再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
古戦場から逃げたいです。
某日の夜。下北沢駅から歩いて撤退中なのは俺と結束バンド御一行。
今日も路上ライブの帰りであった。
既に数回ほどやっているが一度も注意される事なく無事に終わり、今となっては客足もどんどん増えてきている。
ノルマ代なしでライブできるというのもあって虹夏さん達もモチベは高く、場数を踏む度に度胸がついてるのかそれは演奏にも歌声にも表れていた。
ちなみに後藤さんは前ほど人前であがらなくなってきたものの、ライブが終われば再起不能となりこうして毎回俺がおんぶしているという訳だ。
最初はスライムみたいに溶けた後藤さんをキャリーバッグの中に詰めて虹夏さんが運ぼうとしていたが、さすがに人一人分の重さを運ばせるのは力仕事になるので俺が引き受けた。
するとあら不思議、このスライムは瞬く間に人間の姿に戻り俺におんぶをするようねだってきたのだ。
人前でおんぶは抵抗もあったけど、よくよく考えたら人をキャリーバッグの中に詰めて運ぶ方がよっぽどヤバイのではとなりこうなった。致し方ないのである。俺だって高校生なのに職質だか補導だかされたくないもの。
とまあこんな感じでわがまま姫をおぶっていると、今まで喜多さんと会話していた虹夏さんが俺に声をかけてきた。
「ねえねえ優人くんってば」
「あ、はい。何でしょう?」
「あたしって地味だよね」
「どこのどいつですか虹夏さんにそんな無礼を言ったヤツは俺が地獄に落として生き返らせてからまた地獄に落としてやりますよ俺は今最凶のスタンドも背負ってる事だし何も怖くねえ!!」
「あたしが自分でそう言ったんだけど。優人くんはあたしを地獄に落とすの?」
「何言ってんですか俺が死ねば済む話ですよ」
「判断が早すぎる落ち着いてぼっちちゃんの手を使って自分で首絞めるのやめなってば~!?」
即座に止めてくる虹夏さんの判断力も相当早いよ。これには鱗滝さんもにっこりだ。
「で、何の話です?」
「伊地知先輩が自分はドラムだから目立たないし地味だし個性ないから何かキャラ付けでも属性でも付けないとって思ってるらしいの」
「虹夏さんに個性がないとかwwwワロスwww」
「普通に喋ってるのに草生えてるのが何故か分かるわ……」
フォカヌポウwww
「じゃあ優人くんはあたしにどんな個性あるか言える? ちなみに喜多ちゃんは絵が上手いとか地味な事言ってきたけど」
「オウフwwwいわゆるストレートな質問キタコレですねwwwおっとっとwww拙者『キタコレ』などとついネット用語がwww」
「なんか古いネットスラングを使ってるのだけは分かる」
拙者に対してそのような質問はまさに愚の骨頂ですぞwww
「虹夏さんの個性というか魅力なら最低百個から言えますよ。それでもい」
「三つくらいでいいからっ!」
そんな少なくていいの? もったいないなぁ。
でも虹夏さん本人の要望なら応えるしかあるまいて。うーん、三つ、三つかあ……少ないけど仕方ないか。
「天使、ママ、神」
「まともなのが一つもない!? というかそれは個性なの!?」
「めちゃくちゃ個性でしょ。何で下北に住んでる人は虹夏さんを崇拝しないのか疑問にすら思ってます」
「優人くんに聞いたのも間違いだったっ。あたしの事全肯定しかしてこないじゃん!」
「それほどまでに虹夏さんの事が大好きという証拠ですよ。何ならレポートでも提出しましょうか!」
「……え?」
「え? どうかしまぐぉえッ!? なばっなになんだよいきなり喜多さん!?」
「ややこしくなるから優人君はもう喋らなくてもいいわよ♪」
「え、な」
「喋らなくていいわよ♪」
「……」
久々に出たなキタサンブラック。じゃない喜多さんブラック。出てきた原因は不明だがここは素直に黙っておいた方が良さそうですわね。
アニメ三期楽しみにしてるぜキタちゃん。
俺を笑顔で黙らせてきた喜多さんは話を戻すように虹夏さんの方へ顔を向ける。
凄い、ブラック要素が一瞬で消えた。意図的に出してたのかアレ。喜多さんのオーラのせいで無意識に怯え縮こまっているのか、再起不能中の後藤さんまで俺にしがみつく腕の力が少し強くなってる。分かるよ、俺も怖かった。
