勝利の女神:NIKKE ─The Last Kiss─   作:一般指揮官

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第8話

 

 

 ニヒリスターとの交戦で全壊にも等しい損害を被ったA.I.研究所だが、昨日からの突貫工事で半分以上は元通りらしい。あくまでも()()()()は。

 

「──ようこそ」

 

 部屋の主が昨日も招いた青年が室内へ姿を見せた。それを認めたアークの管理を任せられたA.I.が実体を伴って現れる。大量のスーパーコンピューターの大半も壊れてしまい、現在はあり合わせの代物が稼働を続けている有り様だが、これも近日中には元通りとなるのだろう。

 

「──私にはまだやるべきことが残っています。アークに残留しているラプチャーの動きを追跡し続けなければなりません。ですから手短に判決を下します」

 

 無機質かつ感情の起伏が孕んでいない高い声の宣告が放たれるなり、管理A.I.──エニックの眼前へ進み出た青年が手早く軍装を正した。

 

 青年、ムーアが表情を引き締めるのを認めたエニックは薄いヴェールに覆い隠された先にある形の良い唇を開く。

 

「──第一。アークで発生したテロの主犯を捕らえ、アウターリムの濡れ衣を晴らし、大量処分を防いだこと。第二。シェルター事件に於いて、最小限の犠牲で状況を整理したこと。第三。アーク内に侵入したラプチャーの多数を殲滅したこと。上記の事実を元に過去の事例を調査した結果、参考となる事例はありませんでした」

 

「……あったら困るだろう」

 

 ボソリと呟かれた低い声の皮肉はエニックもしっかり聞き取っていた。皮肉を管理A.I.が理解することはないが──言葉をそのまま受け取れば、確かに存在してはならない事例である。

 

「その為、独自に判断を行い、次のように判決を下します」

 

 エニックは薄いヴェールを揺らし、長身かつ大柄の彼を見上げながら判決を言い渡した。

 

「──ショウ・ムーア。3階級特進」

 

「……は?」

 

 言い渡された直後、彼の怪訝な声が響き、眉間には深い縦皺がこれでもかと刻まれた。

 

 予想通りの表情だ、とエニックは感じながら、判決の言い渡しを続ける。

 

「ただし──第一。ミシリスのCEOであるシュエンと共に進路上へアークが存在する地点で意図的にラプチャーを引き寄せたこと。第二。アークの主要な資源となる可能性の高かった通称アンチェインドの存在を隠蔽したこと。上記の事実を元に過去の事例を調査した結果、参考となる事例は存在しませんでした。その為、独自に判断を行い、次のように判決を下します」

 

 こちらの方が正規の判決、そして処分なのだろう。

 

 再び彼の表情が引き締められた。

 

「──ショウ・ムーア。3階級特進取り消し。1階級昇任、中佐とします」

 

「……現在の階級を維持させてくれ」

 

 ただでさえ佐官がやれるような教育課程を経ている訳でもなし、なにより歳が歳だ。

 

 眉間へ深い縦皺を刻み付けた青年の異議申し立てだが、エニックは却下する。

 

「──地上から帰還後、アークの異常事態を察知し、迅速に部隊を前進させ、ラプチャー掃討、市民の保護に貢献。その点を加味した結論です。お疲れ様でした」

 

「……そちらも」

 

 薄いヴェールの下で整った形の唇がほんの僅かに緩んだ──気がしたムーアは肩を軽く竦める。

 

「では私は元の任務へ戻ります」

 

「……その前にいくつか聞かせて欲しい」

 

 踵を返そうとしたエニックを呼び止めた低い声。それに反応し、管理A.I.は緩く眼前の青年を仰ぎ見た。

 

「アークへのラプチャー侵攻はエニックが想定する最悪の事態ではない、と言っていたが……では、あなたが想定する最悪の事態とは何なのか教えて欲しい」

 

「その質問の意図は?」

 

「純粋な疑問、興味本位……そんなところだ」

 

 時間を割く猶予──それを管理A.I.は一瞬で弾き出す。演算の結果、数分ならば問題ない、という結論が出た。

 

