再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
いつもより早く書けたから早めに投稿する事にしただけっぴ。
時が流れるのも早いもので四月になった。
学生にとっては大きなイベント事の一つでもあり、進級したり先輩になったり教室が変わったりラジバンダリである。
桜の花びらがどこからともなく舞ってくるのを眺めながら幼馴染と登校中。
俺の名前は清水優人。
髪は茶色、身長は推定168㎝、誕生日12月21日、秀華高校に通っているが地元は金沢八景で通学に二時間を要しているというのを除けばどこにでもいる平凡な高校生だ。
ちなみに今日から進級して高校二年生です。
春ですよ皆さん、出会いと別れの季節ですよ! まあ二年や三年に知り合いとかいなかったから特に別れとかなかったけどね!
隣を歩いてる幼馴染も何とか進級する事ができ、今日も共に通学なうなのだが。
「(クラス替え……人間関係のリセット……陰キャのトラウマ学校イベント第三位……いやでも前のクラスじゃ人間関係築いてなかったし失うものは何もなかったからダメージはゼロ……それはそれでどうなんだ後藤ひとりーっ!)」
といった感じで朝からぶつぶつ独り言を呟いては頭を抱えているのをかれこれ二時間以上繰り返している。
二時間
俺の幼馴染、後藤ひとりは度を越したコミュ症陰キャである。
基本的に他人よりも自分を下の位置に置き、超絶ネガティブ思考と拗らせた性格が相まって現在進行形で社会不適合者に着々と足を踏み入れつつある大変困った女の子なのだ。あと時々人間やめる。
成績も悪く運動神経も壊滅的、本人は頑張っているけれど大体何をやらせても下の下でもはや可哀そうと思ってしまうほど。
そんな彼女にもたった一つだけ得意なものがある。それがギターだ。理由としては……え~……あー、うん……よし、はい以上。もう説明終わり、しんどい。
駅から歩いてると俺達みたいに慣れた足取りで通学路を歩く在校生もいる中、少しそわそわしながら友人と話したり遠慮がちにこちらへ視線を向けてくる新入生もいた。
二年になったのはなったけど実感というのも特にはない。変わった事といえば去年と比べて少し身長が伸びてるくらいか。今から身体測定が楽しみだなぁ。
あとこの一年で変わった事は……後藤さんか。
入学当初は中学まで色んな友達作り作戦を実行しては失敗に終わり、気付けば金魚のフンのように俺の背後を付き纏うようになっていたけど、今は結束バンドというバンドを組みバンド仲間にも恵まれ友達や知り合いも増えた。
彼女の性格や思考自体はほとんど変わっていないけど、交友関係が広がったのは間違いないだろう。
何だかんだ色々あった一年生だったが、二年になった今年もまた様々な事がありそうな予感がぷんぷんしている。だって交友関係のほぼ全てが個性の塊みたいな人達だもの。
隣を見てみる。
「(せめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラスせめてゆうくんと同じクラス)」
うん、今日も平和だなー。
呪詛みたいなの聞こえるけどきっと遠くにいる小鳥のさえずりか何かだ。春は桜と共に俺達を祝福してくれているのだ。そうに違いない。そうじゃないと困る。
後藤さんがぶつぶつ言っているせいか周囲の新入生から怪訝な視線を送られながら学校に到着。
まずは新しいクラスが表示されている掲示板へ向かう。
当然のように生徒がたくさんいるので後藤さんと一緒に後ろから覗き込むような形で掲示板を見る。
さて、俺のクラスは……と、
「……お、あった。ん? おぉ、俺と後藤さん一緒のクラスだってよ」
「(……………………………………ッッッシッ!!)」
全力でガッツポーズしてた。
まあこれなら俺もわざわざ教室に覗きに行く手間も省けるしちょうどいいか。そうこうしてるうちに他の生徒も掲示板に集まってきたから同じクラスの名前一覧を見る暇もなく、俺は人混みで暴走しないよう後藤さんの手を引いてそこを後にした。
「きゃああああー!! なにそれ!?」
教室に行ったらまず叫ばれた。俺ではなく後藤さんが。
そして声の主は喜多さんだった。あれ、この教室にいるって事はまさかだったりする……?
