勝利の女神:NIKKE ─The Last Kiss─   作:一般指揮官

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ここまで貴重なお時間を割いてまでお読み下さっている皆様に伏して御礼を申し上げます。

どうでも良いことですがムーア中尉をどんな外見で皆様がイメージなされているのかと気になるこの頃でございます。


第9話

 

 

 

「──Fuck…恨みますよ閣下。何が()()()()だ」

 

 いきなりのFワードで会議三昧であろうアンダーソンを罵る現場指揮官は双眼鏡に映った()()()()の様相を認めると大きな舌打ちを一発かました。

 

「指揮官様、気持ちは分かるけどさぁ」

 

「それはちょっと…」

 

 アニスが苦笑混じりに、ネオンは困り顔で彼の背中を軽く叩いて宥めるもムーアの眉間には深い縦皺が三本も刻まれている。

 

「…要塞になってる」

 

「元々のコンセプトが自主防御システムを持った研究施設、だったからよ。武装レベルは高い方ね。実際、単独で稼働中にも奴等の侵入を許したことはなかったもの。…まぁ…奴等に奪われた後はその武装が私達を狙っているけどね」

 

「…怪獣とでも戦わせるつもりだったのか?」

 

「似たようなものかしら」

 

 1.5km先に見えるドーム型の建造物。その全容を双眼鏡越しとは言え目視確認したムーアからは舌打ちが止まらない。あれでは()()だ。

 

 ハリネズミのように突き出た何十門もの砲身、格納庫を兼ねたヘリ等の航空機が着陸出来そうな簡易の滑走路、ついでとばかりにミサイルを発射する為のVLSのセルまでもが設置されている。

 

 旧時代に於いては銃砲火器の進化と発展に伴って永久要塞の価値が──大きな要因はおそらく莫大な維持費の必要性に反して機動力が皆無という点だろうが、様々な要因が絡み合い、要塞という存在は衰退の一途を辿った。

 

 それがこの時代に復活し、しかも現在進行形で脅威となっているのはなんとも皮肉である。個人携行火器は既に限界まで性能を高めたというのに、それを嘲笑うかの如きコンセプトを考えた輩は何処のどいつなのだろうか。

 

「ルドミラ。研究基地が奪われた経緯は?」

 

 ラピが北から吹き荒ぶ寒風に金髪を靡かせるルドミラへ尋ねると、彼女は軽い溜め息の後に淡々とした口調で語り始めた。

 

「…最初は些細な故障だった。研究基地そのものがあまりにも古かったから当然だと思ったの。でも違ったわ。些細な物から始まり、徐々に故障の範囲が広がっていった。気が付いた時には基地の大半は奴等の手の中よ」

 

「…ハッキング?」

 

「おそらくはそうね。外部からの直接的な侵入はなかったようだから」

 

 むしろ直接的な侵入であれば彼女達なら対処可能だっただろう。或いはそれを見越してハッキングという手段を用いて基地の制御を奪った、可能性が考えられた。

 

「ラプチャーはハッキングも出来るんですか?」

 

()()()()もいるのよ。きっとハッキングぐらい訳ない──」

 

「「アニス」」

 

 口を滑らせたアニスへ対してムーアとラピの声が重なった。慌ててヤバッと彼女が口を自身の手で抑えるのだが後の祭りだ。

 

「ふふっ。まぁ…聞かなかったことにしておくわ」

 

「助かる。アニス、炭酸水はなしにするぞ」

 

「えぇ…あんなに苦労して指揮官様を捜してたのに!?」

 

 肩を竦め、苦笑するルドミラが告げると彼は双眼鏡で基地を偵察しつつ感謝と礼を述べる。アニスへ対して帰還したら炭酸水を奢る約束は帳消しになりそうである。

 

 横暴だ、とアニスが彼へ不平不満を垂れ流すも一応は箝口令がある筈の機密を喋ったのだ。とはいえ彼女の不満も分からなくもない。ビール一杯で手を打とうと考えていた矢先、背中に視線を感じた彼が振り向くとラピがムーアへ顔を向けていた。

 

「──指揮官…ちょっと」

 

 彼女に頷き返し、ポーチに双眼鏡を仕舞い込んだ彼はラピと共に一行から少し離れた。足下には6頭のオオカミ達が付いてきているが問題はないだろう。

 