「本題に戻りますけど、伊地知先輩は結束バンドのリーダーじゃないですか! ここまでやってこれたのは先輩のおかげですよ!」
「喜多ちゃん……」
「ねっ優人君!」
「っ、っ」
喋るなと言われたのでとりあえず無言で強く頷いておく。あと親指も立ててグッジョブも。
話せない代わりに首を縦に振りまくる。
「……も、もう分かったからっ……!」
ほんとに分かってんのかと思いつつ虹夏さんの顔を見ると微かに頬が紅潮していた。
うん、照れてる。これが分からせってやつか……。
「あ、優人君もう喋っていいわよ」
「うっす」
なんか知らんが許可貰ったのでやっと話せる。
なのでさっそく。
「ちなみに真面目に言うと虹夏さんがいつも付けてる大きなリボンありますよね」
「え? うん、これの事?」
「です。それも一つのチャームポイントというか、立派な個性の一つだと思いますよ。虹夏さんといえば大きなリボン、みたいな感じで。出会った時からいつもそのリボン付けてるの見てるのでそういう印象が強くなったってのもありますけど。大切な物なんですよね」
「……うん、そうなんだぁ。あたしの一番大事で一番大切なリボンだよっ」
おおう、眩しい笑顔ですこと。
「なら自分を地味とかもう言わないでくださいよ。虹夏さんは結束バンドのリーダーなんですから、あのマイペースわがまま娘達をちゃんとまとめてもらわないと」
「……よし、そこはリーダーのあたしに任せておいて! 結束バンドのためにきっちりやるよぉ!」
うむ、機嫌も元通りになって何より。
何なら鼻歌までやっていらっしゃる。まあリーダーとか先輩のおかげとか言われると嬉しくなる気持ちも分かるけど。
結束バンドとしてこれからも活動していくなら演奏以外でそれぞれの役割も大事になってくる。
それは表舞台ではなく裏でもだ。あいにくネジが一つや二つほどぶっ飛んだような三人がいる中、それをまとめるのに虹夏さんの存在は必須。気付けばバンドのまとめ役というか、結束バンドの結束部分を担う役割になっているのが彼女だ。
頭も良くバンドのグッズデザインや開発も担っており、資金管理や事務関連に関しては俺も一緒にやっているからよく分かるが、まさに結束バンドにとって虹夏さんは必要不可欠なのである。
確かに先ほど彼女自身が自分を地味なのではと称していた通り、他の三人に比べると目立つモノは持ち合わせてないかもしれないが、結束バンドの中核を担う人物として虹夏さん以上に適している人はいないだろう。
外から見ると目立つ事はほとんどないが、その内部でひとたび外れてしまうと何もかも全てが機能しなくなってしまうほど大事な歯車のような役割。
俺がサポートとして外部から支える役であるなら、虹夏さんはメンバーとしてみんなを引っ張っていく存在ってとこだ。
そう、虹夏さんにはこの問題児達をちゃんと引っ張ってもらわないと困る。俺だけの手には負えないのでね。
特に山田。あと山田に山田と山田。
と、そんな時。
「ふんふ~ん……ん? メールだ」
虹夏さんのスマホから通知音が鳴った。
「結束バンド宛てですか?」
「んだね。何々?」
結束バンドは一つのアドレスを共有して持っている。基本は事務などを一緒にしている俺と虹夏さんしか見ないのだが。
それはライブブッキングやミニイベントなどの仕事依頼がもしかしたら来るかもしれないという期待も含め、様々なSNSにこのメアドを載せていた。
いつかは来るかもしれないと微かでも希望を持って。
俺も虹夏さんのスマホを覗き込む。
メールにはこう書かれていた。
「えっと『結束バンド様、初めまして。音源聴かせていただきました。私は池袋のライブハウスでブッキングマネージャーをしております柳と申します。この度ハードでロックな結束バンドの音楽性に感じるものがあり、ぜひ当ライブへのご出演をお願いしたいと思っております。当店一押しのアーティストが出演する日です。どうかご検討よろしくお願い致します』……あん?」
普通に見ればとてもありがたいライブのブッキングだが、ある一箇所に引っかかるものがあった。
