勝利の女神:NIKKE ─The Last Kiss─ 作:一般指揮官
停電した市内の夜は普段とは異なり、酷く暗く──大きな余震が続く中、人工の光が皆無に等しいのもあってか、憎たらしい程に夜空に瞬く星が美しく見えたのを色濃く覚えています。
15:20。
前哨基地を後にし、地上へ逃亡したまでは良い。危機は一応、遠ざかったのは確かだ。
しかし──身を潜めるアテなどある筈もない。とうの昔に地上は人類が支配していた頃のそれではない。
身を完全に隠す場所などあろう筈もなかった。
事の次第をイーグル達はアンダーソンへ報告してくれたであろうか。
地上でも通信が妨害されているらしい。彼や彼女達が持つ携帯端末はおろか、無線まで使えない状況では確認する術がない。
そしてなにより、これはムーアの個人的な懸念なのだが──
「……あと5本……」
「──触ってみて〜!!」
「──はい〜!?聞こえませ〜ん!!」
指揮官室を出る際、何故新しいソフトパックを持って来なかったのだろう。などと考えても後の祭りだ。潰れたソフトパックから覗く残りの煙草の数は世辞にも潤沢とは言えない。
「──触って〜!み〜て〜!!」
「──ちょっ!アニス!!」
「──は〜い!!」
溜め息を吐き出すムーアは同時に銜えた煙草の紫煙を漏らしてみせ、やがてソフトパックを戦闘服のパンツ、そのポケットへ押し込んだ瞬間──頭上で稲光にも似た閃光が走った。
生憎と天気は憎らしいほどに快晴である。にも関わらずの稲光は解せない。ムーアは銜え煙草のまま頭上を見上げる。
パラボラアンテナを始めとした複数のアンテナが備え付けられた電波塔。塔内に据えられた梯子を昇り、作動しているかの確認作業中であったネオンの身体が落下してくる様子を彼の視線が捉える。
あ、と声を挙げる間もなく彼女が塔内の床へ落下して叩き付けられたかと思えば──アニスは頭上を見上げつつ満足そうに頷いていた。
「──うん!ちゃんと作動してるね!」
「──何なんですか本当に!!」
「──だ、大丈夫ですかネオン?」
怒り心頭といった様子で顔を上げたネオンを気遣いつつマリアンが手を貸して立ち上がらせる。どうやら先程の閃光はネオンが通電している何らかの部品に接触してスパークが走った為、生じたものらしい。
「電波塔がまだ生きてるか、確認できたよね?」
「電波塔は生きているかもしれないけど私は死にかけたんですよ!?」
「もう〜大袈裟なんだから。ニケがこのぐらいで死ぬ訳ないって」
ひとまずネオンは大丈夫そうだ。安堵の溜め息を紫煙と共に吐き出したムーアはマリアンの手を借りて立ち上がる彼女の背中を左手で軽く叩いた。
「指揮官、通信を試してみます」
「頼んだ。…おそらく傍受されるとは思うが、背に腹は代えられない」
ラピが頷きつつ塔内で最も広い部屋──通信用の機器が揃っている通信室へ向かう後ろ姿を見送った彼は改めて彼女達を見渡す。
全員が普段と同様の武装をしているが、弾薬は心許ない。残弾を弾薬庫へ返納前であったのは幸いだがムーアも背嚢に納めたままの弾薬を含めても100発以下、擲弾は残り3発だ。破片手榴弾と発煙手榴弾に至っては1発ずつしかない。前哨基地からの脱出に使い過ぎたとは思うが、致し方ないだろう。
「…指揮官様、大丈夫?」
ネオンをからかっていた──にしては過激だが──アニスが不意にムーアへ気遣わしげな視線を向けた。どうやら眉間へ深い縦皺が刻まれていたのを見て、懸念や不安を生じていると考えたらしい。
「…狙いは私…なのですよね?」
やや垂れ目の瞳を伏せながらマリアンが呟く。それに肯定や否定、いずれもしないのは不誠実だ。しかし口にするのは憚られる。だからなのか彼は小さく頷きを返すだけに反応を留めた。