 戦闘前の一服に煙草を銜えると、彼女はポケットからすかさずターボライターを取り出してみせる。その細い手に握られたライターの周りへ両手で風除けを作ったムーアの煙草へ火を点ける中、ラピが囁いた。

 

「──アニスの言う通り、トーカティブのような特殊個体がいるのは事実ですが…ハッキングは人間技術の真髄です。ラプチャーに出来ることではないと判断されます」

 

「…判断材料が乏しいから俺はなんとも言えんが…」

 

 火を点けてもらった煙草の紫煙を燻らせながらムーアはこれから要塞へ向かって突進、という旧時代の19世紀〜20世紀初頭もかくやという戦闘になる可能性から凝り固まりそうな思考をニコチンやタールの摂取で解し、ついでに眉間へ寄った縦皺を指先で揉み解した。

 

「…内通者がいる可能性が高くなるな」

 

「はい。今回の件で確信が持てました。研究基地を狙った理由とはピルグリムに関する情報が目的と考えるのが妥当でしょう」

 

「勿論…他の目的も考えられるが…俺達の任務や行動が予想される場合──特にトーカティブに遭遇した際の任務の情報が漏洩していた場合、自然と研究基地へ向かうと想定はされるか」

 

 紫煙を鼻孔と唇から同時に漏らし、溜め息も白く吐き出す彼へラピが頷きを返した。

 

「やることは変わりませんが…念頭に置いておくべきだと思います」

 

「…そうだな。…チッ…まったく…クソッタレな仕事だ」

 

 かつての()()を彷彿とさせる舌打ち、そして本音を漏らす彼へ──口が些か悪くなっている上、年相応とも言えるが珍しい姿を見たのもあってラピが僅かな微笑を浮かべるとムーアの背中をポンポンと軽く叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──はは…やれやれ…。建物と戦うのは初めてね」

 

 前進した一行が研究基地、或いは要塞の外郭まで800m程に接近するとアニスが肩を竦めながら呟く。

 

「──ワクワクします!自分の火力がどれほどのものなのか!建物も吹っ飛ばせるのか!もしそれが可能なら…私の強さは限界を突破したということでしょう!残念です…もっと強くなりたかったのに…」

 

「…この子、何言ってるの…?指揮官様、弟子が何か言ってるよ?」

 

「…俺に振るな。今は忙しいんだ」

 

 普段は突っ込んでくるラプチャーへ対して突撃破砕線(FPL)を指定して迎撃をしているが、まさか自分達がそちら側へ立つ流れになるとは思わず、ムーアは地形や遮蔽物となるだろう瓦礫、残骸の確認に忙しかった。

 

 ついでに突撃銃の銃身下部へ取り付けた擲弾発射器へ擲弾を装填するのも忘れずに実施し、交戦に備えている真っ最中である。

 

「ルドミラ。攻略のポイントはある?」

 

「いくら私でも建物と戦った経験はないのよね。しもべは?」

 

「…あると思うか?今すぐジェネラル・ノギにお越し願って要塞攻略に関しての講義を聞きたい程だぞ」

 

「……誰?」

 

「大昔の将軍だ」

 

 知らないか?、とムーアは装填を済ませた突撃銃の最終点検を行いつつ問い掛けるもルドミラ、そしてラピは左右へ首を振ってみせる。

 

「それはさておき…ポイント、になるかは分からないけど…外部フレームを支えるジョイントがあるわ。そこを壊せばガラガラ崩れる筈よ」

 

 分隊火力を集中させる他なさそうだ。雪原に埋まった土台となる部分より上層の構造物を支えるフレームが何筋も走っているのはムーアにも確認出来た。

 

 破壊出来れば自重も加わってドーム状に貼り付けられた格好の装甲も崩れ落ちるだろう。尤も擲弾で破断できれば、の話だが。

 

「女王様、あれがハートの女王ですか?」

 

「違うわ、アリス。あれはハートの女王に仕える手下に過ぎないわ。本物のハートの女王は…もっと手強いわよ」

 

「そうなんですね…!それでも私は怖くありません!伝説の武器を持つ仲間達と一緒ですから!」

 

「それは結構なことだ。……さて、始めようか──」

 

 要塞の外郭まで残り700m。間もなく砲口がこちらを向くだろうと想定していたムーアの視線が──動く()()を捉えた。

 