「虹夏さん、これ」
「え~もしかしてライブのお誘いですか!? 路上ライブとMVのおかげですかね!」
「また廣井さんじゃないの?」
「違う、全然知らない箱!」
いつの間にか喜多さんやリョウさんも逆サイドからスマホを見て各々のリアクションを見せている。
あと知らない箱って聞いた途端おぶっている後藤さんが細くなってるような気がした。つまり意識を取り戻したので降ろして確認してみる。あ、めっちゃ細くなってるわ。具体的に言うとアスペクト比狂ってる。
「結束バンドの名がどんどん広まってるって事ですよね!」
「けど私達はハードロックじゃないけど。虹夏、ちゃんと確認した方がいいんじゃない?」
「それは俺も同感です。ちゃんと決める前に事前確認しておかないとどっかで齟齬が生じてしまうかもしれないですよ」
結束バンドの曲を聴いたなら少なくともハードロックなんて思わないはずだ。
本当に曲を聴いたのかとさえ疑問に思ってしまうほどに。これは何だか臭う。言い知れぬ予感がひしひしと不安を煽ってくるような感覚に近い。
「う~ん……きっと打ち間違いか何かでしょ! それにジャンルの定義なんて人によって変わってくるものだし! 出演の返事しておくね~!」
「なっ」
おいおいおいおい。
「ちょ、ちょっと待ってください虹夏さん! さすがに決断早すぎますって! ブッキングの依頼が来て嬉しいのは分かりますけど、ここはもうちょっと冷静に精査すべきですっ。どう考えても結束バンドの音楽を聴いてハードロックなんてのは出てこないでしょ」
「え、だから打ち間違いの可能性もあるんじゃないかなって」
「普通こういう依頼を送るならまず相手に失礼がないか、誤字脱字がないかを確認しながら推敲するもんです。ご丁寧な定型文を使ってきてるからこそこういう粗は確実に目立つ。これがわざとじゃないならこちらの曲を聴いてるかなんて余計怪しいですよ」
「私もそう思う。最終的に決めるのは虹夏だけど、今回は新宿FOLTの時みたいに知り合いがいる訳じゃないんだし一応でも店長に相談してみるのがいいんじゃないかな」
「む、リョウまで……」
意外にもリョウさんがこっちについてくれた。
前も違うバンド組んでた事あったしその辺についても詳しいのかもしれない。こういうとこはちゃんと冷静に考えてるって事か。
俺達の言葉に虹夏さんは逡巡しながら、
「ん~……分かった。じゃあ今夜お姉ちゃんにも相談してみるよ。決めるのはまたそれからにする」
「……分かりました。店長の言う事なら俺も信用できますし、考える時間も確保できますもんね。俺も帰って色々調べてみます」
実際にライブハウスを経営してる店長なら同じ立場として虹夏さんに色々助言とかしてくれるだろ。
まあ一番の願いはこれが俺のただの思い過ごしで、向こうもちゃんとしたライブハウスで結束バンドが気持ちよくライブできる事だ。
というより。
「それにしても意外でした。リョウさんがこっち側につくなんて」
「虹夏はたまに変なとこで突っ走るとこあるから。そしてそういう時ほど失敗したりする。ちなみに経験談」
なるほど、幼馴染故に分かるという事ですね。
俺も後藤さんが変な格好した時は失敗するフラグなの分かるからそれと同じだな。成功した試しがないもの。
「今回は優人が引き止めてくれたし店長にも相談するって言ったから大丈夫とは思いたいけど、実際はまだ分からない」
「幼馴染の勘ってやつですか」
「いや、女の勘」
「そこそんな大事か?」
無駄に細かい拘りなんなの。
──―
そして虹夏さん達と別れ、いつも通り後藤家に帰り後藤さんの部屋で色々している訳なのだが。
「うーん……」
「ど、どうしたの?」
今日はギターの練習をせずにPCで調べものなうの俺に、一人でギターの練習をしていた後藤さんがいったんギターを置いてこっちに近寄ってきた。
「や、気になって依頼元のライブハウスを調べてるんだけどさ、どうも評判があまり良くないみたいなんだよなあ」
「え、も、もしかして悪い人がいるとか……!?」