「あっえっ喜多ちゃん!?」
「あっそう! 同じクラスなのよ私達!」
やっぱりね。
仲良い友達がこっちにいるからここの教室来てるだけって可能性も考えたけど、喜多さんの人気度を考えたらむしろ友達の方がここに来る可能性高いもんな。
「それにしてもひとりちゃんその格好は何!?」
「あっえっと」
「何かの罰ゲーム!? そうよね!?」
「あっ……えっ!?」
喜多さんが指差して言ったのは後藤さんの服装……というか装備についてだ。
今の後藤さんはかつて大滑りした服装を少しだけ改善して改めて着てきた訳である。ヘアバンドにサングラス、無駄に長いネックレスとトートバッグにバンドの缶バッジを全面に付け、両腕にはラバーバンドをこれでもかと大量に装着し、ピンクジャージの下には禍々しいロゴT……ではなくアキレス腱ドロスのロゴTを着ているのだ。
「い、いや去年はこれで話のきっかけを作ろうとしたんですけど上手くいかなかったので、今年はドメジャーバンドにしてみたんですけど……」
「改善すべきはそこじゃないわ! 優人君もここまで一緒に登校してきたなら何で止めなかったの!?」
「これは後藤さんなりに頑張った結果だ。成功しようが失敗しようが俺はこの子の自主性を重んじているのだよ。マイナーバンドからメジャーバンドに変えただけでも立派な成長って訳」
「ちなみにこの作戦成功するって思ってた?」
「いや全然」
「えっ!!?!??!?」
有名バンドに変えたら話しかけてもらえるってところがもうダメだね。結局は大事なとこを他力本願にしてるから運が絡むし望み薄だし。
そういや登校中にめちゃくちゃ視線感じたのってこれが原因か。くそっ、後藤さんの奇行に慣れすぎてもはや俺も感覚が麻痺してきたかもしれない。
見事に装備の全てを喜多さんの手によって外され席についた俺達。
ちなみに席は俺の左斜め前が喜多さん、その後ろ……つまり俺の左隣が後藤さんという事になっている。喜多後藤清水と頭文字が近いからというのもあるだろうが、結構奇跡的な席順なんじゃないかこれ。前と右とで後藤さんをフォローできる布陣だぜ。
「それにしても同じクラスになれて良かったわ! クラスメイトとしてもよろしくねひとりちゃん! もちろん優人君も連続だけどよろしく!」
「おーう」
「あっき、喜多ちゃ……」
掲示板とこでちゃんとクラスの名前見とけばよかったな~と思いながら左を見ると、後藤さんが喜多さんに何か返事をしようと話しかける素振りを見せていた。
俺以外にも話せる人が近くにいるというのは確かに彼女にとってもありがたい事だ。
「ん? どうしたの?」
ただ喜多さんが後藤さんとは真逆の立ち位置で人気もあり陽キャの友人にすぐ囲まれるのを除けばの話だが。
「これが陽の世界……迂闊に近づいたら死ぬ……ゆうくぅ~ん……」
「何の話?」
「……悪い、後藤さん。俺もちょっと席外すわ」
「え」
「同じ教室にはいるから安心しろ。他にも去年と同じクラスになったヤツらがいるから挨拶に行くだけだよ」
「わ、私のオアシスがぁ……」
許せサスケ、また今度だ。
教室。窓側にて。
「またお前らと同じクラスになるとはなー。喜多さんともまた一緒だし先生何か考えてんのかね?」
「今年の担任去年俺らの担任してた人らしいぞ。特別仲良いヤツは同じにしてんのかもな。あと清水死ね」
「あの先生女性なのにノリ良いし接しやすいから助かるわ。あと清水カス」
「見た感じこのクラスもみんな仲良い部類の人達が集められてるみたいだよ。あと清水クズ」
「……一人でいる生徒が見当たらないしまた無駄に団結力強そうな一年になりそうだね。あと清水地獄落ちろ」
「ねえ進級早々俺ってばお前らに何かしましたかね? 語尾みたいに暴言吐いてくるじゃん」
なんと前のクラスで一番仲が良かった男子の田中、佐藤、高橋、鈴木とも同じクラスになったのである。
いやそれはいいとして何でいきなりこんな悪口言われなきゃいかんのよ。喧嘩か? 買うよ?
