勝利の女神:NIKKE ─The Last Kiss─   作:一般指揮官

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暫く更新出来ない分も合わせて連続投稿させて頂きました。皆様の御期待に添えるかは分かりませんが…。


第8話※微グロ注意

 

 

 

 時刻は04:10。

 

 本来なら徐々に仮初の空──エターナルスカイの東側が白み始めても良い時刻だが、生憎と前哨基地の空は星空すら投影されていない新月の有様だ。

 

 その基地の敷地内にあるエレベーターから、チーン、という軽快な音が鳴り響き、ややあって扉が開いた。

 

 黒ずくめの戦闘服やボディアーマーを纏った兵士達がゾロゾロと降り立って来る。

 

 その手には対人用の自動小銃だけでなく、分隊支援火器としての機関銃も握られていた。

 

「──……こいつは…」

 

「──ヒデェ…」

 

 揃いのワッペンが袖に貼り付けられた一団はバラクラバに隠された下の表情を歪ませる。

 

 まずは強烈な()()だ。

 

 エレベーターを降り立って間もなくだというのに鼻を突く異臭が漂っている。

 

 肉と脂、タイヤのゴムが焼けた臭いが程よくブレンドされた臭いは強烈の一言に尽きる。これに糞尿の臭いも混ざっているのだろう。アンモニアの類のそれも嗅ぎ取れるが──()()()()()()まだ良かった。

 

 そして()()である。

 

 エレベーターを降り立って眼前に広がっているのは6時間前に投入されたと聞いている2輌の歩兵戦闘車(IFV)の無惨な姿だ。

 

 路上で撃破されたのだろう。片方は砲塔部分が吹き飛び、もう片方は内部で燃焼ガスが燃え広がったのだろうか。操縦席のハッチから上体を曝け出し、脱出しようとしていた矢先に灼き尽くされたのか黒焦げとなった死体がそのままの姿を晒している。

 

 車輌はいまだに炎上を続けており、誰もがヘルメットへ取り付けている熱線暗視装置も組み込まれた暗視眼鏡を持ち上げた。

 

 ここでは使えない。炎を直視してしまえば、視界が白く染まって役に立たず、かと言って光源がなくとも使用出来る遠赤外線を感知して目標を捉える装置ですら、こうも炎上している車輌だけでなく、()()()余熱が残っている一帯では役に立たないだろう。

 

 念の為、そしてバッテリー残量を温存する理由からも使用は控えるのが吉と判断したようだ。

 

「──……中尉、()()を……」

 

 下士官の一人が部隊を率いる将校へ声を掛ける。

 

 なんだ、と問う前に下士官が向けている視線の先へ眼差しを送った瞬間──将校はバラクラバの下に隠された額へ冷や汗を滲ませた。

 

 街路灯がある。

 

 その街路灯へ()()()()()人影を発見したのだ。

 

 輪を作った細いワイヤーが首に掛けられ、連結された太いワイヤーで吊るし上げられたのだろう。どうやら吊るし上げられた時は()()()()()らしい。

 

 舌と眼球が飛び出し、苦悶の表情のまま事切れている。纏った戦闘服のパンツから排泄物が垂れ落ちているが、これが先程の悪臭の一因なのだろう。

 

「──…待って下さい…()()……まさか……」

 

 年若い兵士が震える声で指差す方向。何かを見付けてしまった、と察して余りある声だ。

 

 誰もがその指を差す先へ視線を向け──言葉を失った。

 

 生首、である。

 

 地面へ立った鉄パイプの先端へ──尖っていたのだろうそれの先端に人間の生首が突き刺さっている。パッと見るだけで10名分は下らない。

 

「──うっ…!!」

 

 流石にこの光景に何名かの兵士が嘔吐した。吐きたくもないのに1時間前に摂取したばかりの朝食をバラクラバを捲って晒した口から嘔吐する。

 

 ここで何があったのか、とは誰も聞かない。誰もが察したのだ。

 