「そういうんじゃないけど、レビューとか見る限りブッカーの人が特に……ってああもう、ヤクザとかいる訳じゃないんだから無駄に誇張して怯えんなって! いったいどこの世界にどういう仕組みで人体のアスペクト比おかしくなるヤツがいるんだ!」
「うっあっあっ……!!」
いたわここに。
「路上ライブで人前に立っても結構マシになってきたんだろ。何で他のライブハウスの事になると度胸が振り出しに戻るんだよ?」
「ろ、路上ライブは自分達で準備して演奏して帰るだけだけど……ライブハウスは知らないスタッフの人とか関わるから……」
「……ああ、うん、何となく分かった」
要は初対面の人達怖いって事ね。そうだったね。
後藤さんの場合店長やPAさんに慣れるまで結構長かったからなあ。何なら今でも普通に怖がってるか。見た目だけなら女ヤンキーと変わらんもんなあの人ら。
店長口調強いしすぐ威嚇するしツンデレだし。PAさんはピアス多いし初対面だと雰囲気怖いし何か舌割れてるし。ああいうのって何て言うんだっけ。スプリットタンだっけか、なんか蛇みたいな舌のやつ。初めて見た時は大層驚いた。あの人も大概やべー人だ。
あんな人達とも少しは話せるようになったこと自体後藤さんも成長してる証拠なんだけど、他のライブハウスとなったら話はまた別か。
考えてみりゃそりゃそうだ。何せあの後藤さんだもの。一週間振りに会った人に対しても関係リセットされて初対面みたいな反応に戻っちゃう悲しい人間だもの。新宿FOLTの時もスタッフの人に委縮しまくってたし。
「けどいざライブハウス行くと意外に大丈夫だったりするかもよ。ほら、路上ライブで知らないうちに鍛えられててそんなに怖くないかもしれねえじゃん」
「想像だけでもうダメだと思ってるのに……?」
「……」
うん、やっぱダメかもしんねえ。
そう簡単にマシになるなら長年陰キャやってませんよね。わたくしが悪うござんした。とりあえず今は後藤さんの事は置いといてPCに視線を戻す。
「どうしたもんかねぇ」
ライブの依頼が来る事自体は大変嬉しい思いなのだが、相手方の評判を見るとどうも素直によろしくお願いしますとも言えない状況だ。
特にこのブッカー、ブッキングライブをセッティングする人の事を言うらしいが、レビューを見るにただスケジュールを埋めるためだけにジャンル問わずバンドやら地下アイドルやらと適当に声をかけてるらしい。
声をかけるアーティストに統一性がなく、そのせいで客層もバラバラになり、結果ノリの違うアーティストと客の間で変な空間が生まれてしまうという地獄が繰り広げられるとの事。
普通に考えて断り案件だろこれ。……と言いたいところなのだが、結束バンドが今欲しいのは知名度でもありそのための可能性がここに眠っているというのもまた事実なのだ。
レビューは最悪。依頼を承諾する前から不安の割合が多い。しかしレビューだけが全てじゃないという事も分かっているつもりだ。
悪評は一部の時だけで普通の時もあるかもしれないと、今回が普通のブッキングの可能性だって決してゼロじゃないと思う。
そこに賭けるしかない、か?
「とりあえず明日虹夏さんともう一度話してみるか。妹の事だし店長もまともに相談くらいは乗ってくれてるだろ」
「そ、そうだといいね……」
「んしっ、大体の調べはついたし明日の事は明日の俺に任せるかな。後藤さん、そろそろ次の弾いてみた動画の曲でも決めようぜ」
「う、うんっ」
──―
翌日のスターリーのバイト前。
いつものように五人で集まり昨日の事で虹夏さんと話し合おうとした時、まず先に声を上げたのは紛れもない虹夏さんだった。
「ブッキングライブの依頼受ける事になりました! というかもう受けたからみんなそのつもりで! はいじゃあ今日もバイトがんばろー!」
思わずズッコケそうになった。
「ぶっ!? え!? もう受けたって……まさか承諾したんですか!? 俺そのことで今日また話し合おうとしてたんですけど!?」
「昨日お姉ちゃんに話して決めたからいいの!! もう決まった事だから優人くんもこれ以上何も言わなくて大丈夫だからね!」
そう言って虹夏さんは裏の方へと消えていった。
なんかぷんぷんしてたような……もしかしてちょっと怒ってた?
