再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
実は当初、別サイトでぼ喜多の小説書こうかなと思ってた時期もありました。
もはや息抜きで書き始めたこっちの方が楽しくなってきてるとこある。
バイトが翌日まで迫った夕方。
俺は後藤家へお呼ばれされていた。理由は言わずもがな、後藤さんの妹、ふたりちゃんにゆーくんあそぼーと言われたからである。
俺からすれば両親の次くらいには逆らえないほど充分な理由だ。だってめちゃくちゃ可愛いんだもん。超懐いてくれるんだもん。シナモンカルダモン。
こんなの毎日あそぼーって言われても遊んじゃう。本当の妹ができたみたいで甘やかしたくなるほど良い子だしな。たまに後藤さんに対して無邪気な精神攻撃してるけど、悪気ないもんねー?
俺がふたりちゃんと遊んでる間、後藤さんは晩ご飯できるまで風呂に入ってくると言っていた。その顔には何かしらの決意があったのを俺は見逃していない。
後藤さん、ちゃんとバイトやる気になったんだな。この前トドメさしてしまった時は家までずっと死んでた後藤さんをおんぶしてて結局何も聞けなかったし。
これなら明日も大丈夫そうだ。
「ゆーくんっ、次は何やるー? ジミヘン弾くー?」
「うーん、
「お腹わしゃわしゃが弾くってことなんだよー! きゃーわしゃわしゃー!!」
「へーそうなのかー。それならお兄ちゃんにもできそうだなー」
ふたりちゃんがジミヘンのお腹を両手でわしゃわしゃし、ジミヘンはワンワン言いながら尻尾を振っていた。
ジミヘンは楽器だった……?
「飽きたー! ゆーくん次はジミヘンと一緒に追いかけっこしよー!」
「ふたりちゃんはともかくお兄ちゃんが家の中で走っちゃったらちょっとうるさくなるから、もっと静かに遊べそうな事しよっか?」
「じゃあみによんずごっこしよ! ばなな~ば~なな~! なー! ば~な~!」
うん、何言ってるか全然分からん。あれか、小さくて黄色いあいつか。見た事ないから何も知らないんだけどノリでいけるかなこれ。
バナナとか言ってるけど、適当に言っておけば何とかなるか。子供だし細かい違いなんて分からないだろ。
「バーナー」
「みによんはそんな声低くないよ」
「うん、あ、えと、ごめん。みによんず見た事ないから分からなかったんだお兄ちゃん」
まさかのダメだし喰らったんですけど。さすがに誤魔化せなかったか。フシギバナの声真似じゃ低すぎたらしい。
今日の遊びはハードル高いなあふたりちゃん。五歳にしてはしっかりしてそうではあるけど、やはり突然突拍子もない事を言いだすのは子供特有だな。
「あっ、ふたりちゃん。お兄ちゃんちょっとママの晩ご飯のお手伝いしてくるから、ちょっとだけジミヘンと遊んでてくれる?」
「わかったー! 行くよージミヘン! 探検だー!」
元気すぎんか五歳児。無限に走り続けるじゃん。スタミナ底なしか。
家のそこら中からダダダダダダッと足音が聞こえてくる。この家は毎日賑やかで飽きなさそう。っと、いけないいけない。
「美智代さん、手伝いますよ」
「あら、ごめんね。ありがとゆう君。じゃあお味噌汁だけお願いしていい?」
「分かりました。少し薄めでいいんですよね?」
「ええ、助かっちゃうわ~」
晩ご飯をご馳走になる時、いつも自分家からも食材を持ってきて食費の負担を半分にしているが、それだけだと悪いから俺もこうしてたまに手伝っているのだ。そのおかげか気付けば後藤家の味もマスターしてしまっている程だった。
ちなみに今日は俺がふたりちゃんに呼ばれたから母と父は来ていない。普段は母も手伝ってるからその時は後藤さんやふたりちゃんの相手をしている。というのが幼馴染同士の日常である。
よし、味はこんなもんで良いか。
「さすがゆう君ねぇ。これならいつ娘を貰ってくれても安心できるわ~」
「さすがに要介護者のままはキツイです」
ちょっと隠さなくなってきたなこの人。だがしかし、ここで動じる俺ではない。何たってまだ高校一年だ。
俺は俺の青春ラブコメを自分で模索していかなくてはならない。そのためにも後藤さんには早くまともになってもらう必要がある。高校の時くらい俺にだってもっと選択肢があってもいいじゃない!
