勝利の女神:NIKKE ─The Last Kiss─   作:一般指揮官

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周年イベントの後に、こんなイベントをぶち込んでくるとは運営も中々……思わず目頭が熱くなったではありませんか。

それとなのですがお読み下さっている皆様にお願いがあります。指揮官の皆様が好む表現等を知りたいので文章上でスワイプ操作するとボタンが表示される「ここすき」機能を使ってお知らせ下さいますと書き手の私の勉強になりますのでお手数をおかけしますが宜しくお願い致します。


第11話

 

 

 

 さながら自律思考し機動する銃座──地下に作られたアウターリムとアークを結ぶトンネルの中を飛翔する自爆型のドローンを撃墜する一人と一機の姿を捉える毒蛇の目にはそのような印象として映った。

 

 ドローンの飛翔する速度が遅い訳ではない。その進行する先を予想し、確実に撃墜する為の短連射の銃声は一定間隔にも聞こえ、いっそ無機質な程だ。

 

「──これで全機か?」

 

「──はい。全機撃墜完了です」

 

 並び立つ一名と一機が握る突撃銃の銃口から細く薄い硝煙が昇る。

 

 迫り来る複数機のドローンを撃墜し終えた一人と一機──ムーアとラピの銃口がバイパーへ向けられる。

 

 いや、バイパーにではない。正確には彼女の背後である。

 

「貴女が操作した訳じゃなさそうね。後ろにいるの?出て来て」

 

 ラピの玲瓏な鋭い声音がトンネルの闇に隠れ潜む者達へ姿を現すよう促す。

 

 トンネルに設けられた照明機材で生じたバイパーの背後へ伸びる影の先からカツカツと足音が響き始めた。

 

 闇の中──バイパーの影の中から姿を見せる二名の人影。

 

「──久しぶりだな」

 

「──あれ?指揮官だ!指揮官〜!へへっ!」

 

 姿を現した二名の人影──クロウとジャッカルは笑みを浮かべつつバイパーの隣へ立った。片や無煙煙草を銜えた形の良い唇の口角を緩め、片や満面の笑みのまま腕を振る。

 

「いるだろうとは思っていたが……まさか全員、揃っているとは。纏めて捕まりたかったのか?手間が省けて俺としては願ったりだが……」

 

「──()()()。糠喜びさせて済まないが……リンチは悪者の基本だからな」

 

「それはそれは……」

 

 肩を竦めるクロウへムーアは溜め息混じりに銜えた煙草から紫煙を吐き出した。

 

 どうやら一戦交える必要があるらしい。

 

 エキゾチックの三名は生け捕りとせねばならない制約がある。その点が面倒ではあるが──

 

「──喋る口と()さえ無事なら構わんか」

 

 それ以外は再起不能としても問題にはならない、とムーアは解釈しているようだ。手脚が吹き飛ぼうと、可動部位の限界を超えて曲がろうと大した問題ではない。そもそも人間ではないニケである。

 

 彼がどうやら本気で仕留めようとしている気配を察してか、クロウの口角が目に見えて緩んだ。

 

「……さぁ、始めようか」

 

「前回のように()()()は必要か?必要なら今の内に言ってくれ。脚にナイフか何かを刺さなきゃならん」

 

 無精髭を口周りや顎に生やしたムーアが問う。前回──奇襲、裏切り、それら同然のタイミングで彼等に襲い掛かった際の状況を擬似的に再現する準備は必要か、と問うているのだ。

 

 その質問の真意は──エキゾチックは彼等と真正面から戦って勝てる可能性がない、というところだろう。

 

 そしておそらくは正しい評価である。軽口や皮肉を抜きにしてだ。

 

 無造作に纏って袖を通しただけの上着の内側からクロウは二挺の短機関銃を掴んで引き抜く。

 

 鮮やかな翠色の瞳が細められ、眼差しの先へムーアの姿が捉えられた。

 

 以前のような奇襲は通用しない──クロウ自身も承知している。真正面から彼と戦って勝とうなどとは考えていない。()()()()()()()()()では、だ。

 

 彼女はテロリスト──勝機があるとすれば、彼がその土俵へ上がって来てくれることだろう。

 

 さて、とクロウが左右の親指で安全装置を弾いた瞬間だ。

 

 ──し〜き〜か〜ん〜さ〜ま〜!!

 

 ──し〜しょ〜!!