「リョウさん、どう思います」
「これはあれだ。ちょっと突っ走ったかな」
突っ走っちゃったかー。
てことはフラグがビンビンって事だね。いやそれよりもよ。
「店長、昨日虹夏さんに相談されましたよね。何て言ったんですか。虹夏さんちょっとおこでしたけど」
「あん? いや……別に何も……」
「虹夏さん怒らせたんですか。ツンですか。またお得意のツンだけ見せてデレ見せないから誤解与えて怒らせたんでしょ」
「お前までやめろよっ。そういうんじゃないって!」
絶対そういうのだろ。
こういう時くらいはツン控えめにしてちゃんと相談乗ってやればこんな事ならずに済んだのによぉ。
「じゃあ何て言ったんすか。一字一句違えずに言ってください。判断は俺とリョウさんとPAさんがしますんで」
「すぐ見破れる」
「任せてください♪」
「何でお前らまで……」
ある意味店長特攻持ちだからなこの二人。
「さあ早く」
「いや、だから……下北以外じゃ客足伸びねえからまだうちでやってるだけでいいんじゃないのって……」
「……ちなみに店長はそのライブハウスがどういうとこか知っててそう言いました?」
「……うん」
評判良くないと分かってあの物言い。
俺の脳内ツンデレ翻訳で訳すと『あのライブハウス悪評多くて結束バンドのためにはならないから、それならまだスターリーでライブしてた方が確実だぞ』となるな。
うんうん、なるほど。
「リョウさんPAさんジャッジ」
「「アウト」」
「はい俺も合わせて3アウトなのでチェンジですね。ツンからデレに変えて虹夏さんに謝ってきてください」
「何だそれ!? 罰があるとか聞いてねえぞ!」
「言ってないっすもん。それより早く言ってきてください。姉妹喧嘩なんて近くで見てて気持ちの良いものじゃないんで」
「そもそも私は喧嘩のつもりとか一切ないんだが……」
「うっせー早く行けシスコン」
「しっ、シスコンじゃねえーし!!」
なんて説得力のない捨て台詞だったんだろう。あれで隠せてるつもりかね。
とにかくこれで虹夏さんの機嫌が良くなってもっかい話し合う機会ができればいいんだけど。
数分後。
「まともに取り合ってくなかったわ……今日晩飯作ってくれんのかな……」
「マジか……」
姉撃沈してんじゃねえか。
しかも家事炊事全般任せてる分こういう時の店長に勝ち目ゼロなのがやべえ。自堕落の代償がここで一気に襲い掛かってきたな。
「優人お前今日うちで飯作ってくか……?」
「姉妹の雰囲気最悪な空間に俺を巻き込まないでください。自分で蒔いた種なんだからちゃんと仲直りしてくださいよ」
「うぅ……」
弱ってんな~。
「でも優人、結局私達の状況がまずいままなのは何も変わってない。むしろ虹夏が依頼を受けた分悪くなってる。フラグがどんどん大きくなってるけど」
「……」
虹夏さんがあのままだとおそらく俺の言い分も聞いてはくれなさそうだ。そもそも最初にもう何も言わなくていいと先手で釘を刺されたのもあるから余計言いづらい。
喜多さんはよく分かってないからライブ自体は全然やる気だし、後藤さんはアレだから期待すらしてない。
ツン発言した店長の言い分的にも俺が微かに期待してた普通のライブハウスの可能性ってのもほぼ潰えたと言っていいだろう。
だからこそ店長は遠回しにでもここでライブしてた方が良いと言った訳だしな。
ライブまでの時間も少ない。虹夏さんが即決で決めたのも、もしかしたら迷ってるうちに他のバンドでスケジュールが埋まってしまうと危惧したからかもしれない。
上手くいけばいいに越した事はないが、今は正直微妙なとこだ。
ちくしょう、店長め。
何でいらない時にツンデレ発動すっかなーもう。事態が余計ややこしくなったじゃんかぁ──ー!
「どうすんの優人?」
「ほんとどうしたもんかねえ」
どどどどどーすんの どーーすんの!?
原作三巻もそろそろ終盤じゃあ。
では、今回高評価を入れてくださった
☆9:タスマニアさん、父ぞさん、モチモチこしあんさん、イキョウさん、完全無欠のボトル野郎さん、ザラメ雪さん
いつも感想高評価お気に入り登録ここすきthank you!!
感想たくさんくれるとやる気上がります。いや、マジで。
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