勝利の女神:NIKKE ─The Last Kiss─   作:一般指揮官

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第10話〜後編〜

 

 

「──弾が勿体ない」

 

 2本目の弾倉が空となり、3本目のそれが拳銃へ装填される。ホールドオープンとなったスライドに噛んでいるストッパーを外して弾薬を薬室へ送り込んだ。

 

 残りは装填したばかりの弾倉を含めて3本である。もう少し多めに持って来れば良かっただろうか──などと考えても現状の面倒臭い状況が改善される筈もない。

 

 空の弾倉を上着のポケットへ放り込み、拳銃を独特の握り方で構えつつ、床へ転がった扉が嵌められていた出入口を覗き込む。

 

「──っと…」

 

 顔を覗かせた直後、自動小銃を構える黒服達が引き金を引き、銃弾を撃ち込んで来る。

 

 再び隠れた直後、チュインと弾頭が間近を過ぎ去る風切音と共に背後からは壁を削る音が感じられた。

 

 自動小銃を奪いたいところだが、指紋認証を解除する手間は無視できない。

 

 たった一挺の拳銃と複数の自動小銃とでは喧嘩にすらならない──勿論、()()()()()

 

 引き金に指が掛かりっぱなしなのだろう。銃声は途切れる様子がない。

 

 ──そろそろか。

 

 その途切れることなく響いていた銃声が鳴り止んだ瞬間、ムーアが半身を晒しつつメインフロアへ拳銃の銃口を向ける。

 

 やはり弾が切れ、弾倉を交換しようとしている黒服達の姿があった。

 

 堂々と──余裕もあったのだろうが、身を隠すことなく弾倉交換をしている一人の胸部を狙い、低く抑えられた銃声が1発。

 

 続けての2発目は隣に立つ黒服だ。弾倉の交換が終わり、槓桿を引こうとする寸前に拳銃の引き金が引かれる。

 

 頭を撃ち抜かれ、脳漿と共に細かい頭蓋骨の破片や髪が付いたままの皮膚がメインフロアに飛び散った。

 

 これで二人目も戦闘不能だ。

 

 銃撃を盛んに加えていた仲間がたちまち射殺された事実に残った三人目の黒服がソファへと身を隠す。

 

 拳銃を独特の握り方で構えながらムーアがメインフロアへ足を踏み入れた。

 

 まだフロア内には客が幾人か残っている。緊張と恐怖で身を竦ませ、()()()──或いは()()()()である着飾ったニケを盾に蹲っている姿が見えた。

 

「な、なんだお前は…!」

 

「わ、私が誰か知っているのか!?私は中央政府の──」

 

 隠れているのに威勢が良いことだ。喚き散らす客達が自身の身分を明らかにして、彼を怯ませようとするが──ソファに隠れていた黒服が上体を晒し、銃口をムーアへ向けた瞬間、拳銃の銃口から飛び出した.45ACP弾が眼球を潰しつつ内部の脳をグチャグチャにして後頭部を弾けさせる。

 

 飛び散った脳漿を図らずも浴びる形となった客の一人が悲鳴を上げる中、ムーアは胸部を撃たれ、苦しげに床で蠢く黒服へ無造作に銃口を向けた。

 

 引き金を引き、確実にトドメを刺す。頭を撃ち抜かれ、コトリと事切れる。

 

 弾倉と薬室に残るのは3発。

 

「──()()()()。支配人は?」

 

 周囲を警戒しながらムーアは男が盾にしている一体のニケへ歩み寄った。

 

 身体の線が強調されたボディコンドレスを纏うニケの頬──黒服の頭を撃ち抜いた際に飛び散ったのだろう血で汚れている。

 

 男が隠れているボックス席の机上に置かれた酒が注がれたグラスへ彼は取り出したハンカチを入れ、酒で生地を濡らした。

 

「──支配人に用があるんだ。少々、()()()()()をしてしまったが…何処にいるか教えて貰えないか?」

 

 アルコールに浸したハンカチで彼女の頬を優しく拭おうとしたが──頬に触れた途端、量産型ニケの肩がビクリと震えた。

 

