勝利の女神:NIKKE ─The Last Kiss─   作:一般指揮官

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どうも皆様、お久しぶりです。更新が遅くなってしまいました。これも仕事のせいで…!!

それはそれとしてエイプリルフールイベント、楽しかったですね。

個人的に御褒美だったのはアンダーソン副司令官のアレですが………なんですかあれは?ベルトやファスナーまで外して緩々の格好…誘ってるんですか!?

まぁそれは冗談ですが…まさかアンダーソン副司令官も左脇腹に…というかアレはなんの装置なのでしょうね。


第7話

 

 

 

…指…き…官…様…ここ………

 

 禍々しく染まった赤い瞳が虚ろに見詰めて来る。愛嬌のある亜麻色の瞳の影は最早、何処にも存在しない。

 

 チキリ、と撃鉄(ハンマー)を起こした45口径の拳銃を彼女へ向ける。

 

 銃口はきっと真円に見えることだろう。眉間へ突き付けられた銃口──それを()()が呆けた表情のまま見詰めている。

 

 強く拳銃の握把を握り込み、引き絞った引き金が撃鉄を落とした──

 

 

 

…師…匠…ここ…で…す…師…匠…

 

 師と仰ぐ健気な弟子のリーフグリーンの瞳。これも禍々しく赤色に染まっている。

 

 眼鏡が割れた先に光る瞳の色は──もう助からない。

 

 ()()()()()()()()()()

 

 躊躇しそうになる自身へ言い訳を紡ぎ、慣れた手付きで45口径の自動拳銃、その銃口を向けた。

 

 師として、これが最後の──

 

 

 

 

…し…揮…官……ここ………

 

 分隊のリーダーの紅い瞳が尚一層──いや、待て。

 

 ──彼女が侵食される筈がない。

 

 

 

 

「──ッ!!」

 

 長身を誇る青年の上体が弾かれたように起き上がる。勢いが良すぎたのだろう。軋みを上げる程の衝撃を食らったベッドのそれが室内に反響した。

 

「──はぁ…はぁ…!」

 

 化学繊維の毛布は飛び起きた拍子にベッド下の床へ落ちてしまった。それを拾い上げる余裕もなく──部屋の主は額へ汗の玉を浮かべつつ荒い呼吸を繰り返している。

 

「…クソッ…」

 

 ──また酷い夢を見た。

 

 夢を見るのはレム睡眠の場合が多いとも聞く。部屋の主──ムーアは基本的に眠りが浅い。とはいえ滅多に夢は見ないのだが、ここ数日、悪夢を頻繁に見てしまっている。

 

 疲れているのだろうか。

 

 舌打ちを一発かまし、彼は床へ脚を下ろすと脱いでいたブーツを履いた。靴紐は結ばず、つっかけた格好のままローテーブルに歩み寄り、机上へ放置したソフトパックの中身を一本銜える。

 

 オイルライターの火が暗い指揮官室に灯り、やがて先端を炙られた愛煙の煙草から紫煙が立ち昇った。

 

 ジリジリと燃える煙草の葉、吸い込む度に微かに痺れる脳髄の感覚。()()()現実だと否応なく保証してくれる。それが無性に落ち着いた。

 

「…水…」

 

 呼吸と気分も落ち着き、自然と喉の乾きを覚えた。備え付けの冷蔵庫──やっと新調出来たそれの扉を開き、中身を覗き込む。

 

 部屋の主が用意した飲み物よりも多い、持ち込まれた炭酸水のボトルが並ぶ冷蔵室。

 

「…ふふっ」

 

 その光景は彼に安堵からの微笑を漏れさせるのに充分だった。

 

 

 

 

 ムーアの朝は早い。それは普段通りなのだが──深夜に飛び起きてから不思議と睡魔が訪れなかったのもあり、彼は暇を持て余し、これからの必要経費となる支出の計算を弾き出していたのだ。

 

 商人連合(タレント)との契約によって50:50で振り分けられた収益だが、総額では1億9500万クレジット。それが分けられ、分隊の取り分は9750万クレジットとなった。

 

 尚、ムーアが持ち帰った葉巻──プレミアが付いているという情報は伊達ではなかったらしい。一本は欠損してしまったが、それでもオークションで8580万クレジットで落札されたのだ。

 

 その取り分が振り込まれたのは3日前のこと。早速、停滞していた修理へ着手し、今日も朝早くから工事の音が前哨基地の至る所で響き始めるだろう。

 

 ゴキゴキと凝り固まった首を鳴らしたムーアは計算を終えて腰を上げる。ブーツの靴紐を一度、しっかりと結び直し、指揮官室を後にする寸前、扉の横へ新しく付けられた小さなホワイトボードを見る。

 

