再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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もうお盆終わったってマジ?
あと三ヶ月くらい続けない?




87.陽キャの唐突な行動に陰キャは弱い

 

 

 

「あっゆうくんやっと帰ってき……ど、どうしたのそんな笑顔になって……?」

 

「カラオケの神様を見たんだ。それはもうお一人ではしゃぎにはしゃいでおられたよ。きっとご利益があるに違いないな!」

 

「トイレに行ったのにトイレの神様見たとかじゃないのね。というかカラオケの神様って何?」

 

 知らん。俺に聞かれても困る。

 もしかしたら妖精かもしれない。ほら、妖精って基本自分から人の前に現れないコミュ症なとこあるから。だからあのツンデレツインテールの姿に見えたのかな? 

 

 

「まあいっか。ちょうど歌い終わったとこだし、次優人君が入れてよ」

 

「あいよ、じゃあそうさせてもらうかな」

 

 喜多さんからデンモクを受け取る。喜多さんのために来てるとはいえ一応今のところは遊びに来てる体だし、俺も二度目のカラオケだから少しだけ楽しませてもらうか。

 と、歌手名検索を押した時だった。

 

 廊下の方からドドドドドドドドドッと、とんでもねー足音が近づいてきたのだ。

 え、何、地鳴らし? エレン来た? 進撃されてる? 

 

 そう思ったのも束の間。

 その音はこちら側に迫り、やがて勢いよく俺達のドアが開かれた。

 

 足音の主は。

 

 

「なんで目が合ったのにスルーしていくのよ!! なんで貴方がここにいるのよ私の用事を断るくらいの予定があったんじゃないの!? なんでこんな時に限って偶然会っちゃう訳!?」

 

 なんでが多いなカラオケの神様もといヨヨさん。

 つうか俺を見つけたからっていきなり勝手に部屋に入ってくるの肝が据わりすぎでは。あと残念な事に常識とマナーが足りてないね……。

 

 

「あれ? 大槻さん? どうしてここに?」

 

 そして頭に血が上っていたのか、どうやら俺以外に人がいるのを確認してなかったらしい。

 ポカンとヨヨさんを見ている喜多さんに、急なドアバンと人の大声でキャパが超えたのか倒れながら俺の足にしがみついてる死体のなりそこないを見たヨヨさんはどんどん顔に熱がこもっていく。とりあえず後藤さんは離れて。拭いたとはいえさっき床にジュース零したでしょうが。若干まだ汚いよそこ。

 

 だんだん目がグルグルになっていくヨヨさん。小さく「後藤ひとりもいるなんて……」と呟いたのも俺はちゃんと聞こえたぞ。

 いつも通り彼女は腕を組みターゲットを絞ったのか俺だけをキッと強く見ながら、

 

 

「ば、バンドメンバーが全員ドタキャンしたから仕方なく一人で来ただけで好きでヒトカラしてる訳じゃないからッ!! そう! ほんっとーに仕方なくよ! あと一人で行くのも何だしせっかく貴方を誘ってあげようとしたのに断るからこんな事になってしまったんだからね!」

 

「俺のせいにされてもなあ」

 

 ここでじゃあ他の友達誘えば良いじゃんとか言ったら地雷なので無闇な事は言わない。

 何故なら俺とシデロスメンバー以外友達いないからだ。あとメンバードタキャンとかも多分嘘。これ元々ヒトカラの予定だったか普通に俺と遊びたくてカラオケで待ってたやつだと思う。

 

 

「貴方さえ断らなければそもそもヒトカラなんかに来なかったし? それを勘違いして気を遣ったのか知らないけどあの態度はないんじゃない清水優人? こっちはもう貴方が来る前提で料理とか頼んでたのに酷いと思わないの?」

 

「ごめんヨヨさん……まさかそこまでだったとは俺も予想できてなかった……」

 

「え? そこまでって何が……? な、何で肩に手を置いてるのよ! まずその哀れみと同情の目をやめなさい!! 違うって言ってるでしょお!」

 

 カラオケで待ってた説はあると思ってたけど料理まで頼んでたとは思わなかった。

 普通に俺と楽しみたかっただけじゃんこの人。なのに俺は勝手に一人ではしゃいでるカラオケの神様と勘違いしてたなんて……泣けるに決まってんだろこんなの。もう全米が泣いた。

 

 

「……えっとぉ、優人君? もしかして大槻さんと遊ぶ予定だったの?」

 

「滅相もございません姫。わたくし清水優人はいついかなる時もあなた様第一、ひいては結束バンドファーストで動きます故、何卒誤解の無きようお願いします」

 

 喜多さん最近言葉の温度冷たくするの得意になってきたよね。

 怖いのでできれば控えてくれると助かります。

 

 

「え、急に何よその口調気味悪いわね」

 

「優人君が無駄に丁寧な言葉遣いで私達を持ち上げる時はクロなのよね。そうでしょ、ひとりちゃん?」

 

「はい」

 

 うわっ……俺の信用度、低すぎ……? 

