エリート貴族(以上)が集う魔法学院で、一人平民(以下)の僕が生き残るたった一つの方法 作:ガタガタ
入学試験が終わってから数時間後。マルクス王国内にある、大きな宿で暇を潰していた。
客層は平民向けで非常に安価で、防犯対策も万全で食事付き。それゆえに貧乏な旅人や冒険者が、ここで寝泊まりするみたいだ。僕みたいなまだまだ大人と呼べない成人もいた。
「アーノルドさん、アーノルドさん!」
「? どうしたナタハルちゃん、そんなに慌てて」
暇すぎて食事処の机に突っ伏していた僕に、パタパタと足音立てながら近寄ってくる女性の影。
名をナタハル・ストラ。知り合ってまだ2日程度の短い付き合いだが、本人の希望で友人のように接している。
ちなみにこの宿の看板娘。両親は引退した冒険者なのだが、ここらでは名が知れているらしく、手を出したり逆らう人がいないのだとか。荒くれ者の冒険者が大人しくしているのは、両親である店主と女将の恩恵による物が大きい。
そんなナタハルちゃんは、真剣な顔付きで呑気な僕に詰め寄ってくる。
「どうしたもこうしたもありません!入学試験の事ですよ!」
「あ~・・・」
そう言えば報告してなかった。試験自体凄くイージーだったが、思ったより精神が疲れていたらしく、無意識下で無気力になっていたのだ。それを『暇』で自分自身を誤魔化してたらしい。
「アーノルドさんが元気ないように見えたので、その・・・」
ナタハルちゃんは目を反らし俯く。その表情から心配掛けていた事に気付き、罪悪感に襲われる。
他客の視線が痛い。女を悲しませる最低な野郎と言いたげな視線。伊達に看板娘ではないということか。
「あー、ごめんなさい・・・。ちょっとばかり疲れていたみたいでさ。報告を怠ってしまった。でも試験は手応えあったよ。合格だって言われたし」
すると、先程までの表情から一転。元気を取り戻すようにパァ!と、花開くように変わる。
「おめでとうございます!これでアーノルドさんも
心からの言葉である事が分かる。それが素直に嬉しかった。
「まあ、学校生活が少々不安だけどね。でも僕は
「そうでしょうそうでしょう!魔法学院は
私応援しています!と、両手の拳を胸の前で握りしめるが、
あれ?という疑問を浮かべる表情へと変わる。それは僕も同じだ。
「魔法?魔法も学べるんですか?」
「学者?普通科?何の事だ?」
「「・・・え?」」
食い違いが発生したらしく、僕とナタハルちゃんは首を傾ける。だんだんとぎこちない笑みを浮かべて、
「お父さん!今日は普通科の試験じゃないの!?」
「は?あの坊主は平民なんだろ?つまりそういう事じゃねえのか?」
「でもアーノルドさんは何の事だって・・・」
「坊主の結果は?」
「合格だって言ってた」
「じゃあ受け取った物を渡しに行けよ。ったく、変なエルフだったぜ」
厨房に走り、割りと大きな声を出す。客の視線は声のする方に集まっている。
すると、慌てたように戻ってきた。バッグを両手で抱えているのに気が付いた。
「アーノルドさんは、
「まあね。それに
「それは・・・」
答えづらそうにポツポツと説明する。実力主義と謳っているが、生徒の多くは高貴な身分中心。だから階級主義が酷く根付いており、平民が立ち寄れないらしい。
大方知っている情報でも、第三者からそれを聞くと新鮮な情報だった。
「心配してくれてありがとう。まあ、何とか頑張るさ」
身分差なんかで足を引っ張られてたまるか。奴らの度肝を抜いてやる。
柄にもなく心を燃やした。
「そう言えば、その荷物は?」
「これですか?
「エルフ?・・・何か伝言とか無かった?」
エルフと聞いて、一人だけ心当たりがある。
「伝言ではないのですが、『魔法学院に受験した平民がいれば、これを渡してくれ。まあ、不合格のようなら捨てるなり売り払うなりしていいから』って言われました」
こんなこと言うエルフは一人だけだ。来てたんだここに。
「知り合いだな」
「そ、そうなんですか?」
目を見開く。エルフと知り合いになれるのは、基本的に貴族以上か繁盛している商人くらいだからだ。平民とは縁遠いものだ。
まあ、あの人はエルフらしくないフレンドリーな性格だから、例外だけどね。
荷物を受け取り、バッグの中身を確認する。ナタハルちゃんも気になるのか、一緒になって覗き込んだ。中に入っていたのは、
「これは・・・上着と杖?と手紙とポーチ・・・でしょうか?」
4つだった。