「──散れ!散開!!」

 

 それは真円に見えてしまった砲口である。いつぞやのタイラント級──ブラックスミスから生えた砲口に狙われた際の記憶が蘇った彼が警告を発しながら駆け出すと同時に全員が散らばった。

 

 砲口の奥で青白い光が集束したかと思いきや、光の奔流が吐き出され、つい先程まで全員が進んでいた地点を降り積もった雪諸共、()()させてしまう。

 

 ──アレに撃たれたら消し炭どころの騒ぎではないな。

 

 遮蔽物へ身を隠したムーアは背後の状況を認めながら周りに集まるオオカミ達に顔を向け、退避するよう促した。

 

「早く行け。ここから先は付き合う必要はないぞ」

 

 彼が望んでいた訳ではないが、たかが半日未満の付き合いでも懐かれては情も湧き出る。それもあってオオカミ達へ逃げるよう促すのだが──全てが一向に逃げる気配を見せない。

 

「命令不服従で軍法会議ものだぞ」

 

 知ったこっちゃない、と言わんばかりの様子に彼は苦笑を漏らす。ならば結構だ。

 

「…遅れずに付いて来い。一緒に突進だ。──分隊!!各個に躍進しながら接近しろ!!」

 

 張り上げたムーアの大声へバラバラに散開した彼女達が了解を返す。彼は右翼へ向かって走り出した。

 

 遮蔽物とした瓦礫から顔を覗かせ、砲口が向いていないと確認を済ませると横から飛び出て次の瓦礫へ素早く移動する。

 

 その背中を目指して駆け出すオオカミ達を共にしながらムーアは次から次に躍進を続ける。

 

 外郭まで残り300mだろうか。

 

 突然、要塞からの破砕射撃が活発となる。どうやら突撃破砕線(FPL)を超えたらしい。

 

 青白い光線が雨霰と降り注ぎ、弾着した雪原を次々に溶かしながら行く手を阻むが、ここまで来たならば退却は難しい。

 

 最早、突っ込むしか残されていないのだ。背中を向けたら最後である。

 

 ムーアの頭上を通り過ぎた光線の一筋が10m後方に着弾するが──彼は生命の危険を感じるよりも先に高揚感に支配されそうな心持ちとなっていた。

 

 緊張感が一周したのかもしれないが、口元が緩く吊り上がるのを隠しようがない。

 

「──指揮官!合流します!」

 

「──アリスと逸れてしまったわ!」

 

 彼が身を隠しながら敵の射撃をやり過ごす遮蔽物の周辺にも大小の残骸が散らばっている。内のそれぞれへ飛び込んだ二つの人影が無事であった姿を見てムーアは安堵の息を吐き出した。

 

「──無事だったか!ラピ、擲弾を撃ち込むぞ!ルドミラ、ジョイントの部分を撃って教えてくれ!そこに撃ち込む!」

 

 シャコンと音を立てて擲弾発射器の薬室を開く。擲弾が確かに装填されていると認め、薬室を閉鎖すると専用の照準具と突撃銃の照星を起こす。

 

 ラピも擲弾の装填を済ませたらしく、準備完了の報告を飛ばした。

 

「曳光弾の先よ!しっかり狙って!」

 

 身を乗り出したルドミラが携えた短機関銃の銃口を上部構造物や装甲を支えるフレームの一点へ向けた。そして引き金を引き、10発毎に装填している曳光弾の光の尾を使って彼等へ狙うべき一点を示した。

 

 その一点を認めたムーア、そしてラピが突撃銃の床尾を雪原へ立て、角度を付けながら擲弾を発射する際の目安を定める。

 

 照準具に刻まれた目安と照星、ジョイント部が重なった瞬間、ムーアが、そしてラピも発射器の引き金を引いた。

 

 2発のシュポンと気が抜ける発砲音と共に孤を描きながら撃ち出された擲弾は吸い込まれるかの如くジョイント部へ弾着。充填された炸薬が炸裂し、破片を飛び散らせる。

 

 黒煙が寒風によって晴れるも装甲は全くの無傷であった。しかし──

 

「──やった!崩れるわよ!」

 

 ──重々しく軋みを上げる金属音が響き始めた。彼等の視線の先にある厚い装甲を支えていたフレームが次々にひしゃげて折れ曲がる。

 