 おそらく戦闘以外の()()が起こったのだろう、と。

 

「──生存者発見…!」

 

 不意に兵士の一人が報告する。

 

 駆け出した兵士が向かった先には──雑多かつ見すぼらしい服を纏った人間が仰向けに倒れつつ呻き声を上げていた。

 

「──ヴッ…ア"ァ"……!!」

 

「大丈夫か!?」

 

「…待て…まさか…エンターヘブンの人間じゃないか…?」

 

 この服装──間違いなく投入された正規軍の兵士ではない。となればエンターヘブン(テロリスト)の構成員だろう。

 

 兵士達が警戒し、携えた突撃銃や分隊支援火器の銃口を向けるも──駆け寄った兵士がそれを制した。

 

「──止めてください!彼も同じ人間です!例えテロリストだとしても…傷付いている!」

 

「しかし…!」

 

「…あぁ…畜生…メディック!診てやれ!」

 

 先任軍曹──下手をすれば将校よりも小隊では発言力が強い下士官の指示である。衛生兵が不承不承とはいえ駆け出し、介抱を始めた。

 

「…軍曹…!」

 

「…中尉…怒るのは後にして下さい。…それに…アイツの言うことにも一理あります」

 

 駆け寄った衛生兵が若い兵士に生存者を仰向けにするよう促す。

 

 それに頷いた若い兵士が一声掛けてから生存者を仰向けに転がすと──その顔面の有様が車輌を燃やし続ける炎で照らされて克明に視界の中へ飛び込んで来た。

 

 ──両眼が潰され、血の涙を流している。

 

「…なんて…ことを…!」

 

「…ここまでするのかよ…」

 

 ゾッとする。捕虜となったのか、それとも戦闘中に負傷したのか──前者の可能性が高いが、ふとここで疑問が生じた。

 

 何故、捕虜をこんな所に転がしていたのか、というそれだ。

 

 衛生兵はメディックシザーで纏っている粗末な衣服を切り裂き、負傷箇所の観察へ取り掛かる。その瞬間──バラクラバから覗く両眼がこれでもか、と見開かれた。

 

「爆弾──」

 

 オレンジ色の閃光が生存者から迸る。その強烈な閃光は兵士達の網膜を焼く勢いだったが、次いで爆発の衝撃波に乗って散弾が周囲へ飛び散った。

 

 対ラプチャー用の散弾銃、そのペレットだ。

 

 生存者の身体には高性能爆薬(C-5)がこれでもかと取り付けられたベストが着せられ、そこにはショットシェル(散弾)から抜き取ったペレットが埋め込まれていたのだ。

 

 そしてオレンジ色の閃光と飛散する散弾を間近で見た衛生兵は今際の際に目の当たりにした。

 

 生存者の口の中──血の泡を吐き出し続けていた口腔。あるべき筈の舌が半ばから切り取られたかのように喪失していたと。

 

 飛散した散弾で()()()()兵士達の死体がたちまち量産される。

 

「──腕!!俺の腕は何処だ!?」

 

「──ア"ア"ア"ア"!!?」

 

 悲惨なのは中途半端に生き残ってしまった者達だろう。

 

 腕が吹き飛んだ兵士は自身の腕が何処に行ったのかと狂乱状態で探し、下肢──脚の付け根から下がまるごと砕かれた兵士が這いずっては絶叫を奏で上げた。

 

 腰から破断された者は路上へ内臓を垂れ流し、ブクブクと血の泡を吐き出しながらやがて事切れる。

 

 ──最早、作戦どうこうではない。

 

 なんとか軽傷で済んだ将校が部隊の状況を判断し、ただちにアークへの撤退を命じようとした瞬間のことだ。

 

 自身の視界が()()したように感じた。

 

 え、と疑問符を浮かべる間もなく将校の視界の中へ見慣れた身体が倒れ込んで来た。それが自分のそれだ、と気付いた時、彼の意識が遠退いていく。

 

