再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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白ワンピースの結束バンド可愛かったわね。




85.日常を演じるのは実はとても難しい

 

 

 

 あの後色々あった俺達は公園にやってきていた。

 

 

 もちろんただ遊ぶだけではなくMVを撮影するためだ。

 ちなみにスターリーで後藤さんにゲロられた俺は急遽結束バンドパーカーに着替えて参加している。汚された元の服は虹夏さんのご厚意で虹夏さんの家で洗濯してくれる事になった。あったけえ、あったけえよぉ……。

 

 でもって公園に来ているという事はMVの方向性が決まったからと言えばそうなのだが、実は俺が着替えてる間もみんながやいのやいのまとまらない意見を出していたせいで我慢の限界が来たのか、俺の師匠に外へほっぽり出されたらしい。

 何があったのか聞いてみたら師匠は小さく「バンドマンは大人しく楽器だけいじっとけばいいのよ……」という大変ありがたいお言葉を呟いていらしたので察した。

 

 という訳で師匠達が決めた方針でMVを撮る事になった俺達。俺は当然衣装替えや機材などの荷物持ち担当だ。

 今日は俺が撮影するのではなく師匠達の撮影の仕方などといった技術をとことん勉強させてもらう予定である。一応サポートはやらせてもらうが、色々参考にさせてもらわねば。

 

 

「今日はよろしくお願いします師匠」

 

「任せて! 良いMV撮ってあげるからねっ」

 

 何と頼もしい事でしょう。これで結束感ゼロの結束バンドミーティングへの怒りの表情を隠せていたら完璧だったのに。

 笑顔なのにまだ若干青筋見えてますよ師匠。ほらもっと純粋に笑って笑って。

 

 

「んじゃまあ始めますか」

 

「おっけー! で、あたし達は何すればいいの?」

 

「優人君に大体の方針は伝えてるでしょ。それ言ってあげて。私達はカメラの設定しとくから」

 

「分かりました」

 

 と答えたはいいものの、とりあえず先に俺も荷物をどこかに置きたいです。

 さすがに両手に衣装とか機材の入ったバッグをずっと持ったままなのは色々やりづらい。あと単純にちょっと重い。

 

 

「あの、ゆうと君のカメラも使っていいんだっけ? 借りてもいい?」

 

「ああ、好きに使ってやってください……ってそうか、俺のカメラ首に引っさげたまんまでしたね。すいません、荷物どっかに置いてからでも」

 

「私が取るから大丈夫だよ。ちょっと首の方失礼するね~」

 

「え、あ、はい」

 

 両手が塞がっている俺の代わりに二号さんが自らの手で俺の首から提げられているカメラのストラップを取った。

 必然なので仕方ないけど、非常に距離が近くて思わず目を瞑っちゃった。カメラが取られたのを感じ取ってから目を開けると二号さんが「ふふっ」と微笑んでいる。……この人何気にこういう事を平気でするから侮れないんだよなあ。大学で勘違い男量産させてないか心配になってくる。

 

 これぞ大人の余裕ってやつか。ぐぬぬ、俺も好きになっちゃうぞ! いいのか! 

 っておい誰だよ裾引っ張ってくるヤツ! 今は年上お姉さんの包容力の余韻に浸ってるっての──、

 

 

「優人くん、あたし達はナニをすればい・い・の?」

 

「……あっ、えっと、さ、先に荷物置いてからでも大丈夫でしょうか姫……?」

 

「よろしい」

 

 伊地知家伝統殺人スマイルがあった。過去に何度か店長からそれをされて数秒後には地面に倒されてる事が幾度かあったので知っている。

 虹夏さんもしっかりと受け継いでるようだ。めっちゃ怖かった。冬だってのに顔見たら冷や汗止まらなかったもん。

 

 そりゃあ最初に質問されてたのに答えないまま年上お姉さんの魅力に引き込まれてたら怒るのも無理はない。

 はい、全面的に俺が悪いっす。なので真冬にも負けない冷たいスマイルを俺に向けないで。いつも優しくて温かい天使でいて。

 

 ベンチに荷物を置き気を取り直す。

 喜多さんが虹夏さんに話しかけていたおかげか機嫌も直っているようで安心した。とても。

 

 

「えー、とりあえずみんなカメラとか気にせず適当に自然体で遊んでてくださいとの事です。その間に撮影するから極力意識しないよういつも通りって感じですかね」

 

「なるほど、自然体は得意」

 

「おい山田、ベンチに片足立てて膝に手をやるのどこが自然体なんだ。アニメか中二病だけだろそんな事するの」

 

 自分をイケてると思ってるヤツほどカメラ意識しがちなとこあるよな。

 どこ見てんだあの人、斜め上の空をずっと見つめてるんだが。そこに何があるの。虚空? 