「…私のせいで…皆さんや指揮官に──」
「それは違う。キミのせいではない。それだけは間違えるな」
だが、続けられた瞳どころか顔を伏せたままの呟きが耳朶を震わせた途端、ムーアはマリアンの眼前へ移動し、彼女の細い肩を左手で掴んだ。軽く揺らしたかと思えば、左手の指先を彼女の顎へ添え、伏せられている顔を上げさせて濃い茶色の瞳を向ける。
「マリアンの性格だ。気にするな、とは言えない。だがそれだけは──」
「──ブービートラップ!!」
──背後からラピの警告が発せられた瞬間、ムーアは反射的に左手を伸ばしてマリアンを抱擁すると薄汚れた廊下の床へ押し倒す格好で共に倒れ込んだ。爆発音と衝撃波が大気を震わせながら到達する中、彼は自身を盾にして彼女を守ってみせた。
「──指揮官!?」
ニケが指揮官を庇うことはあっても、その逆があってはならない。本能にまで刻み付けられた大前提からマリアンが悲鳴を上げるも彼は爆発の残響が収まったのを肌で感じ取りながら身体を起こした。
「…大丈夫か?」
「わ、私は大丈夫で──いえ、そんなことより指揮官は!?」
「大丈夫だ。問題ない──ラピ!」
身体を起こしたムーアがおそらくは爆薬が起爆したと思われる部屋へ視線を向ける。ラピが向かった通信室だ。舞い上がった埃が煙幕のように立ち込める中、珍しく慌てた様子で彼女が戻って来るなり彼へ声を掛ける。
「指揮官!ご無事ですか!?」
「大丈夫だ。キミの方は?」
「爆発寸前に回避しました。大丈夫です」
駆け寄って来たラピの全身へ視線を巡らしたムーアが、そして彼女も彼の全身へ紅い瞳の眼差しを向け、異常がないと認めて安堵の息を漏らした。
どうやら呑気に煙草を吸っている時間はなくなったらしい。彼は半ばまでしか吸っていない煙草を携帯灰皿に捩じ込んでしまう。残りは5本のみだ。
「──地上でブービートラップ!?どういうこと!?」
「──…昔、誰かが設置したんでしょうか?」
「…まぁその可能性も無くはないだろうが…」
その場へ伏せていたアニスとネオンも身を起こす。帽子を直しながら立ち上がった彼女達に続き、マリアンも腰を上げると全員が周囲へ警戒の視線を向け始める。
「ラプチャー相手にブービートラップを?しかもこんなに狭い室内に?怪しすぎない?」
「…さっきの爆発から爆薬量は概算出来るが…あれではラプチャーを仕留め切れないな。良くて小破程度だろう」
なにせフロアその物が吹き飛んでいないのだ。それが何よりの証拠だろう。ムーアのように1.8kg分の
「…人間同士で戦った可能性は…?」
「さてな…それにしては塔内は綺麗で、白骨死体が何処にもない」
マリアンの予想に彼は首を左右へ振りつつ左手をポケットへ伸ばし──やがて煙草を取り出そうとした手を止めた。残り5本しかないのだ。節約せねばならぬ。
「取り敢えずここを出ましょう。爆発で通信ハブが壊れたから他を当たらないとね」
ラピが分隊の仲間達へ移動を促していた時、ムーアら視界の片隅に黒い影のような
反射的に突撃銃の安全装置を指先で解除し、銃口を向けるが──
「──気の所為か?」
「…指揮官?」
突然、銃口を通路の向こう──昇ってきた階段がある位置へ向けた彼にマリアンが疑問符を浮かべつつ問い掛ける。なんでもない、と返しながらムーアは銃口を下ろすと再び安全装置を掛けた。
移動しよう。彼が彼女達へ前進を促す。
昇って来た階段を目指してラピが先頭に立って進み始める。その背後に続いてムーアも進むのだが──
「──ラピ」