あれ、そういやさっきまで聞こえてたふたりちゃんの足音が聞こえなくなったな。どっかで大人しく遊んでるんだろうか。
そろそろ晩ご飯もできそうだし皿でも並べておくかと思った矢先、今度はタタタタッと軽い足音が聞こえてきた。遊びを終えて戻ってきたのかな。
「ゆーくーん、お姉ちゃんお風呂で沈んでるー」
「…………は?」
一瞬、呼吸が止まった。
気付いた時にはもうキッチンから走り出していた。
「あのバカっ、まさかのぼせてんじゃねえだろうなあッ!?」
急いで風呂場へ行き、相手が今どんな格好をしているかさえ気にも留めないで開ける。
こんな時に裸だとか気にしている場合ではない、下手すると命に係わるような事態になっているのだ。ここで心にブレーキなんて掛けられるはずもない。
「おい! 大丈夫かしっかりしろひと……」
そして、俺は目の前の光景を見て絶句した。
ふたりちゃんの言う通り、確かに彼女は沈みかけていた。しかし、その姿は全裸でもなく、スクール水着だった。
湯船には氷がいくつも浮かべられ、床には氷を入れていたであろう袋が散乱している。
完全に惨状だった。しかも偶発的に起こったものではなく、明らかに彼女が自分でやったという証拠まで出揃っている始末。
一気に熱が冷めていく感覚がした。
それはもう彼女が沈みかけていく氷風呂のように。
「……」
俺は何も言わないまま服が濡れる事も構わずにバカを持ち上げた。大工の人が木材を肩に担ぐ時のようなものを思い浮かべてくれればいい。
肩から冷たい水が垂れてくるが気にしない。バカもピクピクと震えていて意識があるのかないのか判断もできない。つうか口から漏れてる緑の液体は何だ。やっぱ人間辞めてんのか。
ふたりちゃんが横で「ゆーくん力持ちだー」とか言って着いてくる。かわいい。
そのままリビングへ行き、調理途中の美智代さんに言う。さすがにこの先は俺も踏み込んでいいものか分からないから。
「美智代さん」
「あら、またひとりちゃん何かやらかしたのねぇ」
「あとは俺がやっとくんでこのバカの体拭いて目覚まさせてやってください。あとで説教したいんで」
「鬼の顔だー」
ふたりちゃん、人の顔にそんな事言っちゃダメだよ。それが本当だとしてもね。
あれから何分経ったか。テーブルに並べられた晩ご飯、ふたりちゃんと直樹さんには先に食べておいてもらって、俺は美智代さんを待っていた。
直樹さんからは小声で「優人君だけは絶対に怒らせたらダメだぞふたり~」と言っていたが聞こえてます。全部あなたの娘が原因なんですがそれは。
少し待ってると美智代さんが降りてきた。
「ゆう君、まだ食べてなかったの?」
「ええ、お願いしておきながら先に食べるのはどうかと思いまして」
「別に良かったのに、ならもう食べましょうか」
「え、いや、でも」
「食べてる間にあの子も着替え終わるだろうし、その方が冷めずにすむでしょ?」
自分の娘が食べる頃には冷めてると思うんですけど。まあそこは自業自得か。
確かにせっかくお世話になってるのに料理を冷ましては悪い。親しき中にも礼儀ありである。
「じゃあ、先にいただきます」
「はい、どうぞ」
ものの五分で食べ終わった。
俺の気持ちは完全にバカへと向いているので、少し念を入れておく必要があるな。
「あの、まだ下に降りて来ないからちょっと上行ってきます。少しうるさくなっちゃったらすいません」
「あの子のためにもなるから気にしなくて大丈夫よぉ」
何でこんな優しい人からあんな愚かな娘が産まれたのだろうか。
その真相を確かめるべく、俺は
二階に上がる階段。そこからギターを掻き鳴らす音が聴こえてくる。
どういう事だ? 着替え終わったなら普通晩飯食べに降りてくるはずなんだが。今ギターの練習をする意味が分からない。
この時、俺は風呂場で自分の見た光景の意味をもっとしっかり考える必要があった。