「…あぁ、済まない。血が付いているんだ。悪いが少しだけ我慢してくれ」

 

「…え…あ、はい…」

 

 ()()としか見られなかった彼女は戸惑いながらも小さく頷いた。

 

 了承を認め、改めて彼がハンカチで頬に付着した血を拭い始める。傷が付かないよう慎重にだ。

 

「…それで支配人だが…何処に居るか分かるか?」

 

 ある程度、血が拭えたことに満足した直後、再び問い掛けるとニケが細い腕を上げ──店の奥を指し示した。

 

「…たぶん…支配人室です」

 

「そうか。ありがとう。…そのアイスピック、借りても構わないか?」

 

 氷が詰め込まれたアイスペール──その傍らへ置かれた一本のアイスピックを彼は指差した。

 

 戸惑いながら頷かれるとムーアは礼をもう一度告げ、アイスピックを拾い上げる。

 

「──ダーリン。支配人を捕まえるの?」

 

「──それが仕事だからな。…もう少し穏やかに行きたかったが…」

 

 ()()()()()()()、という表現はアークでは別の意味になるのだろうか。

 

 死屍累々となったメインフロアを見渡しつつバイパーは何気なく考えてしまう。

 

「ま、待て!このままでは済まさんぞ!」

 

「何処の部署の者だ!A.C.P.U.か!?それとも中央政府軍か!?」

 

 元気が良くて結構なことだ。背後から喚き散らす数人の客の荒々しい──怯えが多分に混ざったそれが耳朶を打つと彼は溜め息を吐き出しつつ、濡れたハンカチで銃口へ取り付けた消音器を外した。

 

「私をこんな目に遭わせて、どうなるか分かって──」

 

 振り向きざま、机上に置かれたままのグラスを的確に撃ち抜く。頬を掠めたのだろう。中央政府の高官──らしき男の頬に一筋の擦過傷が刻まれた途端、グラスが砕け散る。

 

「──失礼。()()です。今夜は弾が何処に飛ぶか分かりませんのでお気を付け下さい」

 

 暴発などと戯れ言を──などと言い返すのは容易いだろう。しかし無機質なガラス玉でも嵌め込んだのか、感情が感じ取れない双眸から向けられる視線を浴びせられた高官は口を噤むしかなかった。

 

 身体を硬直させたまま押し黙る高官を認め、彼は再び拳銃を構えたまま進み始める。

 

 店を守っていた黒服達は先程の者達で全員だったのだろうか。

 

 廊下の脇でウェイターが──さして役に立たぬだろうに、頭を守ろうとしているのか握ったトレイで頭部を覆いつつ伏せている。

 

 それを横目に捉えながら支配人室のプレートが打たれた一室の前へ辿り着いた。

 

 わざわざノックする程の仲でもない。

 

 背後を付いて来たバイパーに少し下がるよう手振りで伝えたムーアが扉の横へ立ち、ドアノブを捻った──途端、室内から銃声が立て続けに何発か響き渡った。

 

「…閃光手榴弾(フラッシュバン)を持ってないか?」

 

「持ってると思う?」

 

「…()()は持っていただろう」

 

「もうっ!ダーリンってば、まだ()のこと言うんだから!アレは隊長(クロウ)が持ってたんだよ?」

 

 そう昔のことでもあるまい。膨れ面を浮かべるバイパーへ肩を竦めてみせたムーアは室内から響き渡る銃声──拳銃であろうそれが乱射される中、ジッと待機する。

 

 扉を破壊して侵入する方が手っ取り早いだろうが、手元にはブリーチングチャージ(テープ状爆薬)も無ければ、バッテリング・ラム(破城槌)も無い。

 

 であれば──やがて銃声が止み、続けてカチカチと引き金を何度か引く音が微かに聞こえた瞬間、振り上げた片脚でムーアは扉を蹴り破いた。

 

 彼の全体重を乗せた蹴りは強烈だ。ラプチャーを蹴り飛ばせるだけはある。

 

 呆気ないほど扉が破砕され、室内へ侵入した瞬間、支配人らしき男が呆気に取られた表情を浮かべていた。

 

