再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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何だかんだやっぱスターリーの面々書いてると落ち着くよねえって。




83.適材適所は確かにある

 

 

 

 二月になった。

 

 シデロスへのサポート期間も何とか無事に終わり、その次の日さっそく俺はスターリーにやってきた。

 昨夜ロインで終わったとメッセージしたら『じゃあ明日スターリー集合ね』って来たのだ。どうやら労いのお休みとかくれるつもりはないらしい。別にいいけどさ。

 

 という訳で。

 

 

「一応ただいまです」

 

「優人くんおっかえりぃ~!」

 

「一週間振り」

 

 今まで毎日のようにスターリーに来てたというのもあってか、たった一週間行かなかったというだけでも結構久し振り感あるな。

 やっぱこの落ち着く感が良いよね。スターリーはいつもみんな笑顔でアットホームな職場です! 

 

 

「一週間だけだけど何だか久々に会ったみたいに感じちゃうねっ」

 

「ちょうど俺もそう思ってたとこです。適当に見渡せば知ってる顔しかいないって良いですよね~。店長がいつもしてる気だるげな顔とか見るとシャキッとなりますし」

 

「おう、しばくぞこら」

 

 これこれぇ~! 

 

 

「私とひとりちゃんは学校とかで一緒でしたけど先輩達はずっと会ってなかったですもんね。けど私もスターリーに優人君がいないのは違和感凄かったわ。もういて当たり前の人になってるもの!」

 

「そう言ってもらえると悪い気はしないよ。うんうん、そうだよな。スターリーで後藤さんに背後取られてるこの感じだよ。なんか向こうにいた時はずっとヨヨさんが隣に居座ってたけどどうしても物足りなさがあったんだ。俺が感じてたのはスタンドがいない違和感だったって事か!」

 

「多分それ毒されてるんじゃないかしら。もう手遅れ的なやつ」

 

「やっと安全圏(ゆうくん)が戻ってきた……落ち着く……」

 

「優人くんがいない間に何かあるとすぐゴミ箱だったりテーブルの下に隠れてたぼっちちゃんがまるで自分の巣穴を見つけた動物みたいに納まってる……」

 

 面白いでしょこのペット。マジで面白いんすよ。たまに人間やめたりするんですけどね、ふへへ。

 

 

「ギターもちゃんと持ってきてるんだね?」

 

「まあここに来る時くらいですけどね。主に喜多さんと一緒に放課後練習したり個人練する時は持ってくるようにしてます」

 

「新宿の方には持ってってなかったの?」

 

「あっちじゃ俺の役割はほぼマネージャーに徹してたんで、私欲に走ってしまうような事は控えるために持っていきませんでしたよ。あと俺がギター持ってくとヨヨさんうるさくなりそうだし」

 

「ああ、何となく分かるかも……」

 

 あの人ツンデレだからマネージャーはマネージャーらしくしてなさいと言いながらもそわそわして絶対何だかんだ自分からギター教えてくるタイプだよ。

 俺には分かる。そんでハッセにミーティング始めるからって首根っこ掴まれて引っ張られるとこまで想像できた。

 

 

「そんで優人」

 

 何気ない会話ばかりしていて本題に入ろうとしなかった俺達を見兼ねたのか、カウンター席に座っていた店長から声がかかる。

 

 

「向こうで得られたものはあったのか」

 

 視線が一気に俺に集まった。

 いきなりとはいえ虹夏さん達に一週間シデロスのサポートをしに行くと宣言したのだ。彼女達は反対する事もなく妙に理解を示してくれて送り出してくれたのだが、その結果が気にならない訳でもないだろう。

 

 キュッと、裾を後ろで掴まれている力が微かに強くなった。

 表情は見えない。後藤さんとはサポート期間も毎日夜に家で一緒に練習したり雑談などで近況報告をしたりして大体は知っている。それでもここで俺がどう答えるのか、それが気になるのだろう。

 

 

「もっと単刀直入に聞こうか」

 

 足を組み、イスと一緒に体ごとこちらへ向けて、店長は言ってきた。

 いいや、この人の事だ。どうせ俺が何て答えるか分かりきってるくせに、わざわざ結束バンドのみんなが聞きやすいよう舞台を整えたのだろう。万一にも『向こうに行った結果はどうだった?』『何の成果も得られませんでした』なんて気まずくなってしまう雰囲気を避けたくて質問を控えていたみんなのために。

 