「アークの立場から見て、最悪の事態は──ヘレティック級が2体以上、アーク内部に侵入することです。アークの全力を投入すれば撃退は可能ですが、戦闘過程でアークは壊滅的な被害を受けます。その場合の被害規模の予想、および復旧に掛かる時間について情報は必要ですか?」

 

「……いや、それは構わない。昨日も言ったが門外漢だ。……ニヒリスターを撃破したドロシー──ピルグリムはどうしている?」

 

「機密事項の為、お教え出来ません」

 

 彼はついでのつもりで尋ねたが、直ちに返答が来た。

 

「ピルグリム・ドロシーに関する情報は絶対に漏らしてはいけないとの命令です」

 

「……なるほど」

 

 アークの管理A.I.に命令を与えられるような存在は、そう多くはない。

 

 確かドロシーはバーニンガム副司令官への面会が目的だった、と彼は思い出した。

 

 彼女の動静、動向を知りたかったが、この分では尋ねても知りたい情報は得られそうにない。

 

「……最後にひとつだけ。前哨基地から前進させたニケ1個小隊を臨時に指揮した中央政府軍装備開発管理局のパトリック・グリフィス伍長は、どうなった?」

 

「──検索中。──パトリック・グリフィス。認識番号1148021。──間違いありませんか?」

 

 エニックがムーアへ向け、片手の掌を上にしながら掲げる。その掌から投影される格好で宙へ昨日、行動を共にした伍長の軍服を纏った証明写真が浮かび上がる。

 

 間違いない、と彼は頷きを返した。

 

「パトリック・グリフィスには本日、不名誉除隊の人事発令が達せられるようです」

 

「……なに?」

 

 彼の眉間へ深い縦皺が──先程までの比ではない程の深いそれが何筋も刻まれたのをエニックは見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 ──やはりこうなったか、という予想の的中。自身が楽天家ではない証左にも思えるが、生憎と嬉しくはない。

 

「……部屋長」

 

 多くもなければ少なくもない私物の整理。部屋の後片付けを手早く済ませ、私物を大振りのバッグの中へ押し込む伍長を気遣わしげに見詰める数人の視線がある。

 

 伍長の居室がある隊舎は装備開発管理局の敷地内に存在する。隊舎、居室は共同利用だ。同年代か年上、年下の下士官に兵卒達が寝起きする隊舎の居心地は──まぁまぁ悪くはなかっただろう。

 

 同室の兵卒達からは部屋長と呼ばれる伍長は力なく笑った。

 

「……大丈夫。大丈夫だから。悪いけど、官品の返納は任せたよ」

 

「……了解です」

 

「……お元気で」

 

「うん。君達も」

 

 伍長が使っていたベッド──硬くもなければ柔らかくもない、就寝に適する程度の代物のマットレス上へ彼が使っていた作業服、軍装の類が規則的に並べられていた。

 

 下士官学校での課程へ挑む前に自習へ励んだデスクも綺麗に片付けられている。

 

 同室の兵卒達と短く別れを済ませた伍長はバッグを掴むと、続けて除隊許可書と綴られた一枚の薄っぺらい様式を摘んで居室を後にした。

 

 私服姿で隊舎の廊下を進むと──さながら外出を思わせる格好だが、外出許可証の交付は受けておらず、軍人としての身分が記された身分証も先程、局長室で返納したばかりだ。

 

 不名誉除隊──罪状は反逆行為、とのことらしい。装備開発管理局の局長室で、彼は局長からそのように説明を受けた。

 

 局長は伍長に除隊不服があるなら申立審査委員会へ連絡を取る旨を伝えてくれたが──彼はそれを断った。

 

 その処分を受け入れる、という意思表示に局長は数秒黙った後、頷きを返し、除隊許可書へサインを綴って伍長に手渡した。

 

 不名誉除隊は非常に重い処分だ。一般的な除隊と比べても大きな社会的不利益を被る。伍長の場合は、それでも更生館への収監がないだけマシなのだが。

 

 原則として不名誉除隊者には各種給付金──医療給付、障害補償、教育給付、住宅ローン始めとしたそれら給付金の支給はされない。銃器を所持する権利など一部の市民権も剥奪される。再就職に関しても大半の民間企業では不名誉除隊処分が下った人物の採用を認めていない。

