勝利の女神:NIKKE ─The Last Kiss─   作:一般指揮官

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SSRラピ来たぁぁあぁぁ!!うおおおおおおおん!!うおおおおん!!


第2話

 

 

「──弾薬庫開放!弾薬搬出!!」

 

 非常呼集の命令が下達され、同時に武器庫と弾薬庫の開放も命ぜられる。即ち、それぞれの保管庫で眠っている弾薬と武器が搬出されることを意味している。

 

 上番した警衛隊所属の量産型ニケ(スタッフ)が覆土式弾薬庫の封印を解くパスワードをパネルに打ち込み、承認の単語が液晶画面へ浮かび上がるなり閉鎖されていた扉が左右に開いた。

 

 応援に駆け付けた警衛勤務中のスタッフ達も伴って弾薬庫の内部へ飛び込み、内部に保管されている各種弾薬が次々と運び出されていく。

 

「──50口径、擲弾、ありったけ出して!急いで!」

 

「──重迫の砲弾(120mm)も!?」

 

「──それも!装薬も出して!!」

 

 忙しなく、だが次々と弾薬箱を両手にそれぞれぶら下げ、或いは合成樹脂製のコンテナに収まった重迫撃砲の砲弾も抱えながら彼女達は弾薬庫の外へ並べて行く。

 

 非常呼集──前哨基地全体に達せられた突然の命令に困惑がないと言えば嘘だ。しかしそれが命じられる()()が進行している点は疑いようがない。

 

 兎に角、自分達に課せられた、命じられた任務を遂行する為、彼女達は動き続ける。

 

「──アルファ分隊!集合、集まれ!」

 

「──ブラボー分隊、点呼!」

 

「──チャーリー分隊、欠員なし!集合終わり!」

 

 前哨基地司令部庁舎の舎前も一層慌ただしい。

 

 基地に所属し、警衛勤務へ上番していない量産型ニケ達が各々の分隊毎に整列し、点呼を取り終わると分隊長(リーダー)が代表してラピに報告する。

 

 エリシオン、テトラライン、そしてミシリス・インダストリー──アーク三大企業で製造され、各企業毎の特色が目立つ外見と武装を併せ持った彼女達が集合を終えた。

 

「──警衛隊上番者以外の35名、7個分隊、集合終わりました。特殊別働隊3名も集合終わり」

 

「──姿勢を楽に。状況を説明する」

 

「「「──休めッ!!」」」

 

 7名の各分隊長(リーダー)達が分隊員へ指示を出す。携行する火器の存在もある為、姿勢を大きく崩しは出来ないが各々がそれなりに楽な姿勢を取りつつ武装したムーアへ視線を向ける。

 

「──まずは不在中にも関わらず各々が任務を遂行していた点を労いたいところだが、申し訳ないがそれは省略させて貰う」

 

 防錆の塗装が少し剥げて来たテトラライン製の突撃銃をスリングベルトに繋げて携行するムーアが眼前へ整列した彼女達を見渡しながら続けた。

 

「──現在、アークとの通信が取れない状況にある。一切だ。軍司令部の他、主な官公庁へ通話を試みたがいずれも不通。また気付いている者もいると思うが、大規模な通信障害も発生している状況だ」

 

 彼が告げる状況説明に彼女達の表情がサッと変わる。

 

「──これが何処かの間抜けがネットワークのサーバーを破壊してしまった、もしくはファイバーケーブルを切断してしまった、などの事故であれば笑い話で終わるが──最悪の事態の可能性も捨て切れない」

 

 最悪の事態──わざわざ前置きされた言葉に各々が脳裏で浮かべる()()()は様々だろう。

 

「大規模な同時多発テロの発生。そんなものは発生しないのが一番だが、最も最悪の事態──それこそ地獄の釜の蓋が開いたとも言える状況がある。──ラプチャーの侵攻を許した。その可能性も捨て切れない」

 