いったいどういう思考に至って氷風呂なんてしたのか。わざわざバイト前日にそんな事をする理由が分からない。そう、分からないと思っている時点で俺は後藤さんへの理解をまだちゃんとしきれていなかったのだ。
襖を開ける。
扇風機の前にヤツはいた。
「……はぇ?」
まだ着替え終わってすらいなくて、下着とブラだけの装備。その上冷えピタを何枚も体に貼り付け強設定にされた扇風機の前でギターを持っている女がいた。
バカはこちらに気付きいっそへんてこな声を出している。理解が追い付いていないのだろう。
しかしそれとは逆に俺の脳内はすぐに理解した。男子高校生なら一度は夢見るラッキースケベな展開を前にしながらも、自分の中の熱が沸騰しそうになっていた事に。
これは興奮ではなく怒り。バンドのために頑張ると言っていた矢先にこれだ。
「ゆっ、ゆうく……!? あ、あわ、あわあばあばばばばば!?」
おそらく嫌すぎて休みたい。しかし無断では休めないというなけなしの真面目感から、正当な休める理由が欲しくて風邪を引こうとしたのだと思う。てか絶対そうだ。
不思議と怒っているのに冷静な自分もいて驚いているが、このバカへの怒りは膨れ上がっていっている。
自分でも恐ろしいくらい低い声が出た。
「……テメェ」
「はっ、般若……!?」
相手から見た俺の顔がどうなっているのとか知らん。そこまでしてバイト休もうと思っていても俺は許さんぞ。
その日、後藤家から断末魔の叫びが聞こえたとか何とか。
それが後藤さんの叫び声なのか俺の怒号だったのかは神のみぞ知る。
────
翌日。
見事に風邪を引かず元気に登校し、元気に暗いままスターリーまでやってきた俺と後藤さん。
その入口前で彼女はまだ渋っていた。
「いや、早く開けろって」
「でっ、でも……開けたらバイトが始まっちゃう……」
「開けなくてもシフト決まってんだから時間が来れば嫌でも始まるだろ。ほら開けなって。それとも昨日みたいにまた小一時間説教喰らいたいか?」
「あぁぁあうぅぅうぅ~……は、般若はもう嫌だぁ……!」
誰が般若や。何か軽いトラウマを植え付けてしまったらしい。今日も朝迎えに行った時は怯えたウサギみたいにずっとぷるぷるしてたし。
話しかける度に体がビクンッてなってたから相当怖かったんだろうな。でも後藤さん、それ因果応報って言うんだぜ。
「う、うぅ~……ぼっち頑張れぼっち頑張れぼっち頑張れぼっち頑張れぼっち頑張れ……!」
おぉ、そうだ頑張れ頑張れ。
自分でそのドアを開ける事が大事なんだ。後ろには優しい優しい俺がいるんだから安心してほしい。もう逃げないなら悪いようにはしないから。
そしてようやく後藤さんがドアを開けようとした時、
「チケットの販売は五時からですよ」
後ろから声がした。後藤さん以外に俺の後ろを取れるヤツがいるだと……!?
と、それは関係ないか。女性っぽい声がして振り返ると、金髪の人がいた。
「まだ準備中なんで」
ムスッとしたヤンキー的ムーブの女性だった。
あー、これはちょっと後藤さんと相性悪い人かもしれな──、
「ひぃっ!?」
ほら、言わんこっちゃねえ。
総評価数300超えた!!!!
やった!ありがとう!!このままもっと高評価ちょうだい!!!感想もちょうだい!!!!頑張るから!!!!!
では、今回高評価を入れてくださった
☆10:アカサカさん、袴野郎さん、ねっしーさん、詞連さん、ガハマスさん、おしなべきさん、HIROTさん、rumenさん、ベルナドットさん、Tai5341さん、juri16さん、YATA_uraさん、ガム玉さん、名無しのモンスターさん
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本当にありがとうございます!!
みんなほんま好っきゃねん!
最近どんどんぼっちちゃんが可愛く見えてくる不思議。