 様々な色合いのマーカーで書かれた丸っこい綴りはアニスの直筆だ。猫──なのか分からないが彼女が描いたイラストも存在感を放っている。

 

 

指揮官様の行き先

 

在室

 

駆け足・体力錬成

 

射撃場

 

任務

 

アーク

 

 

 赤いマグネットを下へ移動させたのをしっかり認めると彼は司令部庁舎の舎前へ向かう。

 

 今朝は10km程度で軽く済ませよう、と考えながら舎前の駐車場で準備体操を始めた矢先、隣接する宿舎の正面玄関を抜け出てくる人影をムーアは捉える。

 

「──おはようございます指揮官」

 

「──おはよう。早いな。まだ4時だぞ」

 

 長いライトブラウンの髪をヘアゴムでポニーテールに結い上げつつ彼と挨拶を交わすのはラピだ。普段とは異なり、レディース用のランニングウェアを纏っている姿は新鮮さすら感じられる。

 

 黒地に赤の差し色が入ったランニングタイツ、上体もセットで入手したのか似た意匠のブラトップだ。エリシオンのロゴが入っている為、支給品の可能性もあった。

 

「…少し気分転換を、と思いまして…」

 

「そうか。…なら一緒に走るか?」

 

 履いている靴も普段とは毛色の違うランニングシューズだ。となればラピの目的も同じだろう。

 

 試しに彼が誘ってみると彼女は小さく頷きを返した。

 

 準備運動を終えたムーアがブーツの靴底で舗装された道路を蹴って駆け出すのに合わせ、ラピも併走を始める。

 

「それにしても珍しい格好だな?」

 

「似合いませんか?」

 

「いや、良く似合ってる。新鮮だ」

 

 彼女の豊かな胸を隠すと同時に支えるブラトップ以外の上体は肌が露出している。ガッデシアムで造られたとは思えない程に白い肌を晒し、胸を上下に揺らしながら併走するラピが首を傾げるもムーアは率直な感想を返す。

 

「──ありがとうございます」

 

 薄く──本当に薄くだけ、彼に気付かれぬ程度の笑みをラピは浮かべた。しかし浮かべた笑みを直ぐに彼女は引っ込めてしまう。

 

 原因は隣を駆けているムーアの顔だ。

 

「──おはようございます指揮官、ラピさん!」

 

「──おはよう。今日も宜しく」

 

「…おはよう」

 

 覆土式の弾薬庫の警備へ就いた警衛勤務の量産型ニケが早朝の駆け足をしている二人を認め、敬礼と共に元気な挨拶を送る。ムーアとラピもそれに応じて挨拶を返しつつ弾薬庫前を駆け抜けた。

 

「…指揮官。ちゃんと休まれていますか?」

 

「……休んでるぞ」

 

 ──嘘が下手ですね。

 

 彼の目元に隈が薄く浮かんでいる。言われなければ気付かれぬ程度のそれだが、ラピはそれを目聡く見付けていた。

 

 明らかに休めていない証拠だ。或いは疲労が溜まっているのだろうか。それとも──

 

「…何かお悩みですか?」

 

「……いや……」

 

 呼吸を乱さぬまま走る程度、彼には造作もない。答えが一拍遅れているのは呼吸がままならぬからではなく、図星である現れだ。

 

「…そうですか。…ですが…何かありましたら、いつでもお話し下さい」

 

「………」

 

「真夜中でも、メッセージでも構いません。私でもお話ぐらいは聞けますから」

 

 呼吸を乱すことなく、そして視線を彼へ向けもせずラピは告げた。

 

 こうでもしないと──なるべく気軽に言わなければムーアは固辞するだろう。彼は頑固だ。そして意地っ張りである。アニスはラピと似たりよったりと考えている節はあるが、概ねその通りなのかもしれない。

 

 弱音は吐かず、弱った姿を見せてはならない。()()()が弱音を吐けば、士気が下がる──とでも彼は考えているのか。それとも意識しているのか。

 

 ──…痛い…。

 

 それを思うとラピの胸の奥がチクリと痛んだ。

 

 ──それほど私は…()()は頼りになりませんか?

