付けるか」

 

 大方の事情を説明された結束バンドのメンバーは、クリスマスパーティーの終盤に言われた大槻ヨヨコの発言の真意を星歌から聞いた。

 冗談ではなく本気だったという事。しかしそれにも別の意味が含まれていたかもしれないという事。

 

 そして。

 真意に気付いた清水優人がスターリーを飛び出していったという事。

 

 

「今のうちに言っておくぞ」

 

 先に星歌から忠告があった。

 それはあるいは当事者である結束バンドへの優しさか、はたまた警告か。

 

 

「あいつはお前らのためなら何でもするヤツだ。それこそ私が勝手に付けたスターリーの狂"犬"っつうあだ名で、まさに犬みたいに忠実にな」

 

 ふざけたあだ名だと優人本人は文句を言っていたが、実はあながち間違いではないのだと彼を知る人間ならば誰でも納得する。

 

 

「いいか、もう一度言うぞ。あいつは、優人は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「っ」」

 

 その言葉に特に反応したのはひとりと虹夏だった。

 星歌の言葉の意味を把握し、正しく理解し、言い知れぬ嫌な予感が脳内をよぎる。

 

 

「だから手綱を握りたきゃ、ちゃんとあいつを見張っとけよ」

 

「ゆ、ゆうくんは……今、どこに……?」

 

「説明ならしたでしょ。さっき新宿に向かったばっかだよ」

 

 全員の次に出る行動は早かった。

 

 

「今ならまだすぐ追いつけるはずっ。一本後の電車に乗って走ればロスは縮められるよ!」

 

「電車の時間調べました! このまま走っていけば急行に乗れます! 一本前との時間差は約四分!」

 

「オッケー! 悪いけどぼっちちゃん、今から人混み凄いとこ行くよ!」

 

「ゆうくんのためとはいえ人混み……ひ、ひと……ウッ!?」

 

「よし、ぼっちちゃん爆ぜたからペラペラのまま持ってくよ!」

 

「走りの遅いひとりちゃんを物理的に軽くして連れて行くとは、伊地知先輩賢いですねっ!」

 

「私は最悪一本遅れでも」

 

「早く来い山田ァ!」

 

 相変わらず騒がしいままスターリーを出ていった結束バンドを頬杖つきながら見送る店長星歌。

 その横にはさっきまでPAブースでゆったりしていた女性が立っていた。

 

 

「よかったんですか? あんなシリアスそうに発破かけて。実際のところは微笑ましい動機で何でもないのに」

 

「いいんだよ。私の返事も聞かずにさっさと出ていった優人が悪い。たまにゃ本気の修羅場になんのも悪かねえだろ」

 

「大体の事情知ってるのに修羅場になるとは思えないんですが……もしかしてちょっと面白がってません?」

 

「……多少は」

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 そして、十数分後の世界にて。

 

 

 

 

「……」

 

「ああ、遅かったじゃない」

 

 新宿FOLT。

 開店前で薄暗いフロアの中に、元凶の少女がいた。

 

 

「来たのね」

 

 不敵に笑む彼女、いいや、彼女達を前に少年は一歩前へと踏み出していく。

 スターリーとはまるで別世界。異質な空間を前にしても物怖じは一切せず。

 

 

「ヨヨコ先輩、毎日清水さんが来ないかそわそわしてたっすもんね」

 

「あくび!?」

 

 

 

 シリアスな世界は一瞬で崩れ去った。

 

 

 

 






次回『ドキドキ☆美少女ばかりの新宿シデロス編~ポロリはないよ~』はっじまっるよ~!!
始まるのか?


では、今回高評価を入れてくださった

☆10:幕張魂さん、世界のYAMADAさん、sophia_さん、ユウリ・楯無さん、いぐぁさん、ゆうユウさん、ポンの助さん

☆9:uytrewqさん、おうとつさん、けん0912さん、タスマニアさん、小型ハサミさん、イキョウさん、完全無欠のボトル野郎さん

本当にありがとうございます!

風邪のせいでいつもより投稿遅れたごめんよ。
進捗報告などはTwitterでちょくちょくやってますので良かったらぜひフォローおなしゃす。

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