 となれば俺も大人が用意してくれた舞台に堂々と立ってみせよう。

 万一なんて存在しない。結束バンドのためなら何が何でも必ず成果物を持ち帰ると決めていたのだから。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

()()

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「あたし達だって優人くんが向こうに行ってる間何もしてなかった訳じゃないよ!」

 

 さて、いつも通り結束バンドのミーティングが始まった。

 そもそも昨日の時点で今日の活動内容は粗方聞いてたし、そのための準備ももう済ませている。ロインの方はっと……もうすぐか。

 

 一旦スマホをポッケに入れ虹夏さんの方へ向き直る。

 じゃじゃーんとわざとらしく擬音まで口に出して(可愛い)虹夏さんはテーブルに一枚のCDを置いた。

 

 

「曲が完成しましたー!」

 

「お、これが例の新曲ですか」

 

 CDの側面には『グルーミーグッドバイ』と書かれている。簡単に言えば新曲のタイトルだ。

 

 

「そうだよー! 優人くんが頑張ってるからってぼっちちゃんも結構早く作詞してくれたからレコーディングに入れたんだ~!」

 

「あ、へへ……」

 

 さっそくCDプレーヤーに入れて聴いてみる。

 イヤホンから流れ出すサウンドからは、今までとはまた違った曲調だった。

 

 

「これは……結構爽やかな感じですね」

 

 歌詞は相変わらず後藤さん寄りの陰キャ志向だけど、サビ辺りの部分は少し明るめになっていて聴き手の印象を変えてくる。

 以前の結束バンドの曲とは一風変わった雰囲気で、これはこれで面白いから俺は全然ありだと思う。

 

 

「でしょう! 私も今回の曲は爽やかめで好きなの!」

 

「あっいや~今回はインスピレーション湧いてきてさんじか……一時間くらいで書けました……へへっ」

 

「へーソウナンダスゴイネー」

 

「さてはお前何日か寝てないな? どうりでこの前目の下に隈があったと思ったら……俺との練習終わってからずっと作詞してたのかこのバカっ。いつも通り朝起こしに行ったらもう起きてた事が三日くらいあったし……まさかそん時か? そん時だな? そん時だろ?」

 

「ゆ、ゆうくんの推理力が怖い……うぅ、ご、ごめんなさいぃ~……っ」

 

 推理ですらないぞこんなの。ライブの三日前から寝れないヨヨさんといい作詞で三日徹夜する後藤さんといい、どうして拗らせためんどくせーコミュ症女子はいらんとこまで似てるんだ。

 しかもこのアホピンク、話盛るために三時間から一時間とか無駄に短縮して見栄張ってるし。どっちも嘘なんだから無意味だろうに。

 

 左隣のバカがしがみついてきて涙目になりながらうゆうゆ言ってるのを尻目に、俺は本題へと話題を移すことにした。

 

 

「ところで今日はやる事があるんでしょ。俺の持ってるカメラとかは一応持ってきましたけど」

 

「そうそう! 優人くんも戻ってきたし曲も完成した事だしMVを撮りたいと思いまーす!」

 

 とりあえず虹夏さんも通常運転のようで安心した。

 俺に対して一週間前のようなぎこちなさはどこにも見当たらない。何か知らない間にやらかしたのかもと思ってたけど、その心配も無用だったっぽい。いつも通りでいてくれるならこちらもそのままでいこう。

 

 

「やっぱりMVがあるのとないのとじゃだいぶ変わるんですか?」

 

「今は動画サイトで音楽探して聴く時代だし、あった方がバンドの世界観をより伝えられるんだよ。ね、優人くんっ」

 

 あの、なんか虹夏さんいつもより距離が近いような……イスも普段と違ってすぐ右隣だし……。うーん……いや、気のせいか? 

 多分自意識過剰だな。危ない危ない、もうすぐで勘違い残念男に成り下がるとこだった。

 

 

「ですね。それに先を見据えるならネット投票の時もMVあった方が拡散されやすいし、いろんな人の目にも留まりやすい。そういった意味でも映像作品として色んなとこに投稿したりするのは良い手でもあるんだ」

 

「へ~そうなのね~」

 

「つまるところ結束バンドの曲をもっと色んな人達に知ってもらう必要がある。MVはそのきっかけの一つってとこかな。虹夏さん、ついでに新曲も含めて音楽配信サイトとかにも曲の申請送りましょう」

 

「おお、それいいね! 採用!」

 

「だんだん本格的になってきたわね!」

 