 

 

「リョウほどじゃないけど意識するなって言われると逆に意識しちゃうよね~」

 

 まあ、それは確かにそうだ。モデルとか俳優のような慣れてる人達とは違ってみんなはまだ駆け出しのバンドマン。

 ほぼ一般人と変わらない彼女達にいきなりカメラを向けて意識するなと言うのも厳しいか。

 

 とはいえMVの方針的にも自然体の結束バンドを映すのが目的だ。

 変に意識させない方法となると……。

 

 

「も~みんなちゃんとやってくださいよ~! きゅるるんっ」

 

「喜多ちゃんその不自然な手元は何!? 小顔効果狙ってるよね!」

 

「虫歯ですっ☆」

 

 両手を顔の輪郭に添えるようにしてキメ顔ウインクまでかます喜多さん。

 写真などにもよく使われる小顔に見えるようなポーズをしている彼女だが、いかんせん言い訳が虫歯とか陽キャにあるまじき最悪な例えで嘘もへったくれもない。あと口できゅるるんっとか言うな。せめてキターンって言え。

 

 

「ひとりちゃんも緊張しなくて大丈夫だから、もっとこっち来てもいいんだよ~」

 

 知らない間に設定を終えてカメラを回している師匠が後藤さんに話しかけていた。

 ちなみに後藤さんは木の後ろで体育座りをしている。平常運転だね。

 

 

「あっ私映り悪いので撮らなくていいです……あとこれほとんど自然体です……」

 

「弟子君ヘルプ! どうすればいいの!?」

 

「しばらく経つと頭にキノコ生えてくるんでそれに栄養吸われたら救いを求めてこっちに寄ってくるか地面と一体化するの二択だと後藤生態レポート(自作)には書いてますね」

 

「それ自然体とかじゃなくてただ自然に還らされてるだけだよ!? あと生態レポートって何!?」

 

 ほほう、後藤さんは自然に優しい体の構造してるんだね。

 生態レポートについてはそろそろ40ページ超えそうだからまた整理しないと。

 

 

「そ、それに私、公園来たらいつも木陰で土いじりとか石を裏返したりしかしないので……。あっダンゴムシ……冬でも頑張ってるんだねぇ……ウガバァッ!? だ、ダンゴムシですらみんな寄せ合って温まりながら集団活動してるなんて……私よりも上位種なんだ……」

 

「ひとりちゃんはもう少しカメラ意識してくれない!?」

 

 勝手にダンゴムシ見つけて勝手に敗北する女子高生とか今までいたのかな。

 完全に後藤さんよりもダンゴムシは上位種だけど後藤さんは人間の中でも希少種だから安心していいよ。……いや奇行種か? 156㎝級の巨人……ではないな。普通サイズだ。

 

 

「……ん? でも待って。ひとりちゃんさっき()()()()自然体って言ってたよね。じゃあ普通の自然体って訳でもないんでしょ? それなら普段はどうしてるの?」

 

「あっそれは……」

 

 おっと、何だか空気の流れが乱れてきたかもしれない。

 少しお花を摘みにトイレに避難でもし──、

 

 

「ゆうくんが何だかんだいつも相手してくれます……」

 

「はいもう逃がさないよ弟子君」

 

「ぐぼっへぁ!? いきなり襟首引っ張られるのは普通に首締まるぅ!? てかやだっ、やだよ! 師匠のその目は絶対俺にMV出させる気満々のやつじゃん! さすがにサポート役っつってもMVとか表舞台に出るのは解釈違いだって! こんなのいつか過激派男性ファンに刺される未来しか見えないっ。推しの子に転生しちゃう来世しか視えないーっ!!」

 

「大丈夫、そんなの現実には起こらないから」

 

 現実とか言わないで。一応人間辞めてる代表そこにいるでしょうが。リアルと最もかけ離れてる存在だろそこのピンク。

 

 

「だって結束バンドの手伝いするんでしょ。大事な時に協力してあげないと弟子君がいる意味ないじゃん。あとひとりちゃん全体的に暗いし画にならない」

 

「もっと他に方法あるでしょ。喜多さんや虹夏さんと絡ませるとかっ。そうすりゃ後藤さんの闇だって多少は……1ミクロンくらいは明るくなるはず!」

 