 

 傍らを駆ける彼に心中で芽吹いた疑問を投げ掛けるのは難しい。少なくとも現在のラピにとっては。

 

 万が一にでも、頼りにしてはいない、と返される瞬間が現実となるのが怖かったのだ。

 

 ムーアは決して彼女、いや()()()を頼りにしていない訳がない。むしろその逆である。頼りっぱなしなのだ。

 

 その負い目があるから──という感傷的な理由から迷いや悩みを口に出さないのではない。若干はあるかもしれないが、それが多分を占める理由ではないだろう。

 

 やはり生来の強がりが、彼が素直な迷いを吐露する感情を阻害しているのだろうか。

 

 ──もっと()()()()()を見せて欲しい、と思うのは…。

 

 我が儘、なのだろうか。前哨基地を駆ける最中──ラピは自問自答を繰り返した。しかし司令部庁舎まで戻って来てもその答えを出せないままである。

 

 あの日の夜のことを彼女は思い出す。マリアンを巡礼者達へ預けた当日の夜だ。

 

 何が原因だったのか、何があったのか。それはいまだに分からないままだが、あの日のムーアは間違いなく打ちひしがれ、絶望の底へ叩き込まれていた。

 

 抱き寄せるラピの腕と胸へ抱かれ、抵抗もせずただ目元を隠しながら沈黙を続けていた彼の姿は──有り体に言えば痛々しかった。不可視の傷をいくつも穿たれ、身動きのひとつも取れない様子にすら彼女は映った。

 

 もしかするとあれが──彼が見せてくれた精一杯の()()()()なのかもしれない。

 

 何故、そこまで頑なに隠すのか。その疑問は尽きない。

 

 駆け足を終え、クールダウンを済ませたムーアが深呼吸まで終わらせるとラピへ付き合ってくれたことの感謝を述べながら庁舎の中に消えようとする。

 

 その姿がまるで──手の届かぬ何処かへ消えてしまいそうに思えてしまった彼女は咄嗟に彼へ腕を伸ばし、黒いシャツの裾を摘んだ。

 

「──どうした?」

 

「……いえ、なんでもありません。お引き止めして申し訳ありませんでした」

 

 裾を摘まれたムーアは肩越しに振り返り、頭の上へ見えない疑問符を浮かべつつラピへ尋ねた。彼女も自身の行動が無意識だったのだろう。状況を理解すると直ぐに摘んでいた手を離し、彼へ一礼を済ませて宿舎の中へ消えて行く。

 

 それを見送ったムーアは──仮初の空へ視線を移し、投影された朝日を細めた双眸で見詰める。

 

 また一日が始まる。

 

 シャワーと着替えを済ませ、朝食も手早く終えたムーアが雑務の処理を開始する準備を整える。

 

 指揮官室も爆発の影響で損害を被ったが、現在では綺麗に片付き、新しい調度品が揃っている。

 

 大きなデスクトップの画面が備えられた机の前へ腰掛け、PCを起動させ、パスワードを入力すればログインは完了だ。

 

 まずは溜まっている書類の処理から──とムーアが考えた矢先、情報収集の名目で点けているテレビ画面からニュース番組のアナウンサーが速報を伝えてきた。

 

〈──番組の途中ですが速報が入って来ました。ミシリスのシュエン代表がこの後、9時に“重大な発表”をすることを明かしました〉

 

 知っている名が聞こえた為、視線を軽く向けたムーアの視界にテレビ画面へ緊急会見の旨が綴られたテロップが映る。

 

 とはいえ会見が始まるだろう時間までは40分以上ある。

 

 それまでは仕事をしよう、と彼は意識を切り替えて雑務へ集中する。

 

 カタカタとキーボードを打ち込む音、時折、紙面へペンを走らせる軽やかな音が響き渡る指揮官室。

 

 点けられたテレビ画面では番組やその隙間を埋めるCMが流れている中、不意に金属音が鳴り響いた。

 

 ムーアがオイルライターの蓋を開け、銜えた煙草へ火を点ける合図である。

 

 金属音が再び鳴り響き、蓋が閉じられた。紫煙が燻る煙草を指の間へ挟み込む。決して誉められた態度ではないが、ムーアはやっと減煙の日々から解放されたばかりのヘビースモーカー。煙草をコーヒーの代わりに仕事へ取り組むことぐらいは許して欲しいのだろう。

 

 気付けば時刻は09:10。

 

 記者会見はとっくに始まっていたらしい。

 

〈──今回、我々ミシリスの研究チームが開発した()()()()()「アンチェインド」。これさえあれば──〉

 

「──は?」

 

 視線をテレビ画面へ映した彼は、侵食されていた筈のメティス分隊の彼女達が記者達がシャッターを切る度に走るフラッシュへ晒されている姿に安堵を覚えたが──シュエンが語った言葉の意味が分からず素っ頓狂な反応を漏らしてしまった。 

 

 




シフティー、本当に何者なんでしょうね(ニケなのか人間なのか

そしてラピ、アニス、ネオンが可愛かった。

あ、新キャラのサクラは一発で引けました(即日に10にしましたけれども

ムーア、裏社会でやって………行けそうですね、うん。なんなら自前の組織を創り上げてしまいそうで(何故か知らぬ内に人が集まり、頭目に担ぎ上げられているタイプ

ニヒリス──ほらこっちに来るんだよぉ!!!
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