 いやマジで低い。しかもちゃんとバレてる辺り救いようもない。あの後藤さんですら最初に「あっ」って言ってないし。めっちゃ確信持ってるやん。

 

 だがしかし、俺だって何も学ばないアホではない。罰の回避手段ならいくつか考えているのだ。

 よし、ここは外部のヨヨさんに助けてもらおう。そう、困った時の他力本願よぉ! 

 

 

「さあさあヨヨさん、せっかくなんで一人ならここで一緒に歌いません? 俺もいるし当初の目的と一致してますよね? ね?」

 

「いきなりグイグイ来るわね……。ま、まあ? 貴方がそこまで言うなら別にいいけど……? し、仕方ないわねぇ~たまには大人数でもいいか~っ」

 

 ヨヨさん出てる。ヒトカラだったのが思いっきり出てるよ。

 たまには大人数でもいいっていつも一人でカラオケ来てるって遠回しでもなくむしろ近道で言っちゃってるよー。

 

 

「……まあ、私を優先してくれたのは事実だし、今日は許してあげるわ優人君」

 

 一応先約なんだからそりゃ優先するでしょうよ。何はともあれ制裁は回避できたから良しとしよう。マジで心臓に悪い。

 いや別に悪い事は何一つしてないけどさ。もはや条件反射で体が勝手に怯え始めるのやばくない? 

 

 

 

 

「この男に誘われたから仕方なくだけどお邪魔する訳だし……これ私の部屋で頼んでた料理、食べる?」

 

 俺が来る前提と思ってたとしても一人で頼むにしては多すぎませんかねこの料理って質問は多分アウトだ。おそらく予備動作なしで裏拳飛んでくる。

 それにしてもピザやら山盛りポテトやらから揚げやらスナック菓子やら、定番の物はほとんど頼んでるなこの人。まさか俺の好みが分からんから人気なのを片っ端に頼んだとか? いや、さすがにないか。

 

 そしてこのラインナップを見て一番目を輝かせてるのが子供舌万歳な後藤さんである。

 ヨヨさんの死角に入る状態で俺の裾をちょいちょいと引っ張ってきた。

 

 

「ゆうくんっ……これ、食べてもいいのかなっ……?」

 

「あーはいはい、分かったから今日一番の目の輝きを抑えなさい。じゃあヨヨさん、ありがたくいただきますね」

 

「フンッ、別にいいわよ。元々貴方の分も頼んでただけだから」

 

 今日偶然出会ってなかったらこれ一人で寂しく食べるつもりだったのかなと考えると途端に申し訳なさが凄くなってきた。

 ヨヨさんがちょびちょびポテトをつまむのが容易に想像できてしまうのもまた切なさを加速させる一端だと思う。

 

 

「よーし、ゴーサインは出たぞ後藤さん。いっちゃいなさい。全部平らげて迎えるはずだった悲劇を残す事なく吸い込んじゃいなさい。来て、ワープスター!」

 

「どんな想像してるのよ!」

 

「ひとりちゃんほんとにカービィみたいにから揚げ吸い込んでるんだけど……」

 

 さすが後藤さんだ。同じピンクカラーだから再現性も高いね。怖いね。

 でもやっぱり普段みたいに美味しそうにちびちび食べてる後藤さんの方が目の保養になるからやめようか。あとそのヒュゴォォォって勢いよく吸い込むのはカービィじゃなくてルリアだぞ。ピンクというより蒼の少女だからねあっちは。グランでブルーなファンタジーの世界だから。

 

 

「じゃあこっちはこっちでカラオケに戻りましょうか。せっかくだしヨヨさん歌ってみてくださいよ」

 

「え、でもさっき私が乗り込んだ時にデンモク持ってたのは貴方なんだし、貴方が歌う番じゃなかったの?」

 

 乗り込んできた自覚はあったのね。

 

 

「まあまあ、俺がヨヨさんの歌を聴きたいってだけなんで。頼んます」

 

「……ふ、ふーん? ならしょうがないわねぇ~。全然? 気は乗らないけど……?」

 

 一人の時めっちゃノリノリで歌ってたのによく言うな。

 俺から受け取ったデンモクを手際よく操作していくヨヨさん。既に歌う曲を決めてたのか。十八番とか歌うのかね。

 