「──中尉!!」

 

「──野郎!!撃て!撃て!!」

 

 長身の人影が突如現れたかと思えば、振り翳した()()の一閃で将校の頭部がコトリと落ちた。

 

 その手に握られた血染めの山刀。それが将校の命をあっさりと奪い取ったと気付いた健在の兵士達の銃口が向けられる。

 

 銃声が立て続けに鳴り響き、銃撃が浴びせ掛けられるが、地面を這うような低い姿勢のまま駆け出した人影には掠りもしなかった。

 

 振り翳された山刀が横薙ぎに一閃され、兵士の首が斬り飛ばされ、胴体が斬り裂かれる。

 

 一人、また一人と数を減らす兵士達。それと比例して銃声も散発的となっていった。

 

「──ば、化け物…!!」

 

「……失礼なことを言うな。俺は、しっかりと、人間だ」

 

 ──そんな訳があるか。

 

 弾薬が切れた自動小銃の銃口を向けつつ、引き金を何度も引いて怨嗟の声を漏らした最後の一人へ長身の人影が苦言を呈する。

 

 やにわに振り翳された山刀──垂直に振り下ろされたそれは爆発の衝撃で被っていたヘルメットが何処かへ消えた脆弱な頭部をかち割るのは造作もないことだった。

 

 

 

 

 

 あれから5日は経っただろうか。

 

 5日間、前哨基地に響き渡る銃声や爆発音は定期的にあらゆる施設を震わせた。

 

 宿舎の一室──ラピの居室。世辞にも広いとは言えない部屋だが、その室内にはカウンターズの全員が揃っていた。

 

 アニスは椅子へ腰掛けつつ亜麻色の髪を掻き毟っている。

 

 ネオンは壁へ背中を預けて床に座り込み、立てた両膝へ顔を埋めていた。

 

 マリアンは──ベッドの中だ。化学繊維の毛布に包まり、さながら胎児のような格好で丸くなっている。先程まで遠雷の如く響いていた爆発音と銃声が宿舎を震わせた時、目を醒ました。そしていまだに小刻みに身体を震わせている。

 

「…嫌…嫌…指揮官…!」

 

 毛布から顔を出している彼女の瞳は閉ざされているが、その枕元は流した涙で湿っている。

 

 その姿を認めたラピはベッドの端へ腰掛けつつ、マリアンの銀髪へ手を伸ばして優しく撫でた。

 

 銃声が止んで既に1時間以上は経っている。

 

 ラピは腰を上げた。

 

「……指揮官に…朝食を持って行くわ」

 

 全員から反応は返って来ない。唯一、アニスが微かに頷いていたような気がする程度だった。

 

 彼女は居室を出ると宿舎の食堂へ立ち寄る。そこで包装された戦闘糧食をひとつ掴んで外へ出る。

 

 ──ここまで臭いが届いている。

 

 エレベーターの方向へ視線を向ければ、闇に包まれた世界の中で唯一、炎が燃えている光景が広がっていた。

 

 彼女はその健脚で宿舎とエレベーターまでの距離を一気に駆け抜けてみせる。

 

 何処に彼はいるのだろう。

 

 エレベーターの付近は戦闘直後ということもあるのか、血の臭いが濃い。

 

 生き残りは──どうやらゼロのようだ。

 

 動く者が捉えられない、となれば──ラピは彼がいるだろう場所を特定して再び駆け出した。

 

 50口径の重機関銃が三脚に据えられ、銃身が積み上げられた土嚢から覗く簡易の陣地。

 

 足の踏み場もない程に散乱した50口径の太い薬莢が散らばる陣地内の中を覗くと──彼の姿があった。

 

 とっくに50口径の弾薬は尽きてしまっている。無用の長物となった重機関銃が据えられた陣地を構築する土嚢へ背を預け、さながら力尽きた死体のような格好で眠っているのか、起きているのか分からないムーアの姿がある。

 