 アークにラプチャーが──その光景を彼女達は脳裏へ思い浮かべた。

 

 まさに地獄の様相だ。高層ビル群が倒壊し、それに押し潰される老若男女の市民。ラプチャーも跋扈し、手当たり次第に殺戮の連鎖が続く──

 

「──前哨基地司令官の権限で出動命令を下す。目的はアークの防衛、避難が遅れた市民の保護、テロリストないしラプチャー等の敵性勢力の掃討である」

 

「「「──了解ッ!!」」」

 

 異口同音が揃って返される。意気軒昂、士気は高い。それに満足しながらムーアは肩を竦めた。

 

「──とはいえ、何事もなければ直ぐに引き返して前哨基地(ここ)に戻ろう。責任は俺が取るが…独断での兵力移動や展開で怒られるにせよ、少しでも叱責の時間を短くしたいからな」

 

 先程までの真面目な態度と口調は何処へ行ったのか。軽口と冗談に彼女達が微かに笑みを漏らす。

 

 ムーアも僅かに口角を緩めていたが、一瞬の内に唇は真一文字に結ばれた。

 

「──アルファ分隊長(イーグル)、アルファ分隊も含めゴルフ分隊まで臨時に指揮を執れ。俺も指揮はするが状況によっては手が回らんかもしれん。補佐の選出は一任する」

 

「──了解ッ!拝命します!」

 

「各分隊長と分隊員は彼女の指揮下に入れ。──弾薬と火器は必要だと思う以上に持っていけ。兎に角、ありったけだ。基地防衛に必要最低限を残し、他はトラックや武装車輌(ハンヴィー)に積載しろ」

 

 指示を下しながらムーアは機械仕掛けの左手を持ち上げ、手首の内側へ文字盤が収まるよう巻いた腕時計を確認する。

 

 現在時刻──1040。

 

「15分後にアークへ向けて前進する。速やかに準備を済ませろ。以上だ。別れ」

 

 分隊長達の敬礼を受けたムーアは彼女達へ答礼を返した。

 

 7個の分隊を一時的に指揮を執ることとなったイーグルが声を張り上げる。移動手段となるトラックの準備、そして開放された武器庫と弾薬庫への駆け足である。

 

 彼女達が分隊毎に駆け足で庁舎を離れる姿を見送る暇もない。ムーアはネオンに武装車輌への給油を指示する。同時に車体や足回りの点検を命じながら彼はラピとアニスを伴って弾薬庫へ急ぐ。

 

 駆け足で辿り着いた覆土式弾薬庫は──まさに大盛況だ。

 

 弾薬庫の前へ横付けされた1輌の武装車輌、3輌のトラックの車内と荷台へ搬出された弾薬箱が次から次に積み込まれ、或いは各々が携行する火器の弾倉へ銃弾が詰め込まれている。

 

「──50口径の弾薬(タマ)は!?」

 

「──そっち!そっちに沢山置いてあるよ!」

 

「──散弾は!?あぁ、ありが──これ擲弾じゃない!」

 

 赤字覚悟のバーゲンセールも真っ青な盛況ぶりだ。

 

「そいつを貰えるか」

 

「はい、どうぞ!」

 

 分離式の金具(リンク)と弾薬が連結された既成のベルトリンクは早い者勝ちで弾薬庫から払い出されてしまったのだろう。警衛隊に上番し、今回は前哨基地へ残留する量産型ニケ数名が専用の機械へ50口径の弾薬と金具を入れ、大急ぎでハンドルを回しながらベルトリンクを量産していた。

 

 雑毛布の上へ並べられた1束で110発のベルトリンクが十数束。その内の6束を彼は纏めて肩へ掛ける。空箱はいまだに武装車輌の車内へ転がっている。その中へ突っ込むつもりなのだろう。

 