 

 除隊時の引越し給付も、通常であれば家財道具の輸送、移動に必要な食事と宿泊費、本人と扶養家族の引越し費用を含めた満額ないし一部が支給されるが、不名誉除隊者には最も安価な交通手段の片道切符代のみ支給──追放の一言が適切な表現となるだろう。

 

 ──これからどうしよう。

 

 両親は、まだシェルター内だろう。連絡が付くなら、軍を辞めた──いや、不名誉除隊の処分が下り、追放された旨を伝えねばならない。

 

 どんな反応が来るのか、胃がキリキリとする思いだ。

 

「──グリフィス。これ、持ってけ」

 

「……いや、これ……MRE(糧食)は官品ですよ?」

 

 営門までの道すがら、彼は世話になった部署へ顔を出して挨拶回りも済ませる。その途中、給養全般を担う補給科の将校と遭遇する。

 

 現れるのを待っていた──とばかりに、将校はドサリと伍長の眼前へ戦闘糧食の山を置く。

 

「──私の目には消費期限は過ぎてるように見える。処分しなきゃならんが、員数外の物がどうなろうと知ったこっちゃない」

 

 そんな大雑把な──と伍長は考えたが、この将校は給養や補給を始めとする後方支援全般に関する専門教育の課程を経ている。管理局内でも厳格な性格の持ち主と評判だった。

 

「──どんなことがあろうと、飯はちゃんと食え。食わなきゃ生きていけない。まず飯を食ってから、あれこれ考えろ。まだ若いんだ。いくらでもなんとか出来る」

 

 糧食の受け取りを渋る伍長へ──察しの悪い青年に業を煮やしたのだろう。将校は伍長のバッグを奪い取るなり、ファスナーを開けて、その中へこれでもかと密封包装された糧食を詰め込んで彼へ押し付けた。

 

 まだアークに侵入したラプチャーの完全な掃討は済んでいない。外食産業も大半が休業だ。この施設を後にしたら、次に食事が摂れるのはいつのこととなるか。

 

 消費期限は過ぎてるように見える──そう口にした将校だが、伍長が印字されているそれを見ると数年は猶予があった。

 

 ここまでされては、流石の伍長も厚意に気付かぬ筈もない。有り難く受け取った。

 

 いくつかの部署を彼は続けて渡り歩いては挨拶回りを済ませていく。

 

 その度に、居室を後にする時はまだ片手で提げられる重さだったバッグは両手で掴まねば持ち運べなくなった。

 

 やっと挨拶回りは終わった。とうとう営門に到着してしまった。

 

 警衛所前に立つ数名の兵士は自動小銃を携え、纏うボディアーマーには実弾(実包)が詰められた弾倉を差し込んでいる。

 

 伍長は舗装道路沿いに立つ警衛所前で立ち止まり、バッグを路上へ置く。次いで志願入隊からの数年間で染み込んだ挙動で防弾ガラス張りの警衛所へ正対した。

 

 まだ軍人でいられる猶予は何時間か残っている。

 

 故に伍長は警衛所の中で起立した警衛司令へ向かい、不動の姿勢から挙手の敬礼を取った。

 

 防弾ガラス越しにそれを認めた警衛司令も彼へ答礼を返す。

 

 そのやり取りを終えた伍長は再びバッグを片手で──やはり重くて無理だったので両手で掴み直して運搬しつつ、今度は営門前に立つ武装した兵士へ立った。

 

 彼の敬礼に兵士も慣れた様子の答礼を返す。

 

 伍長は続けて除隊許可書の様式を差し出した。──道中のお陰でクシャクシャとなり、皺だらけとなったそれを兵士は受け取り、内容を確認する。とはいえ、形式上の確認だ。兵士はそれを折り畳み、無造作にダンプポーチへ押し入れる。

 

 委細承知しているのだろう。兵士は踵を合わせる音を奏で、兵士が精一杯端正に見える敬礼を伍長へ向けた。

 

「──お疲れ様でした。お元気で」

 