 で、モニターに映し出されたタイトル、そのアーティスト名のところには思いっきりSIDEROSと表示されていた。

 めっちゃドヤ顔でこっちを見てくるツンデレツインテールさん。顔が良いから普通に様になってるのがちょっと悔しい。

 

 

「じゃあ私のバンドの曲でも歌ってあげるわ!」

 

「え~! シデロスの曲カラオケに入ってるんですか!? すごーい!」

 

「まあ私達レベルになればこんなものよ」

 

 ドヤッてるヨヨさんはいつ見ても輝いてますな。自己承認欲に素直すぎるとこは嫌いじゃないよ。

 すると同じくらい承認欲求モンスターのから揚げ食べ過ぎで唇が少し油でテカってる後藤さんがスマホを見ながら、

 

 

「あっでもリクエスト申請すれば入れてもらえるらしいですよ……」

 

「じゃあ私達の曲も入れてもらいましょうよ!」

 

 ふーん、やるじゃん。ちゃんと自分で調べて報告するなんて成長だな後藤さん。

 多分というか確実に承認欲求満たしたいがために調べただけだろうけど。いいんだ別に。クソみたいな動機だろうと一ミリでも成長すれば後藤さんにとっちゃ大きな一歩なんだから! 

 

 油でテッカテカになった後藤さんの口をティッシュで拭きながら俺も一緒に画面を見てると、

 

 

「そっそれにはたくさんの人のリクエスト票が必要だけどねっ」

 

「あら、そうなのね。なら無理そうかしら」

 

「学校のヤツらに頼んだらいけそうではあるけどなあ。そこんとこどうすかヨヨさん」

 

「え? さ、さあ? 私達の曲も気付いたら入ってたし、そっちももっと有名になればこうなる事もなくはないんじゃない? 多分……」

 

 どのくらいの数の票が必要か分からない以上、下手に頼み込んで失敗しましたじゃあれか。

 MVのおかげで最近は知名度も少しくらいは広がってきてるが、それでもシデロスにはまだ及ばないから当面は様子見としておこう。

 

 そしてヨヨさんはこのまま自分のバンドの曲を歌い始めた。

 ライブで聴くのとじゃまた違って新鮮だけど相変わらず上手いなこの人。いつもはギターを弾きながら歌ってるが、カラオケで歌だけに集中できていると余計にそっちに意識が行き彼女の歌う姿から目が離せなくなっている。

 

 何というかこう、説得力のある声というか惹き込まれる歌声なんだと思う。

 歌に感情を込められるのはボーカルとして立派な武器の一つだろう。それをしっかり理解しながら彼女は歌っている。

 

 うん、偶然とはいえやっぱりヨヨさんを誘って正解だった。

 当初の目的は忘れていない。今日カラオケに来たのは喜多さんの練習のためだ。言い方は悪いかもしれないが、こんな近くにちょうど良い比較対象がいるなら比べるのも手間が省けるし一番手っ取り早い。

 

 ヨヨさんが歌い終わり次は喜多さんが歌う番となる。

 俺は絶対に歌いたい訳でもなかったからとりあえず比較するため喜多さんに代わってもらった次第だ。

 

 で、再び喜多さんが歌い始めた訳だが。

 

 

「……」

 

 上手い。もはや何度聴いて見てきたかも分からないくらい喜多さんの歌う姿を拝聴してきたが、素人の俺からしても身内贔屓なしで十分に上手いと断言できる。

 少なくとも結束バンドを一番近くで見てきた俺はその姿に惚れたのだから。

 

 ただ、だ。

 直前までヨヨさんの歌を聴いていたからこそその違和感に気付いてしまった。

 

 上手いは上手い。しかし、ヨヨさんほどに惹き込まれるかどうかと言われれば、答えは否だった。

 結束バンドの演奏を見て惹き込まれる事は何度もあった。バンド全体を通して見れば間違いなく魅了されるモノを持っていた。目を離せられない瞬間だってたくさんあった。

 

 でも。

 だけど。

 

 喜多さんの歌声単体だけだと、ヨヨさんの後だとどうしてもそうは思えないと()()()()()()()

 悪い所は特にない。だけど同時に良い所も特にない。良くも悪くも突出しているモノや特徴らしいモノもない。まるでずっと平均ラインを辿っているような感覚。

 

 二人の歌声を聴いた上で、喜多さんとヨヨさんの違いを自分なりに分析してみる。

 ビブラートや抑揚といった歌う上での技術とはまた違うような感じがした。何となく自分が好きなバンドボーカルの良い所を一つずつ羅列していく。

 すると。

 

 

「歌声、表現力……あるいは感情や気持ちの乗せ方……?」

 

