【凍結】混沌に雑ざるは、如何なるオモイか。 作:Cross Alcanna
まだモチベはそんなに落ちてないので、比較的投稿頻度も良い感じです。このまま完結まで続けば良いんですがね。アハハ。今回は、時間軸で言うと前回の続きになります。前話と同日だと思ってもらえれば大丈夫です。
アンケート結果を反映して、今回から試験的に地の分の文量長くします。少し経ったら、試験的な試みについてもアンケートを取ろうと思います。一応、もう少しだけ今のアンケートを残しておきます。
では、どうぞ。
「…この後、カラオケでも行こうかな?」
現在、咲希達と別れて少し経ち、これからどうしようかと悩んでいる。
今口にしたカラオケにかなり気持ちが傾倒してはいるが、やはり早計ではないかと思ってしまう自分との闘いの最中である。えぇい、優柔不断だぞ、俺よ。でも、さっき話をした事も相まって、楽器を触りたいという気持ちも湧いてしまったのだ。くそぅ、どちらにしたものか。こういう時の自分の優柔不断さ程、憎らしいものはないだろう。何となく察したかもしれないが、飲食店に行ってもこうしてかなり悩んでしまうのだ。
……誰に言ってるんだ、一体。
「…だぁぁ!決まらないっ!」
周りから変な目で見られる可能性をどこかに捨て去り、俺は声を上げて頭を掻き毟る。何となく、こうして声に出せば脳内がスッキリするんじゃないかと思ったが、案外そんな事なかった。頼りにならないな、自分の勘ってヤツは。
一度落ち着きを取り戻し、辺りの景色を見てみる。
…あれ?いつの間にこんな遠くまで来てたんだ?そこそこ歩けばフェニックスワンダーランドにでも着きそうだ。…無意識は怖いものだ。
そんな事を考えているうちに、何とか冷静さを取り戻す事が叶った。…よくよく考えたら、ここまで来た以上、家の近くまで戻ってカラオケだの音楽教室に行くだのは間に合いそうにない。…図らずとも、直面していた問題が解決してしまったわけだ。嬉しいような、やるせないような。
「…今日は諦めるか。このまま日が暮れるまで散歩でもするか。」
結果、明日何やるか問題は夜か明日の自分に任せる事にした。そして、今日はのんびり街を練り歩く事に決めた。
そうと決まれば…と言いたいのは山々だが、どこに行ったものか。あの遊園地に行くにしろ、あそこに入る為のお金は無い(カラオケの分くらいでは足りないんだよな)し、何より人混みは好きじゃない。自分から突っ込みに行こうとはなれなかった。そうなると、周辺を歩きながら帰り道に向かうのが妥当だろうか。こっちの方に来るのは初めてではないので、一応周辺のマップは頭に入ってるし。
そんな事を思いながら、また歩き出そうかと思っていた時だった。
「おっ!刹那じゃあないか!」
「おや?また散歩かい?」
居そうだな、と少し思っていた人達に声を掛けられる。そう、司と類だった。そういえば、彼らに出くわすのは何かと週末が多かった気がするな。まぁ、学生だから当たり前か。
そんな雑多な考えをしていたが、俺はすぐとある事を思い出す。そして、ある方向に目線を向ける。
「ヒィッ!」
「……ッ!」
……忘れてたよ。
そう、実は司達はユニットを組んでいる。何でも、フェニックスワンダーランドでショーをする為にとか何とか。名前は確か……ワンダーランズ×ショウタイム、だったかな。如何せん長い名前だもんで、いっつもうろ覚えになってしまう。許せ、司よ。俺は悪くない。
…それは置いといて、だ。問題はそこではない。俺がいつも頭を抱える問題はと言うと……
「…相変わらずか。ここまで怯えられると、流石に心にクるんだよなぁ。」
「…えむも寧々も、いつもならこんな様子にならないんだがなぁ。」
「…………」
俺の一言に対する司の回答はと言うと、困惑と若干の諦めだった。まぁそうだろうな。このやり取りも数回ではない。結構な数このやり取りを繰り返している。何せ、初対面からこの感じときた。俺の中でも、諦めの念が占め始めているくらいだ。
対して類はと言うと、無言だった。最初こそ司の様に困惑した様子だったのだが、最近はこうして俺をじっと見ながら、無言を貫き通している。穴でも空けたいのかと言いたくなる程、こっちを見てくる。いつもは、その視線が気まずいので、俺がすぐに去るのだ。
