俺とチェルシーは部屋を探していた。
しばらくは宿でも大丈夫だが早いところ住まいを構えたい。その方が気楽だし、帰る場所ができるのはいいことだ。今は帝都内の賃貸住宅を見ているところだ。なかなか安いし商店街からも近い、その上そこそこ広い。ここがいいだろう。
「チェルシーどう思う?」
「へ?え、そうね、どこでもいいわ。お店が近くにあるならね」
「じゃあここでいいか」
完全に二人用の大きな部屋を借りた。
キッチンがあり部屋は二つ。トイレも風呂も完備。
決まりだな。
「ここでお願いします」
俺らはそのマンションを貸しているオーナーさんに会いに行った。偽名のサインを書き、お金を渡す。とりあえず一カ月契約しておく。オーナーさんは城下町のおばちゃんといった感じの人だった。契約を終えるとオナーさんがほほ笑みこう言ってきた。
「あらまぁ。新婚さん?」
「し、しんこ――――っ!?」
すぐにチェルシーの口をふさぐ。
「はいそうです。結婚して一ヶ月なんですよ。新婚旅行に田舎から帝都に来たんですよ」
「あらまぁ!なんて素敵なの!あなたもこんな夫を持てて幸せね!うちの夫ときたらもう昔はよかったんだけどね今はただのおっさんよ!あなたも妻を大事にしなさいよ!」
「わかってますよ。大事な最愛の妻ですから」
どこからそんな嘘が出てくるのか。
本を読んでおいてよかった。いつか読んだ小説に結婚してから新婚旅行に行く夫婦の話があったな。長いこと潜伏するならば設定も必要だな。チェルシーの偽名も必要だ、考えなければ。
「ね、ねぇ。さっきのって」
「もちろん嘘だ。お前も設定を考えるのを手伝ってくれ」
「ですよねー。うん、わかってた。私もなんとなく知ってた、期待はしていなかった」
後ろを振り向けば半泣きのチェルシーがいた。泣いている理由を聞いたが教えてくれなかった。
オーナーこと奥さんから頂いた鍵を使い扉を開けて入る。つい最近まで人が使っていたらしく綺麗である。たしかに広い、これならば快適にくらせそうだ。部屋を割り振りにもつを置いた。情報収集も上手く言っている。
リビングで情報をまとめる。
「しばらくは忙しそうだな。チェルシー!」
「はーい?」
リビングからチェルシーの部屋に声を出す。
「ちょっと忙しくなるから今のうちに帝都を楽しむぞ。その後は仕事ずくめだ」
俺はそう言った後すぐに着替える。おもに街を歩きやすい格好だいつもの全身黒一色ではなく白色など他の色を取り入れたシャツを着る。パンツは黒のままだが問題ないだろう。今日は一日中買い物デート三昧だろう。お金は多めに持っておこう。そう思い財布の中にお金を入れる。一応スリとかにも気をつけるためにチェーンをつけておく。
着替え終わったのでリビングで買ってきた新聞を開き読み始めた。イェーガーズの事が一面に載っていた。陛下とのパティーで発表されたとの事だ。メンバーは詳しく載っていないが体調がエスデス将軍であることだけが書いてあった。残りは大臣の感想とかそんな物だ。やはり民間には詳しい情報は知らされていないか。
「やっほー」
後ろから細く綺麗な手が伸びて俺の首に巻きついた。甘い香り、髪にこの声。後ろを振り向くとにこにこしてるチェルシーがいた。香水や化粧と服はいつもと違いおしゃれをしている感じがした。髪もいつものようなヘッドバンドをしておらずポニーテールになっていた。
「おまたせ」
「待ったぞ」
「そこは待ってないって言うのよ。ほら行くわよ」
後で来たのに偉そうにするのか。
マンションから出て帝都の街中を歩こうとする。するとチェルシーの手が伸び俺の左手を掴んだ。そのまま指をからめる。
「こうしよっか。一応夫婦って設定なんでしょ?」
「……そうだったな。名前どうしよっか。俺はレイって名前でサインしたし」
「レイね、女の子見たい。じゃあ私は、イリヤね」
「なんだその魔法少女みたいな名前」
俺は漫画を思い出す。確かラバックの本屋にそんな漫画があったような。
「ねぇレイ」
「なんだイリヤ」
「何もない!」
なんだコイツ。
あんなに嬉しそうだと、
こっちまでニヤけるじゃないか。
なんやこれ・・・
むっちゃ夫婦満喫してるやん
(砂糖ダバー)