「ゆうくん……?」

 

「ああ、ごめん。何でもないよ」

 

 深く考えすぎて声に出てしまってたらしい。

 

 

「……ねえ、もしかして今日はただ遊びに来ただけじゃないの?」

 

 喜多さんの様子がおかしい事に気付いたのか、ヨヨさんが俺に向けてそう言ってきた。

 

 

「あー、そのですね」

 

「いいわ優人君、私から説明するからっ」

 

 俺から言おうとすると喜多さんから止められる。

 まあ、喜多さんが直接説明する方が分かりやすいか。

 

 

「えっと、実は今日練習に来てたんです。それで優人君に付き合ってもらって、ひとりちゃんにも一緒に来てもらった訳で……」

 

「っ……!? っ? ッ!?」

 

 後藤さんがそうだったの!? 聞いてないけど!? みたいな顔してこっち見てる。

 ああ、うん、そうだね。これに関しては俺らの説明不足だったわ。ごめんごめん。まさかヨヨさんに会うとも思ってなかったからさ。てへぺろっ☆

 

 ちょうど良いので後藤さんにも喜多さんの説明を聞いてもらう事にする。

 

 

「という訳で、聴き返してるうちに違和感覚えて自信なくなっちゃって……でも何がダメなのかもよく分からなくて……」

 

「ふーん、なるほどね」

 

 ある程度説明を終えるとヨヨさんがこちらを見てきた。

 

 

「そういう予定だったなら私の誘いを断ったのも納得だわ。一応貴方もちゃんと支えようとしてるのね」

 

「あたぼうでしょうよ」

 

 そのために一週間そっちに行ったんだぞ。

 

 

「まあそうね。とりあえずもう少しお腹から声出したら?」

 

 ヨヨさんのボーカル講座が始まった。

 こういう時の彼女はためになる事を言ってくれる事も多いが、それと同時にチクチク言葉を連続で浴びせてくるのであまり対人向けではない。俺も何度もその餌食になったので痛感してる。つうか対人向けじゃない講座って何なんだよ。

 

 

「あとカラオケが上手いからってレコーディングも上手いとは限らない。カラオケ感覚でやってたら変なのは当然でしょ。バンドのボーカルはフロントマンだから、音程が合ってればそれで良いってもんじゃない。もちろんそれはライブにも言える事よ」

 

 始まった。ツンデレのツンの部分攻撃だ。

 俺は元からこの人がツンデレだと分かっていたからダメージも少なかったけど、それを知らない喜多さんからすれば結構なダメ出しにも聞こえると思う。現に喜多さんは委縮してしまってる状態だ。

 

 ほんと不器用な人でごめんな、悪気はないからこの人も。

 もうちょいだけ待ってくれたら勝手にデレてアドバイスくれるから。

 

 

「まあ今の貴方には結束バンドのボーカルである必要性は感じられ」

 

「ストップヨヨさん」

 

「っ」

 

 ヨヨさんの言いたい事は分かっている。何だかんだちゃんとこの後自分でフォローを入れる事も理解しているし、間違った事を言ってる訳じゃないのも聞いていて分かる。

 分かってはいるけれど、どうしてもその先の言葉を止めずにはいられなかった。

 

 

「ごめんヨヨさん。アンタがこの後ちゃんとアドバイスをくれるってのは分かってるんだけどさ……だとしても、ヨヨさんの口からであってもそれだけは聞きたくないんだ」

 

 申し訳なさそうに苦笑いで繕う。普段態度がキツく捉えられがちな彼女でも、責められ役を買って出る必要はどこにもない。

 ここにいる誰もが無意味に傷つくような事は絶対にあってはならない。まあ言葉がキツくても本来優しいヨヨさん本人はその気なんてそもそもないだろうが。

 

 何となく、ヨヨさんから結束バンドのボーカルは喜多さんじゃなくてもいいなんて言葉は聞きたくなかった。

 そこに関しては俺個人のわがままだ。

 

 

「……そう、ね。私も、そこまで言いたかった訳じゃないし、言い方が悪かったのは認めるわ。ごめんなさい……」

 

「え、あ、はい」

 

 驚いた。ヨヨさんが案外素直に謝ってくれただと? 

