ふたたり   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 『ふたたり』 第6話です。


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第6話 「旅に出よう」

 

 旅に出よう。季節は夏に設定。

 

 旅とは移動。観光は おまけ に過ぎない。わたしはそう思う。

 その気になれば、目の前に温泉旅館を作ったり、中世ヨーロッパの街にワープしたりできる。

 でも今日は、わざと目的地を遠くに設定して、そこに至る過程を味わおう。

 

 全知全能はつまらない。

 能力を制限して、不便さとトラブルを楽しむのが、『 神様の たしなみ 』なのだ。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

おもち 「渋いねぇ……」

 

 みかんが作ったのは、白い軽トラックだった。

 ふたりで旅するなら、スポーツカーとかじゃないの?

 

みかん 「サンバートラック、スーパーチャージャー」

 *1

 

 みかんは、いつものドヤ顔をした。シンプルな白いワンピースがまぶしい。*2

おもち 「よく分からないけど、かっこいい名前だね」

 よく見ると、ホイールが、軽トラとはミスマッチな デザインだった。アルミかな? 

 その他は、ごく普通の軽トラックに見えた。みかんのことだから、中身をいじってるかもしれないけれど。

 まあ、ゆるゆるな旅には、これがいいかもね。

 

 わたしの運転で、海上のまっすぐな高速道路をひた走る。マニュアル車は難しい。みかんと運転を交代したら、細く曲がりくねった酷道に変わった。シフトレバーをあやつる手の動きに、ちょっと見とれてしまう。みかんは、真顔だけど楽しそうだった。

 

 好き勝手に世界(マップ)を広げて、どこまでも どこまでも 走った。

 

 軽トラが最強なのがよく分かった。荷物がたっぷり積めて、悪路も坂道もスイスイ進む。2シーターのMTだから、農道のスポーツカーと呼べなくもない。意外と眺めもいい。

 欠点は、直角に固定されたシートと、ふわふわすぎるサスペンション。長距離移動には不向きな車だ。

 

 そう思って苦い顔をしていたら、シートが、体を包み込む形に変わった。レーシングカーのようなデザインだ。

みかん 「レカロ風味」

おもち 「れかろ?」

 

 いつの間にか、ヘッドランプが丸目になり、ホイールが、黒くて渋いスチール*3 に変わっていた。心なしかサスペンションが硬くなって、車体が安定した気がする。車内は ほんのり機械油のにおいがした。

 さらに、荷台の前側……キャビンの後ろに、四角い缶のようなタンクが追加された。

みかん 「増槽」

おもち 「ぞうそう?」

 わたしは車に詳しくないけれど、これが変態カスタムなのは分かった。

 

 

◇ ◇ ☆ ◇ ☆ ☆ ◇ ◇ ☆ ☆ ☆

 

 

 夜は、何もない高原でキャンプ。

 

 軽トラの荷台の積荷を端に寄せて、キャンプ用のマットを敷けばベッドになる。タンクが邪魔で狭いから、荷台の後ろと横の壁……

みかん 「あおり」  *4

 ……を、全開にする。

 寝袋もあるけど使わない。

 一度やってみたかったんだ。『 寒さを言い訳にして温め合おう 』ってやつ。

 

 ふたりで一枚の毛布にくるまって、星がひしめく空を眺めた。

 わたしが、みかんの耳元で、恥ずかしすぎる言葉をささやくと、みかんは、ちょっとクサい、艶やかな お花のにおいをくれた。

 

 ふたりは、疲れて寝てしまうまで、もぞもぞスリスリ じゃれ合った。

 

 もちろん、ふたりとも裸で。

 

 

 

☆ ☆ ♡ ☆ ○ ♡ ○ ♡ ♡ ◎ ♡

 

 

 

 翌朝。

 

 みかんがコーヒーを淹れてくれた。すごく濃くて苦いブラック。

 ホワイトガソリンのシングルバーナーって、趣があっていいよね。 *5

 

おもち 「はぁー……こういう場所で飲むと、すっごくおいしいねぇ……」

 

 みかんが、コーヒーを一口飲んで、眉をよせた。

みかん 「……むぅ……」

 

おもち 「いつも甘いのばっかりなのに、どうして今日はブラックなのかなぁ? みかん?」

 そう言って、笑いかけてみると……

 

 みかんは、不機嫌そうな顔を、思いっきり近づけてきた。

 

みかん 「……んっ!」

 

……お豆腐より やわらかくて……

 

 そして、顔を離し、ぷいっ と、そっぽを向いてしまった。でも、赤い頬は隠せていないよ。

 

……ハチミツより甘いみかんだった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 朝から、温泉に寄り道。

 

 こんな時間に営業中? ってツッコんではいけない。そこはご都合主義である。

 女湯に入るか、男湯に入るか……迷った末、混浴にした。貸し借り状態だから、この設定にあまり意味は無いけれど。

 

 お湯に浸かる前にカラダを洗う。

おもち 「さっぱり気持ちいいねぇ……

     ……って、みかん?」

 

 みかんは、無駄に泡まみれになっていた。一生懸命カラダを洗っている。

 

おもち 「みかんの汗のにおい、好きなんだけどな……」

 わたしはそう言って、みかんに後ろから抱き着き、首すじのにおいを嗅いだ。

おもち 「……すんすん……まだ残ってるかなぁ……」

みかん 「……おもちのえっちっち」

おもち 「もう、えっちっち でいいよ! 認める!」

 でもさすがに、ここで いちゃいちゃするのはNGだよね。 *6

 

 大人しく、ふたり並んで、白く濁った温泉に浸かった。

おもち 「……はぁ~……」

みかん 「……ぶくぶくぶく……」

 みかんが消えて、泡だけが残った。

おもち 「みかん! 潜っちゃだめ!」

 水中にうごめく何かが……。

おもち 「……ふわああ! なにしてっ……あぅっ!!」

 

 ……みかんも、えっちっち だった。

 

 

 

 つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
 ↓ 設定画

 この軽トラのモデルは、『農道のポルシェ』こと、6代目のサンバートラック (2005年頃) です。ダイハツのOEM(ほぼハイゼット)になる前の、スバル製サンバーです。

 あくまでも『モデル』であり、実在の自動車とは異なる可能性があります。サンバーのようでサンバーにあらず……。『実物大の動く模型』のようなものです。

 ホンダのアクティクローラ(ハーフトラック仕様)を登場させようか……とも考えましたが、もはや軽トラではない気がするのでやめました。

*2
 ノースリーブのサマードレスです。腰の絞りが弱めで、飾りけが無く、清楚で少し幼い感じです。強い逆光だと、足のシルエットが透けて見えます。

 思いっきり女の子の服です。でも男の子が着てもいいのです。

*3
 黒鉄チンです。

*4
 ここ、最初は『ゲート』と書いていたのですが、『あおり』に直しました。

*5
 ガスカートリッジ式の方が簡単ですが、ふたりはちょっと背伸びして、手間がかかる方を選んだようです。

*6
 おもちさん、変なところで律儀です。ふたりだけの世界なので、何をしても怒られないのですが、一応マナーは守ります。




 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 次話は、旅の続きです。中途半端なアクションシーンがあります。


 [ 初投稿日時 2022/11/09 21:25 ]
 
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