「喜多さんと一緒と喜んでたら余計なお前まで付いてきたんだぞ。そりゃキレるだろ。何なのお前、席までまた近いとかっ。しかも隣には幼馴染まで侍らせてやがるし! 教室入った時点で他の男子に飛び掛かられてないだけまだマシと思えよクソカスが」
「おい待てやそれ根本的に俺悪くねえじゃん! 同じクラスになったのもたまたまだし席が近いのも苗字の五十音順だから仕方ないだろ!? ……つうか言われてみればなんか他の男子からめちゃくちゃ変な視線感じるんだけど。誰かこの原因知ってるヤツ」
「他のクラスだった男子だね。清水は去年の文化祭でヘマして有名になったでしょ。女子からの誤解は解けてるし、時間も経ってるから男子も大体は事情分かってる人も多いだろうけど、それとはまた別の理由だね」
「別の理由?」
「あれが噂のクソ誑し野郎か人気者の喜多さんやその他の気に入った女は老いも若きも見境なくかっさらってヤツが通った後の道には草の根一本も残さない人間の最底辺清水優人かって。要は嫉妬だね」
「ぶふっ!? 全体的に尾ひれが付きすぎてるッ!! じゃねえそもそも尾ひれも何も噂の何一つが合ってねえじゃねえか! 完全な言い掛かりだ! 断固抗議させてもらう!! ……マジでそんな理由で飛び掛かられてたかもしれないの俺?」
「だから最初に清水へ話しかけにいった喜多さんに感謝しなよ。あれがなかったら今頃見知らぬ男子達にタコ殴りされてたかもしれないし」
初対面の人に暴力なんざ言語道断だと思うんですけど。
何なの、この学校の男子達はそんなに女の子と接点がないの。男子校上がりじゃないんだから少なくとも俺なんかよりそれなりの青春送ってきたんじゃないのか。てか喜多さんマジありがとう。多分無自覚なんだろうけども。
「まあ今となってはそんな気にする事もないと思うぞ。喜多さんと席が近い以上むやみに闇討ちされる事もないだろ」
「現代の学校の教室で闇討ちなんて単語聞くとは思ってなかったわ」
「変に仕掛けたら喜多さん達からの印象もマイナスになりかねんからな。殺るなら清水が一人になったとこを狙うべきだ」
「となると休み時間のトイレ、昼休みのトイレ、もしくは放課後どこかに連れ去るのも手」
「それが一番怪しまれずに殺れそうだな。他に良い案あるヤツは?」
あれ、何か流れ変わってません? 友人達がいきなり俺の暗殺計画の打ち合わせ始めたんですけど。
「というのは冗談で」
「ほんとか? ほんとに冗談なんだな? 信じてもいいんだな? もし嘘だったら最低でも田中だけは道連れにするぞ」
「「「それは別にいいよ」」」
「清水の俺への殺意はまだ分かるけどお前ら簡単に仲間売るの早すぎない?」
「まあさっきも言った通りこのクラスは仲の良い生徒が集められてるし、男子の清水に対する嫉妬心さえ除けば基本善人しかいないと思うよ。つまりは今年もノリの良いクラスになりそうって事」
「何もないまま仲良くなれるといいなあ~……」
軽い挨拶のつもりが春休み後もあってか結構話し込んでしまい、もうすぐでHRの時間だから自分の席へ戻る事にした。
「あ、おかえりなさい優人君。楽しそうに喋ってたわね!」
「ある意味戦々恐々したけどな……」
「そうなの?」
これからこのクラスの男子達と上手くやっていきたいところだが、ハードル高すぎてちょっと諦めかけてる。
いっその事拳と拳でぶつかり合えば分かり合えるか? 昨日の敵は今日の友とか言うし。敵ってなんだよクラスメイトでしょうが。
「あっゆうくん……へへっ、ど、どう? 私一人でもこの空間に耐えられたよ……」
「おおそうかーえらいえらい」
自分の席に座ってるだけなのにそれを耐えれたと思ってる時点で敗者だぞ後藤さんや。
喜多さんの周りに集まっていた女子も各々の場所へ戻っている。何だかんだ先生が来る前にはみんな席に座ってるところを見ると真面目なんだな。
そういや後藤さんの後ろの席の人はまだ来てないのか。誰なんだろ。
と、無駄に時間潰しの思考に耽っていると、
「喜多~今年も同じクラスじゃん。腐れ縁だね~」
「あ、さっつーおはようっ。これで五年連続ね~」
その人はやってきた。
何なら超知ってる人だった。
「お、清水も一緒か~。おいっすー」
「おいっす。こっちは二年連続だな」
「ファッ!?」
後藤さん急に大きな声出さないでほしい。ちょっと引く。
それにしても何というか、奇妙な縁だ。後藤さんを囲むように俺の知り合いが近いし。まあこっちの方が俺としてもありがたいけど。
「ウチとしてはいい加減喜多の顔は見飽きてんだけどね~。清水はキャラ濃すぎて一年で飽きてたのにな~。二人してウチのストーカーすんなしぃ」
「も~真似してるのはそっちでしょ~」
「あとさっさんその発言は主に俺の命が危険に脅かされるからやめようか」
