エリート貴族(以上)が集う魔法学院で、一人平民(以下)の僕が生き残るたった一つの方法   作:ガタガタ

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第2話

 

 ケイ、もとい師と修行が始まってから5年が経過した。今年で成人を迎えるのだ。

 

 「早いね。もう5年だ」

 

 「そうかな?」

 

 エルフと人間では時間の流れが違う。人間の倍以上生きる長命種だ。感覚が一緒でないのは当たり前だ。

 

 立場が違ったら、いつのまにかケイがお婆ちゃんになっているって感じかな?少々切なくなる。

 

 「アーノルドはこれからやりたい事はあるのかね?」

 

 「うーん、これといって定まってないんだよね。魔法は好きだけど、研究ならいつでもどこでも出来るし」

 

 進路が固まっていない。

 

 師との修行で、魔法を教わる事から始めて、モンスター退治から薬学から鍛冶までの生産系、果ては魔法無しの護身術まで身に付けられた。

 

 どれも必要最低限まで教わっているものだから、選り取り見取りの進路となっている。だからこそ選べない。いっそ転職しまくるという手があるが、最悪経歴に傷ができ、信用問題になるのだとか。

 

 うーん、うーん。と考えていると師が口を開く。その顔は少し玩具を見る子供の顔つきだった。

 

 「なら魔法学院に行くのはどうだい?」

 

 「魔法学院?」

 

 「そう。魔法を研究して研鑽する学校のことでね。そこなら自分の工房を持てるし、卒業までには進路が決まるんじゃないかな」

 

 聞いた事がある。だからこそ、

 

 「無理だよ」

 

 「?なんでだい?」

 

 「僕は貴族じゃないからね」

 

 魔法学院の入学条件は、貴族以上の身分であること。僕は平民(捨てられたからそれ以下)だから条件に満たしてない。

 

 でも師はそれを見越したように答える。大丈夫だよ、と。

 

 

 「この学校に行こう」

 

 「?」

 

 師は一つの紙を見せる。

 

 「マルクス国にある世界有数の魔法学校、マル・ア・リーグ魔法学院・通称MAR。君にぴったりだと思うよ」

 

 入学条件は身分・学歴・入学金不問。入学には個の実力を測るものとする。

 

 「つまり、入学するには」

 

 「実力を見せるしかない」

 

 「その通り」

 

 なるほど。確かにここなら入学出来る。

 

 「それに授業内容も充実してるよ?」

 

 あらゆる魔法及び技能の習得。つまり、生産系にも手が出せるのか。

 

 「それに友達いないでしょ。それだけでも行く価値はあるんじゃない?」

 

 「う、まあ確かに・・・」

 

 修行ばかりで、そんな事に時間を割いてなかったな。こういうのをボッチて言うんだっけ。

 

 「やるだけやってみようかな。魔法の研究が出来るだけでもメリットだし」

 

 「そうこなくっちゃ!準備は私に任せなさい。お前は旅の支度を進めなさい」

 

 そう言って、えらく上機嫌な師は嬉しそうに書類などを作成していく。そんな師を横目に支度を始めるのだった。

 

 

 

 「『これより入学試験を始める!!必要なのは実力!思う存分、貴公らの力を見せるように!』」

 

 年配の女性が始まりの音頭を取る。ビリビリとした緊張感は、受験生のお腹に響いていた。

 

 ここはかの魔法学院、通称MAR。世界三大魔導士を超えるという名目で創られた由緒正しい学校である。

 

 毎年、4桁を超える受験生が訪れるが入学者は3桁。少々狭き門である。それと同時に、ここの卒業生というだけでも箔が付くので、貴族王族はこぞって入学させようとする。

 

 ちなみに最初のMはマルクスの略。世界三大魔導士の一人は、この国の初代国王。受験生の中にはその子孫が居るのだとか。

 

 そんなことは更々どうでもいい。そんな男がここにいる。

 

 「ねえ見て」「うわ、変な格好」「平民かしら?」「場違いじゃん」「大方、自分を天才だと思ってる勘違い野郎じゃね?」「何それ」「ちょー痛い野郎じゃん」

 

 ヒソヒソと話し声が聞こえる。軽蔑の視線、そして侮蔑の声。

 

 その対象は一人しか居ない。

 

 僕である。

 

 周囲の人はみんながみんな、小綺麗な衣装を着込むに立派な杖を携える中、僕は最低限の衣服しか着用していない。そういう装備ならともかく、ただのファッションとしてなら魔法に必要ないし。

 

 ニヤニヤと嫌らしく笑うのは生徒だけではなく、あろうことか教職員も混じっていた。

 

 先程の年配女性は、表情を崩さず見ているだけだ。その顔には、ここで折れるくらいなら帰れと、忠告しているように取れる。

 

 「はあ・・・」

 

 身分差など関係なく学べると聞いたのに、現状はこれだ。少し安直に進路を決めた事に後悔している。

 

 そんな時だった。

 

 「黙りなさい」

 

 その一言で、嫌な空気が断ち切られるのを感じた。声のする方を見ると、一際輝いている女性が堂々と立っていた。

 

 腰までの銀髪に引き締まった顔立ち、厚着した服越しからでも分かるスタイルの良さ。

 

 大勢の視線を集めていた。

 

 「ここは身分など関係ない実力主義の学校です。見かけだけであの方を評価する暇があったら、これからの事を考えては?」

 

 受験生と教職員は気まずそうに顔を背けた。ターゲットが僕からあの人に変わると思うんだけど、そんな事はなかった。

 

 いったい何者?よく見れば従者?お付きの人?もいるし。

 

 「ありがとう、助かったよ」

 

 僕はお礼を言った。正体よりもありがとうと礼を言うほうが先だと考えたから。

 

 ザワァッ!?と周囲が驚きに変わる。当の本人もお付きの人も、目を見開く。何か間違えたかな?と首を傾げるが、目の前の女性はすぐに切り替えた。

 

 「いえ、当然の事をしたまでですので。それより貴方」

 

 「?」

 

 「そんな格好で受けるのですか?」  

 

 ジーという擬音が付きそうな程に、僕を見る。

 

 もう一度言うが、これといった装備を身に付けていない。必要ないから。

 

 「え?まあそうだね」

 

 「っ! ・・・そうですか。試験が始まるので、もう話し掛けないでください」

 

 それでは、と言って離れていった。なんだろ、一瞬怒気を感じたけど。

 

 「『それでは開始する。呼ばれた者から速やかに移動するように!まずは~~~~』」

 

 僕は移動する受験生を眺めつつ、これからの事を考えていた。

 

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