「二人共さりげなくディスってるせいでぼっちちゃんに棘刺さってるよ」

 

「ヴッ!? ガッ!?」

 

 物理的ダメージ負ってる事に関してはもう虹夏さんも不思議に思わないのね。慣れって怖い。

 

 

「うーん……でも弟子君入れた方が面白くなりそうなんだけどな~。見た目も悪くはないし好青年さもありながらどこか高校一年生というあどけなさがある雰囲気……上手く活用すれば良いのできそうっ」

 

 ちくしょう映像学科生のスイッチが変なとこで入りやがった。

 こうなると中々止めらんないんだよなこの人……。

 

 

「弟子君そこ立ってて。逃げようとしたらジカちゃんに技かけてもらうから」

 

 地味に虹夏さん巻き込んでんじゃないよ。

 悪い事したヤツにしかそういうのしないんだぞうちの天使は。

 

 

「おっけー任せて」

 

 二つ返事で快諾しちゃったようちの天使。

 くそう、結局は女の友情の方が強いのか。男女の友情はそんなものなのかよ! 

 

 

「で、ひとりちゃんは弟子君の隣に立って」

 

「あっはい……」

 

 気付いたらいつも通りのポジションになってた。

 何だ、何をする気だ。

 

 

「うーん……ひとりちゃんっていつも猫背で俯いてるから映りが悪く見えちゃうんだよねぇ」

 

「二重顎になっちゃうからどう撮っても可愛くはならないわよね。よし、ここは私に任せてください!」

 

 同性に結構な物言いされてるけど本人はまったく気にしてない様子だ。

 いや少しは気にしろよ。一応女子だろ。

 

 

「ひとりちゃん、ちょっといいかしら?」

 

「えっは、はいっ」

 

「男女関係なく姿勢を正すのは大事なことよ。それだけでも見栄えは結構変わってくるものなの」

 

 喜多さんの女子力矯正指導が始まった。

 陽キャと陰キャが交差する時、物語は始まる……ってコト!? 俺はいつまでここに立ってればいいんだろう。

 

 

「ひとりちゃんは基本猫背だから常に巻き肩なのよね。そこから治していきましょ。ひとりちゃん、まずは背筋を伸ばして……そう、それでそのまま猫背にならないよう胸を張るように両肩を少し後ろに持っていくの」

 

 へえ、背筋伸ばすだけでも結構印象変わって見えてくるもんなんだな。

 あの後藤さんが既に別人のように見えてきた。真っ直ぐ立っているからかほんの少しだけいつもより背が高く見える。大体二センチほど。

 

 

「そして最後に顔をちゃんと上げたら……」

 

「あっえっ」

 

 するとあら不思議、姿勢を正すだけで下北沢のツチノコが顔面偏差値くそ高女子高生へと変身したではないか。

 前髪は相変わらずだが()()後藤さんの背景にいつも喜多さんが宿してるキラキラトーンが輝いていた。ガチのビフォーアフター感ある。これでピンクジャージじゃなかったらなあ……。

 

 

「あっなっ何か変わります……?」

 

「これよこれ~~~~!! どうです!? アイドル事務所入れると思いません~!? ビジュアル担当で売り出しましょうよ~!」

 

「いいね~ひとりちゃん! やっと画になったよ~! 弟子君を隣に添えるとより良い! 高校生カップル感あってMVらしくなってる~!」

 

 人を添え物にすんじゃねえ。

 

 

「十秒持たずにぼっちちゃん元に戻ったけど」

 

「ほらぁ、師匠が高校生カップル感とか言うからコンプレックス刺激されて戻っちまったじゃないすか~」

 

「あと優人くんはそこからもう離れなさい」

 

「んえ? 虹夏さん? いきなりなん……分かりました離れます離れますだから握力強めないで」

 

 急に虹夏さんに手を掴まれてカメラの外に連れていかれたと思えばまたも殺人スマイルを浮かべていた。

 え、あれに関しては絶対俺じゃなくて茶化した師匠が悪いと思うんですが……俺は少しもふざけてないよ! 