 

 ムーアとラピの後方──トンネルの暗がりの向こうから慌ただしく、忙しない足音が急接近して来た。

 

 トンネル内に反響する聞き覚えのある複数の高い声。それらの正体を察知したクロウは軽い舌打ちの後、細めたままの鮮やかな翠色の瞳を傍らのバイパーに向ける。

 

「らしくないミスをしたな、バイパー」

 

「ミスだなんて。私も頑張ったのよ?」

 

「背を向けて歩いてた癖に?お前が後ろを歩くべきだろ」

 

「あはっ♡それじゃ、つまんないでしょ?」

 

「指揮官〜!へへっ!私と遊びに来たの?」

 

 クロウのバイパーへ対する批難をムーアは肯定したくもあったが、同時に違和感を抱く。

 

 バイパーが批難を放ったクロウへ対する物言いもそうだが、ジャッカルの状況を理解していない態度──妙な違和感が引っ掛かった。

 

 しかしそれらの違和感を纏めて解決する方法を知らない訳ではない。

 

「──指揮官様!大丈夫なの!?」

 

「──師匠、私は大丈夫です!」

 

「見ての通り、五体満足だ。ネオンも無事でなによりだ」

 

 銜えた煙草は半分ほど燃え尽きた。その溜まった灰が足元へ落ちる最中、ムーアやラピの元へアニスとネオンが合流する。

 

「モランは?」

 

 姿がない先程までの同行者──モランの所在をラピは突撃銃を眼前に立つエキゾチックへ向けながら問い掛けた。

 

 それにネオンが愛銃であるオールブレーキ(散弾銃)を構えながら答える。

 

「攻め込んで来た方々を全員倒して防壁の入り口に行きました。アウターリムに()が入り込まないよう防ぐって言ってましたよ?」

 

「──上もドンパチと賑やかになりそうだな。他に彼女は何か言ってたか?」

 

「はい。一緒に行けなくて済まないって、必ず伝えてくれって言っていました」

 

「そうか」

 

「分かった。あっちは心配なさそうですね」

 

「そのようだ。……おそらくだが、ロザンナのヘッドニアやサクラの清明会も動いているだろう」

 

 正直なところ──決して過小評価している訳ではないのだが、モランと彼女が率いる組織だけで事足りる事態とは思えない。しかしアンダーワールドクイーンの全員と彼女達が束ねる全組織が共同で事に当たれば──対処は可能かもしれない。少なくともアウターリムに関しては。

 

「……ふむ。簡単に解決出来た筈なのに……」

 

 同じ可能性──これから始まるだろうアウターリムの辿る展開がある程度は予想出来たのだろう。

 

 クロウは形の良い唇へ銜えた無煙煙草を上下に揺らし、数秒考え込んだ後に改めてバイパーに問い掛ける。

 

「……こんな面倒な事になったのはお前の思惑通りだと考えて良いんだな?」

 

「……まぁ、好きに考えて」

 

 毒蛇の眼差しがクロウへ注がれる。相変わらず、何を考えているのか判断が難しい。目は口程に物を言う、とは良く言うが彼女に限っては当て嵌まらないようだ。

 

 微かな溜め息をクロウは漏らし、次いでムーアへ視線を送る。

 

「──おい、ショウ。少し話さないか?」

 

「折角の誘いを断るのは申し訳ないが、生憎と予定が詰まっているんだ。勿論、武器を捨てて投降するなら話は別だ」

 

 相変わらず、情緒というものを知らない男だ。だが、彼らしいとも言える。

 

「仕方がないな。戦うのは専門外なんだが、やってみるか」

 

 パチンとクロウの左右の親指が傾向する短機関銃の安全装置を外した。

 

 投降を拒否した格好を確認したムーアは濃い茶色の瞳を細め、ACOGのレティクルにクロウを捉え続けながら指揮下の分隊へ命令を発する。

 

「──認識番号O1258031。発令者ショウ・ムーア少佐。カウンターズ、リミッター解除」

 

 リミッター、或いはリミットの解除──ニケはニケを、若しくは人間を殺傷出来ないとされる。その制約を限定的に解除するという命令を彼は指示する。

 

「──併せて実包(実弾)の使用、交戦を許可する。エキゾチックを制圧、捕獲せよ」

 

「……へぇ」

 

 どうやら本気で相手をしてくれるらしい。それを察したクロウは意識して感心の声音を漏らす。

 

「あら、ダーリン。本気なのね?」

 

「俺はいつでも本気だぞ。知らなかったのか、バイパー」

 

「え?なになに?戦うの?へへっ、戦うの好き〜!」

 

 バイパーも愛用の散弾銃を掴み直した。一方のジャッカルはキョロキョロと周囲の様子を観察したかと思えば喜色を浮かべる。

 

 どうにもジャッカルにだけ違和感がある。ここまで周囲の空気感を読めない性格だっただろうか。

 

 ムーアが若干ではあるが拭い切れない違和感に引っ掛かりを覚える最中、彼の傍らでも合流したアニスとネオンが戦闘の準備を終えていた。

 

「楽勝ね。どうせあいつら、得意なのは裏切りだけでしょ?」

 

「皆さん。ここは私一人だけで充分なので後ろで銃でも撃ってて下さい」

 

「それって……一緒に戦うのと同じじゃない?」

 

「功績を独り占めしたいんです!」

 

 どうにも緊張感が出ない──果たしてこれは良いことなのか、悪いことなのか。

 

 ラピが判断に困る中、彼女の抱く疑問を察したのだろう。ラピの視界の隅でムーアがボディアーマーを纏う肩を竦めたのが見えた。

 

 

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