 その呆然としている男の右手──拳銃を握っている右手に拝借して来たアイスピックをスローイングナイフ宜しく打ち込んだ。

 

 吸い込まれるように上腕へ突き刺さった鋭いアイスピックが齎す痛みに耐えかね、男が拳銃を取り落とす。

 

 逃げられては困るのもあって──ついでに彼は左足の足首へ銃口を向けるや否や、引き金を引いた。

 

 肉と肌を貫通し、足首の骨や関節が砕かれ、そして靭帯も引き千切れたのだろう。

 

 声にならぬ絶叫と共に男が床へ倒れ込み、左足を押さえながら悶え苦しみ始める。

 

「…大丈夫なの?」

 

「…直ぐに死にはしない」

 

 薬室には残り1発の弾薬が送り込まれている。空になった弾倉を引き抜き、新しいそれを叩き込むとムーアは銃口を向けながら支配人へ歩み寄り、男が腰へ巻くベルトを外して眼前に投げ捨てた。

 

「止血しておけ。キツく縛らんと血は止まらんぞ」

 

 支配人の左足首はプラプラとしている。45口径の銃弾で撃ち抜かれたからか、肉と皮、そして一部の骨だけで脛骨と繋がっているだけの格好なのだろう。

 

 涙目になり、呼吸も荒いまま男は必死の形相でベルトを掴むと脚へ巻き付けて止血を試みる。

 

「──逮捕するの?」

 

「それは当然だな。顧客名簿も押さえなきゃならんが──パスワードを教えろ」

 

「い、命だけは…!」

 

「…二度は言わんぞ?」

 

 銃口を敢えて男の蟀谷(こめかみ)に押し当てた瞬間、支配人は銃口に残る発砲の熱さを感じた筈であろうがブワッと冷や汗が浮かんだ。

 

 左足首を粉砕され、右腕にアイスピックが突き刺さったままだというのに痛みが遠退き、彼が求めるままデスクトップのパスワードを饒舌に告げてしまう。

 

 感謝の礼もそこそこにムーアは身を翻すと机上へ置かれたデスクトップに歩み寄り、システムを起ち上げた。キーボードが叩かれ、パスワードが打ち込まれるとホーム画面が液晶画面に浮かび上がる。

 

 ファイルをクリック。その中身は見事に顧客名簿だ。

 

「──ねぇ、ダーリン。この支配人、ダーリンや私が()()()することは出来ないかな?」

 

「……キープ?」

 

 デスクトップを操作する彼へ歩み寄ったバイパーが唐突に申し出る。

 

「…そう。この支配人、ここでもかなりの古株だから色々使えるんだよね。例えば…他の裏社会の組織の情報を探ったり、他にあるかもしれないニケフィリアクラブについて教えて貰ったり。──だからダーリンや私がキープしておくのはどうかなって」

 

「──司法取引か?」

 

「そこまで大層なことじゃないよ?」

 

 バイパーが笑みを浮かべる。──何を考えているのか分からない笑みだ。

 

 双眸を細め、蠱惑的な歪めた唇がねっとりとした声音を紡ぐ。

 

 その姿に否応なく警戒心を掻き立てられたムーアは──机上へ置いていた拳銃を握り直す。

 

「──ダーリン。そんな怖い顔しないで?ただの()()だよ?」

 

 しかしバイパーは怯む様子もなく、彼の腰へ緩く両腕を回すと豊かな胸を強く彼の身体へ押し当てる。

 

 見下ろす形になったムーアの鋭く細められた双眸に射抜かれる彼女は──何を思ったか爪先立ちとなった瞬間、背伸びをして彼の乾燥気味の唇へリップグロスで彩られた自身の唇を軽く押し当てた。

 

「──隙あり♡」

 

 悪戯っぽい笑みを浮かべたバイパーは腰へ回していた細い両手を解くとムーアから身を離した。

 

「今のはデートに付き合ってくれたお礼♡ドキドキした〜?」

 

「……別の意味で」

 