「……ありがとう。君も元気で」

 

 見知った顔である。同じ隊舎で生活しているのだ。

 

 敬礼、答礼を交わした後、伍長はバッグを両手で掴み──数年を過ごした装備開発管理局の施設を抜け出る。

 

 ──これからどうしよう。

 

 幸いにも口座は凍結されなかった。貯蓄は──まぁまぁあった筈だ。

 

 それを元にまずは再就職先を探さねばならない。

 

 フォークリフトを扱えるので倉庫の物品管理や整理の仕事を──などと考えつつ施設の外柵沿いの歩道を歩き始めて間もなくだ。

 

 背後から車道を進む武装車輌やトラックのエンジン音を彼は捉える。

 

 装備開発管理局へ用事だろう。何らかの設備か資材が搬入されるのだろうか。

 

 しかし、それにしては──車列が営門の前を通過したように伍長の耳は感じ取る。

 

 次第にエンジン音の轟きが迫る。歩道と分離された車道を進む車列が伍長の真横を通り抜けた。

 

 先頭は武装車輌──大口径の機関銃が銃座に据えられたそれに妙な既視感を彼は抱いたのも束の間だ。

 

 不意にその車輌がハザードランプを焚きながら速度を落とし、歩道へ横付けする格好で停車する。続行していた1台のトラックも同様に停車した。

 

 なんだろう、と疑問符を浮かべていると──銃座に就いている量産型ニケが伍長へ向けて手招きする仕草を見せた。

 

「──乗ってく?」

 

「……ファニーさん?」

 

 色素の薄い肌の量産型ニケ──得てして彼女達は外見は酷似しているが、発する口調やイントネーション、纏う雰囲気等には差異が存在する。

 

 昨日、成り行きもあって行動を共にした量産型ニケだと気付くのに時間は要らなかった。

 

 重くて仕方ないバッグを抱えつつ、武装車輌へ歩み寄る途中、その後方で停車していたトラックから飛び降りた人影──戦闘用の装甲服で細い肢体を覆い隠したプロダクト12が、伍長の眼前へ降り立つ。

 

「重そうだな。預かるぞ」

 

「え?あ、はい。ありがとうございます。え?」

 

 無造作に彼女は伍長が運んでいたバッグを奪い取る。軽々と握ったそれを肩へ担ぎながらトラックの荷台へ戻ってしまう。

 

 荷台には大小の弾薬箱が大量に積載されているのが見えた。昨日の作戦で消費した分の弾薬受領にアークまで来たのだろう、と察しながら伍長は改めて武装車輌に歩み寄る。

 

 すると──助手席側の窓が手動で開かれ、車内からE.G.タイプと呼ばれる量産型ニケが顔を覗かせた。

 

「──イーグルさん……?」

 

「お疲れ様。服務中異常なし?」

 

 武装車輌やトラックはアイドリングされたままハザードランプが焚かれている。いつでも発進できる状態のままイーグルは伍長に軽い調子で尋ねる。

 

「……服務中と言いますか……というか、自分、もう……」

 

「──不名誉除隊、だっけ?」

 

「えぇ、まぁ……」

 

 処罰が下った、と伍長が言外に伝えると、イーグルは助手席に腰掛けたまま自身の携帯端末を取り出した。

 

 暗視装置やヘッドセットが取り付けられたヘルメットを脱いだ彼女が携帯端末の液晶画面をタップし、続けて片耳に宛てがう。何処かへ電話を掛けているらしい。

 

「──もしもし、お疲れ様です。──はい、弾薬は受領を済ませました。──それと()()()も発見です」

 

 脱走兵──その言葉がイーグルの口から放たれるなり、同乗する量産型ニケ達が笑い出した。

 

 脱走兵とは誰のことか。まさか自分か、と伍長は眉根を寄せる。しかし彼は先程、正式な手続きを済ませて営門を出てきたばかりなのだ。

 

「──はい、了解。──連れて来い、だって」

 

「……連れて?いや、何処にですか?」

 

「前哨基地に」

 

 当然だろう、と言わんばかりにイーグルは告げる。だが、伍長は訳が分からぬ。

 