 

 

 そこからというもの、師匠達の指示になるべく従いながらMV撮影を進めていく俺達。

 いざ真面目にやってみればこれが意外と順調に撮影は進んでいった。

 

 基本的にノリの良い喜多さんと虹夏さんが普段通りのまま明るく公園遊具で遊び、気だるげな仕草すらいっそそういう一枚の画になるリョウさんはベンチで佇み、木を背もたれに座っている後藤さんは土をいじって、実は木の裏というカメラに映らない死角から後藤さんの相手をしてた俺。

 平凡な高校生の日常とは少しズレた風景にはなったが、これは結束バンドの日常として撮っているから問題も特にない。

 

 公園での撮影を終えるとみんなは公園のトイレで結束バンドパーカーの衣装に着替え移動。

 サビの演奏シーンを撮るために広い場所へ行き、人気の少ないとこで空をバックに演奏シーンを撮影した。やはり映像学科生だけあってロケーションの選出が上手い師匠達。一度スイッチが入ればもうファンではなく一人の撮影監督だ。

 

 次に制服に着替え街中で撮影準備をしていた時、俺は彼女達に声をかけた。

 

 

「俺から少し言いたい事あるんですけど、いいですか?」

 

「どうしたの?」

 

「撮影中、いつもスターリーで話してるとこやみんなで歩きながら喋っている時を思い出して過ごしてみてください。そうすれば多分、カメラを意識する事も少なくなると思うんで」

 

「うーん、一応努力はしてみるけど……」

 

「私も上手くできるか心配だわ……」

 

「大丈夫です。そこは不真面目筆頭のリョウさんといつもアレな後藤さんが虹夏さん達の緊張を和らげると思うので」

 

「優人、それは褒め言葉なのかバカにしてるのかどっち」

 

「半々」

 

「……半分褒めてるならまあいいか」

 

「いいんだ!?」

 

 さすがリョウさん、細かい事は気にしない精神嫌いじゃないぜ。

 

 

「後藤さん、いつも通りでいいから余計な事だけはしないようにな」

 

「えっ……あ、うん……が、頑張るっ」

 

 偉いぞ後藤さん、よく分かんなくてもとりあえず了承しちゃうとこ嫌いじゃないぜ。

 

 

 

 とまあ、そんなこんなで始まった街中撮影だが。

 始まってみれば俺の想像以上にみんな自然体でできていたと思う。師匠も一度もカメラを止めずに撮ってたし、おそらく俺のアドバイスが上手く効いたのかもしれない。そうだといいな。

 

 カメラを向けられても意識しない方法。

 実際それにも様々な方法があると思うが、結束バンドに最適だったのは結局意識しないではなく意識させない方法だったのだ。

 

 リーダーという事もありまとめ役で真面目な虹夏さん、陽キャであり常に映えとカメラ目線を意識している喜多さん。

 両者の細かい問題点こそは違えど真面目だからこそちゃんとやろうと逆に意識してしまう虹夏さんに、どこにいれば映りが良くなるかを意識してしまう喜多さん。終着点は同じだ。

 

 だからその意識してしまう気持ちを吹っ飛ばせばいい。

 真面目な彼女達を上回る自然体の権化をぶつけりゃいいのだ。

 

 つまりナチュラルボケ二人がいつも通りにさえしていれば虹夏さんはリョウさんのボケに構わざるを得ないし、喜多さんは何とか頑張ろうと無駄な努力をする後藤さんを放っておけない。

 ここまで流れができれば後はもう放置で良い。

 

 こちらがカメラを回してるだけで彼女達は気付けば毎日行っているような会話を繰り広げてただただ日常を振りまいていく。

 カメラを意識している暇もない虹夏さん達も、いつの間にかいつもの帰宅風景のように楽しそうに話しているだけになっていた。

 

 まあこんな手法が使えるのは個性爆発してる後藤さんとリョウさんがいる結束バンドだけだからというのもあるが。

 ともかく、こんな感じでMVは最初だけ躓きはしたものの、途中からは最後まで滞りなく撮影が進み終了を迎えたのだった。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 無事にMV撮影も終わった翌日の事。

 俺は虹夏さんの家に来ていた。正確に言うと玄関の前だが。

 

 

「はいこれ、優人くんの服ね」

 

「わざわざありがとうございます虹夏さん。あのアホのせいで手を煩わせてしまってからに……」

 

「いいよいいよ別に! あのまま服を放置してた方がよっぽど悲惨な事になってたかもしれないしっ」

 

「それは、確かに……」

 

 昨日の後藤さんリバース事件の件で虹夏さんが俺の服を洗濯してくれてたから受け取りに来たという訳だ。決して他意はない。

 他のメンバーは今スターリーでバイト中である。にしても後藤さんめ、吐いた張本人が一緒に来ないとは良い度胸してやがる。いやもういいけどさ。

 