「…あの、鳳さん?」
「ヒィィ!!」
「わぁお、スッゴイ露骨な反応。最早芸術か何かじゃないかな。」
俺がそう言い終わる頃には、えむは遠くに走り去っていった。それを見かねた司は、「すまない、刹那!」と一言残し、えむを追いかけた。頑張れ、司。そしてスマン。マジで。ここまで拒絶の意思が強いとは、思わなんだ。ぶっちゃけ、距離を置かれるくらいで済むかとばかり思っていたんだ。
そして、この場に残ったのは俺と類、そして寧々だけ。えも言えぬ雰囲気が漂い続ける空間に居続けるのが若干窮屈になっていた所だった。その雰囲気をぶった切る様に声を出したのは、まさかの類だった。
「…刹那くん、えむと寧々の反応に心当たりはあるのかい?」
「まぁ、
実を言うと、心当たりはある。というより、ソレしか心当たりがない。逆にコレが違うなら、それこそお手上げではあるが。
と言っても、俺自身が何か物理的、そして心理的に何かした訳では無い事は、先に言っておく。仮に俺が何かしていたとしたら、初対面からこの反応になる事と矛盾するだろうな。それに、素性も知らない相手を不快にさせるのは、思っているよりずっと難しい。相手が何を嫌がるかを知らない訳だしな。ソレは、類も良く分かっているだろう。だから早くその若干の殺気交じりの表情を戻してくれないかね、類さんや。
「…悪かったね、僕も威圧するつもりはなかったんだ。ただ、もしもの事があれば、僕だって怒りはするからね。」
「だからといって、殺気を出すのはどうなのよ?」
「それは君の言う通りだね。申し訳ない。」
うむ、分かってくれたならそれで良い。苦しゅうないぞ、類。…やっべ、心の声を読まれたら何されるか分かんねぇな。余計な事は考えないでおこう。
殺気はしまってくれた類だが、それでも尚、こちらをじっと見つめる事は止めない。…可能なら、そっちも止めて頂けないかな。寧ろ、そっちの方が止めて欲しいんだが。
……きっと、その心当たりとやらが気になるのだろう。俺も察しが悪いラブコメ主人公の様な鈍感さは持ち合わせていないので、それくらいは分かるし、類もきっと俺が分かるように敢えてそうしてるんだろう。ま、別に話す分には良いんだけどね。どうせいつか話した方が良いなとうは思っていた訳だし。
「気になるなら、話すけど?」
「…随分、あっさり話してくれるんだね。少し意外だったよ。」
「まぁ、いつか話した方が良いだろうなとは前から思っていたし。」
そう俺が言った後のこの場は、お通夜でもやった後かと言わんばかりの暗い雰囲気に包まれていた。おい、誰かここでお化け屋敷やれよ。臨場感が出てきっと儲かるぞ。
……さて、何から話したものか。正直、セカイに来てもらった方が早いんだよな。見てすぐ分かるし。説明殆ど要らねぇし。でも、他の人があのセカイに行くには、きっとあの"untitled"ってのを再生する必要があるんだよな。こいつらが元々別にセカイに行けるかどうかは、俺のセカイに行けるかには関係ない。俺のセカイに入れる"untitled"が無ければ、それで詰みなのだ。だから、この手は使えないとみて良いだろう。
となると、だ。俺が説明する他無いんだろうな。ダルいけど。正直な話、この話を聞くにしろ話すにしろ、誰も気持ち良くなりはしない。この話で気持ち良くなるのは、生粋の狂人かサイコパスかだろう。そのくらい、まぁ良い話しゃない。俺が言うのも変な話だが、高校生に聞かせる内容じゃないんだよな。R-18Gに指定されかねん。
「話せるが、まぁしっかりと胸糞悪い話にはなるぞ。話す俺だって気持ち悪いと、心底思う内容だからな。」
「…そこまでかい。正直、そんなに酷いとは思ってなかったよ。」
だろうな、とは思う。このご時世、誰がどんなデカい爆弾抱えてるかなんて分からんものよな。そういう奴は割と周りにいたりするもんだ。
…よし、俺もいい加減腹を括るとするか。そう決めた俺は、類達に話し始めた。
「…草薙さんや、俺の第一印象を答えてくれるかい?」
「…………
「そうか。怖い、ね。」
怖い、と来たか。恐らく、えむの方に聞いたら「グチャグチャ」とか答えるだろう。つまるところ、ねねは