 ()()()()()()()──をするのは吝かではないが、不意打ちを食らったことに変わりはない。

 

 若干の甘味すら感じるグロスが薄く唇に残ったのかもしれない。彼は軽く舌舐めずりをしてグロスを取り除いた。

 

 再び蠱惑的な笑みを浮かべた彼女が手探りで机上の裏を探り──隠されていたボタンを押す。

 

 すると室内にあるクローゼットが横に滑り始め、隠された通路が現れる。

 

「──じゃあ、そろそろ行くね?」

 

 手を軽く振り、彼女が一歩を踏み締める。

 

 軽やかな足取りのまま隠し通路へ向かうバイパーの背中へ一瞥くれた後、ムーアは再びデスクトップの画面へ視線を向けながら口を開く。

 

「──あぁ。…気を付けてな」

 

「───」

 

 ピタリ、と彼女の歩みが止まった。

 

 ──お人好し──

 

 以前の任務で騙され、死にかけた筈だというのに、とんだお人好しだ。

 

 思わず唾棄したくなる程の甘さ──なのに胸の奥が痛くて仕方ない。

 

「……ねぇ、ダーリン。次、会ったら……」

 

「時と場所、状況にもよるだろうが……次は間違いなく殺し合いだろう。そんな気がする」

 

「…そう、かもね。うん…きっと、そうなると思う」

 

 デートは──楽しかった。それは疑う余地がない。

 

 ()()はあと5分ほど残っているが、もう時間だ。

 

 これ以上、一緒にいては駄目だ。童話のように──掛けられた魔法が解ける前に、城から逃げ出さなければならない。

 

 名残惜しい──彼女らしからぬ感情に囚われたままバイパーは携帯端末を引き抜いた。

 

 細い指先が液晶画面を忙しなく行き来し、やがて送信をタップする。

 

「──ん?」

 

 不意にスラックスのポケットでバイブレーションが起きたのだろう。ムーアが着信を確認する為、携帯端末を取り出した。

 

「──こっちが本当の今日のお礼。じゃあね、ダーリン。また会う日まで元気でね。──バイバイ」

 

 軽く腰を捻り、ムーアへ振り返った彼女が小さく手を振る。

 

 それに一瞥くれることもなく、彼は遠ざかる足音を感じながら携帯端末へ送信されたばかりの──バイパーからのメッセージに添付されたファイルを開き、その内容を読み進めた。

 

 

 

 

 

 

 

「──あんの…ニケ誑し…ヒック…!」

 

「……アニス……飲み過ぎ……」

 

「──飲まなきゃやってらんないの…!ラピも付き合いなさいよ…!」

 

「…私はお酒は得意ではないの」

 

 何故、自分の居室で飲まないのだろうか。

 

 世辞にも広いとは言えない居室の主であるラピに断りもなく長い付き合いとなった相方はベッドへ腰掛け、ニケ用の缶ビールを呷ってはしゃっくりを上げていた。

 

 消灯後に宿舎や基地司令部庁舎の見回りを終えて帰ってきたかと思えば、いつの間にか居室にアニスが陣取り、酒盛りをしていたのである。

 

 ここまで荒れている理由は──概ね察せられるのだが、ラピは溜め息を隠せず、大きなそれを吐き出しながら備え付けのパソコンデスク上へ置いていた小さなポーチを開いた。

 

 ベレー帽を脱ぎ、机上に愛用のそれを預けるとポーチから取り出したクレンジングシートを一枚引き抜く。

 

 瞼の目尻側を鮮やかに彩るアイシャドウを拭い取り、手鏡で確認を終えると使い終わったシートをゴミ箱へ投げ捨てた。

 

「ねぇ〜!一本だけで良いから付き合って〜!」

 

 酒は得意ではないと何度言えば分かるのだろう。

 

 酒に付き合って貰いたいなら、それこそ指揮官である彼が帰って来てからいくらでも──とラピが考えていた矢先、ジャケットのポケットに納めていた携帯端末がバイブレーションを起こした。

 

 メッセージの着信──ではない。

 

 電話かビデオ通話のそれだと察した彼女が携帯端末を取り出す。

 