「……あの、不名誉除隊となったんですが……」

 

「──それについては撤回されている、って仰ってるわ」

 

「……撤回?」

 

「……通達来てない?」

 

 銃座へ就く量産型ニケが呆れた様子で伍長を見下ろしながら告げる。

 

 通達とはなんのことだ。

 

 伍長は自身の携帯端末を取り出すなり、画面のロックを外すと、新着のメールを認めた。

 

 その内容は──

 

「──不名誉除隊の撤回、三等軍曹への昇任、前哨基地に転属、って内容の通達が来てるでしょ?」

 

 ──来ている。人事発令の通達が。3分前に。

 

「……え、えぇ!?」

 

「……なんで驚くのよ」

 

「いや、だって、さっき、自分……!」

 

 色々と餞別に貰ってきたばかりなのだ。3分前と言えば、営門を抜け出て直ぐではないか。

 

「──アンタ、()()軍人なんだから命令には従わないとね」

 

「はい、お待ち下さい。──()()、指揮官が代われと」

 

 呆れた眼差しを向ける量産型ニケが銃座から見下ろす中、助手席に腰掛けているイーグルが伍長──もとい、軍曹へ携帯端末を差し出した。

 

 通話しているのは昨日の指揮官であるらしい。恐る恐る彼は携帯端末を受け取り、片耳へ宛てがった。

 

「も、もしもし。お電話、代わりました」

 

〈──俺だ。俺の指揮下から()()とは良い度胸をしているな。お前が初めて……いや、二人目か。まぁ良い〉

 

 電話越しにも覇気を感じるのは──気の所為ではないだろう。

 

「で、ですが少佐殿──」

 

〈──()()だ。………交換条件でお前の不名誉除隊撤回を依頼するつもりだったのに、昇任は取り消されなかったぞ。どうしてくれる〉

 

「し、失礼、しまし……た……?」

 

 昇任は──まぁ一般論で言えば、めでたいことのはずだが、電話口の向こうでは苦々しい低い声が漏れている。

 

 甲高い金属音が電話口の向こうから響いた。オイルライターの蓋が開けられたらしい。煙草へ火を点ける物音も捉えられた。

 

〈──グリフィス()()。お前の指揮を解いた覚えは生憎と無い。2100までにさっさと戻って来い。脱走の件は帳消しにしておく。──了解か。復唱しろ、軍曹(サージャント)

 

 低い、唸るような声に思わず軍曹の背筋が伸びる。

 

「──は、はい!グリフィス軍曹は2100までに前哨基地へ戻ります!!」

 

〈──結構だ。切るぞ〉

 

 通話が切れた。何が何やら分からぬが、軍曹はイーグルへ携帯端末を返却する。

 

「……えっと、じゃあ……自分はトラックで──」

 

「──は?私に運転させるつもり?」

 

 ちょうど荷物もトラックの荷台にあるのだ。そこに乗って運ばれようと考えた軍曹へイーグルは鋭い眼差しを向けながら、脱いでいたヘルメットを被り直す。

 

「──運転手(ドライバー)がいないと動かないんだけど」

 

「ほらほら、さっさと出発!」

 

「早く乗ってよ〜」

 

 先程まで運転手が座っていた筈の運転席が空席だ。後部座席に移動したらしい。

 

 昨日、今日と慌ただしさが続いている。

 

 そしておそらくは今後も慌ただしい日々が続くのだろう。

 

 運の尽き──軍曹の脳裏に浮かんだ表現だが、不思議と嫌悪感の類は芽吹かなかった。

 

 溜め息を吐き出しつつ、軍曹は昨日に乗り慣れてしまった武装車輌の運転席へ回り込む。扉を開け放ち、座り心地は生憎と良くないそれへ腰を落ち着かせる。

 

 シートベルトを付けた彼はハザードランプを消し、ウインカーを点灯させながら、ゆっくりと、慣れた手付きで武装車輌を進ませた。

 

 




仲間が増えたよ!やったね!!(2回目)

ムーアの脅し文句→Clear!

ムーアの殺気込みの睨み→Clear!

「──へぇ?面白ぇ奴」
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