この世には、少し特殊な能力を持つ人間がいる。少数ではあるが。軽い念力やテレパシー、異常な第六感、霊感等々。その中には、人の内面を視るというものもあったりする。隠してる本音が聞こえたり、取り繕ってない本来のその人の感情が視えたり、その内容は様々ある。えむと寧々は、恐らく後者の能力があるんだろう。逃げ出した事を加味すると、えむの方がその能力がしっかり定着してるんだろうな。
そんな人をたまに見かける事があったので、俺はその人に俺について聞く事が出来た事が、過去に何回かあった。その時言われたのが、「怖い」「色んなのが渦巻いてる」「何か吐き気がする。勿論、顔を見てじゃなくて。」と、凡そこんなところだった。
だからこそ、寧々の第一印象を聞いて、確信が強くなった。
「鳳さんや草薙さんは、俺の内面…って言えば良いのかな。が視えてるんだと思う。類にも分かり易く言うとすれば…虫嫌いな人が色んな虫が入ったケースを見ている、が一番分かり易いかな。」
「…何となく想像は出来るけど、ホントにキツイじゃないか。」
「そう、キツイんだよ。何せ、
──────────────
「色んな……モノ?」
「そ。悲しみや怒り、憎悪や殺意……それ以外にも色んなのがこの身体の中に詰まってる。」
そんな事があるものか。僕は、まずそう思わざるを得なかった。
人が沢山の感情を持つのは、そんなに珍しい話じゃない。寧ろ、殆どの人間がそうだろう。だが、
僕や寧々にだって、喜怒哀楽はある。勿論、それ以外の他の感情だってある。だけど、彼は
だが、彼はソレをやってのけている。今も、そして恐らく、僕と初めて会った時からも。もしくは、その前から。
「…刹那くん、キミ、狂ってるよ。あんまりこんな事は言いたくないけど。」
「やっぱり?そう思っちゃうよなぁ。」
こんな繊細な話をしていたら、普通は気がおかしくなっても変じゃない。それでも彼は、正気を保ち続けている。平気な顔をして、そこに立っている。
僕はよく、変人だったり天才だったり色々言われてきた。狂ってる、とも言われた事もあった気がする。だけど、僕なんかよりよっぽど彼の方が狂っている。形振り構わず怒りに身を任せて暴れるだったり、倫理観が欠如しているだったりとは、一線を画していると言うしかない。
何より、
僕は、彼を人と呼べるかも怪しいと、思ってしまう。
「セカイに呼べれば説明しなくても良いんだけどな~。如何せん、類達が入る方法が見つかりそうにないんだよ。」
「……セカイ?キミもセカイに行けるのかい?」
「行けるよ。まぁ、アソコはセカイなんて出来たモンじゃあないけどな。あんな歪なセカイ、どっかにあってたまるかっての。」
次から次へと出てくる、彼のカミングアウト。彼がセカイを知り、セカイに渡れるようになったのがいつなのかは知らないけれど。何となく、何となくだが。
彼は、
普通、セカイについてはミクだったりのバーチャルシンガー達が教えてくれる。けど、僕達はセカイについての仕組みを未だ理解しきっていない。勿論、知ってる事もあるけれど。
しかし、しかしだ。彼は、あたかも熟知しきっている様な口振りで話し続けている。ミク等に教えられたと言われればそれまでかもしれない。けれど、彼をよく知る身としては、何となく分かる。彼は、自力であそこまで理解してみせた。セカイの触りについては、ミクから聞いたんだろう。でも、そこから理解を深めたのは、彼の知識によるものだと思う。どことなく、そんな不思議な自信があった。僕以上に、彼は天才だと感じる瞬間だった。
「……あのセカイを見て、思ったんだよ。」
そう、静かに言葉を放った彼の姿は──
────寂しい、セカイだなぁ、ってさ。
────ここから消えてしまいそうなくらいに薄れていて、そして寂しそうに見えた。
はい、いかがだったでしょうか。
書いた後に思いましたが、寧々ちゃんが空気になってしまいましたね。今回はどちらかと言うと、このやり取りを入れたかったので、このような形となりました。
刹那についてのカミングアウトが、意外にも序盤に導入された事に驚いた人もいるんじゃないでしょうか。因みに、この物語の核心は他にもありますので、お楽しみに。
では、また次回。