 これは明日雪でも降るんじゃ……いやまだ二月だしそれは普通にあり得るか。

 

 

「あ、あとっ」

 

 いきなり隣の後藤さんが立ち上がった。

 

 

「け、結束バンドのボーカルは喜多ちゃんじゃないと絶対ダメ……です!」

 

「ひとりちゃん……」

 

「へえ……」

 

 何だよ、言えたじゃねえか。聞けて良かった。

 というのは冗談で。いや冗談ではないけども。

 

 後藤さんがここまではっきり言うのも珍しいな。それだけ結束バンドに対して思い入れがある証拠だろう。

 うむ、偉いぞ。マジでよく言った。余はとても気分が良い。褒めて遣わす。今日のカラオケ代は俺が出してやろうではないか。

 

 

「ありがとうっ。優人君も……私頑張るから!」

 

「あっはい……」

 

「結束バンドのみんなで末永くやってくれりゃそれでいいよ。あ、ヨヨさんそろそろアドバイスの方よろしくお願いしまーす!」

 

「この流れで言えるかあッ!!」

 

 どうやらあのヨヨさんも流れを読む事はできたらしい。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 三時間が経ちカラオケを後にした俺達。

 結局あの後は普通にカラオケを楽しみ(主に喜多さんとヨヨさんが歌う)、その都度ヨヨさんが控えめにアドバイスをしていく流れになった。俺の時よりアドバイス優しめだったのはきっと気のせいじゃない。

 

 喜多さんとヨヨさんが前を歩き、俺と後藤さんはその後ろを着いていく形で駅まで歩いている。

 ちゃんとは聞こえないけどおそらく今もヨヨさんが何かしらアドバイスをしているのだろう。喜多さんほどの陽キャなら慣れればヨヨさんのコミュ症ガードオーラさえ突破できるらしい。無敵か? 

 

 

「やっぱこういうのは適材適所だよなあ」

 

「ゆうくん、やっぱり喜多ちゃんのために色々やってたんだね……」

 

「ん、まあな。みんなを支えるのが俺の仕事だし、結束バンドのためなら何だってやるさ」

 

 将来的には俺が全部適材適所を補えるようになりたいが、そう簡単にいけるとも限らないし今は頼れるとこは全部頼っていきたい所存だ。

 みんなが成長できるなら俺のプライドなんてドブに捨ててやろうじゃないか。はっはっは!! 

 

 そんな話をしつつ駅のホームへ。

 ヨヨさんとも既に別れ、ちゃんとした埋め合わせというかお礼はまた後日という事にしてもらった。

 

 当然俺と後藤さんは電車一緒で喜多さんは別だ。

 だから俺達が乗る電車が来て、喜多さんと別れの一言をと思った矢先。

 

 

「じゃあ喜多さん、また月曜な……って、え?」

 

 電車に乗って振り向くとそこに喜多さんはおらず、何なら後藤さんの隣のシートに座っていた。

 

 

「えっ……で、電車違いますよ……?」

 

 そりゃ後藤さんも驚くわな。

 気付いたらそこにいるんだもの。でもな後藤さん、それ君がいつも俺にしてる事だからね。もう慣れたからいいけど。

 

 

「今後のバンド活動のためにボーカルは自分の曲の理解をもっと深めた方が良いと思うの。大槻さんも似たようなことを言ってたわ」

 

「はえー、そんなこと話してたのか。それでこの電車に乗った理由は?」

 

「ひとりちゃんに歌詞を直接解説してもらえれば私の課題の突破口が開けるかも!」

 

「ほうほう、その心は?」

 

「だから今週末ひとりちゃんのお家に泊まらせて!」

 

「マッ゜」

 

 ……なるほど、一理あるな!! (思考放棄)

 頑張れ後藤さん、念願の友達とのお泊まり女子会だぞ。俺は家でゆったり応援してるからな!! 親睦深めてバンドとしても成長できるといいね! 

 

 

 

 





ヨヨさんはな、良い子なんだよ……。



では、今回高評価を入れてくださった

☆10:おとぎソールさん、リュティさん、银堡垒さん、たーまさん、遊技林さん、Mr.アヒルマンさん、ナタラさん、bigbenさん、(若狐)さん、週膳緋葉さん、アステリライオスさん、待宵月さん、鷹ヒーローさん、いぐぁさん、グランアースさん、ロッティさん、汽車男さん、りんごソーダさん、イルカおいしいさん、tirasizusiさん、あったかモコモコさん

☆9:ヨッシー1001さん、ironikaさん、SU8RUさん、タスマニアさん、鳩兎さん、へべれけ198さん、Financerさん、極彩さん、サバの砂糖煮さん、noxlightさん、赤 紫さん、モチモチこしあんさん、ヨリさん、えつさけさん、おしょーさん、完全無欠のボトル野郎さん、イキョウさん、グレートメカ村さん、たたかかさん、ホークん、さん、ザラメ雪さん、どどらきさん、春坊さん

本当にありがとうございます!
感想とかもいっぱいくれると嬉しいなああああああああ!!
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