──唐突に彼がラピの名を短く呼ぶ。それに彼女も承知しているかの如く頷きを返しながら立ち止まった。
「どうしたの?」
「──ブービートラップよ」
背後から聞こえるアニスからの問い掛けにラピは階段へ設置されている赤外線式人感センサーの小さな機器を視線で示した。レーザーポインターでも改造したのか段差を横切る形で──しかも発見するのが難しい足首辺りを引っ掛けようとする位置へ赤い光線が走っているのをラピを始めとした彼女達は視界の機能を切り替えて捉えてしまう。
「──昇って来た階段なんだがな」
約10分前にこの階段を使ったのだが、このような代物は無かった。まさか勝手に生えてきた訳でもあるまい。
となれば──彼は無意識の内に再び突撃銃の安全装置を外した。
ラピが身を屈めて慎重に人感センサーの解除へ取り掛かると、援護するようにムーアがその背後へ立つ。
構えた突撃銃の銃口を階下へ向けながら気配を探る。この電波塔内には彼等しかいない筈だ。少なくとも
「……御苦労なことだ」
「…指揮官?」
おもむろにムーアがボディアーマーのポーチから発煙手榴弾を取り出すとトリガーを握り込んだ。その姿を捉えたマリアンが何をするのか、と言外に尋ねるも彼はピンを引き抜いて階下へ投じた。
カラカラと階段の段差を転げ落ちる円筒のそれからやがて白色の煙幕が噴き上がる。
電波塔内の通路は狭い。たちまち煙幕が立ち籠めて視界は不明瞭となった。
「──クリアリングしてくる」
端的極まる言葉が紡がれたかと思えば、ムーアは解除の作業を進めるラピの上を飛び越えて階下へ降り立つ。白煙の中へ突っ込んでしまうが、彼は構わずに突撃銃を構え直した。背後からは部下である彼女達が引き返すよう声を張り上げて叫んでいるが、こればかりは聞いてやれない。
万が一、
煙幕が充満する通路は数m先すらも見えない。その只中を進みつつ、構えた突撃銃の銃口の先へ
「──手を挙げろ」
後頭部に冷たく、硬い感触を覚える。銃口が突き付けられたと感じた瞬間、金属のそれと同等の冷たさを抱かせる声音が警告を発した。
声音からして女性──となれば、ニケであろう。
──これは失敗したかもしれない。
「──ほ〜ら、早く手を挙げろ〜」
しかも声質の異なるそれが真後ろから続けて聞こえる。どうやら2名だ。
溜め息を吐き出した彼は突撃銃の銃口を床へ向けつつ両手を離した。
「──銃も捨てろ」
「…分かった。今、捨てる」
背後にいる為、どのような相手なのかは分からない。ムーアは頷きつつ首と右脇へ通しているスリングベルトを右手を使って外すと、突撃銃を吊るしながら緩慢な動きで床へ銃を静かに置いた。そのまま両手を肩ほどまで挙げた瞬間──
「───」
両手を挙げたまま身体を回転させ、肘を使って突き付けられた銃口──拳銃を弾き飛ばすや否や、一歩踏み込みながら相手の右腕の肘関節を左手で極め、右手で胸を押しつつ右脚で脚を払った。
間近で見えたのはフードを被った妙齢の女性の顔。その紅い瞳が驚愕で見開かれている様子を捉えた。
やはりニケであったらしい。彼は床へ襲撃者の1名を倒しながら右腕の肘関節を極めている左手へ力を込めると、ゴキリ、とフレームが鈍い音を立てて外れた。
ニケは常人とは比べ物にならない身体能力を有しているが──人体を完全に模倣している以上、弱点もほぼ同一と言っても過言ではない。
拳銃を右脚のレッグホルスターから引き抜こうと右手を伸ばそうとしたが、ほぼ勘の領域の話になるものの銃口を向けられていると察し、フードを被ったニケから素早く離れた。
「──へぇ…?良い動きするな。本当に人間かよ?」
「…
短機関銃──よりも