 武器庫から搬出した1門の重迫撃砲──口径が120mmのそれの砲口へ専用のフックが取り付けられる。タイヤが装備されており、トラックの車体後部へ連結させて牽引する準備も滞りなく進んでいる。

 

「──指揮官。受領を終えました」

 

「──ネオンの分も貰ったよ!」

 

「分かった。──あと10分だ!急げ!」

 

 ラピが両手に彼や彼女自身が用いる突撃銃の実包が詰め込まれた弾薬箱を掴みつつ報告する。アニスも擲弾や散弾が詰まった弾薬箱をそれぞれの手にぶら下げていた。

 

 頷きを返し、量産型ニケ達へ指示を出した後、彼は駆け出そうとしたが──忘れ物を思い出して立ち止まる。

 

「──手榴弾!手榴弾はあるか!?」

 

「あります!どうぞ!」

 

 既に信管部を炸薬が充填された弾殻へ捩じ込んだ手榴弾が手渡される。それを受け取った彼はボディアーマーの手榴弾を収めるポーチへ1発ずつ納めてから再び駆け出した。

 

 武装車輌が駐車する駐車場へ空なった携行缶が転がっていた。ネオンは給油と点検が終わった旨を報告し、彼が肩に担いできた50口径の弾薬が連なるベルトリンクを纏めて受け取るや否や、扉を開け放って車内に放置していた空の弾薬箱へ一束ずつを収めていく。

 

「──ネオン!散弾!」

 

「──ありがとうございます!後で頂きますね!」

 

 空弾倉をダンプポーチから抜き取り、ラピが運んで来た弾薬箱の蓋を開ける。対ラプチャー用の実包──徹甲弾が含まれたそれを挿弾子(クリップ)で手早く纏めて詰め込んだ。

 

「──私達はどうする?」

 

 弾倉へ実包を詰め込み、マグポーチ(弾嚢)に差し入れる最中、彼へ問い掛けたのはDだ。その傍らに立つKは居心地が悪いのか頬を指先で掻いている。

 

「……アークとの通信が取れない以上、どうしようもないからな。本来なら越権行為だろうが一時的にキミ達の指揮を執っても構わんか?」

 

 彼女達が果たして何処の部署の管轄下、或いは指揮下にあるのか彼は知らない。しかし目下の可能性の問題として、非常時と推測できる状況にある。あれこれと考えている暇すら惜しい。

 

 DとKは顔を見合わせた。するとKは細い肩を竦めてみせる。仕方ない、と言わんばかりに。

 

 続けてDがムーアへ顔を向け、確かに頷いた。

 

「感謝する。シージペリラスは前哨基地の防衛に当たってくれ。混乱に乗じてテロリストやラプチャーの襲撃があっては困る。ここには最低限の人員しか残せない。彼女達を手伝ってくれ」

 

「……了解した」

 

「あぁ、分かった」

 

「宜しく頼む。──分隊、乗車!」

 

 号令と共に彼女達が武装車輌へ乗り込んだ。ムーアも運転席の分厚い扉を開け、車内へ転がり込む。

 

 エンジンが掛かった。駐車場を抜け出た武装車輌はエレベーターへ向かう道路を駆け抜ける。

 

 途中で弾薬庫の前を通過する。その時には銃座が設けられ、50口径の機関銃を据えた6輪駆動の積載量が5tクラスの3輌のトラックの荷台へ各分隊が分乗していた。武装車輌も同様である。全分隊の指揮を執る任務を仰せ付かったイーグルは武装車輌へ乗車。

 

 各トラックは量産型ニケ達だけでなく、荷台へ予備の火器や弾薬、迫撃砲弾と装薬を満載し、1輌に至っては重迫撃砲を牽引している。舗装道路なら10tまでの積載が可能とされる車輌だ。酷使に耐えて貰おう。

 

 各車輌のエンジンにも火が入る。車列を組んだ車輌とトラックが武装車輌に続行しつつ警衛所前を通過する。

 