 作詞作曲担当をしてくれた後藤さんとリョウさんにはこういうとこで一旦楽をしてもらう。

 その他宣伝広報などは俺達三人で分担する、というのが結束バンドのやり方だ。

 

 

「大手ならスポチファイがあるけど申請通りにくいってネットに書いてましたが、その点バンドキャンプゥなら審査は通りやすいらしいので一応両方に申請しておきましょうか。他にも申請できそうな配信サイトにも送ってみます」

 

「あ、それあたしも聞いた……というかメモに書いてたよ。大槻さんのやつに」

 

「あの人親切すぎませんか!?」

 

 そういうとこあるんすよあのツンデレさん。態度とか言動だけ見るとキツく思えるだけで実は全部こっちのためにやってる事が大半だからね。

 残り三日間のサポート中も地獄みたいなパシリやらされたりもしたけど、思い返してみれば結局全部俺のためにしてくれてたし事あるごとに心配する素振り見せてきたから俺には分かる。

 

 

「ねえ優人君、そういえば前にアップしたライブ映像とかどうなってるのかしら? 再生数とか増えてると思う?」

 

「一応こまめに宣伝とかしてたけど、見てみるか。虹夏さん、パソコンお願いします」

 

「はいは~い、宣伝してたなら一万再生くらいはいってるんじゃないかな~?」

 

 虹夏さんが開いたPCを起動しオーチューブを見ると。

 

 

「1000回!」

 

「……正確には?」

 

「約1000回……正確には986回再生だった……」

 

 虹夏さんもちょっと見栄張りたかったのかな。

 

 

「やっぱりきっかけがないと伸びにくいのかしら」

 

「宣伝はしてても拡散されないと広まらないしな。いつもRTしてくれてるアカウントもおそらく師匠達(一号さん達)だけだし見てくれる人も限られてくる。それにトゥイッターのリンクからわざわざオーチューブに移動して映像を見るのは手間って考える人も少なくないからな。それで余計に視聴する人が絞られちまうんだと思う」

 

「広報活動って言っても簡単じゃないのね……」

 

「ああ、まだ知られてないバンドなら尚更な」

 

 普通に宣伝するだけじゃこれまでとは何も変わらない。

 知らない人達にもっと興味を持ってもらうためには他の方法を模索しなくてはならないのだ。

 

 

「あ、でも結束バンドの公式トゥイッターのフォロワーちょっと増えてない?」

 

「徐々にですけどね。開始当初よりかは投稿するといいねが貰える事もほんの少しずつ増えてきてます。本音を言うといいねよりも拡散してほしいってのが正直な気持ちですけど……」

 

「まあそこは人それぞれだもんね~。おっ、イソスタの方は結構フォロワー増えてきてるじゃん!」

 

「マジすかっ。そっちは喜多さんに任せてるからそんなに見れてないんだけど、やっぱ慣れてる女子は宣伝もフォロワーの増やし方も心得てる的なやつ?」

 

「あっはは……」

 

 イソスタが気になって虹夏さんのスマホを覗き込む。

 どんだけ勉強しても男子と女子の感性の違いや、女子の興味とか流行り事などへの関心性が分からない分、喜多さんならこういうのに慣れてるというのもあって興味を持ってもらうという事については強いのかもしれない。これに関しては俺の分からない領域だ。

 

 ところが。

 

 

「……ナニコレ?」

 

「みんな喜多ちゃんの話しかしてないんだけど……美容アカになってない?」

 

「自撮り付きの方が反応多くてつい……」

 

 あ、ありのまま今起こった事を話すぜ! 俺達はロックバンドとして結束バンドのアカウントを運営していたはずだ。なのに気付いたら結束バンドの公式イソスタアカウントは美容系アカウントになっていた。

 な、何を言っているのかわからねーと思うが俺も何を見ているのか分からなかった……。

 

 

「コメントも一切結束バンドとか楽器の話とかしてないもんね」

 

「優人君に言われた通り機材とかリハとか裏側的な写真も投稿してはいるんですけどねえ……」

 

 コメントを見てみれば『アイシャドウ発色いいですね! どこの使ってるんですか?』とか『どうしてそんなに肌白いんですか?』や『どの写真も可愛くて羨ましいです!』などそんなのばっかで音楽の話してる人は一人もいない。

 いや確かに可愛いけどそこまで触れるとこか? という疑問が拭えない。

 

 とりあえずこの『制服って事は高校生? めっちゃ可愛いね。てかどこ住み? ロインやってる?』とかクソみたいな事ぬかしてるユーザーはあとでブロックしておこう。

 もしくは後藤さんの溶けた顔でも投稿して現実見せてやろうかこの野郎。……それは他のフォロワー減りそうだしやめとこ。

 