それにしても特徴的な銃だ。この襲撃者の個人的な好みで改造でもしているのだろうか。やたら突起物がナックルガードへ多く取り付けられているのがムーアは気になった。
「あぁ。文句でもあるか?」
「…まぁ個人の趣味に兎や角は言わないが…少なくとも俺の好みではないな。──個人的には、
彼は視線で襲撃者がベルトから吊るしている鞘へ納まった2本のナイフを示した。おそらくはダガーのそれだろう。
「へぇ?気が合うな?私も気に入ってんだ」
「…そうか。それは良かった。俺も
ムーアがボディアーマーの脇へ付けているファイティングナイフを鞘から引き抜き、薄れつつある白煙の中で相対する襲撃者へ黒い刃を見せ付けた。それに相手は口角を吊り上げながら──特徴的な銃を下ろすと後ろ腰へ得物を戻す。
そしてベルトに吊るしているナイフを2本とも引き抜いて見せると、逆手で握り込んだ。
「…本当の目的は別なんだけど…お前と殺り合う方が楽しそうだ」
「俺は楽しくないんだが」
「おいおい〜。ダンスに誘ったのはお前だろ〜?」
今更、いち抜けたは許さない。肩を竦めつつ対峙する彼女がボクシングで言えばステップイン・バックステップを刻み始める。
それを認めた彼は順手で握ったファイティングナイフの刃先を相手に向け、ゆっくりと間合いを詰めて行く。
──どうやら戦ってくれるらしい。
真正面から戦うのは随分と久しぶりの襲撃者──Kは昂揚を感じつつ両手へ逆手に握ったナイフを煌めかせながらムーアへ躍り掛った。
逆手に握った場合、狙うのは相手の頸動脈だ。特に人間の場合、一刺しで仕留められる。
ある意味で定石通りの一閃が煌めく。
Kが刺突に備え、ナイフのハンドルを強く握り込んだものの彼は半身を横へ逸し、彼女の一撃から逃れつつ順手で握っていたファイティングナイフを手の内で逆手に切り替えた。
僅か一瞬の出来事のようにKは思っただろう。
──ポトリと彼女の手首より先の右手がナイフを握ったまま床へ落ちたのだ。
「──ッ!?」
手首が床へ落ち、続けて痛覚センサーが喪失の痛みを伝えて来るが直ぐに機能を停止して痛みを無視する。
濃い茶色の双眸の眼光も鋭く、目にも止まらぬ速さで彼は握ったファイティングナイフを逆手のままKの首元へ一回、二回と刺突。黒い刃が引き抜かれる度に噴き出る赤い触媒が返り血の如くムーアの顔を染める。
「──K!」
関節部分を外され、右腕をプラプラと揺らすフードを被ったニケ──Dはお喋りな同僚が一方的に攻撃されている渦中へ割り込んだ。
左手には
それを視界の片隅で認めたムーアがファイティングナイフで何度も刺突を繰り返したからか、怯んで身体が硬直して身動きが取れていない様子のKを突き飛ばす。──あろうことか手斧の一閃へと。
「──ガハッ…!?」
「──ッ!!」
胴体へ手斧の刃部が深々と突き立てられ、肋骨のフレームが軋み、耐え切れず破断した感覚をKは捉えた。
同士討ちの格好となった瞬間、冷静沈着を旨としている筈のDが驚愕に双眸を見開いた。僅か一瞬の驚愕。それはムーアにとって攻撃の好機に他ならなかった。
プラプラと格好悪く揺れる彼女の右腕側から襲い掛かった彼は逆手に握ったファイティングナイフの刃でDの首元を何度も突き刺す。それこそ1秒間に3回は刺突しているだろう。
声帯、気管に相当する部位が損傷を受け、発声が困難となった。しかしそれで怯むような彼女ではない。
Kへ深々と突き立ててしまった手斧を引き抜き、彼へ一撃を加えようとした矢先──
「───ッ!?」
ゴキリ、と鈍い音と衝撃が彼女を襲う。それが響いたのは自身の頸部だと気付くも──損傷を受けた頚椎より下から力が抜けた。そのまま床へ転がり、指先一本も動かせなくなる。
