勝利の女神:NIKKE ─The Last Kiss─ 作:一般指揮官
そして作者が考えるカウンターズの分隊員達の署名の特徴
マリアン Marian(普通に綺麗
ラピ Rapi(普通に綺麗
アニス Anis(ちょっと丸っこい
ネオン Neon(筆圧高い
エターナルスカイに投影される仮初の空。その東側が次第に白み始める。
「──おはようございます指揮官」
「──おはよう」
覆土式弾薬庫の警備に当たっていた警衛勤務中の
昨夜の内に早朝の弾薬搬出と受領へ赴く旨を通達していたのもあり、受領は迅速に終わった。
弾薬庫前の地面へ並べられた金属製の弾薬箱。その蓋を開け、内部へ収められた
大口径の実包をムーアとラピが挿弾子を使用して一気に弾倉へ装填してはポーチへ納める。アニスは擲弾を胸下のベルトへ1発ずつ、ネオンも散弾を両腕のホルダーや腰のポーチへ納めて行く。いずれも慣れた手付きだ。
「──弾薬の受領が終わり次第、各自毎に銃点検」
手榴弾等を納め、予備弾薬も背嚢へ詰め終わると、空となった弾薬箱をムーアが担当の量産型ニケに返納する。
彼の指示で彼女達が念入りに携行する火器の点検を行うのを横目に彼も手早く突撃銃の点検を終わらせた。
徒歩でエレベーター前へ揃って移動して間もなく──迫り上がって来たそれの扉が開く。乗っている3名のニケの姿を認めるとムーアは分隊へエレベーターに搭乗するよう促した。
「──座標付近に上がるが、それでも歩いて3時間は掛かる。問題ないな?」
「大丈夫や」
昨夜の打ち合わせで示された座標付近にもエレベーターの乗降口は存在するが、あくまでも
それを念押ししながら彼は液晶パネルを操作し、地上へ設置されている該当の乗降口を指定、そして自身の認識番号を打ち込み終えると、扉の閉鎖を実施する。
扉が閉まると、エレベーターが一旦下降する動きを身体で感じた。やがて上昇を始めたのを認め、被ったヘルメットの顎紐を指先で調整しつつ彼は一同を振り向くのだが──
「……あ、あのさ…なんでみんな…こんなに暗いの?」
久しぶりという程でもないが5日ぶりの地上である。分隊の面々にとっても気晴らしになるかと彼は思ったのだが──ルピーが彼女達を見渡しつつ躊躇いがちに口を開いた通り、彼の部下達はあまり絶好調とは言えない様子だ。
それもその筈だろう。指定された座標の近くは──マリアンをピルグリム達へ預けた地点と近いのだ。
「…あまり触れないでくれると嬉しい」
ボディアーマーへ差していたサングラスを摘み、それで目元を隠したムーアは自身と同じモデルの突撃銃──個人的趣味なのか金ピカの突撃銃を携行するルピーに頼み込んだ。
するとブルパップ方式を採用しているからか銃身長が短縮されている狙撃銃を携えるドラーが大仰な溜め息を吐き出した。
「空気の読めない奴だな。当然、《マリアンをピルグリムに奪われたから》だろう」
対外的にはそのような脚本となっている。それを信じているのか否か。判断は難しいがドラーはそれを指摘する。頷くのはムーアも吝かではなかったが──
「──内在する技術力を金に換算すると膨大な金額になるのに、それを目の前で奪われたんだ。イライラするのは当たり前だろう」
「…済まん。たった今、イラッと来た」
勿論、一瞬だけの話だ。直ぐに苛立ちも沈静化する彼だが、溜め息を吐き出す前にドラーの横で大きなそれが響き渡った。
「──空気読んでや。みんながあんたみたいに、お金に目がないと思うん?」
やれやれ、とこれ見よがしにヤンが左右へ頭を振る。彼女は角張った印象を受ける被筒で覆われた発射機を携えていた。
「ただでさえ、死に物狂いで助けた仲間やのに…アーク中からイジメられた挙句、何処の馬の骨とも分からん奴等に拉致されたら心配やろうし落ち込むやろ。──なぁ?」
片手で扇を開き、赤地の扇面で口元と鼻を隠しながらヤンが意味ありげな視線をムーアへ向けて来る。
それへ──彼は肩を軽く竦めた後、ポーチから引き抜いた弾倉を突撃銃の挿入口へ叩き込んだ。
「──それより指揮官」
「どうした?」
ラピが紅い瞳を向けて来る。その眼差しは──間違いなく一言、物申したいと訴えていた。
「…昨夜のブリーフィングで概ねの作戦内容は理解しましたが…彼女達は戦闘よりも民間事業に特化したニケです。敢えて地上作戦へ同行する理由は…」
「言われてみればそうよね」
「うん…まぁ…そうだな」
昨夜に前哨基地へ戻ったムーアが分隊へ呼集を掛け、翌日早朝から実施される急遽の作戦に対しての説明を行ったまでは良いが──やはり詳細は商人連合と合流してから、と省いたのもあるのだろう。