 発信者は──ムーアだ。

 

「──はい、ラピです。指揮官、どうかなさいましたか?」

 

 通話をスワイプすると、画面に映り込んだのは黒衣のスーツを纏うムーアの姿である。

 

 ──背後に血溜まりらしき赤い何かが見えてしまい、ラピの頬が一瞬だけピクリと反応してしまう。

 

〈──あぁ、ラピ。こんな時間に悪いな。…寝るところだったのか?〉

 

「いえ、まだ──」

 

「──し〜き〜か〜ん〜さ〜ま〜?」

 

 ベッドに腰掛けてビールを呷っていた筈のアニスがいつの間にかラピの肩から顔を覗かせ、彼女の手元に握られた携帯端末へ据わった亜麻色の瞳を向ける。

 

 どれほどの缶ビールを空けたのかは知らないが、やたらと酒臭くて仕方ない。肩へ顎を乗せられたラピは思わず眉間へ皺を寄せてしまった。

 

「──何処で〜なぁにしてるの〜?」

 

〈──…アウターリムでちょっとした仕事をしていた。まぁ、もう済んだんだが…〉

 

「…アウターリム、ですか?」

 

「──ふ〜ん?…ロイヤルロードでどっかの誰かとデートしてたんじゃないの〜?」

 

〈──…なんで知ってるんだ〉

 

 液晶画面上ではムーアが煙草を銜え、オイルライターで火を点ける姿がある。困惑を隠せないのか眉間へ深い縦皺を刻んでいた。

 

「──テトラのグルチャ〜」

 

〈──…あぁ…〉

 

 酔っ払い(アニス)の一言で納得してしまったらしい。溜め息と共に紫煙が吐き出された。

 

「…で〜?どんな子とデートしてたの〜?可愛い感じ〜?クールな感じ〜?」

 

〈──…強いて言えば蛇のような…まぁそれはそれとして……本題に入るぞ〉

 

 煙草の灰を落としたのだろうか。ラピとアニスから視線を逸らし、手元に濃い茶色の瞳が向けられたのも束の間、再び煙草が銜えられる。

 

〈──宿舎で空いている居室はどれぐらいある?〉

 

「…居室ですか?…10部屋だったかと」

 

〈──何部屋かは相部屋になるか…〉

 

 本題──宿舎の居室の空きを問われるとラピは内心で首を傾げながらも答えを返した。

 

 すると彼はやや考え込むような様子で紫煙を燻らせ、おもむろにチラリと横目を画面外へ向けた。

 

「…どうかなさいましたか?」

 

〈──……あ〜…その、だな…〉

 

「はい」

 

 頬を節榑立つ指先がカリッと掻く。ついでに歯切れも悪い。困った様子で眉尻が微かに下がったムーアの姿が浮かぶ液晶画面へ唐突に乱れが生じた。

 

 何事かあったのだろうか──とラピが一瞬身構えるも、直ぐに画面の乱れは直った。

 

 同時に液晶画面へ映り込んだのは──

 

〈──12名が前哨基地に配属となった。明日の昼前には帰る。済まんが…準備を頼めるか?」

 

 ──ドレスを纏い、着飾った量産型ニケ達が12体。所在なさげに佇む彼女達が画面上へ映る中、ムーアの困った様子を否応なく感じさせる声音が響く。

 

 ふとラピは違和感に気付いた。

 

 自身の肩へ乗せられたアニスの顎が震えているのか振動が伝わって来る。

 

「──な、なな…な…!!」

 

〈……な?〉

 

 震えているのは──驚愕、怒り、その他諸々が原因だろう。それを察したラピは手早く自身の両耳を両手で塞ぎ、被害を最低限に止めようと行動した。

 

「──なんでハーレムなんか作ってんのよ!!指揮官様のバカァァァァ!!

 

 深夜の宿舎へ響き渡った絶叫は、たちまち要員達を叩き起こすのに充分すぎたという。




どうでも良い話ですが、狼とカラスって一種の共生関係にあるって学説があるんですって(それ100万文字達成の回に関係ある?
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