「──ハァ…ハァ…!」
荒い呼吸が我知らず漏れる彼女の視界の隅では傍らにしゃがみ込むムーアの姿がある。
紅い瞳で見上げると──感情を読み解けない無機質な濃い茶色の瞳を捉えた。
「…何処の部隊だ?」
無機質な、それこそガラス玉のような印象さえ受ける双眸で見据えられる中、彼女は唇を硬く閉ざして呻き声も漏らさぬよう努める。無言の意志を表明すると彼は小さな溜め息を漏らした。
「──ゲホッ…畜生…!…お前…なんなんだよ…!?」
「──まだ動けるのか」
首から赤い触媒を流出させ、口元からもそれを吐き出しながら床へ這い蹲っていたKが上体を起こしつつ喚き散らすのが耳障りなのか──彼は無造作に握ったナイフをスローイングナイフよろしく打ち込んだ。
一直線に飛翔したナイフの切っ先が彼女の胸元へ突き刺さる。再びの衝撃が走り、仰向けに転がったKの口からは吐血を思わせる勢いで触媒が流れ出た。
床へ転がっていた手斧を彼は拾い上げると、それを軽く観察する。この御時世に近接戦闘用の得物とは珍しいが、悪くはない一品である。なにより原始的な構造が良い。
「──もう一度、聞くぞ。何処の部隊だ?」
再度の問い掛けだが、首から下が動かないDは硬く唇を結んだまま答えない。それが解答だと察したムーアは深々と溜め息を吐き出すと──順手で握った手斧を振り翳す。
「──おやすみ」
「──指揮官!!」
悲鳴にも似た声が叫ばれた。翳した手斧を振り下ろそうとする彼はその声に動きをピタリと止め、濃い茶色の双眸を通路の先へ向けた。
薄れた煙幕の向こうから駆け寄って来るマリアンがいる。
彼女は呼吸を乱しながらもムーアの下へ駆け付けると、手斧を握る彼の右手を掴んだ。
「それ以上は…!」
「……敵だぞ」
例えニケだとしても──と彼は暗に告げるが、彼女は紅い瞳を瞑ったまま何度も頭を振って思い留まるよう懇願の仕草を見せた。
「指揮官様!!」
「師匠!!」
「指揮官──シージペリラス」
彼女達も薄れた煙幕の向こうから駆け付けると、ラピが床へ転がる2名のニケの正体を漏らす。
「…御大層な名前だな」
鼻をひとつ鳴らした彼が仕留めようと右手へ縋り付くマリアンを振り払おうとするが──彼女は決して離さないと言いたいのか、ムーアの腕をピクリとも動かそうとするのを許さない。
離れるよう命令しようと彼は濃い茶色の瞳を向けるが、マリアンが小刻みに身体を震わせ、涙を湛えた紅い瞳の中へムーアの姿を映し出している。
「──お願いです…指揮官…」
「───」
決して絆された訳ではない。興味を失っただけである。
ムーアの右手から力が抜け落ち、握った手斧が床へ落下した乾いた音が響き渡った。
「…指揮官。急ぎましょう」
「……分かった」
ラピが床へ捨てた彼の突撃銃を差し出す。それを受け取ったムーアがスリングベルトを首から右脇へ通して保持し、通路を駆け出そうとしたが──
「──返して貰うぞ」
「──ガハッ…!」
仰向けに転がったままのKへ歩み寄り、腹部をブーツで踏み付けながらムーアが胸元へ突き刺さったファイティングナイフを引き抜く。途端、咳き込むと同時に彼女の口元を赤い触媒が濡らす。
鮮血の如き触媒で濡れて光るナイフの刃を戦闘服のパンツの生地で拭い取り、鞘へ納めた彼が改めて駆け出す。
その後へ続く彼女達の後ろ姿を、次第に意識が遠ざかる2名はただ見送るしか出来なかった。
ゲーム本編よりシージペリラスの二人が酷い目に遭ってる気がしてなりません。
─追記─
ここだけの話…おそらくムーア大尉と一番意気投合するニケは既出だとデルタあたりだと想像している私です(ヒソヒソ