 この5日間で襲撃は13回──先程の分も含めてだ。

 

 弾薬、糧食、その他の物資の補給はない。それどころか対抗出来る()()はムーアのみ。

 

 ほぼ不眠不休での戦闘が続いている。

 

 何度かラピは彼へ自身も戦闘に加わることの具申を述べたが、素気無く断られている。その理由は──なんとなく察せられた。

 

 ラピは一度紅い瞳を伏せた後、陣地の中へ足を踏み入れる。

 

 その拍子に、ジャリ、と空薬莢が擦れる音が響いた瞬間のことだ。

 

「───ッ!!」

 

 弾かれたようにヘルメットで覆った頭を上げたムーアが、土嚢へ立て掛けていた山刀を掴みながら眼前のラピへ躍り掛かった。

 

 暗がりの中でも濃い茶色の瞳が爛々と光り、まるで野生動物のような印象をラピに抱かせる。抵抗する間もなく彼女はムーアに陣地内へ押し倒された。

 

 自身へ馬乗りになったムーアが山刀を振り下ろそうとする姿を見たラピは──穏やかな口調で呼び掛ける。

 

「──()()()

 

 爛々と光る濃い茶色の双眸は敵意に染まっている。臆することなく見詰めて来る紅い瞳を捉えたムーアの茶色の瞳から──徐々に敵意が薄れ去る。

 

「──私です。ラピです」

 

 カラン、と滑り落ちた山刀が陣地の中で乾いた音を立てた。

 

 完全に彼女の姿を双眸へ映したムーアが馬乗りとなっていたラピから立ち上がって距離を取ると、そのまま後退して土嚢へ背中を預けて座り込んだ。

 

 返り血で濃くなった無精髭が固まり、汚れと返り血で染まった顔面をグローブが嵌められた両手で覆い隠すムーアの声が震えていた。

 

「……済まない……」

 

「……いえ」

 

 寝込み、それも戦闘直後に接近した自分の方が悪い、と彼女は暗に告げるが──ムーアは守るべき部下を攻撃しようとした事実に嫌悪感を抱く。

 

 腰を上げたラピはそのまま彼の真横へ座り込むと、ボディアーマーのポーチからソフトパックを取り出した。

 

 その中から煙草を一本取り出し、形の良い唇へ銜えると見様見真似のままターボライターの火を点ける。

 

 煙草を嗜好してはいない。だが──こうするのは嫌いとは思えなかった。

 

「……指揮官」

 

 顔面を覆い隠す彼の両手をそっと引き離し、露わとなった乾燥気味の唇へラピが自身の唇から取り除いた煙草を銜えさせる。

 

 これで少しは落ち着いてくれると良いのだが。

 

「…………」

 

 銜えさせられた煙草の紫煙を緩く燻らせるムーアの表情は──世辞にも良くはない。手袋を脱いだラピが彼のグローブを外し、生身の右手を握る。

 

 コンディションはレッド──危険な域へ達していた。

 

「……指揮官……もう限界かもしれません」

 

「……まだ戦える」

 

 決して彼女は()()などとは言わなかった。

 

 彼ならば最期の瞬間まで戦い抜くであろう、という確信がある。今もこうして戦っているのだ。それが何よりの証拠だろう。

 

 しかし──いずれは突撃銃の弾薬も尽きる。弾薬の節約の為にエンターヘブンの一人が持っていた山刀を使って白兵戦を仕掛けている程だ。

 

「…マリアンの気持ちもお考え下さい。()()()がこうして戦っているだけで…彼女は傷付いています」

 

「────」

 

 濃い茶色の瞳が揺れ動くのをラピは見逃さなかった。

 

 おそらく誰よりもムーア自身が、限界を知っている筈なのである。

 

 マリアンを守り切れるだけの余力は残っているが──それも有限だ。無限ではない。

 

「──意見具申、宜しいですか?」

 

 ラピが声を掛けると、傍らのムーアが小さく頷きを返した。

 