彼の弁護をすれば彼女達が狙っている
「…指揮官様…何か弱みでも握られてるの?──
「それとも連帯保証ですか師匠?」
「……んな訳あるか」
「じゃあ
「違う」
確かに欲しいが──などとは口が裂けても言えないが、アニスとネオンの疑惑は見当違いも甚だしい。
「ははは。金を貸した訳ではない。まぁ契約書は一枚書いてもらったけど」
ドラーが笑い声を上げつつ──地上へ行くというのに上下共にスーツ姿の彼女がジャケットの内ポケットから折り畳んでいた契約書を取り出す。それを近くに立っていたラピへ手渡すと、受け取った彼女が契約書の内容を読み込んだ。
途端に彼女の整った眉同士が寄ったのをムーアは見逃さなかった。
「……確かにマリアンの一件で前哨基地が
しっかりとムーアの姓名が筆記体で綴られた署名欄まで読み終えたラピが契約書をドラーへ返す。──彼女の眉間に皺が寄り続けているのは目の錯覚でもなんでもない。思わずムーアはラピから視線を逸した。
契約書へ署名した点については──触れていなかったと今更ながら思い出したようだ。
「…いくらなんでも…私達に何も言わずに“契約書”って…」
「…言ってなかったのは……申し訳ない。キミ達を道具扱いしている訳では断じてないが…」
「…いや、それは信じてるんだけど…」
ムーアは彼女達へ対しての気遣いと配慮を損ねていたと自覚し、素直に頭を下げる。そこまで憤慨している訳ではないのでアニスは必要以上の糾弾をするつもりは更々ない。無いのだが──
「…次からはちゃんと相談してからにしてよね?」
「肝に銘じる」
仕方ないな、と彼女は嘆息を漏らすと上背のあるムーアへ手を伸ばし、ボディアーマーを纏う肩を軽く叩いた。
「まぁ、そこまで警戒する必要はない。この
ドラーが片手に摘んだ契約書を軽く掲げて見せ、やがて折り畳むとジャケットの内ポケットへ仕舞った。
「…ちなみに、その座標に
「うちらはそれぞれ事業エリアもちゃうし、ひとつのことについて意見が一致するなんてことはそうはないんや。そんで珍しくそれが一致したってなると──それは間違いなく大当たりや」
そういうモノなのだろうか。半信半疑のまま彼は扇を取り出して緩みかけたのだろう口元を隠すヤンを眺める。
「まぁまぁ、指揮官のお兄ちゃん。そんなに疑わないでってば☆」
「…済まないが…キミ達のことを良く知らんからな。勿論、信じたいのは山々だが…」
サングラス越しにでも双眸が細められた彼の疑いの眼差しを感じ取ったのだろう。金色に塗装された派手な突撃銃を背負うルピーが歩み寄り、八重歯を覗かせてポンポンと彼の左腕を叩いた。
「疑い深いやっちゃなぁ…」
「余裕がないんだ。精神的にも、資金的にも。──3分前。最終点検」
液晶パネルに表示された地上の乗降口までの残り時間。
それを認めた直後、彼はスリングベルトに繋がった突撃銃を握り直し、自身の部下達へ指示を出した。
それぞれが携行する火器の最終点検を済ませ、初弾の装填を実施する金属音がエレベーター内へ響き渡る。
ムーアも突撃銃の槓桿を鋭く引き、薬室へ初弾を送り込むとボルトフォワードアシストを掌底で叩いた。薬室の強制閉鎖までの手順を滞りなく済ませると、彼が扉の前へ進む。その隣へラピが立った。
「──え?お兄ちゃんも?」
「──危ないんちゃう?」
「──話には聞いているが…」
「──あぁ、大丈夫」
「──いつものことですから」
商人連合の3名はあまりにも自然な動きで扉の前へ立ったムーアの姿を見て、
故に不安が拭えない。アニスとネオンが軽い調子なのは──それこそ普段通りなのだろうと察せられるが、ムーアは間違いなく人間である。
本当にラプチャーと戦えるのか──そう考えていた矢先、地上へ到達したエレベーターの扉が眼前で開いた。
「「──
久しぶりの地上──その出迎えはラプチャーであった。
安全装置が外されたエリシオンとテトラ、それぞれの企業で開発された突撃銃の銃口が同時に向けられる。異口同音を発しつつ、銃口が指向された瞬間、銃声が響き渡った。
「──ラピ、右に行け!」
「──ラジャー!!」
しこたま銃弾を浴びせられたラプチャーはたちまち撃破される。
それを認めるや否や、エレベーターを降り立ったムーアとラピが左右へ展開した。
敵影が他にないかを念入りに検索するが──
「……クリア」
「了解。こちらもだ」
──敵影なし。それを認めるとラピと彼はほぼ同時に突撃銃へ安全装置を掛けた。
「「「…………」」」
まさか本当の話だったとは。商人連合の3名は