ほんとやめろ。女子の気軽な冤罪発言が男を社会から抹殺してしまうんだぞ。
女子高生怖い。
「てかこの人大丈夫?」
「ひとりちゃん!? 何で息止めてるの!?」
「陽キャの会話に耐えられなくて気配消そうとしてたんだろ」
「優人君は冷静に分析しないで!」
後藤さんの生態レポートは日々更新されていくのだよ。
観察と分析は大事よ。後藤博士号また取得したいなら必須だから精進したまえ。
「あっひとりちゃん紹介するわね! この子は佐々木次子、さっつーよ。中学から一緒で、前のクラスで優人君とも一緒だったの!」
「ども~」
「あっはい……」
「それでこっちは私と同じバンドの」
「知ってる知ってる。去年の文化祭の後藤さんっしょ。清水が体張って守ってたもんね」
「うっ……頭が痛いッ。当時の奇異なモノを見る視線が俺を蝕んでくるぅ!」
「こっちはこっちで何だかんだダメージ残ってたのね」
ほぼ全校生徒からジロジロ見られるのって結構怖いんだぞ。何思われてるか分かったもんじゃねえし。
「あっえっと……すっ好きなバン」
「はいみんなおはよ~。さっそくHR始めるぞー」
後藤さんが何か言いかけたところで先生が入ってきた。
声小さくてさっさんに聞こえてないとこまで含めて不憫だ。
先生が来た事でHR、最初の授業というよりは新学期恒例の自己紹介タイムが始まった。
五十音順でそれぞれが名前やら趣味やら特技やら部活やらを言っている。まあこういうのは無難な事を言いつつ共通の趣味を持っている人がいれば仲良くなれるきっかけ作りみたいなとこあるし、大げさに変な事をしなけりゃ何も問題は起こらない。
そう、こと彼女の異常性を除けば。
俺の隣で何やらメモを見ながら不穏にニヤケている後藤さん。あのメモはおそらく自己紹介文的な何かだろう。そしてそれは彼女が作成した時点で爆弾だ。どうしよう、誰かの自己紹介中に話しかけるのは失礼だから変に声かけれねえ。
次の番の人が立ち上がる。
「喜多郁代です! 気軽に喜多ちゃんって呼んでください! 趣味はイソスタなので映えスポット行く時は私も誘ってね! あとはもちろんみんな知ってると思うけど、結束バンドっていうバンドでギターボーカルしてますっ。動画サイトにMVあげてるからみんな見てね! そして拡散すること!」
さすが喜多さんだ。
陽気な自己紹介でクラスの空気を和らげつつバンドの紹介までしっかりこなしている。ムードメーカーってまさにこういう事を言うのかな。
「ちなみに後ろの後藤さんがリードギターですっ。すっごく上手だから一度は生で見ないと損するわよ~!」
しかも後藤さんのために少しでも言いやすいよう場をあっためただと……!?
何この陽キャ、その場を支配する能力でも持ってんのか。
「それでこっちの清水君が私達のバンドをいつも支えてくれてるサポーター役なの! みんなも知ってるとは思うけど去年の文化祭で後藤さんを体張って守ったのが彼よ! 凄く良い人だからそこら辺は男子も誤解しないであげてね!」
ありがとう喜多さん……その言葉のおかげで男子からの視線がより一層鋭くなったよ。
こいつら都合の悪い事は聞き流して都合の良い事だけを勝手に自分の良いように解釈するからな。違う意味で場があったまったよこんちくしょう。
しかし、俺の不安も束の間。
ヤツが立ち上がった。
「あっ……」
我が幼馴染である。
「後藤さんの事知りた~い!」
やめれ、煽るんじゃない喜多さん。
その優しさは時に陰キャを追い詰めるものだぞ。
「ごっ後藤ひとりです……あだ名はぼっちです……。な、名前の通りリアルぼっちです……へっ。あっ、出身は神奈川です。中学の人がいない高校が良かったので二時間かけて通学してます……。ま、毎朝寝不足でこの学校にしなきゃ良かったって後悔してます……。あっでも幼馴染のゆうくんがいるから今も頑張れてます……」
おいそれ地味に俺にも浸食ダメージ来るからやめろ。
田中辺りから殺意のこもった視線向けられてるから。
「けっ欠点は人の目を見れない事、言葉の最初に「あっ」て言っちゃうとこです……。ってそっそこ笑うな……あっえっと……シバくぞッ!!!!」
「(何言ってるのひとりちゃん!?)」
陰キャは声量が安定しない。生態レポートにも書いてあるぞ喜多さん。
それはそれとして俺もまさかこんなこと言うとは思ってなかった。いらんとこで一番の声量出すとは思わんやん。
「あっうっ……モノボケやります! 武田信玄の軍配!」
いったいどこから持ち出してきたのか、バカが兜を被りギターを逆さに持って何かしだした。
そうだった。後藤さんは後藤さんで喜多さんとは真逆の意味でその場を支配する能力持ってるんだった。あんだけあったまってた教室が一気に冷えだしたぞ。すげえ、すげえよ後藤さん。一生参考にしないぜその姿勢!