「──マリアンを脱出させましょう」

 

「…何処へ?」

 

「…何処かへ。奪われないように出来るだけ遠くへです」

 

 抽象的な表現にしかならない具申だが──彼女は頭上を見上げる。

 

 仮初の空は暗黒に染まっている。エターナルスカイの向こう側──つまり地上へとラピは視線を向けていた。

 

「……地上に、か?」

 

「…はい」

 

「…地上の何処へ?…マリアンを一人だけ地上に送り込むなんて薄情な真似は出来ん」

 

「……知っています。あなたはそういう人ですから」

 

 ラプチャーが跋扈する地上である。いくらニケのスペックを超越しているマリアンの身体能力でも限界はあるだろう。仮に生存出来たとしても──延々とアテのない旅路を課すこととなる。

 

 彼女の指揮官としての責任を放棄する。指揮を解く。彼女を──捨てる。

 

「……それは……」

 

 出来ない、とムーアのなけなしの矜持が拒絶する。

 

「……スノーホワイトに連絡を取っては?以前、お話下さったではないですか。彼女と連絡先を交換したと」

 

「……あぁ……」

 

 確かにそれは事実である。

 

 しかし彼女は巡礼者(ピルグリム)だ。電波の届く場所へ留まっている保証はない。

 

「…このままあなた一人だけが戦い続けるよりも…一縷の望みを賭けて連絡を取る事の方が…合理的だと考えます。違いますか?」

 

「…ここまで戦ったのに、か?」

 

「意固地にならないで下さい」

 

 銜えた煙草から紫煙を燻らせるムーアの視線がラピを貫く。拒絶を色濃く映した視線だが、分隊のリーダーとして、そしてなにより──彼の部下として意見具申を翻すことは出来ない。

 

 紅い瞳を向けて来る彼女の視線で逆に貫かれたムーアは濃い茶色の瞳を逸した。

 

 ジリジリと燃える煙草の吸い口を指で挟み、僅かな沈黙の後、彼の唇が動いた。

 

「──キミが撃った…流れ弾に当たって人間が死んだと言っていたな」

 

「はい──……寝ていらっしゃったのでは?」

 

「…起きてた。済まない」

 

「知っています」

 

 アブソルート分隊との共同作戦の際、ムーアは寝入っていた()()だ。その最中、ラピが語った過去の話を彼は口にしたが、設定を思い出したようで小さな謝罪を述べる。

 

 とはいえ今更の話だ。彼女はとっくに知っていた。

 

「…キミは流れ弾だったんだろうが、俺は…こうして確実に殺す為、意図的に殺傷している」

 

「はい」

 

「…人間の死を面倒臭い、と感じたと話していたな。それは…間違いないか?」

 

 目を合わさずにムーアが尋ねて来る。

 

 その問い掛けにラピは──思い出すと心の奥底で自身に対する嫌悪感の類が湧き出るが、頷いて肯定した。

 

「……俺は……()()()()()()んだ」

 

「──え?」

 

「…面倒臭いとも、人間を殺傷する行為への嫌悪感も──何も感じない。……片付けをするような…散らかった部屋のゴミを捨てるような感覚が近い。ああ…いや…全滅(綺麗)にすると…少し嬉しくもあるか」

 

 吐露された率直な彼の感情にラピは困惑を隠せない。──いわゆる戦闘時の昂揚感から来るものではないのか、とも考える。

 

「…人間を殺したのは……たぶん…初めての筈なんだが…何故かな?」

 

「…それは…」

 

 返答に窮する彼女へ濃い茶色の瞳が向けられた。その瞳に──如何なる感情も浮かんでいないことから事実だとラピは思い知った。

 

「……キミの目には──俺は()()()()()?」

 

 化け物、畜生とこの5日間、聞き飽きた言葉を思い出しながら彼は問い掛ける。

 

 それにラピは何とも答えられず──携えて来た朝食の戦闘糧食を手渡すことが精一杯だった。

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