 自重に耐えられなくなったのだろうフレームが破断し、重力に従って装甲がルドミラの言葉通り()()()()と崩壊を始めた。

 

 それと同時に左翼側でも攻撃が始まったらしい。

 

 次々に擲弾の炸裂音が、そして散弾銃と狙撃銃の銃声が響き渡って来る。

 

「…ネオンが派手に撃ってるな」

 

 近頃、ストレスでも溜まっているのだろうか。ムーアは弟子が「火力ゥゥゥ!!」などと叫びつつ次々に散弾銃の引き金を引きまくっている様子を幻視してしまう。

 

 そして左側の外郭を構成していた装甲も重々しい轟音と共に崩壊を始めた矢先のこと──不意に地面が揺れ始めた。

 

「…なんだ?」

 

 地震のような揺れが始まり、足下へ降り積もって固まった雪の地面に亀裂が生じる。嫌な予感が容赦なく全身を駆け巡った。

 

「──退避しろ!!急げ!!」

 

 形振り構わず、このような時は本能に従うのが吉だ。身を隠していた遮蔽物を飛び出したムーアが折角、躍進してきた道程を戻り始める。

 

 ほぼ同時にオオカミ達がその脚力を誇示するように駆け出せば、ラピとルドミラもその後を追い掛ける。

 

 身体能力は並の人間以上のムーアだが、ニケには、そしてオオカミに走力で敵う筈もない。オオカミ達に追い抜かれ、続けて彼女達が並んで来た。

 

「どうしたの!?」

 

()()が来る!!」

 

「はぁ!?」

 

 重々しい地響きが更に強くなる。雪崩のそれとは異なる。もっと質量が凄まじい()()だ。

 

 揺れる足下は走り難いことこの上ないが200m程を全力疾走し、3名が纏めてコンテナの残骸の陰へ飛び込んだ時、さながら爆発したかのような轟音が響き渡った。

 

「──いや、それは反則だろう」

 

 ブラックスミスの時も似たようなことを呟いた記憶はあるが、ムーアの口からはそれが漏れてしまう。

 

 なにせ──研究基地が()()()()()のだ。

 

 四足歩行で立ち上がったのは言うなれば巨大なカメである。

 

 ドーム型の要塞めいた基地は甲羅であり、その下に隠されていた4本の脚と頭部が持ち上がり、地響きを立てながら雪原に姿を現した。

 

「──ラピ、擲弾はまだあるか!?」

 

「──あります!どうぞ指揮か…伏せて下さい!!」

 

 投げ渡されたラピの擲弾を受け取ったムーアが発射器へ手を掛けたとき、彼女の警告が響き渡る。

 

 研究基地──巨大なカメが雪原に隠れていた頭を上げた際に空中高くへ放り投げられた雪塊の一部が落下して来たのだ。

 

 それが自分達の頭上へ落ちてくるのを認めたラピの警告に彼は反応し伏せようとするのだが、ルドミラが一瞬遅れ掛けているのに気付いたムーアが彼女の手を力一杯引いて抱き寄せる。

 

 帽子を被ったルドミラの頭部を胸元へ抱えながら共に雪上へ転がった瞬間、落下した巨大な雪塊がコンテナの残骸を押し潰した。

 

「──大丈夫か!?」

 

「…え、えぇ。問題ないわ」

 

「良し。ラピ、脚の関節部に擲弾を撃ち込むぞ!」

 

 ルドミラに負傷がないと認めたムーアは立ち上がると同時に発射器から空薬莢を抜き取り、受け取ったばかりの擲弾を装填する。

 

 巨大なカメの姿に変貌した研究基地だが──その姿に相応しく動きは鈍重だ。

 

 加えて脚の細さは弱点になる。

 

 まだ上部構造物を抱え込んでいるのだ。関節部分に損傷を受ければ一溜りもないだろう。

 

 ラピとムーアが雪上へ突撃銃の床尾を落とし、角度を付ける。照星と照準具の目安、そして関節部分を一直線に結んだ時、ほぼ同時に引き金が引かれた。

 

 右側の2本の脚へそれぞれ弾着した擲弾が炸裂するも、外見上は大した損傷を与えていないようにも見える。

 

 しかし僅かな亀裂が入った。これが致命傷となったのだろう。

 