 ちなみに店長もスターリーにいるため、今ここにいるのは俺と虹夏さんだけだ。

 何だろう、玄関の前とはいえ女の子に家に来るのは何だかむず痒い。後藤さんの家はもう第二の家みたいなものだしリョウさんの家は豪華すぎて現実感なかったのでカウントには入らない。ごく普通のマンションという所に虹夏さんが住んでいるのがリアル感あってとても良いですね、はい。

 

 

「さすがに悪いんで今度またお礼とかさせてくださいね」

 

「え、いいよそんなの! 困った時はお互い様でしょっ?」

 

「虹夏さんからの施しを返さないままだったらそれこそ俺に罰が下るでしょうがあ!!」

 

「何の罰!? というか施しって何!?」

 

 俺が俺自身に罰を下すのです。天使にはちゃんと奉納しないと……。

 

 

「まああれですよ。このままだと俺の気が済まないので大人しくお礼させやがれください。拒否権はなしです」

 

「脅迫感が凄いお礼なんて初めて聞いたよ……」

 

 強行手段でいかないと虹夏さんくらいの人は折れないと思ったんでね。

 

 

「俺にできる事なら何でもしますから、何かしてほしい事とか欲しい物とかあったら言ってくださいね。二十万円くらいまでなら出します」

 

「高校生が軽々しく言っちゃダメな値段だよそれ!?」

 

「虹夏さんに貢ぐならこんなのまだまだ安い方でしょうがあッ!!」

 

「さっきから圧が凄いんだけど!?」

 

 元々の貯金と虹夏さん達より長くバイトしてるからまあまあ貯まってる方ではある。

 マンガとか以外に使い道なかったもので。今ではギターとかカメラとか機材に使ってるから順調に減ってきてるけど。一個一個の出費が大きすぎる。

 

 俺の圧に困っている様子の虹夏さんだったが、次第にその表情は変わっていき最後には少し俯いていた。

 

 

「えっと、あたしのお願い、聞いてくれるん……だよね?」

 

「何なりと」

 

 折れたか。折れたな。折ってやったぜ。

 

 

「あー、じゃあ、さ……? MV撮影も終わって完成待ちなのとあとはデモテープ送るだけだし、色々忙しかったけどやっと落ち着けるじゃん?」

 

「? はい、ですね」

 

「だからね、落ち着いたらで良いんだけど……休みの日にどっか遊びに行かない? もちろんこれはあたしのお願いだから二人だけでね」

 

「虹夏さんと……遊びに、だと……!?」

 

 それなんてご褒美? 

 いいの? むしろそのお願い俺の方が役得な気がするんですが……。虹夏さんと二人で……二人でかぁ……ん? そういやこんな感じのこと前にどこかで……。

 

 

「……ああ、そういえば前に後藤さんの家でも同じこと言ってましたね」

 

「え?」

 

「確か喜多さん達とも二人で出掛けたりしたから自分ともどこか行こうって言ってたじゃないですか。お互い親睦を深めればもっとサポートしやすい環境になるかもしれないって」

 

「……あ~、なんかそういう事も言ってた……かな」

 

「そういう事なら別にいいですよ。約束してたんだし、落ち着いたらお礼も兼ねて二人でどっか遊びに行きますか!」

 

「ん~、何か期待してたのと違う反応だけど……まあいっかぁ」

 

 どんな反応期待してたんだろう。

 虹夏さんのためならどんな反応だってしちゃうぜ俺ぁ! 

 

 

「じゃあスターリーに戻ろっか。今日も練習頑張るよ~!」

 

「今日はバイトですよ」

 

 

 とまあ、こんな感じでMV撮影が終わって虹夏さんと遊びに行くことが確定した。

 

 

 

 余談だが、後日完成したMVを見ると完成度自体は高かったものの、画にならないからという理由で後藤さんの出番は演奏シーン以外全てカットされていた。

 俺も密かに手伝ったのになぁ……。

 

 

 

 






虹夏ちゃん個人回はいつになるやら。


では、今回高評価を入れてくださった

☆10:Soenaさん、金心太さん、vongolaさん

☆9:telinckさん、はむまんさん、犬夜叉さん、モチモチこしあんさん、ザラメ雪さん、完全無欠のボトル野郎さん、タスマニアさん、夢幻世界のツァラトゥストラさん、イキョウさん

☆8:ハルオトさん

本当にありがとうございます!
もう少しで記念すべき100万UAに到達しそう。
もっと色んな人に楽しんでもらいたいからみんな高評価とかここすき頼んだぜ!!
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