 拒馬を上げる量産型ニケが、そして警衛所に詰める上番した警衛隊司令の任務に服するスタッフも通過する車列へ対して敬礼を以て見送る。

 

 エレベーターの前へ到着した。

 

 一度に全車輌をエレベーターに搭載は出来ない。こればかりはスペースの問題だ。まずはムーアとイーグルが乗車する武装車輌が2輌とトラック1輌が乗り込んだ。かなりギリギリである。

 

「──まだ電力は生きているか。非常電力の可能性もあるが…」

 

 送電線が切断され、アーク全域の電力供給が停止──それどころか発電所まで機能を停止している可能性も拭えない。その場合、エレベーターを稼働させる非常電力が生きている内に兵力と戦力をアークへ送る必要があった。時間はあまり掛けられない。

 

 この焦燥が杞憂で終わればどれほど良いか。酒の席での笑い話で済むのが一番である。

 

 エレベーターが降下を開始。同時に彼は車載無線機のスイッチを入れる。周波数帯を合わせ、受話器を握る。

 

「──全車、感明はどうか?」

 

〈──感明良し〉

 

〈──感明問題ありません〉

 

 エレベーターに乗り込んだ車輌間での無線通信は問題ないようだ。続けて、やや遅れてだが他の2輌のトラックからも応答があった。

 

「──本来なら混線を防ぐ為の呼出符号(コールサイン)を付与するところだが省略する。なにより面倒臭いからな」

 

〈──了解です〉

 

 返って来た応答はアルファ分隊長(イーグル)のそれだ。彼女の応答には隠し切れない笑いが含まれている。おそらく彼女が乗り込んだ武装車輌の車内では同乗者達の苦笑いが止まっていないだろう。

 

「──アークの現在の状況がどうなっているか全く分からない。エレベーターの扉が開いたと思ったら、テロリストかラプチャーと鉢合わせ──なんてことも有り得る。備えておけ」

 

 車載無線機へ繋がる受話器は続々と各車からの了解を響かせた。

 

 ムーアはネオンに銃座へ就くよう命じる。頷いた彼女が腰を上げ、ルーフ上に設けられた銃座の50口径へ取り付くなり弾薬の装填を始めた。

 

 両隣の武装車輌、そしてトラックも同様に設けられた銃座へ就いた量産型ニケ(スタッフ)の姿がある。

 

 降下を続けていたエレベーターの速度が徐々に緩やかなそれへ変わった。

 

 到着まで間もなくだ。

 

 エレベーターの壁面に埋められた液晶パネルへ浮かぶ残りの到着時間が10秒を切る。

 

 そして刻まれ続けた時間がゼロとなり、エレベーターの降下が停止。

 

 ──エレベーターの扉が開いた。

 

「──コンタクト!!」

 

 銃座に就いた誰がそれを大声で宣言したのかは分からない。反射的に機関銃の押し金が押し込まれ、ほぼ同時に重低音の銃声が響き渡ったのだから無理もないだろう。

 

 機械仕掛けの四足歩行、禍々しい紅い光を放つコア──見間違う筈もない。ラプチャーだ。

 

 エレベーター搭乗口の間近に存在した敵機と接敵。3挺の機関銃から撃ち込まれる50口径の弾頭で横殴りにされた敵機が切り裂かれた。

 

 何本かの脚を弾頭で切断された敵機が倒れ、コアの禍々しい光が消失する。撃破を認め、ムーアがステアリングを握る武装車輌がエレベーターを抜け出た。

 

「──ちょっと…何よ…何よこれ…!!」

 

 助手席へ腰掛けていたアニスが身を乗り出す。防弾の厚いフロントガラス越しに広がる光景──黒煙が至る所から登り、高層ビル群のいくつかで火災も発生しているアーク市内。

 

 信じられない──それを否応なしに感じさせるかの如く、アニスの声が震えていた。




ラピィィィィィ!!ラァァァピィィィィィ!!!
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