 続けて右側にある2本の脚へもアニスの擲弾が次々と弾着。全ての脚の関節に亀裂が入った途端、上部構造物の荷重が集中し──バキンと音を立てて関節が砕けた。

 

 そのまま甲羅のような上部構造物に押し潰された巨大なカメの頭部へ繋がる首の部分が破断され、一対の青い光を放っていた双眸から光が消え失せた。

 

 

 

 

「──あぁ…建物まで壊してしまうなんて…どうやら私の火力はもう極限に達してしまったようです。…師匠…私は下山します。最早、目指すべき境地がありません」

 

「なら次は軌道エレベーターだな。いっそのこと宇宙を目指してしまえ」

 

 火力信奉者の師弟がなにやら訳の分からない会話を続ける中、()()したばかりの基地内部へ一行は足を踏み入れる。

 

 まさか基地が機動するとは思わなかったが──取り敢えずは内部への侵入は成功した。

 

 成功したのだが──

 

「……これは困ったわね。セキュリティーが生きているわ」

 

 ──この基地を設計した設計者と是非とも話をしたい衝動にムーアは駆られてしまう。

 

 機動する基地と言い、過剰なまでの武装と言い、いくらなんでもやり過ぎだろう。男の子が喜ぶ浪漫溢れる何かを追い求めることを否定はしないが、やり過ぎは否めない。

 

 いっそ自爆装置でも付けていれば、ラプチャーの手に落ちるような事はなかったであろうに。

 

 せめてもの幸いは寒風が吹く外ではなく、壁一枚とはいえ、風を避けられる内部のロックが掛かった扉の前で立ち往生している点だけだ。

 

「…カードキーがあれば侵入出来るのだけど……脱出に忙しかったから持ち出せなかったのよ」

 

 ふとルドミラが口走った言葉──()()()()()という単語がムーアの耳朶を打つ。

 

 途端に今朝方の出来事が脳裏へ蘇って来た。

 

 

 

 ──Meが!通行許可証をあげまShow!!But!このPassはちょっとSpecialなものDESU!!──

 

 

 ──今、Meがやった動作を遂行するとPassがActivation!!My Company テトララインのTechnologyが集約されたPassなのDESU!!──

 

 

 

 

 ──覚悟を決めよう。

 

 ムーアはこれまで見たことがない程に──それこそ数百機のラプチャーの群れへ単騎で突入する寸前のような覚悟が決まった表情を浮かべると背嚢を下ろし、続けてボディアーマーを外した。動き難くなる物は全て取り外すのだ。

 

「…え?まさか指揮官様…」

 

「…踊る」

 

 外したばかりのボディアーマーのポーチを開ける。そこに収められたマスタングから受け取った通行許可証をムーアは右手へ摘みながら固く閉ざされた扉の前に立った。

 

「…指揮官。私達も踊らなければならないのでしょうか…?」

 

「…アニス、ラピ。私、変です。恥ずかしいです」

 

「…それは…私も…」

 

「……いや。俺一人が踊れば大丈夫だろう。…皆、少し休んでいてくれ。……アニス。あの時、流れていた曲は…キミの携帯に入ってるか?」

 

「…え?うん」

 

「…流してくれ」

 

 目が据わったムーアからの求めに言われるままアニスが自身の携帯端末を取り出す。画面をタップし、スピーカーからBGMをボリューム最大に設定して流し始めた。

 

 ──良し、やってやる。

 

 

 覚悟を決めたムーアによる一世一代のダンスが始まる。

 

 顛末を語れば──いわゆる“完コピ”であった。

 

 ラピ、そしてネオンが呆然とするほど完全に再現していたのだ。思わずアニスがカメラ機能を起動させ、動画を撮影し、それが後日にマスタングの下へ送り付けられると──

 

 

「──Oh!!THIS IS ENTERTAINMENT!!!

 

 などと喝采を上げていたのはまた別の話だ。

 

 

 

 

「……もうやだ……」

 

「……指揮官……」

 

「……師匠……」

 

 完コピし、無事に踊り抜いて起動した通行許可証を翳すと無事に扉は開いたのだが──その横でムーアは壁へ手を突いて深く項垂れていたのは言うまでもない。

 

 




次の章からは「巡礼」と「再会」に入るかと思いますが……ムーア中尉の鋼のメンタルをどうやって削ってやろうかと今から楽しみにしています。折れろ…折れちまえよ…!
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