「はいありがとうもう座っていいぞ~」
「あっはい……」
「次~」
さすが先生、あの後藤さんにも全然うろたえず完全スルーした。
「佐々木次子で~す。ヒップホップやってます。よろしく~」
あの後によく普通の自己紹介できるなさっさん。
いやそういう人かさっさんって。
「あとでコミュニケーションについて三人で勉強しましょうね……」
「あっはい……」
隣では陰キャが陽キャにビビっていた。それはいつもか。つうか三人って俺まで入れられてる?
あとは佐藤とか真田とか沢渡とかその辺の人が自己紹介を終え、いよいよ俺の番となる。
といっても言う事は去年とそんなに変わらない……事もないか。色々変わったとこはあるもんな。
後藤さんと違って普通に立ち上がって口を開く。
「え~清水優人です。趣味はマンガやアニメ鑑賞、最近はギター始めました。喜多さんが言った通り結束バンドのサポートやってます。さっきやらかしてた隣のピンクは幼馴染ですけど基本は大人しいんで害はありません。俺共々仲良くしてくれると嬉しいっす」
「あーい座っていいぞ~」
その時、どこからかこんな声が聞こえた。
「(清水死すべし……)」
「(清水殺すべし……)」
「(誠死ね……)」
「(リトさんなら許したのに……)」
後半何かおかしいような気もするが大体俺に向けられた呪詛だった。
はっは~ん、今年も愉快なクラスになりそうですわ。休み時間になったらさっそくリアル鬼ごっこが始まりそうな匂いがぷんぷんするぜ。
──―
放課後。
意外にも何も追いかけられなかった。
始業式の日は基本的に授業はなく部活もやっていない場合は午前までとなる。
故に今日は昼前に学校が終わった。
喜多さんの言葉のおかげかリアル鬼ごっこになる事もなく、おまけに喜多さんと後藤さんとやったコミュニケーションの勉強も実を結ぶ事もなく平和な放課後を迎えた訳だ。やっぱ平和が一番だなー!
「んじゃこのままスターリーに行くか」
「あっうん」
「そうだ後藤」
「ひっ!? さっささささん!?」
さ多いな。
「さっき言い忘れてたけど去年のギターかっこよかったよ。清水と沈んだダイブの件もそうだけど、あれが一番印象に残ってたから後藤のこと覚えてたんだよね~」
「地味に俺巻き込むのやめれ」
「それに清水もしょっちゅう自慢気にギター弾いてる時の後藤の話してくるしそりゃ覚えるよねって」
「えっ? っ? っ?」
「おいやめろっ」
「だから学校も頑張って来なね。そんじゃ~」
あのマイペースわかめ女子め……フォローすんのかからかってきてんのかどっちなんだ……。
「あっあれ? 良い人……?」
「良い人だけど底が見えないから侮れんのよなあ。まあからかい上手の佐々木さんって覚えとけばいいよ」
「からかっ……えっ?」
「もうっさっつーがからかうのは優人君だけでしょ」
「何も嬉しくねえなその情報!」
いや確かに喜多さんとは対等に話してるしからかうとはまた違うか。
え、マジで俺だけ? よし、近いうち後藤さんにターゲット変更させよう。
「みんな~クラスのグループチャット作ったから入ってね~!」
さすが女子、行動早いな。
「えっあっ……私も入っていいのかな……?」
「ほら、ひとりちゃんも早く!」
「ちゃんとみんなって言ってたろ。そういうこった」
「う、うんっ」
まあ、なんだ。
後藤さんがこのクラスのみんなと馴染めるように俺も頑張りますかね。
男子共とも馴染めるかなぁ。
久々におバカ男子達登場。
こいつらは絡ませやすいから便利なのよさ。
では、今回高評価を入れてくださった
☆9:タスマニアさん、モチモチこしあんさん、鳩兎さん、イキョウさん、N.Cさん、ザラメ雪さん、完全無欠のボトル野郎さん
☆8:Soenaさん、宮狐 狐蝶さん
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