 

「これからはトゥイッターにもリンクだけじゃなくて1コーラスだけでもいいからライブ映像やMVを投稿したり、イソスタのストーリーズにもMVとかを流す事にしよう。とにかく結束バンドの活動と音楽をアピールしていくんだ」

 

「分かったわ!」

 

「じゃあさっきも言ったけどまずはMVが最優先だねっ。カメラとか撮影にも最近力入れてくれてる優人くんが戻ってきたから今日はMV撮影がメインになるよー!」

 

「っと、もう近くまで来てるか。すいません、ちょっと外出てきます。すぐそこまで来てるらしいんで」

 

 ロインを見たらちょうど駅に着いてこちらに向かっているようだ。

 まだ開店前だからこっちから迎えに行かないと向こうも勝手を知らないから入りづらいだろうし。

 

 

「誰か呼んでるの? まさか大槻さん?」

 

「だとしたら今日俺が駅に着いた時点でぴったり着いてきてますよあの人は。とにかく行ってきますね。ほら後藤さん、いつまでうゆうゆ言ってんだ。てか知らん間に腰までがっつりホールドしてきてるしっ。さりげなくポジションチェンジなんてどこで覚えてきた! ええい離せ! このっ、はなっ、は……HA☆NA☆SE!」

 

「うゆうゆ……」

 

 このうゆうゆ星人両手を結合してんのかってくらいビクともしねえ……。

 これがほんとの手錠ってか。やかましいわ。

 

 

「……まあいいか。んじゃ行ってきます」

 

「ぼっちちゃんくっついたまま行ったんだけど」

 

「人馬」

 

「ケンタウロス」

 

 なんか好き勝手言われてんな。

 

 

 

 

 幸いスターリーの入口階段を上ると待っていた人達がちょうどそこまで来ていたのでそのまま中に入ってもらった。

 おかげで後藤さんごと変な目で見られずに済んだ。

 

 

「あ、おかえりー早かったね。二分も経ってないじゃん」

 

「すぐそこまで来てたんで」

 

 階段を下りてフロアに向かう。

 我らがゴットゥーザ様は人の目も気にしないでいまだ器用にくっついたまんまだ。多分人間の尊厳とか持ってない。

 

 

「MVを撮るってのは昨日の時点で聞いてたので、突然ですけどダメ元で聞いてみたんですよ。撮影とかは俺も勉強してはいるけどまだまだだし、それなら俺よりも詳しくて結束バンドのために動いてくれそうな人達に頼めないかって」

 

「優人くんより詳しい……あ、まさか」

 

「そのまさかですぜぃ」

 

 どうやら虹夏さんは何度か遊んだ事があるらしい。俺も前に聞いてびっくりした。

 

 ちなみに結束バンドはMVにお金をかけたくてもノルマ代に消えるので使えるお金がなく、自分達の持っている限られた機材や技術で撮るしかないという事になった。

 そこで俺が考えたのが、ならば詳しい人に頼み込んじゃおうという案だ。

 

 俺にカメラや撮影に関しての知識を教えてくれて、且つ結束バンドが大好きな人達ならば受けてくれるかもという可能性に期待した。

 その結果がこれだぁ!

 

 

「へっへっへ……いでよ結束バンドのファンよお!! 今こそその力を発揮する時だぁ!!」

 

「ども~! 一号で~す! 弟子に頼まれてやってきましたー!」

 

「二号です~!」

 

「そして俺は零号らしいでーす!」

 

「優人くん急にテンション上がってるけど、仮面ライダーっぽいポーズキメてもぼっちちゃんのせいで何もキマッてないよ」

 

 

 

 誰か早くこのピンク剥がしてよもうー!

 

 

 






時々中二病が出ちゃうオタク系男子、それが清水優人。
時々コミュ症のせいで人間辞める系女子、それが後藤ひとり。


では、今回高評価を入れてくださった

☆10:剣 雄輝さん、橋本詠海さん

☆9:バザーマンさん、RitterSchildさん、タスマニアさん、完全無欠のボトル野郎さん、モチモチこしあんさん、雪音久遠さん、ザラメ雪さん、小型ハサミさん、イキョウさん、訪貴さん

☆8:三十路スキー@JK星歌さん

本当にありがとうございます!
反応くれるみんなのおかげで頑張れてますぜ!
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